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紅二葉 ◆qvvXwosbJA



エリアB-04の地に、季節外れの紅葉が舞う。
月明かりも加わって現実離れした印象すらもたらすその中心で、二人分の人影が向かい合っていた。
風が吹き紅葉が空を踊ろうとも、二人だけが時を止められたように動かない。

その2つの人影の片方――巡音ルカは、この状況をもたらした迂闊さを呪っていた。


(なんてこと……! まだ何も、何も始まってないのに!)


真っ直ぐにもう一人の人影へと伸ばされた彼女の右腕には、大口径の拳銃が握られている。
そして、その銃口はぴったりとその相手の人物の額に照準を合わせていた。
だが、それ以上動けない。引き金を引くどころか、身じろぎ一つできない状況だ。

視線を向けることすらできないが――今、自分の首元には真剣の刃が突きつけられているはずだから。

恐らく身動ぎひとつする程度で、その鋭利な切っ先は自分の首の肉に食い込むだろう。
そのまま一瞬で自分を絶命させるぐらい、目の前の相手には容易いことのように思えた。
引き金を引きさえすれば終わる、そのはずなのに、それが確証として感じられない。


(それにしても……いったい何者なの、この子は……?)


否応なしに釘付けになっている視線の先にいるのは、自分より2、3歳ほど年下に見える少女だった。
艶やかな黒髪と、朽ち葉色の着物とのコントラストが鮮やかに映える。
しかし彼女の纏う異様さは、そんな外観の美しさを帳消しにして余り有る。

頭に紐で結わえてある般若面も印象的だが、それ以上に目を引くのが頭の二本の角だ。
その強烈な自己主張は、ルカに『鬼』のイメージを抱かせるに十分だった。



そして何より、月光を浴びて舞い踊るこの紅葉。

少なくともこの周辺の木に、色づいている葉は一つもない。
ならばこの紅葉はいったいどこから現れたのか。

見れば人目で分かる。これは、目の前の彼女の着物の“柄”だ。
単なる絵に過ぎないはずの紅葉が、どういうわけか周囲に舞い散っている――

もはや疑いようもない。目の前の少女は、間違いなく人外の存在だ。
上手く銃口を向けられただけでも太鼓判を押していい出来なのかもしれない。
完全に不意を突かれていたら、こうして膠着に持ち込ませられてすらしていなかっただろうから。


「――貴女は」


どれだけの時間が過ぎたのか、あるいは数秒しか経っていないのか。
鬼の少女が発した一言が、永劫に思える時からルカの意識を引き戻した。
咄嗟に銃を構え直したが、相手は身動ぎひとつしようとしない。


「貴女は、何故銃を取るのです?」


続いて発せられた問いの意味が一瞬分からなかった。
だが、すぐに理解する。何故銃を取るか……何故、殺そうとするのか。


「……死にたくないからよ。誰が好き好んで撃つものですか」


それは事実だ。しかし、その全てではない。
本質的な部分を口に出してはいない。
そして、それは目の前の少女にはお見通しのようだった。



「ただ漠然と死を恐れているようには見えません。理由を、お聞かせ願いたく存じます」


相手から発せられる殺気は本物で、とても有無を言わせるつもりはなさそうだ。
こちらも覚悟を決めるしかない。ゆっくりと、言葉を紡ぎ出す。


「死ぬのが怖いのではないわ。私は、死によって歌が奪われるのが怖い。
 ここで殺されればもう二度と歌えなくなる、それがこの世のどんなことより怖い」


そう。これが真実だ。
巡音ルカにとって、歌とは全てだった。
ボーカロイドとして生を受け、歌うことを宿命付けられた彼女にとって、
歌とは命であり、自分の半身であり、生き様であり、世界そのものだった。


「私は、こんなところで歌うのを止めるなんて嫌。終わってしまうなんて嫌。
 こんな理不尽過ぎる形で、私の未来を、私が歌う明日を奪われるなんて絶対に嫌」


もっと、もっと歌いたい。
それが巡音ルカが生きる理由。ただひとつの、かけがえの無い理由。
そう、だからこそ。


「だからこそよ。どんなに理不尽であろうとも、この現実が私から歌を奪うというのなら、私は抗うわ。
 最後の一人になるしか抗う術がないのなら、この引き金だって引いてみせる」


自然とその言葉には力が篭った。
殺意とは違う。良心や倫理観を塗りつぶしてでも、生きていたい理由があるから。
迷いがないといえば嘘になる。自分のために人の命を奪うことに抵抗はある。
それでも、それ以外に方法がないのなら、躊躇ってはいられないのだ。


「諒解いたしました。貴女には、それ以外の全てを犠牲にしてまで守りたいものがあるのですね」


そう思っていたから、ルカには相手の言葉が意外だった。
理解を示されるとは考えていなかった。てっきり、より強い敵意を向けられるものだとばかり。

しかし、あるいはそのせいで、一瞬気が緩んでしまったのかもしれない。


「――故に、私は、貴女を、斬る」


次の瞬間、月光を反射してきらめく白刃が、巡音ルカの胴体を肩口から袈裟懸けに斬り抜けていた。

反射的に引き金を引くことすら叶わなかった。
痛みすら感じない。ただ、自分の中の何か決定的な部分が切り裂かれたという感覚。
そのまま糸の切れた操り人形めいて、ルカの体は地面へと崩れ落ちた。





   ▼  ▼  ▼



再び時を刻み始めた広場で、鬼の少女――日本鬼子(ひのもと・おにこ)は地図を広げていた。
細部まで読み込むには暗すぎる時間帯だが、鬼子の神通力を持ってすれば大した問題ではない。
地図の隅々まで目を滑らせ、やがて一息付きながら折り畳んだ。


「やはり、この書記室とやらが気になりますね。何やら重要な書物が収められているように思えます」


天界、というのが何は分からないが、何かこの戦を生き延びるのに有用な情報が得られるかも知れない。
ただ問題はその位置。3本の道の合流地点に近く、また山頂付近の「この木なんの木」を除けば、
地図を見るかぎりでは全施設の中でもっとも高い位置にあると判断していい。
誰もが目指しやすいが、到達には時間がかかる。それが地味に厄介だ。
加えてここからは単純に距離がある。心無い者に機先を制されると厄介なことになるかもしれない。


「と、なれば、この『おでっせい』とやらを使う必要があるのでしょうが」


鬼子が視線をやった先には、まだ新車同様のホンダのオデッセイがあった。
支給品として用意されているアイテムの中では、恐らく特に大きいものに違いない。
説明書には《アイドルマスターシンデレラガールズは用法・用量を守って正しく課金しましょう》とあったが、
鬼子にはなんのことだかさっぱり分からなかった。
とはいえ、これに乗れば書記室に到達するまでの時間を大幅に短縮できるはずだ。


「しかし、ここで問題がありまして……私、機械の類には滅法弱いのです。
 そこで、是非ともお手伝いしていただけると、私としては助かるのですが……」


鬼子が申し訳なさげに見つめるのは、桃色の髪を伸ばした美女だった。
金管楽器を思わせる衣装の上からでも魅力的なスタイルの持ち主であることが一目で分かる。
深くスリットの入ったスカートからは引き締まった美脚が覗き、男性でなくとも見とれてしまいそうだ。
ただ一点、その端正な顔立ちがいかにも不機嫌そうになっていること以外は。




「……人を断りなしに切り伏せた以上は、それ相応の頼み方があると思うのだけど」
「あ、あれは不幸な行き違いだったと貴女もお認めになったではないですか!」


その女性――巡音ルカは渋い目で鬼子を睨む。
先ほどの気迫はどこへやら、鬼子は恐縮して縮こまるばかりだ。
それもそのはず、今の鬼子は頭の短い角を除けば普通の少女と変わらない。
先程は鬼の血を活性化させ神通力を発揮していたからこそあれだけの戦闘力を見せていたのだ。
今は長かった角も縮み、赤く爛々と輝いていた瞳も黒へと戻り、加えて性格も攻撃性を失っていた。


「こんな夜だもの、咄嗟に互いが互いを敵とみなすところまでは仕方ないわ。
 でも事故と言っていいのはそこまでで、その後のバッサリは違うでしょう」
「ううう……」


どうもルカは完全に根に持っているらしい。死を覚悟したわけだから無理も無いが。
それが分かっているからこそ、鬼子の弁明もどことなく言い訳がましくなってしまう。


「しかしあの場は、ああする他なかったのです。刀を納めたところで、私が撃たれていたかもしれませんし。
 ――だからこそこの『白楼剣』で、肉体を傷つけずに心のみを斬るという方法しか」


斬られたはずのルカが、傷ひとつ負わずにこうしているのはそういうカラクリだった。
幻想郷の庭師が持つ二振りの刀の一方『白楼剣』。
もう一方である『楼観剣』が幽霊十匹分の殺傷力と伝えられるのに対して、
こちらは人間の迷いを断ち切ることが出来るとされている。


「あの時、確かに貴女は迷っていました。生き残るという目的は確固たるものでしたが、
 そのために取る手段に迷いがあった。だからこそ白楼剣が効いたのです。
 ……迷いを斬られた貴女が、その後どちらの道を選ぶのかは賭けでしたが」


鬼子がそう言うと、ルカはしかめ面を崩して面目なさげに溜息をついた。


「それについては弁解のしようもないわね……覚悟が足らなかったのかしら。
 いえ、最後の一人になる以外の生き残る可能性を信じ切れなかったからこそ、迷ったのか」


かぶりを振り、それから真剣な眼差しで鬼子を見据えるルカ。



「でも、おかげさまで迷いは晴れたわ。やっぱり私は、絶望に呑まれるなんて嫌。
 絶望のまま殺し合ってしまったら、生き残っても希望の歌なんて歌えなくなってしまうもの」
「それが迷いを断った貴女の答えということですね」


凛とした表情で言い切るルカを見て、鬼子も微笑む。
やはり彼女を助ける道を選んだ自分は間違ってなかったと、そう信じられる。
だからこそ、そんな彼女には礼を尽くす必要があるだろう。


「――改めて名乗らせていただきます。私の名前は日本鬼子(ひのもと・おにこ)。
 鬼の名にて鬼を討ち、鬼の身にて鬼を斬り、鬼の心にて鬼を祓う者。
 ルカ様、この無残極まる争いを鎮めるため、私にお力添えを頂けないでしょうか。
 その代わりといってはなんですが、この身一念一振りの刃、貴女の為にお貸しいたしましょう」


畏まった挨拶をする鬼子を見てルカはきょとんとした後、苦笑交じりに微笑んだ。


「……巡音ルカ。歌に生きるボーカロイドよ。よろしく、鬼子」


降り注ぐ月光の元、最悪の出会い方をした二人は、ここへ来てようやく握手を交わした。




【B-04 平地/一日目 深夜】

【巡音ルカ@VOCALOID】
[状態]:健康
[装備]:大口径拳銃@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2、
    ホンダのオデッセイ@課金騎兵モバマス予告集
[思考・状況]
基本思考:歌い続けるために生きる
1.オデッセイを運転して北の山道を通り、天界の書記室を目指す
2.鬼子に協力する
3.絶望には呑まれない



【日本鬼子@日本鬼子ぷろじぇくと】
[状態]:健康
[装備]:白楼剣@東方Project
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本思考:殺生無しに争いを鎮める方法を探したい
1.オデッセイに同乗して北の山道を通り、天界の書記室を目指す
2.心を鬼に囚われた人を白楼剣で斬り、迷いから解放する
3.極力殺生はしたくないが、いざというときは……

※ 設定は概ね公式に準じますが、完全に鬼化した状態は制御不能の暴走として扱います



【支給品紹介】


【大口径拳銃@魔法少女まどか☆マギカ】
巡音ルカに支給された。
ほむほむ愛用のマジックアイテム(物理)。名前はゲーム版準拠。
銃器は考証がなにかと面倒なので、とりあえず「デザートイーグル的な何か」ということで。


【白楼剣@東方Project】
日本鬼子に支給された。
魂魄妖夢の持つ二振りの刀のうち、人の心の迷いを断つことができるとされるやや小振りの刀。
本ロワにおいては、基本的には普通の刀だが霊力・魔力などを込めれば心のみを斬れるという扱い。



【ホンダのオデッセイ@課金騎兵モバマス予告集】
日本鬼子に支給された。
とある課金兵が費用を工面するたに手放したAT(×アーマードトルーパー ○オートマ)。
最低野郎への道は斯くも厳しいものだということを教えてくれる。友よさらば。




sm14:モコミチ橄欖戦鬼 時系列順 sm16:北斗の三男を世紀末のおもちゃが見たぁ
sm14:モコミチ橄欖戦鬼 投下順 sm16:北斗の三男を世紀末のおもちゃが見たぁ
巡音ルカ sm63:最終鬼子一部吐く
日本鬼子 sm63:最終鬼子一部吐く




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