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※ これを読む際は、先に『らき☆すた殺人事件 ~嵐の夜の惨劇~』を読んでから本編をお読みください。

 

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「くさくってさー!」
「あはは、だよなー!」

あの、嵐の夜の惨劇から一ヶ月が経過した
たった一ヶ月でも、柊かがみと日下部みさお、二人での生活が日常となりつつあった

「柊の弁当って最近豪華になってね?」
「あ、いや、今まではだいたいつかさが作ってくれたけど、全部私が作らないといけなくなったから自然と、ね」
「……なんか、皮肉だな……」
「……そうね……」

それでも、心の傷はまだ癒えない
春の訪れとともに消えていくの雪のように、この悲しみも溶けてなくなってしまえばいいと、何度思ったことか……


・・・


「おう、お前ら」
「黒井先生!」

帰る直前、廊下で黒井ななこと出会った。あの事件後、授業以外では初めての会話である
去年までこなた達の担任で――今年も担任になるはずだった

「アイツらが死んで、もう一ヶ月になるんやな……」
「ですね……」

悲しげなその目を伏せ、黒井先生は続ける

「時間っちゅーもんは残酷やな……何が起こっても、絶対に止まらへんのやから……」
「……でも」

不意に、みさおが口を開いた

「時間が止まらないでくれてるから、私達はアイツらのぶんまで生きていけるんですよ」

その言葉を聞いた黒井先生は一瞬キョトンとし、小さく笑った

「なんや、もう大丈夫そうやな」
「まだ、寂しいことは寂しいですけどね」
「寂しいと思うことが出来るから、人は未来を切り開けるんやで。って、あるゲームの受け売りやがな。ほな、気ぃつけて帰り」
「「はい!」」

元気よく返事をすると、二人は廊下を歩いていった


――なんや、時間に取り残されとんのはウチだけなんか――


・・・


「あ、かがみ先輩」
「ゆたかちゃん、みなみちゃん。久しぶりね」

学校の玄関で、桃色の髪の小さな女の子と、緑色の髪の大人っぽい女の子の二人に出会った
みさおには見覚えがなかったが、二人が陵桜の生徒だということは制服からして明らかだった

「そうだ、日下部は初めてだったわよね? こなたの従妹、小早川ゆたかちゃんと、みゆきのご近所さん、岩崎みなみちゃんよ」
「あいつらの……」

かがみの説明を聞いたみさおの表情が曇る
あの事件で死んだ、こなたとみゆきをよく知る者だったからだ

「大丈夫ですよ。私はもう、吹っ切れましたから」
「私も……大丈夫です」

かがみが紹介したゆたかとみなみが口をそろえてそう言う
みさおはまだ不安だったが、本人が大丈夫だと言っている以上、追及する意味はない

「二人とも。こいつは私の親友の日下部みさおよ」
「よろしくな、二人とも」
『はい』

二人は返事が見事に揃ったのに驚き、顔を見合わせた

「あっはは。仲良いんだな、お前ら」
『……//』

ほのかに紅くなる頬。みさおには、この二人が可愛く見えた

「そういえばゆたかちゃん。こなたの家から陵桜に通うって言ってたけど、やっぱり、おじさんのところから?」

おじさんとは、こなたの実父、泉そうじろうのことである
死別した妻、かなたとそっくりなこなたを溺愛していたのだ
そのため、かがみも参列したこなたの葬儀の時には滝のような涙を流していたのだ

「はい。私達はアパートか何かを借りるつもりでしたけど、おじさんが『こなたの思い出が詰まったこの家に一人でいるのは辛過ぎる』って、お母さんにお願いしたそうです」
「……なんというか、本当にこなたを愛してたのね……」

その場の空気がすっかり重いものになってしまった
と、その時、この重い空気を引き裂く人物が現れた

「Hi! ドウしましタ? そんなDarkな空間を作り出しテ」
「そんなに落ち込んでちゃダメッスよ! 前を見ないといけないッス!」
「パトリシアさん!? それに田村さんまで!」

かがみは二人を見た瞬間、名前を叫んだ
実はかがみは、この二人をこなたから紹介されていたのだ
パトリシア――本名パトリシア=マーティン、通称パティはこなたのバイト仲間として
田村――本名田村ひよりはコミフェに行った時に同人誌サークルの人として

「かがみ先輩、小早川さんと岩崎さんとも知り合いだったんすか?」
「まあ、こなたとみゆきの葬儀の時にチラッと話しただけなんだけどね」

かがみがチラッと隣を見ると、パティに寄られて困っているみさおの姿があった

「お、おい、柊! お、お前たしか英語得意だったよな!?」
「いやいや、パトリシアさんは日本語喋れるぞ」
「ワッタシ、ニポンゴ、ワッカリマセ~ン!!」
「日本語わかんねぇって言ってるじゃないか! なんとかしてくれ~!!」

その掛け合いがあまりにも滑稽で、みさおを除く全員が腹を抱えて笑い転げた

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