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殺し合いから逃げよう、遠くへ遠くへ逃げよう ◆nVZ6p0TCus





―――次の放送まで精々生き残るんだな。


「フランク……生きていたんだな」

ゲキド街にロックオンが到着した時、主催による放送が行われた。
禁止エリアと死亡者をメモした彼は、フランクが生きていることを意外に思う。

「(急所に命中したように見えたが、案外平気なのか……あるいは強運に恵まれたんだな)」

ロックオンは誤射とはいえ、フランクを銃で撃った張本人である。
だがフランクの生存を確認した彼の心中に、フランクへの罪悪感や申し訳なさといった感情はこれっぽっちも含まれていなかった。

初対面の相手とたかだか数十分程会話しただけで、仲間意識だの友情だのといった気持ちが生まれるはずもない。
それ以前に、組む予定もない相手に情を抱く事がおかしいのだ。
長い期間共に過ごした友人や同僚などにはある程度の親愛の感情はあるが、人生の1%にも満たない時間に当たり障りのない会話をしただけの相手なぞ、すれ違った知らない奴と大して変わらない。
もっとも、さすがに誤射したのは痛いとは思うが、だからといって「はいフランクさんにごめんなさいしましょうね」とはならない。
自分の目的――生き残る――の足かせが消えたと考えればむしろ喜ばしい程だ。

「(まぁ、また会ったら、あいさつくらいはしておくかね。もっとも、もう会う事もないかもしれんがな)」

そう思い、止めていた足を再び運び始めた。



   ☆



それから数十分。ロックオンはふらふらと、建物の陰に身を隠しつつあるいていた。
ゲキド街に到着したら、しばらくの間そこにある建物に身を隠す事は決めていた。
ある程度人数が減ったら……自分も含めて15人位がちょうどいいだろうか。動き始めようとは考えている(もっとも、殺し合いに乗るか乗らないかはその時に決めるつもりだが)。
放送で伝えられた限りでは、殺し合いが始まって6時間で16人程脱落したようだ。なぜか名前が2度呼ばれた参加者がいたから実際は15人か。
参加者は70人だからこのペースが続くと仮定すると、日付が変わる頃には残り10人程になっているだろう。

「ん……ちょっと待てよ」

普通に考えて、死者の名前は一度「だけ」発表すれば十分だろう。だが先ほどの放送では松岡勝治なる人物が死者として二回も呼ばれていた。
禁止エリアに侵入すると首輪が爆発するという事は、参加者の位置情報と生死は首輪からリアルタイムで主催側に伝えられていると考えて間違いないだろう。
そして首輪は機械の類であるが故に、放送に『間違い』が発生する事はあり得ないと仮定するのは自然な流れである。
だがしかし、実際は死者の名前が二度も呼ばれたのだ。
その時、ロックオンの脳内にある一つの説が生まれる。



松岡勝治に装着されている首輪は欠陥品ではないか。

参加者は70人はいるため、最低でも同じ数だけの首輪を用意しなければならない。
一般に売られている書物や総菜、道具などはそのために製造された精密で正確な機械が大量に作っているため、不良品も滅多な事では生産されない。
だが、殺し合いに使われている首輪は用途が用途のため、わざわざ専用の機械を作ってまで生産する利点もあまり無いだろう。
となると、機械に強いグループが主催の中か、存在していれば主催に近しい団体にいて、彼らが極秘に作ったのではないかとなる。
その場合はロボットではなく生身の人間が制作する訳だ。
こうなると、いくら優秀であろうと人間なので一つか二つは機能に問題がある首輪が紛れ込んでいる可能性がある。
さらに、爆発するという特性から使いきりであり、全ての動作チェックをするのは絶対に不可能。
そのため、不良品がそのまま参加者の首に装着されるのもおかしい話ではないのだ。

さすがに10個や20個も不良品が出来上がる事はないだろうが、それでもごく少数は存在している可能性は否定できない。
となると、実は松岡勝治は未だ、もしくは放送の時点では生存していて、
実際の死者は別の参加者であり、名前が呼ばれていない生存者扱いされている参加者の中に死者がいるのではないか。
松岡勝治が生きているとした場合、実際の死者は12~14人に成り得る。

これらの考えから、放送ではフランクの名前は発表されていなかったが、実際は死んでいると言えない事もない。
そもそも明らかに急所に当たって生きている方がおかしいのだ。え、イワーク?何の問題ですか?

そして、間違いがあったのにもかかわらず同一人物の名を二度も呼んだ主催も、何か事情があるのではないかという気もしてきた。
これは完全に憶測だが、会場に何か重大なトラブルが発生したため、そこから注意をそらすためにわざとあんな事をした。
松岡勝治のみ二回呼んだのは、死んでも大して影響がない人物だから……こういったところだろうか。
……そういえば、放送直前に弱い地震が発生した気がしたが、それと何か関係があるのか?
俺の知らないところで色々起こってるのかもしれない。

「ま、ここでそんな考察をしたところで身を隠す身としてはほぼ無意味だよな……」

くだらない妄想は切り上げて、当面の隠れ家を探すか。
おろしていた腰を上げて再び歩き出した。



    ☆




「こんな本当に何もない家でどう過ごせっていうんだよ………」

ロックオンが今いるエリアは住宅街で、周りを見渡せば一軒家ばかりの面白みのない景色が繰り広げられる。
生活に必要な機能は備わっているという点では及第点ではあるが、長時間の暇をつぶせるかという観点からは散々であった。
というのも、彼はたった今適当な家に侵入し、家探しと水道・電気・ガスのチェックをしてみた。
結果、ライフラインと成り得る後半三項目は問題なく利用できたものの、家の中は最低限の家具が置いてあるのみで、
食べ物も、食器も服も本も雑貨もマットやじゅうたんの類もなく、あるのはベッドとテーブルとイスとカーテンのみのまさに「伽藍の堂」であった。
そのあまりの無機質さに不気味だと感じた彼は少し早足に家を去った。

最長で日付が変わるまで街に身を隠し、さらに誰かに見つからないよう一つの建物にいたいと考える彼としては、「暇」は最大の懸念事項であった。
悪い事は続くもので、ついでにその家で支給品を確認したものの、長時間の暇をつぶせるものは支給されていなかった。
これだけ家が建っているため、普通に家具が設置している家もあるのかもしれないとも考えた。が、無駄に多い家を一軒ずつ探してみるのも骨が折れるだろう。
その度に同じ思いをするかもしれないし、街というだけあって人が集まる可能性もある。
それはつまり、誰かに姿を見られる確率が高いわけで発見されたが最後、殺されるハメにもなりかねないためあまり出入りのアクションを多くはしたくない。

「仕方ない……ここは素通りするか」

別の家の探索という選択肢を脳内から消し去って歩き続ける。


「(まさかだと思うが、ここは住宅街じゃなくてモデルルーム街なんじゃなかろうか……)」

彼が知る由もない。


それからしばらく歩いていると、今度は家の代わりに店やビルを多く見るようになった。
どこか自分にとってぴったりな建物はないかと考えていると、遠くの方でバイクのエンジン音が耳に届いたため一応隠れておいた。
音はすぐに聞こえなくなり少し安堵したと同時に、
「フランクたちと離れてから随分時間がたったが、今まで誰とも会わなかった俺は意外と運が良いのかもしれない」とふと思った。

良い事も続くようで――――

「おっ………」

隠れた所から10メートル程の距離に二階建ての建物を見つけたのだ。

「おじゃましまーす ………返事聞こえたら逃げるけど」

声をかけて数秒待ったところ、静かなままだったのでそのまま距離を縮めてドアを開けてみる。


一階は個人経営だと思われる古本屋だった。中に入ると天井まである本棚が、壁とその間に川の字のように設置してあって本がギッチリと詰まっているではないか。
本はつい最近発行されたものからほのかに茶色く日焼けしているような古い物、半世紀以上前に発行されたものまで多種多様だ。
適当に取った古い本をパラパラとめくってみる。独特の防カビ剤のようなにおいが漂い、なんとなくノスタルジックというか懐かしさを感じた。

部屋の奥のドアを開けると上り階段があって、そこは居住区となっている。
人が二人住むくらいには十分な規模で、家具や家電も完備。レトルトや缶詰も少しだけだが用意してあった。

「今の俺にぴったりな、いやぴったり以上の場所じゃないか……!」

彼の希望通りの場所が見つかって、どうして別の建物を探す必要があるのだろうか。
喜びで口角が少し上がったまま、周りに誰もいないのを確認して二階の雨戸を閉める。
そのまま階段を下りて出入り口のドアへ向かう。シャッターがあるのを確認してきっちり閉めておいた。
これもロックオンにとってとてもありがたかった。シャッターが閉まっているということは「入ってくんな」の意思表示であり、
よほど非常識だったりキチガイな人間や泥棒はともかく、関係者以外がわざわざ開けてまでその建物に入ることもまずないからだ。

「さて、侵入者対策もしたところで本を選ぶ事にしますか。ここ最近読書をすることもなかったからいい機会だ」

本棚に向かってくるりと方向転換する。自分以外誰もいないのだ、気になる本を好きなだけ選んで取っていこうじゃぁないか。


   ☆


「新興宗教オモイデ教」「仏教とっておきの話 夏の巻」「人生よ、あなたは私の奴隷」「ポヨポヨ観察日記」「草野心平詩集」「異形の花々」……………

1時間後、二階にはたくさんの本のそばに囲まれているロックオンがいた。
選んだ本はハードカバーや文庫がメインだったが、そこにちらほらと漫画も混ざっている。
立ち読みせずタイトルと表紙を見てビビっと来たものを中心に選んだため、どんな内容かは全く分からない。
だが、これだけ取っても十二分に在庫はあるのだ、つまらないと感じたら別のを読んだり取ってくればいい。
それに……これだけあるのだ、気に入ったものは持って帰ってもかまわんだろう。
非常識な事を堂々とやってのける主催がいるのならば、盗みくらいどうってことはないはずだ。

壁にかかっている時計を見ると9時をまわったところだった。日付が変わるまで15時間もある。
それまでじっくり読書を楽しみ、食事もとって放送の時間をさけて眠ってもよいのだ。

もっとも、参加者の減りが早かったりここが禁止エリアに指定された時は早めに離れる事になるが、彼は街がエリアに指定される確率は極めて低いと考えている。
施設や隠れ家となりうる場所が多いという事は、自然と人がここに寄るだろう。そこで殺しがなされる可能性は十分ある。
そんな激戦区になるだろうエリアを立ち入り禁止にするメリットはまずない。
今行われているのは殺し合いで、禁止エリアによる参加者の大量脱落は望まれていないと考えられるのは当然だ。

「それじゃ、たっぷり楽しむとするか」

そう呟いて、近くにある本を取って表紙をめくる。




【E-02 ゲキド街南東の古本屋/1日目・午前】

【ロックオン・ストラトス(ライル・ディランディ)@武力介入できないCBシリーズ】
[状態]:疲労(中)、やや楽観的
[装備]:狙撃銃@武力介入できないCBシリーズ
[道具]:基本支給品(水消費・小)、ランダム品(0~2)
[思考・状況]基本思考:殺し合いに乗るつもりはないが、いざという時は…。
0:生還する事を最優先。とりあえず今は読書だ。
1:一先ず他の参加者が減るまで身を隠す。最長で24時までだが状況によっては早めに離れる。
2:男声の女(譲二)を警戒。
3:MSが有れば入手したい。
4:仲間や対主催が居れば合流したい(他の参加者が減ってから)。
【備考】
※当分の間ここから動くつもりはありません。
※首輪についてこう考えています。
1.主催か、それに近しい団体が人力で人数分制作した。
2.上記の中に機械に強い人物が存在している。
3.人の手で造られたとすると不良品がごく少数紛れ込んでいるかもしれない。
4.これらの説が正しいとすると、死者の中に生存者が、生存者の中に死者が存在する可能性がある。
 よって第一放送の時点で松岡勝治は生きていると考えられる。
ex.松岡勝治の名を二度呼んだのは会場に重大なトラブルが発生し、そこから注意をそらすため?





sm104:考察フェイズ 時系列順 sm106:すべてはたった一つの間違いから
sm104:考察フェイズ 投下順 sm106:すべてはたった一つの間違いから
sm61:逃げんなよ…逃げんなよ…逃げんなよソレスタルなんちゃら!! ロックオン・ストラトス sm125:胴長のクマにカブトボーグを与えてみた




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