1―7

1―7

「はっ!」
「ハッ!」

かがみが一気に距離を詰める。パティの剣を防ぐと同時に甲高い音を立てる!

(く! なんて重い一撃なの!?)

パティの力に圧倒されつつも、なおも剣は交じり合い、お互いの身体へは届かない

「ッ!!」

突如、かがみがバックステップで距離を取った

(学校で習った剣技だけじゃ、とてもじゃないけど適わないわ……)

「つかさ、こなた、援護して。素手のアンタたちじゃ、絶対に不利だから」
「うん!」
「わかった!」

こなたは早速両の拳を合わせ、魔術の準備――詠唱に取り掛かる

「見せてやるわ、柊家に代々受け継がれてきた剣術を!」
「!」
「――魔神剣!」

かがみは体をひねって左腕を後ろへ回し、全身の力を込めてそれをまったくの間合いの外から、幻影を斬り付けるかのように空振りした
その瞬間、一閃させた剣から発生した剣圧が衝撃波となり、パティ目がけ疾る!

「――シャドウウィスパー!」
「な!?」

しかし、パティもまた、同じ構えから衝撃波を発生させ、それがかがみの魔神剣とぶつかり、お互いを打ち消し合う!

「まさか! 同じ系統の技が存在するなんて!」
「まだまだ甘いデ~ス!」

今度はパティがかがみに向けて走りだす!

「――デルタレイ!!」

直後、拳を挙げたこなたの掌から三つの光球が出現、パティに襲い掛かる
しかしそれはパティの振るう剣によってすべてが受け流されてしまった

「今だ! 瞬迅剣!!」
「レイジングエッジ!!」

一瞬の隙が生まれたパティへ走り込み、高速で出した突きが風を切ってパティへ向かう
が、それはパティの剣に阻まれ、体に届くことはなかった

「なかなかやりマすね……アレを使いますカ……」
「な……!?」

腕を左右に大きく開き、自らを十字架のようにしたその光景に、かがみは驚いた
間違いない、あれは呪文の詠唱だ!

「……え……?」

そのパティの右手に赤く光る石――赤晶石。加えて、今までに見たこともない形状の印も、しっかりと存在していた
印を持つ者の体力や腕力は、常人よりも劣るのではなかったのか!?

「――プラントウィード!!」
「な!?」

混乱するかがみの足元からツタが発生、身体を絡め取る

「うそ!? 植物!?」
「あんな魔術、魔導書でも見たことないよ!」

未知なる魔術に困惑する二人。植物を生やす術など、今までに見たことがなかった

「な……なに、これ……? 力が……抜け……」
「そのツタは対象者の魔力を吸い取り、そのまま私の糧となりマス!」

かがみの手から、剣が落ちる。それを持つ力が、吸い取られているのだ

「はわわわ!! あのツタをどかさなくっちゃ!! ――ファイヤボール!!」
「「!?」」

つかさの行為に、今度はこなたとパティが驚いた
呪文の詠唱もなしに魔術を行使するほど、高い魔力を秘めていたとは!

つかさの声に合わせるかのように、赤い魔方陣が出現。燃え盛る火球が三つ、かがみに絡まるツタへ向かう

「させまセン! ――ジャガーノート!!」

だが、かがみの魔力を吸い取ったパティも自らの魔力は増えている
やはり詠唱なしで火球を三つ飛ばし、つかさのファイヤボールにぶつけ、相殺した

「もう! 邪魔しないでよぉ!!」
「そう言われテも困りマス! こっちだって、殺ス気でやってるんデスから!」

パティが余裕の表情を浮かべ、つかさを見る
その間にもかがみに絡まるツタは彼女の魔力を吸い取っている。このままでは、かがみの命が危ない!

「――光牙流『心』の奥義――」
「!?」

パティの耳に届いた声。それのする方向を向くと、右手を自分の後方に引いたこなたの姿があった
その右手からは、強力な光が発せられていて――それを見た瞬間、パティは危険を察知した
察知したが……動けなかった。その光の圧倒的な威圧感が、パティを動けなくしていた

「『雲散霧消』!!」

叫ぶと同時に右手を前へ一気に突き出す
こなたの右手に集まった光が巨大な波動となって飛翔、パティの身体を吹き飛ばした!

「Noooo!!」

その身体は、辛うじて原型を止めていた建物の残骸にぶつかり、瓦礫の中に埋まった
それと同時に、かがみに絡み付いていたツタも消え、かがみは地面に倒れこんだ

「よかった、ツタが……」
「つかさ、援護をお願い。先にパティを倒すよ」
「わかった!」

 

その頃、瓦礫の中でパティは動けないでいた

(Shit! まさかコナタも晶石を付けていタなんて!)

口から流れ出る血を拭い脱出を試みるが、体勢が悪くまるで力が入らない
その瞬間――

「ライトニング!」

パティの埋まった瓦礫に小規模の落雷が発生
それは瓦礫を崩し、パティを自由にしただけだった。立ち上がり、剣を握りなおす
が、その雷の狙いはパティに攻撃するためではなかった

「What!?」

いつの間にかパティの目の前まで走ってきていたこなた
その手にはつかさの放ったライトニングの――雷の魔力が溜まり、しばしば放電していた

「これで終わりだよ! ――ライジンブレイク!!」

雷を纏った拳でパティに渾身のアッパーカットを極(き)める!

「――ッ!!」

声にならない悲鳴をあげ、空中へ投げ出されたパティの身体は重力によって地面に叩きつけられた

「終わった、かな。……! そうだ、かがみ!」

その一部始終を見ていたこなたは思い出したかのように、かがみの方へ走りだす
つかさがかがみの腕を肩に回し、なんとかこなたの方へ歩いてくる
いつかのかがみとつかさの立場が逆転していた
こなたはかがみの胸に右手をかざす。白晶石の力で、かがみの魔力の残量を調べているのだ

「これは……だいぶ魔力が減ってるね。――チャージ!」

叫んだ瞬間、かがみに向けた掌から光の球体が出現。それが粒子となってかがみの身体に吸い込まれていく

「……あ、あれ? なんだか、身体が軽く……」
「私の魔力を少し分けたんだ。時間が経てばすぐに元通りになるよ。かがみは魔術師じゃないから、魔力の消費はほとんどないしね」

つかさから腕を離して自力で大地に立つ
先ほど倒れた時にこびりついた砂を払い、二人に向き直った

「ありがと、二人とも」
「ふふ、お姉ちゃんが無事でよかった」
「そだね」

その時、誰かの足音が聞こえてきた
あわてて三人が振り返ると、そこにはボロボロになったパティの姿があった

「あんた、まだ……!」
「NO……こんな状態で戦っテも、たかが知れてマース……」

パティの言っていることは正しかった。それは悪あがきであり、無謀なのだ

「私がもう少し早ク来ていれば……アナタの、Sisterは……これは、止められなかった私の責任デスね……」

三人の後ろにいる柊まつりの死体を見、顔を歪める
こなたは、パティが冷酷な人間でないことを知った。ただ命令に従うだけの兵士とは違う、後悔の瞳をしていたから

「軍の隊長とハ言っても……私は一兵士……コレ以上の命令違反は、できまセン……だから、私の変わリに……オーフェンの人間を、助けてあげて下サイ……」
『!!』

パティのお願いに、三人は耳を疑った。今、パティがしようとしてることは、軍を裏切るも同じことだ

「村人タチは……南の『サーバ地方』……北西の『イリジアン地方』にそれぞれある砦……そして、北東にある『ヴァルア城』で……働かセられているはずデス……」
「なんで……そこまで教えてくれるの? お姉ちゃんを狙ってたはずじゃ、なかったの?」
「Yes……確かニ、私達の狙いは柊カガミでしタ……デモ、村人タチは無関係なんデス……このまま捕まってルのは……筋違いでショウ……?」

三人は無言のまま、パティを見つめた。彼女の言っていることは出任せなどではないということを悟ったからだ

「今日ノところは、帰らせテもらいマス……デスが……次に会った時は、こうは行きませんヨ……See you……」

そう言うと、パティはフラフラしながらも村を出ようとした

「ちょ……待ちなさ……」

かがみが引き止めようとするが、その肩を掴みこなたが制止させた

「かがみ、ダメ。パティは確かに襲ってきたけど、最終的には私達に重要な情報をくれたんだ。恩を仇で返すような真似は、絶対にダメだよ」
「くっ……」
歯を食い縛りながらも、かがみは黙ってパティの背中を見送った







「まず、情報を整理してみよう」

村の外から帰ってきたそうじろうが、大方の事情を聞いた後、三人に言った
オーフェンから避難した人は見つからなかったそうだ

「まず、オーフェンはヴァルア城直属の軍隊、ラミア軍に襲われた」

かがみが最初に言った

「オーフェンが襲われた理由は、王国の再建のためだったって、まつりお姉ちゃんが言ってた」
「でもそれは偽りの目的」

つかさが続け、更にこなたが付け加える

「本当の目的は……多分、かがみを殺害、もしくは拘束するため」
「私のせいで、村が……姉さんが……」

肩を落とし、落胆するかがみ
その様子を見たこなたが、かがみの肩を叩く

「悪いのは、かがみじゃない。本当に悪いのは、小神あきらだよ」
「こなた……」

かがみは頷き、すっかり廃墟と化したオーフェンを見回す

「……村のみんなを、助けなきゃね」
「そだね。パティちゃんは、砦とお城に連れてかれたって言ってたよね」
「ここから一番近いところは南――サーバ地方の砦だね」

そう言ってこなたは、とある方向に顔を向ける

「こなた、太陽の位置からしてそっちは北西のイリジアン地方だ。サーバは南だぞ?」
「う!」

かがみとつかさは小さく笑った後、本当の南を見る

「ここにいても、何も始まらないわね。早速、行きましょ」
「うん」
「あ、それ……」

歩きだそうとするかがみ達をこなたが呼び止める

「私も行っていいかな?」

 




――ヴァルア城 国王の間――


「柊かがみ、見つからなかったんだ……これが世界中に知られたら、私の信頼がガタ落ちだよ……」
「申し訳ありません、あきら様!」
「気にしなくていいですよー。ご苦労様ー♪」
「は、はい!」

玉座に座っていた少女――小神あきらは立ち上がり、報告をしていた兵士の肩に手を置く
その顔は、まるで小さな子供のような、無邪気さ溢れる笑顔だった

「この一件は、部下であるあなたの仕業として処刑させてもらうね」
「は……え?」
「――爆裂のヴォルカニックレイ♪」
「う、うわあああああ!!」

あきらの言葉に呼応するかのように局地的な爆発が兵士の足元で発生、次の瞬間には、兵士は影も形も残っていなかった

「ったく、弱いくせによくヴァルア四天王なんかになれたわよね。死んで初めて私の役に立ってくれたわ」

先ほどの笑顔はどこへ行ったのか、今は鬼のような形相で兵士のいたところを睨み付けた

「――フレイムドライブ!」

刹那、あきらは振り返り、天井に向けて火炎弾を飛ばした
その火炎弾が天井に当たる直前に、燕尾を思わせる形のマントを羽織った男が天井から飛び降りた

「さすがヴァルア四天王最強とうたわれるだけあるわね、立木。この私にギリギリまで気配を感じさせないんて」
「ありがとうございます、あきら様」

立木と呼ばれた男はあきらの前に膝をつき、頭をさげた

「全て拝見させていただきました。あきら様の命令であるとは我々四天王、及び隊長以外の耳には届いておりません故、ご安心を」
「相変わらず気が利くじゃない。新しい四天王は……その隊長、パトリシア=マーティンがいいわね」

あきらは自分が先ほどまで座っていた玉座へと戻っていく

「……その話なのですが、パトリシア=マーティンが泉こなたという人物にやられました」
「!!」

歩みを止め、そのまま立木に振り返る

「……それは確かなの?」
「はい。今、医務室にて治療を受けています。柊かがみも共にいたと、パトリシアは言っていました」
「……」

親指の爪を噛み、ぶつぶつと何かを呟きながら、あきらは考える

「……仕方ないわね、泉こなたも軍のブラックリストに載せといて」
「は!」
「それで四天王だけど……アイツにしてちょうだい」

その言葉を聞いた立木が驚きで目を見開く

「アイツを……? 正気ですか!?」
「今の軍の中で四天王になり得るのはアイツだけよ。わかったらさっさと伝えてきて」
「……承知しました」

それだけ言うと、立木は設置されているワープ装置を使って国王の間を後にした

「……私のせいで、『柊かがみの旅が早まった』のね。しかも、泉こなたまで加わるなんて……なんとしてでも先に、らき☆すたーを手に入れなきゃ……」

 


――あいつの願いを、叶えるために――

 



 


「ダメだ、こなた! 旅なんて危険すぎる!」
「ちょ、離してってばお父さん!」

こなたの肩を掴んでブンブン揺らすそうじろう
こなたがそう言った瞬間、そうじろうの手は離れた

「あんたの父さん、よほどあんたが好きなのね」
「私が死んだお母さんに似てるからじゃないかな。過保護すぎて逆に疲れちゃうよ」

耳元でささやくかがみに、こなたは少し呆れ気味に肩をすくめた

「興味本位で行きたいわけじゃないんだよ、お父さん。私はパティを倒したんだから、軍のブラックリストに載ってもおかしくない」
「……そっか、そうなってたら、今度はアウレが襲われちゃうんだね」
「それに二人の旅は、らき☆すたーを探す旅でもあるんだよ。私はいろいろな魔導書を読んでるから、二人の力になれる」

そうじろうは目を瞑り、考える
こなたが行く旅はおそらく危険なものだが、こなたの言うことももっともだ
それに……

「……娘の望みだしな。行ってこい」
「ありがとう、お父さん」
「俺はずっと待ってる。だから絶対に、生きて帰ってこいよ」
「もちろん!」

こなたはそうじろうの瞳をまっすぐに見つめ、振り返る

「さあ、行こう! 目指すはサーバ地方だよ!」
「うん!」
「ええ!」

こなたを先頭に、三人は歩きだした
村のみんなを救うために、らき☆すたーを手に入れるために――!

 




 


「こなちゃん、そっちは東だよ!」
「はぅあ!!」
「大丈夫かしら、こんなんで……」

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