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それから5ヶ月後、少女――泉こなたはアウレ町を歩いていた
アウレ町は彼女と彼女の父が住む町。道が石畳で舗装されており、近くの集落の中では一番大きな場所だ
彼女は今、町の図書館を目指して歩いている
彼女の目当ては図書館が貯蔵している魔導書にある
彼女は基本的に勉強が大の苦手だが、魔導書に書かれている文字『魔導言語』を学ぶのは好きな様子
毎日と言っていいほど図書館を訪れていた
「ふふふ、館長さん、今日は封書を読ませてくれるって話だし、楽しみだな~」
彼女は鼻歌を歌いながら道を歩いていく。何が書かれているか気になって仕方がない
封書を早く読みたいがために、足速に通りを歩く
町の武器屋を通り過ぎたあと、近道のために裏路地へと入る
「きゃ!!」
「うわ!!」
裏路地に入ろうとした直前、その裏路地から女の子が出てきた
避けることは出来ず、こなたは女の子とぶつかってしまった
こなたはよろめきながらもなんとか倒れることは阻止できた
これは彼女が古武術という昔から伝わる武術を習っていた賜物である
しかし、ぶつかった女の子はそういうわけにもいかず、石畳に尻餅をついてしまった
「いたた……」
「ごめんね。大丈夫?」
女の子は薄紫色の髪を左右でツインテールにしていて、腰には鞘を差している
こなたは女の子に手を差し出すが、その手は払いのけられ、女の子は立ち上がりながらこちらを睨み付けてきた
「あんた、何処見て歩いてんのよ!!」
「ごめんごめん、急いでてさ~」
「……あんた、謝る気ある?」
「あるよ~」
言葉だけで悪びれる素振りも見せないこなたに女の子は大きな溜め息をついた
「……まあいいわ。ところで、『そうじろう』って人はどこに住んでるかわかる?」
「ああ、それなら……」
こなたは裏路地から出て、家々の間にある大きな家を指差した
「あの青い屋根の家に住んでるよ。結構大きいから、すぐにわかると思う」
「わかった、ありがとね」
女の子は裏路地を出て、こなたが指差した方へ歩いていった
「……ん?」
ふと地面を見てみると、そこには光るものがあった
それを拾い上げてみると、どうやらそれはロケットペンダントのようだ
「しまった、ぶつかった時に落としちゃったのか……」
女の子が駆けていった方を見るが、もうその姿は見えなくなっていた
「……ま、いっか。家に来てるんだし、帰ってきたら渡してあげよ」
そう言って、こなたはロケットペンダントの中身を見る
中央に先ほどの女の子がいて、両脇に二人の少女がたたずんでいる
その中の三人は、笑顔でこちらを向いていた