デュエル終了、そして……

「かがみ! しっかりして! かがみ!」

 せっかくデュエルに勝ったのに、どうしちゃったんだよ!!

「安心してください、気絶しているだけですよ」
「え?」
「あ、貴方は……」

 振り向くと、四つの翼を生やした知らない男の人が空から舞い降りて来ていた。

「あの方は大天使様よ」
「大天使? 神様?」
「うーん、神様に一番近い存在かしら」

 その大天使が何だってこんな所に? てゆーか、かがみはホントに大丈夫なの?

「えぇ、一時的に気を失っているだけです。デュエルをして体力が無くなったのでしょう」

 デュエルでね……まぁ、最後のダメージは相当のものだったからなぁ……。

「では泉こなた、貴女のデッキと彼女のデッキを合わせてください」
「デッキを?」
「願いを叶える為よ」

 そうだった、すっかり忘れてたよ。
 かがみのデュエルディスクからデッキを外し、私のデッキと重ねる。

「これで良いですか?」
「はい。ではデッキ胸に寄せ、願いを思って下さい」

 願い……かがみの病気、コナタニア症候郡を消すこと……でもその前に。

「あの、ちょっと良いですか?」
「? なんでしょう?」
「願いって、なんでも良いんだよね?」
「……そうですが、貴女は友を救うためにこのデュエルに勝ったのでは?」
「そうですけど……」
「こなた?」

 なんでも願いが叶うなら……その願いを上手く使う取って置きのお願いがある。

「確かに、本来なら願いはなんでも構いません。ですが今回は……」

 大天使さんは、チラッとかがみを見てから言う。

「今回は彼女の奇病を治すため、天界からこのカードを持って行かせたのです。残念ですが、貴女の私利私欲の為にこの願いを使わせるわけにはいきません」
「そうですか……」
「こなた……それはかがみちゃんの事より大切なの?」
「うん……」

 勿論、かがみの事だって大切だ。でもこの願いが叶えば……。

「因みに、どんな願いを叶えるつもりだったのです?」
「……願いを、二つに出来ないかな……って」
「願いを二つに?」
「そう。一つはかがみの病気を治すのに、二つ目は……」

 二つ目の願い……それは……。お母さんを……。

「一時間、三十分でも良いから……お母さんをお父さんに合わせられないかな……って」
「こなた……」
「はは、三十分じゃ短すぎるかな?」
「うぅん、その気持ちだけで十分よ」

 気持ちだけで十分? お母さんはお父さんに会いたくないの? そんな筈はないと思うんだけど……。

「二つも願いがありながら自分の事には使わない……素晴らしい心の持ち主ですね」

 なんだか照れ臭いな……。大天使さんに褒められるって凄いことなんじゃないか?

「実際に、そのように『願いを二つに』という願いは叶えることが出来るでしょう」
「じゃあ!」
「ですが、その二つ目の願いは叶うことはありません」
「……え?」

 二つ目の願い、お母さんをお父さんに会わせることが出来ない?

「何で!? 何でも願いが叶うんじゃなかったの!!」
「こなた、もういいの……」

 お母さんが私の肩に手を置く。その手は僅かに震えていた……。

「何で、お母さんはお父さんに会いたくないの!?」
「会いたいわよ……会って色々話しがしたい……! でもね……無理なの」
「だから何で――」
「それは我々がここにいる時間がもうないからです」

 え……今なんて?

「本来、我々天界の住人がここに来る事は許されていません。ですが――」
「……」
「今回はそこの彼女の奇病を治すため、特別な許可が下りてここに来る事が出来ました。そしてその許可を取ったのは貴女の母親である泉かなたなのですよ」
「お母さんが?」
「…………」
「泉かなたは、貴女と貴女の友人である柊かがみを助けるべく、神にお願いし、ある条件の許、地上に降り立つことを許可されたのです」
「条件……」

 もう何となく分かってきた気がする……。でも、そんなこと考えたくない……。

「貴女以外の人物は姿を見ることは出来ないこと。そして、事が済んだら速やかに天界へ帰ること。つまり――」
「私のお願いは、神様の条件に違反することになる……ってことですね」

 神様の条件じゃ仕方ないのか。何がなんでも願いは叶うだよ……。

「こなた、そんなにがっかりしないで……。こなたのその気持ちだけで、私は胸がいっぱいよ」

 後ろから温かい感触……お母さんが抱き着いてきたみたいだ。

「お母さん……」

 そうだよ……もうじきお母さんは帰らなきゃいけない。それなのに、こんなにしんみりした空気じゃダメだよ。安心させて帰らせなきゃ!

「大天使さん、色々言って済みませんでした」
「いえ、大丈夫です。それでは良いですか?」
「はい」

 私はカードを胸に当てて願う……。

「では行きますよ。勝者である泉こなたの願いカッナーエ!!」

 かがみの奇病を治して!!
 そう願った直後、カードが光だし、かがみの方向に向かって飛んでいった。そして、かがみの身体の中から、ピンク色の靄(もや)が溢れ出し、それをカード達が吸い込んでいく。
 凄い光景だ……。やがて靄を全て吸い込むと、カード達は大天使さんの手元に戻って行く。

「これで彼女の病気は治りました」
「そうですか」

 もっと凄い龍とかが出てくると思ったんだけどな……。とにかくこれで全部終わったんだね。

「こなた、お疲れ様」
「うん、お母さんもね」

 これでお母さんともお別れか……。長いようで短い間だったけど、楽しかったよ。

「そろそろ時間ですが、その前に言わねばならないことがあります」
「え?」

 まだ何かあるんですか……。

「大天使様、それは言わないでいてください」
「そうですか……、貴女が良いと言うのであれば、それで構いませんが」
「どっちみち…………てしまう事ですから……」
「それもそうですね。私としたことが、余計なことを言ってしまうとこでした」

 何? お母さんが言ったことがよく聞き取れなかったけど……。

「じゃあね、こなた。お父さんをよろしく」

 ま、いっか。そんなにたいした事じゃないだろう。

「うん、こんなこと言うと変かも知れないけど……元気でね! お母さん」
「では行きますよ、ふぅんもっふ!」

 そう言うと、二人は光に包まれてしまった。あれ……なんだろう……急に眠気が……………………。


……
………。
――――


 ――時刻は午前十時、ちょうど二限目が始まる時間である。そしてここは校舎の屋上、そこには二人の少女が息を立てて眠っていた。

「すぅー、すぅー……」

 時間的に生徒は授業を受けている時間なので、物音一つしないぐらい静かだ。
 すると、ガタンっと、この静寂を破る音が起つ。誰かが屋上の扉を開けたようだ。

「こんなとこにおったんか……」

 扉を開けた人物の第一声からして、どうやら寝ている少女を探していたようだ。

「おー、よぅ寝とるわ。人の授業サボっといてこいつらは……」

 と、悪態をつきながら寝ている少女、基、こなたとかがみの元へ歩み寄る。

「泉ぃー! 柊も、何時まで寝とる気や!」
「う~ん、後三十分……」
「あ?」

 ゴツン、と鈍い音。

「い!?」
「目ぇ覚めたか泉? まだ覚めてないようならもう一発――」
「わー! 先生ストップストップ! 覚めましたから!」

 ゴツン、と再び鈍い音。

「今のはウチの授業サボった分や」
「あうぅ……」
「柊もはよ起こしてやらんかい」

 何故かがみは殴らないのか、などと不満を覚えつつ、かがみの体を揺さ振るこなた。

「かがみ~、起きて~」
「……わ……」
「わ?」
「私のターン!」

 沈黙……。

「何、かがみ……私のターン? どんな夢見てたのー?」
「は……え……///」
「柊ー、ウチらが働いてるときにお前は楽しい夢が見れてえぇなー?」
「く、黒井先生……」

 先生という存在が居たからか、かがみは直ぐさま起き上がり、あわてふためく。

「え? 何で屋上に居るの?」
「それはこっちの台詞や、お前ら二人して授業サボってまで何をしてたんや?」
「「え……」」

 二人は顔を見合わせる。お互いに何か知らないのか探りを入れるが、どちらとも知らないようだった。やがて出した答えは、二人揃って「よく分かりません」というものだった。

「ほほぉー、二人して先生馬鹿にしてんのやな? 歯ぁ食いしばれや!」
「ちょっと待ってください! ホントに知らないんです! というか、ここに来たことすら覚えてないし……ねぇ? こなた」
「うん、何で私達がここに居るのかよく分からないですよ。ホントに……」
「記憶喪失とでも言う気か?」

 そんなんあるわけないやろ、とでも言いそうな呆れた顔で二人を見る黒井。すると、こなたは思い出したように「ただ、一つだけ分かることが」とぼやいた。

「なんやそれは?」
「かがみの病気が治ったって事ぐらい……かな?」
「はぁ? 私が病気? 何よそれ?」
「病気ってもしかしてあれか? いつも泉を追っ掛け回している……」
「え、それって冗談で言ってますよね……」
「何言うてるんや、泉を取っ捕まえて身体を触ったり、キスしたりとやりたい放題やったやないか」
「わ、私がそんな事……」

 鯉の様に口をぱくぱくとしながら、ギギギという効果音が似合いそうなくらいにぎこちなく、こなたを見るかがみ。

「残念ながら、私のファーストキスはかがみによって――」
「嘘よ嘘よ! いやぁぁぁぁっ!!」

 耳を塞ぎ、顔を真っ赤にしながら、奇声を上げ屋上から走り去るかがみであった。

「……あの様子やと、ホントにその病気とやらは治ったみたいやな」
「みたいですね」
「で? どーやったらあの重症やった柊を元に戻すことが出来たんや?」
「だから、それがよく分からないんですよ……。ただ、何故かコナタニア症候群が治ったという事実だけが頭の中に入っててですね」

 今の聞き慣れない言葉に黒井は、まるで苦虫を噛み潰したような顔をした。

「コナタニア症候群? そんな言葉聞いた事ないわ」
「いやぁ、私もよく分からないんですが頭の中に入ってて――」
「さては、お前ら猿芝居してこの場を煙に撒こうっちゅん魂胆やろ?」
「ち、違いますってば!」
「まぁ、えぇわ。放課後きっちり説教してやるさかい、覚悟しときや?」
「は、はぅ~……」
「ほら、もう授業始まってるで! さっさと教室に戻らんかい!」
「は~い……」

 黒井に正されて、しぶしぶ教室に向かうこなた。その時、屋上の出入口からブワッと風が突き抜けて、こなたの髪を揺らした。

「?」

 何かを感じたのか、後ろを振り返るが、そこには勿論何も無かった。

「気の性かな? 誰か居たような……」
「泉ぃー! はよ来んかぁーい!」

 中々来ないこなたを、既に下にいる黒井が呼び掛ける。

「は、はーい!」

 こなたも慌てて階段を降りていく。


 誰も居ないはずの屋上、そこには人の目には決して見えない二人の姿があった。

「私がここへ来る事が出来たもう一つの条件。ここに居る間、天界の住人と関わった人達の記憶を消すこと……」
「どうやら、我々が居た痕跡は失くなったようですね」
「後は、二度と変な病気に罹からないかを願うだけです」
「そうですね。では、我々も帰りますよ?」
「はい。……こなた、元気でね」

 その日、晴れ渡る快晴の空、不釣り合いな二つの光が空に向かって飛んでいくのを見た、という奇怪な説があるのだが、それはまた別の話である……。

 

 

 

 

「ったく、皆して私をからかって……こなたにそんな事する筈――あれ? この写メは……」

 

「かわいい……///」


 お し ま い ?


 

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