ID:1 > cRkHf60氏:asLS ep.02~雪兎~

第一夜

「こんな攻撃じゃ私たちはやられないよ?」
「こなちゃん、もう一体着たよ!」
 街外れの廃工場。乾燥した風の吹き抜ける中、闇夜の舞を華麗に踊る二人の天使。
 蒼翼の天使、泉こなたは夜空を駆け巡る。彼女の長い髪の毛はまるで意思を持つ翼のように翻る。
 紫の巫女、柊つかさは隠し持っていたその才能を思う存分披露するが如く、強力な結界を幾重にも敷き詰めていた。
「・・・明王火炎呪:焔鎧!」
 全身を火炎が包み込み焔の塊となったこなたは眼前に迫る異形のものに向かって突進していく!
「ほりゃぁ!爆炎(ダ○ド)!」
 手のひらから発せられた光弾が異形の化物の腹部に当ると、それは内部から弾けるように爆破を起こし絶命した。
「ふふふ、ダ○ク・シ○ナイダー様から頂いたのだよ」
 にやりと笑い、化物の残骸を見下ろす。
 しかし、直後に強烈な衝撃がこなたを襲う!
「いてっ!」
 地面に叩きつけられる少女!しなるムチのように当てられた化物の触手が更に追撃してくる!
 こなたは咄嗟に身体をよじり地面を転がった。土をえぐり畑を耕すかのように突き刺さる!

「う、油断した!つかさ!」
「うん!」
 つかさは手に持っていた包みをこなたに投げる。身体を起こす反動で飛び起きるとそのまま跳躍し包みを受け取った。
 中から出てきたのは明王がその手に持つと言われる真鍮製の独鈷杵が二つ。
 以前の彼女が持っていたものとは違い、剣の部分が短く、握ると両側が少し飛び出る程度のもの。
 こなたはそれを両手に握り締め化物に向かい突き出す。
「いくよ~?」
 とても化物と対峙している人間の表情とは思えない、悪戯っぽい微笑を浮かべこなたが術を唱える。
 蛸の形容をした化物の触手が四方八方からこなたに向かい襲ってきた!!!
「こなちゃん!あぶない!」
 もうだめ!つかさは思わず両手で顔を覆い力いっぱい目を閉じた。
「七鍵守護○!ハーロー○ーン!」
 独鈷杵により増幅されたこなたの術がその双方の先端からほとばしり、碧く煌く炎の龍となり化物の触手ごと焼き尽くしていく!
「○×G□☆※ーーーーー!?」
 人間では聞き取ることが出来ない不可思議な断末魔の雄たけびを上げ、蛸の化物は焼失していった。

「こなちゃんすごいねー!えっと、バーロー・・・なんだっけ?」
「そ、それはわざとなのかな?つかさ・・・」
「およよ?あはは」
 ぺろっと舌を出して頭をかく紫色の巫女。
 多少セーラー服は汚れているものの、息一つ乱していない蒼翼の天使はにやりと笑う。
「あれもダーシュからもらったのだ!ていうか、術と名前は全然関係ないんだけどね!」
 わっはっはーと腰に手をあて、大きな声で笑う。
 その声が暗闇に包まれた廃工場に響き渡り、やがて吸い込まれていくと、辺りは再び静けさを取り戻した。



「やっぱね、技名は重要だと思うわけなのだよ!」
「うんうん、こなちゃん、すっごくかっこよかったよ~!」
「そんなに重要な問題なのか!?しかもパクリだろ?」
 深夜の非日常を体験していたことが夢かのような平穏なる日常。
 こなたは親友3人に熱く”技”の説明を施す。
「泉さんは体術、呪術ともにとてもアクティブなようですわね」
「いやいやぁ~、みゆきさんがいろいろ下調べしてくれるから私たちも大助かり!」
「うんうん!私もね、呪文がたくさんあるから、いつ何を使うのか?で混乱しちゃうもん!」
「あはは、つかさらしいね・・・」
 その笑顔とは裏腹に紫のかがみは少しうつむいて、表情を隠していた。

 あの日、私は最も愛すべき親友に新しい命を貰った。
 新しい命。その親友が自らの命と引換えにしてでも守ろうとしてくれた私の命。
 大切にしなくちゃ・・・。
 そう思うと悲しくなる。今、すぐ横で3人が楽しげに繰り広げている談笑が私には冷たく突き刺さる。
 彼女達に悪気がないのは分かっている。これはただのわがままだ。

 かなたさんの手により封印された私の力は、お父さんいわく「非常に不安定」なのだという。
 術者がこの世界に存在しない為、強力な封印ではあるものの、その信頼性は低いらしい。
 何らかのきっかけ、妖魔たちの放つ瘴気や術などにより封印が解ければ、私はまた、あの汚らわしい雪女に変貌してしまうだろう。
 そうなれば、今度こそ、この愛おしい親友達を自らの手で殺めてしまうかもしれない・・・。

 私はそれを考えるたびに、隣で微笑む親友達の輪に入ることをためらい続けていた。

―――独りだった自分を助けてくれた仲間のために、私はまた独りになるんだ・・・。

「ほな、今日はこれで終わりや!先週から校内の器物がいくつか破損する事件が起きてるようやから、みんな、気ぃつけて帰りや~!」
「センセー!ぼくじゃありませんー!」
「わかった、白石、お前職員室まで来い?えぇな!?情報は掴んどるんや!」
「な!?やぶへびっ!?」

 いつものように放課後を告げる予鈴がなり、クラス中にざわめきが巻き起こる。
 皆、それぞれに帰り支度をはじめ、一人、また一人と消えていく。
「先程の件ですけど・・・」
 みゆきがいつになく真剣な表情でこなたに話を切り出す。
 教室内には彼女達を含め数名しか残っていない。
「へ?先程って?」
「黒井先生のお話にあった、器物破損事件です」
「あぁ、職員室の窓ガラスが割れてたり、銅像が粉々になってたって噂のやつだね?」
「はい。私、いろいろとデータを検証して、独自に調査をしてみたのですが・・・」
「もしかして・・・」
「はい。もしかしました。妖魔です」

 その言葉にこなたとつかさは敏感に反応して、背筋を正した。
「”柊さん”に言わせれば、怨念の塊と申しましょうか・・・。おそらくこの学園に残るいくつかの思念の集合体のようです」
「・・・いやだね。こんな近くにも出るようになっちゃったんだ・・・」
 3人の表情が変わる。言葉を繋げられなかった。
 そこへ、とびきり明るい声でかがみが現れた。
「おーっす!帰ろうー!って、あれ?みんなどうしたの?」
 さすがに親友達の表情を見て察したのか、かがみは声のトーンを落とし、ゆっくりと近づいた。
「かがみんや~、ごめんー・・・。”バイト”が入っちゃった・・・」
「”バイト”って・・・」
「お姉ちゃんゴメンね。私もお手伝いに行くから・・・」
 その言葉で全てを理解したかがみは、一瞬うつむき考えを巡らせたがすぐに顔を上げ、そして満面の笑みを浮かべた。
「そか!二人ともがんばってね!みゆきも二人を助けてくれてありがとう!私は何も出来ないけど、応援だけはしてるからさ!
 あ、そうそう!一応怪我しないようにお祈りもしてるんだよ?別にこなたの心配なんかしてないけどさ、つかさはドジだからねぇ~!
 危なっかしくて!あはは、んじゃ、邪魔しても悪いから、先行くわ!またね~」
「かがみ・・・」
「お姉ちゃん・・・」

 二人には何も言えなかった。
 無理に明るく振舞っていたかがみをのけ者にしてるような気がする。
 しかし、彼女を巻き込めば、自分達の手で彼女を抑せねばなるまい。
 そうなれば最悪の場合は・・・。
 こなたは頭を2,3度振る。たった今脳裏をかすめた自分の思考を払い落とすかのように…。



「はぁ・・・」
 うなだれ、肩を丸める。かっこ悪い。こんなとき彼氏がいたら元気にしてくれるのかな?
 いや、そんなものが欲しいわけではない。
 私は正しいことをしている!愛すべき妹、愛すべき親友達のために、私は彼女達の足を引っ張らない。
 これが今の私に出来る最大限の恩返しだ。
 かがみはこみ上げてくる感情に気づかないふりをしながら、そう堅く心に刻み込んだ。
「お~い!ひぃらぎー!珍しいなぁ、一人かよ?」
「日下部・・・」
 背後から脳天気で舌ったらずな声が聞こえた。
 振り返ればそこには日下部みさお。その横にはいつもと同じように峰岸あやのの姿もある。
「あれ?柊ちゃん泣いてる?」
「ば、ばか!泣いてなんかいないって!ちょっと目に砂埃がさ」
「あはは!いつも目を見開いて怒ってっから、そうなるんだよ!」
「なに!?わ、私がいつそんなに怒ってるんだ!」
「ほら、怒ってるじゃんよー!」
「そ、それはあんたが」
「まあまあ、柊ちゃん、落ち着いて。よかったら一緒に帰ろ?」
 その一言が今のかがみには何よりも優しくあたたかい響きに聞こえた。
「う、うん・・・」
 相変わらず、みさおが後ろでわめいているが、今はそれさえも心地よい。
 今は少しだけ嫌なことを忘れていよう・・・。



第二夜



「で、なんでゆきちゃんいるの?」
「つかさ、黒っ!」
 最近はカバンの中に詰めて持ち歩いてる巫女服を整えながらつかさが問う。
「百聞は一見にしかず!目の前で見てみたいのです!」
 家から持ってきたデジカメとレポート用のノート、みんなの足を引っ張らないようにと考えたのか、ジャージ姿のみゆきが力強く答えた。
「なるほどねぇ~。みゆきさん好奇心旺盛だねぇ~」
 陵桜セーラー服を脱ぎ捨て、”北高”セーラー服に着替えるこなた。
「泉さん。前から気になってたのですが、それは?」
「あぁ、これ?似合わないかな?とくちゅー品なのだよ!」
「はぁ・・・。なんか、霊力が上がるとか、袖にプロテクターとか・・・」
「あはは、ないない!そんなのないよ~!ただのコスプレ!今度、みゆきさんの分も作るから『禁則事項です!』って練習しておいてね?」
「はぁ、わ、わかりました」
「あは。でも、ゆきちゃん気をつけてね?ほんとに危ないからね?」
「はい、つかささん!」

 紫の巫女は目を閉じ、ゆっくりと言霊を紡ぎだす。それをじっと見つめるみゆき。
 両の手の指を身体の正面で絡ませながら、少しずつイメージをしていく。
 自分が呼び出したいものを両手で再現しながら、そのものに宿る八百万の神に呼びかけ、具現化する。
 ほぼ毎回呼び出す土で作られたヴェール。対物理衝撃用の結界、いわば防御壁。
 つかさの掌から、あふれ出した水のように、黄金色の霧が湧き出してくる。
 その黄金色の霧を、雲でも掴むように優しく抱きかかえ、みゆきの頭からかぶせていく。
 その全てをみゆきに纏わせると、つかさは小さく頷き、微笑んだ。

「すごいですわね!実際目の前で見てみると・・・」
 みゆきが感嘆の声をあげ、自らにまとわりつく黄金色に輝くヴェールを興味深げに眺める。
 するとそこへ、つかさがゆっくりと近づいてきた。
 つかさはみゆきの真横に立つと両手でみゆきの腕を掴み、目を閉じる。相手の身体を少しだけ引き寄せ・・・
「わ!わ!な、なにをするんで・・・・」
「わお!つかさ大胆!!!」
 小さな唇を少しだけ尖らせ、みゆきの頬に口づけする。
「・・・。ふふふ、ちょっと、恥ずかしいんだけどね!こうすると、土の神様が喜んでくれるの!」
「な、なるほど・・・」
「ふむふむ、じゃあ、土の神様は男神なわけだねぇ~、ふぉふぉふぉ。つかさ!グッジョッ!」
 こなたの親指が力強く突き出される。
 実際には、みゆきの頬に触れる直前でつかさの唇は止まったのだが、傍から見ればそれは口づけ以外の何ものでもなかった。
「さ、さあ、い、行きまひょうか!?」
 動揺して声を裏返すみゆき。不覚にも、つかさにときめいたなんて事は今後、何があっても話すまいと心に決めた。



 かがみの表情は先程とは比べるべくもなく明るく元気な笑顔を浮かべていた。
 それは同一人物に見えないほどに。
「あはは!なんか、いいよね!こういうの!」
「もう、柊ちゃんどうしたの?子供みたい!うふふ」
「私はこういうひぃらぎも好きだっけどなあ~」
 そもそも私たち3人は仲がよかった。5年も同じクラスで授業を受けていれば嫌でもそうなる。
 かがみは自分自身の過去を懐かしむかのような表情で、目の前の友人達と談笑を楽しんだ。
 3人は当然のことではあるのだが、世間一般的な女子高生がするように、洋服を眺め、雑貨を手に取り、雑誌を流し読みして、無邪気に笑う。
 彼女達の家からそれほど遠くもない商店街。小学校、中学校のころであればこの辺りに来ることさえ一大イベント!立派な”お出かけ”だった。

「ふー、ちょっとのど乾いたな?何か飲もう!?」
「う~私ミートボール~」
「それ、飲み物じゃないよ、みさちゃん!」
「おなかすいたってば!」
「あはは!じゃあ、いつも行ってたファミレスにしよ?」
 3人は近くのファミレスに入り、なれた所作で”いつも”の席へと着く。
 ドリンクバーを注文し、各々好きな飲み物をとり、席へと戻る。
 取り留めのない世間話が続く。それは普通の女の子にしてみれば本当に普通の、何の変哲もない時間。
 だが、今のかがみにはそれがすごく新鮮に感じられていた。

 私の正体を知らないこの子達と、見る事の出来ない、内にある真実と戦う必要のない新しい私。
 自分は普通の高校生なのだ。そう、普通の女の子なんだ!
 ・・・違う。
 ふいに脳裏をかけめぐる”あの3人”の笑顔・・・。
 私を救ってくれた3人の笑顔・・・。

「柊ちゃん!」
「わっ!な、なに!?」
「ちぇー、せっかく久しぶりに遊んでるのにそんな顔するなよ~」
「・・・けんか・・・したの?」
 声には出さず、首を振るかがみ。
「やっぱ、あの3人にはかなわねぇーなー!」
「そん・・・」
「柊ちゃんに初めて会ったときのこと、覚えてる?」
 あやのがかがみの発しようとした言葉をさえぎるように言葉を挟む。
「初めて会ったとき、柊ちゃんすごく怖くてね」
 笑い声を消すように片手を口に当てるあやの。
「そーそー!『誰も近寄るな!』ってオーラ出てたよなー!」
「うんうん。で、しばらく、会話すらしなかったんだけど・・・」
 かがみは真剣なまなざしであやのを見つめながら、同時に過去の思い出を振り返っていた。



 夕闇迫る繁華街で二人の少女を取り囲むやんちゃっぽい男たち。
 一人はあやの、もう一人は親友を必死で守ろうとするみさお。
 この頃から周りより少し大人びていたあやのに男共がちょっかいを出そうと近づいてきた。
 必死の抵抗むなしく、路地に追い込まれ、今や絶体絶命のピンチ。
 そこへ・・・。
「おまわりさーん!ここです!!変な人たちが・・・」
 ぎくりとして、その場から逃げ出す男達。ほっと安堵のため息を漏らし、その場にうずくまるみさおとあやの。
 うっすらと涙を浮かべる二人の目に映ったのは、逃げていった男たちと入れ替わりに現れた、柊かがみ。
「あ、あなたが、助けてくれたの?」
「まあ、そういうことになるわね」
「ひ、ひいらぎ・・・、だっけ?」
「そう、柊かがみ。名前くらいは覚えててくれたんだ」
「ありがとう。柊さん・・・」
「べ、別にたいしたことじゃないわよ。だいたい、あーゆー弱いものいじめする奴ら、大っ嫌いなの!だから、助けたとかじゃなくて、たまたまそうなっただけだから」
 じゃあね、と手を振りかがみはその場を後にして繁華街の中に消えていった。



「あの時の柊ちゃんの顔ったらなかったわ!」
「そだそだ!ありがとうって言った途端に、顔真っ赤にしちゃってさ!」
 目の前で笑いあう二人は紛れもなく自分の親友だ。
 あの日以来、私は少しずつ変わってこれた。きっかけをくれたのはこの二人。
「でも、よく覚えてたよね?私服だったのに。あの時ってクラス変わってそんなに間がなかったと思ったけど・・・」

「―――うらやましかったんだ…」

「え?」
「二人が、うらやましかった・・・。クラスの中で私はいつも一人で校庭を眺めてた。
 でも、あんた達二人はいつも一緒で、いつも楽しそうで・・・。私もそんな友達が欲しいって思ったんだ・・・」
 紫色のツインテールをふるふると震わせ、らしくない弱々しい声でかがみはつぶやいた。
 実の父に告白された自分の真実に触れていたかがみは全てに対して消極的になっていた。

―――かがみ、お前の中には・・・

 そう、私は馴れ合ってはいけない。私は友達を作ってはいけない。私は独りでなければいけない。
 私は・・・。


「じゃあ、早く行ってきなさいよ!」
「おー!早く行けってば!」
「え!?・・・」
 二人の声に目を見開いて顔を上げる。
 そこには満面の笑みでかがみを見つめるあやのとみさおがいる。
「悔しくなんかないってば!私らひぃらぎの友達だかんな!」
「うん!私もみさちゃんも柊ちゃんの友達だから、泉ちゃんも妹ちゃんも高良ちゃんもみんな友達だから!」
 かがみは、一気に溢れ出しそうになる涙を必死でこらえ、勢いよく立ち上がった。
「あ、ありがと!二人ともだ、だ、大・・・大好き!」
 顔面を真っ赤にしながら、振り絞った言葉。今の自分の、本当の気持ち。ありがとう、峰岸、日下部。
「きもっ!」
「あはは、らしくないよ、柊ちゃん」
 堪えきれなかったのはかがみの涙ではなく、あやのとみさおの笑い声だった。
「え、えーっ!?な、なんで!?い、今のシーンは感動して大泣きって場面だろ!?」
「いいんだよ、ひいらぎはツンデレで」
「そうそう、長い付き合いでしょ?あんまり素直な柊ちゃんだと、こっちが恥ずかしくなっちゃうよ」
「お、おまえら・・・」
 赤面したまま、目を閉じ、額に手を当てながら首を横に振る。
 かがみの顔に生気が舞い戻る。
 何をくだらないことで私は悩んでいたんだろう?簡単なことだ。あのときそうしたように、峰岸と日下部にしたようにすればいいんだ!


第三夜


 学園の敷地内を一周して3人が目指す先、それは今、目の前にある体育館、ただ一つとなった。
「あとは、ここだけですね……」
 部活動が行われていないためか静かに、どっしりと佇む、大きな建造物。
 目的が目的だけに、いつも見慣れているはずの風景さえ不気味に感じる。
「じゃ、いこっか」
 こなたは意気揚々と先頭を歩く。
 その後ろには最初の意気込みとは裏腹に、ブルブルと震えるみゆき。
 さらに、小首を傾げて呟きながらつかさが続く。
「……んー、気のせい?かな?」
 鍵が掛けられていないことが不自然であった。
 だが、妖魔が自分達をおびき寄せていると考えれば、それは逆に自然なこととも思える。
「こなちゃん……なんか、変……」
「ほへ?」
 おおよそ慣れているはずのつかさがみゆきと同じくらいに身体を震わせている。
 彼女の困惑が気になり、こなたは足を止め、後ろを振り返る。
 体育館の中はひんやりとしていた。普段ついているはずの照明が無いだけで、
これほど不気味な雰囲気を漂わすものだろうか?
「つか……さ?」
「……変だよ。絶対変だよ!!」
 つかさの声に反応したかのように、開け放たれたままの扉が、大きな音を立てて閉まった!
「何!?」
 暗闇が辺りを支配し、少女達の視界が一旦途切れる。
 そして、次の瞬間……。

「泉さん!後ろですっ!」
 慌ててみゆきの指差す方向に身体を向けるこなた。
 その視界に飛び込んできたのはいくつもの鋭い眼光と、爪。
「うぐぅ!」
「こなちゃん!」
 こなたは体勢が不完全だった為に大きなかぎ爪の攻撃をまともに喰らった!
 つかさとみゆきの間をこなたの身体が舞う。
 まるでバスケットボールのように床にバウンドするこなたの身体。
「い、いきなりだねぇ~……。まだ、あいさつもしてないのに……」
 軽口を吐き出すも、全身が軋んでいる。床に打ち付けられた際の衝撃だろう。
 つかさがみゆきの手を引き、自分の背後に回らせる。
 同時に言霊を紡ぎだし、こなたの身体を癒しの風で取り巻いた。
「思念の集合とか、ポルターガイストとか、そんなんじゃないよ?もっと、もっとすごいのだよ!」
 徐々に闇に慣れてきた視界が捉えたのは、犬――いや、”狐”の群れ……。
「だね……。油断してたよ……」
 最初の落下により強かに打ちつけた右肩を押さえながら、ようやくこなたが立ち上がる。
 みゆきはうずくまり、頭を抱えて震え続けていた。
 自らが望んでいた状況を目前にして、自分の発言と希望がどれほどの愚行であったかに気づく。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめなさ……」
「ううん、いいの。謝らないで。私たちも甘かったよ。ごめんね、ゆきちゃん」
 必死に謝罪を繰り返すみゆき。つかさは彼女の方を揺らし、それを制す。
 彼女は悪くない。彼女を連れて来た自分達が、自分達の判断が甘かったのだ。
 つかさとこなた、二人で妖魔を相手取るようになってからは苦戦を強いられたことは一度たりとも無い。

 そこに慢心があった。

 つい先日もその慢心ゆえに危機に陥った。
「でも、やるしかないよね」
 その声につかさは無言でうなずき、消えかけていたこなたの防御結界を補修する。
 こなたは戦闘の構えをとり、異形の”狐”の群れを睨む。
 虎や熊ほどもあろうかという巨躯。全身は灰色の毛で覆われ、眼光は生物のそれとは思えないほどに気味悪く釣り上がっていた。
 耳元まで裂けた口からは、醜悪な臭いを発する涎を床に撒き散らし、じりじりと3人に近づく、”狐”。
「――――明王火炎呪!!!」
 こなたの詠唱完了と共に”狐”たちの足場に炎が巻き上がった!
 反応しきれない妖魔のいくつかが、その炎に焼かれ悶絶する。
「つかさっ!」
「うん!召還します。天岩戸!私たちを守って!」
 ”狐”たちの頭上に突如現れた巨石は無数に砕け散り、それの一つ一つが堅く鋭利な雨となって降り注いだ。
 さらに数匹が、降り注いできた礫に押しつぶされる。
 断末魔が気味悪く耳に残る。
 難を逃れた”狐”を更に追い込む。
 こなたは得意の体術で”狐”の群れの中に飛び込むと、両の拳を巧みに振り回し、妖魔の急所を突いていく。
 そのこなたを後方で援護する紫の巫女。こなたの視界の外にいる”狐”を呪縛の言霊で足止めしていた。
 すると、いつの間にか、つかさの詠唱を背後で見守っていたみゆきが呟いた。
「狐狗狸さんです――」
「え?こっくりさん?」
 つかさがみゆきの言葉に反応する。
「はい。皆さんが御存知の、あの狐狗狸さんです」
 みゆきは本来の冷静で落ち着いた声を響かせる。
「恐らく、呼び出されたまま、儀式を中断され、憑くことも還ることも出来ず彷徨っている悪霊……。
人の我儘と傲慢から生まれ、更にそれを肥やしに生き永らえる憑き物の集合体」
 みゆきは愁いのこもる目で”狐”を見つめ、自らが発した言葉を呪った。
 多くの知識を持ち、賢い彼女には、現状と知識とを重ねて出た解答がいくら信じたくなくとも、事実と認めざるを得なかった。
 彼女のおおらかさと優しさは、優秀な頭脳に裏打ちされた、全てのものに対する慈しみから生まれていた。
「つかささん!”あの子”たちを還してあげてくれませんか?」
 みゆきの語気が強くなる。
「うん、がんばってみる!」
 両手を握り締めつかさが力強くうなずく。
 膝を床につけ、手を重ね、目を閉じる。そして、ゆっくりと言霊を紡ぎはじめた。
「おけー。妖魔に思念が流れ込んでるわけね。道理で生半には行かないわけだね」
 こなたがにやりと笑った。
 振り返りざまの蹴撃を”狐”に打ち込む。
 ”狐”は大きく吹き飛び、壁にぶつかると動きを止めた。
 しかし、その一匹に集中する余裕はない。妖魔たちの攻撃はやむことを知らず、次々とこなたに襲い来る。
「そ、それにしても、ちょっと強すぎるよーな気が……」
 すでに、半数以上を今の攻撃で殲滅できているはず。
 それにも関わらず、”狐”たちの勢いは止まらない。
 こなたが、次々と襲い来る”狐”に苛立ちを感じたその時――――
 こなたの視界に入ったのは目を疑う、信じることの出来ない光景。
「嘘、でしょ……」
 焼かれていく”狐”から発せられる煙と、潰されて飛び散った肉片、転がる死骸が重なり、霧となって集まり始めた。
「え?うそ……」
 つかさは振り向く。背後には沈黙を守る鉄筋の壁。他には何も無い。
 再び向きなおしたつかさと、こなたが目にしていたのは、紛れも無く親友の囚われの姿!!!
『ふはははは。いい~女だねぇ~。それに”私達”にまで気を遣ってくれるなんて、優しいね~』
 霧の中から声が吐き出された。
 こなたはつかさの位置まで飛び退り、姿勢を低く構えた。
「ゆき……」
 言いかけて、つかさは口を押さえる。
『少々若いが私が頂くよ?』
 残りの”狐”が霧の中に飛び込んでいく。
 それに従い霧はどんどん大きくなり、天井を埋め尽くすと、そのままみゆきを包み込んだ!
「みゆきさん!」
 こなたが叫ぶ!しかし、その声が届きそうも無いほど霧は厚く、濃く、虜囚となった少女を飲込んでいた。
「ん~~~~~ふふふふ!いいねぇ!実に素晴らしい肉体だ!」
「そんな……」
 こなたは唖然とし、床に膝を落とす。
「このしなやかな腕や足。豊満な胸部。なんともいいじゃないかい!」
 目の前の”人物”がみゆきのジャージの袖を、裾を引き裂きながら悦に入る。
「暑苦しい布キレなんざ私には必要ないね。ほら、キレイだろう?小娘ども?」
「やめて!ゆきちゃんは何もしてないよ!?」
「あぁ、何もしてない。ただ、運が悪かった。実に私好みのいい女”だった”」
 みゆき”だった”目の前の身体は無残にも全身をさらけ出され、中空に浮かび上がっていた。
 その顔は既にみゆきのそれではない。目は釣りあがり、口は裂け、いやらしい笑みを絶えることなく湛えている。
「この乳房が実にいい!人間も進化するのだねぇ~」
 二人の少女の全身に寒気が走る。
 ”狐”に憑かれた”みゆき”は自らの乳房を愛おしそうに揉みしだき、淫猥な声を漏らし始めた。
「やめてよ!みゆきさんを馬鹿にするなー!」
 怒りが頂点に達し、こなたが飛び上がる。
「こなちゃん!ダメーッ!」


第四夜


 つかさの絶叫にビクリとしてかなたが動きを止める。
「ダメだよこなちゃん。あれは、ゆきちゃんなんだよ!?」
「うっ……」
 はっとしてみゆきに目をやるこなた。
 そこには不適な笑みを浮かべたみゆきがいる。
 あられもない姿になり、気味の悪い微笑をしていても、目の前の人物はみゆきなのだ。
「なんで、お前達はいつも、いつも……」
 こなたが歯噛みしながらつぶやく。
「ははは、この方が楽だろう?私は傷一つ負うことなく遊ぶことが出来るじゃないか。んん~?羨ましいだろう?」
 下卑た笑い声に吐き気をもよおす。
 こちらからは何も出来ない……。
 こなたがそう考えていると、みゆきが上空から猛スピードで突っ込んできた!
「!!!」
「少し、遊ぼうじゃないか?」
 みゆきの両手は大きなカギ爪に変化しこなたを狙う!
 瞬時に身を翻し、避けるも……
「おっと、いいのかい?私は”着地”に失敗するかもしれないよ?」
「は!?」
 考えるより早くこなたの身体がみゆきと床との間に滑り込む!
「こなちゃん!」
「ぐはぁっ!!」
 辛うじて爪の直撃は避けたものの、渾身の体当たりを喰らい、こなたの身体がくの字に曲がる。
「いいねぇーいいねぇー!人間は単純でいいねぇー!きゃはははは!」
 みゆきの口から発せられる嘲笑が響き渡る。
「つ、つかさ……」
 こなたの瞳がつかさに向けられる。つかさの術なら何とかなるかもしれない。
 こなたと顔を合わせ、つかさが選んだ言葉、それは……
「出来ないよ……」
 涙のしずくが床に触れて弾ける。
「ゆきちゃんの身体になにかあったら……私……」
 唯でさえ、自分はみゆきを守ることに失敗している。
 自信を持って唱えた結界でさえ、何の機能もせずに貫かれた。
 そんな自信喪失からくる不安と、人に対しては、まだ一度も使ったことの無い術の脅威に、つかさは怯え震えていた。
「つかさ……」
 責めることは出来ない。責められるとすれば私も同罪だ。
 みゆきをここに連れて来た事が間違いだったんだ。
 痛みに耐え、必死に身体を起こそうとするこなたの中で自責の念が湧き上がる。
「ふう~。他愛ないねぇ~。次はどっちが遊んでくれるんだい?」
 にやにやと不敵に笑うみゆきが髪をかきあげる。
「ん?」
 不意にみゆきの視線がこなたとつかさから離れ、別の一点を凝視した。

「お、お待たせ!場所、わかんなかった。ごめん!!」
 体育館の扉が開き、外界の光と共に現れたのは、
「かがみ!」
「おねえちゃん!」
 照れているのか、表情を隠すように少し俯いたままのかがみ。
「ふん、一人増えたところで何が出来る?」
 そう言いつつも興味を持ったのか、ゆっくりとみゆきはかがみに歩み寄り始めた。
「な!みゆき!なにして……って、なんか違うみたいね……」
 元々聡い(さとい)かがみのことだ、置かれている状況と目の前の有様を見て、すぐに何が起きているのかを理解した。
「さ、さすが、ラノベ、お、オタク……」
「う、うるさい!痛いならそこで休んでろ!」
 こなたにツッコミを入れると、かがみは手にしたバットを握りなおす。
 気合の声と共にみゆきに駆け寄り、力強く床を蹴りつけ、飛び掛る。
「てりゃぁ~~!」
「小ざかしい!」
 突然、何かに引っ張られたかのように、かがみの身体が宙を舞う!
「おねえちゃん!」
 即座につかさが駆け寄り、最愛の姉を抱き起こす。
 バットが振り下ろされる間もなく、みゆきの掌から弾け出た衝撃波が、かがみのからだを撃ったのだ。
「いた、い……」
「おねえちゃん、無茶だよぉ!」
「う、うん、わかっちゃいたんだけどね……は、ははは……」
 つかさは左手に意識を集中し、打ち付けられたかがみの腹部にそれを当てる。
 柔らかい光がつかさの左手から溢れ、傷を癒す。

「う~ん、お前、邪魔だねぇ」
「え?」
 混乱するかがみ。目の前のつかさは姉の顔を見て振り向く。
 そこにいたのはみゆき。
 一瞬のうちにつかさの背後に移動した彼女は、大きく右足を振り上げると、それを一気に振り抜く!
「あうぅーーー!」
 つかさの身体から鈍い音が聞こえた。
 一瞬にしてかがみの視界から姿を消し、体育館の端で喘ぐつかさ。
「なにしてんのよーーーーー!」
 かがみは激昂し、素手で殴りかかる。
 みゆきはそれを冷静に手で払いのける。
「お前はなにか芸は無いのか?あの巫女のように呪を唱えるか?あそこのチビのように体術でも見せてくれるのか?」
 かがみは何も言い返せずに顔を背ける。
 それを見たみゆきが呆れたような顔をし、右手を天井へと伸ばした。
 広げられた掌に灰色の渦が集まり、次第に大きく球状へと変化していく。
「ならば死ね」
 淡々と吐き出される言葉。
 サッカーボールほどの大きさになった灰色の球体がかがみを襲う!
 恐怖に目を閉じるかがみ。
 直後、ずしりと重い振動が身体の芯まで響き、身体が跳ね飛ばされるのを感じた。
 跳ね飛ばされる?
 私のすぐ横に立っていたみゆきが放った球体。
 私の身体の真上から降ってくるはずの球体。
 気がつけば、身体に新しい痛みは無い!
「そんな……!?」
 かがみは我に返り、最悪の想像を確かめる為、周りを見渡す。
「ちょ、ちょとだけ、痛、かたねー。わ、私だって、軽くな、ら、結界く、らいは……」
 先程までかがみが倒れていた場所にいたのはこなた。
 こなたは、かがみを救う為に自らの身体を盾として差し出したのだ!
「――――ばか」
 未だ軋む腹部をさすりながら、かがみが立ち上がる。
 それに呼応するかのようにみゆきが向き直り、かがみに近づく。
「う~ん、友情?だねぇ~。興味はないが、実に面白い思考じゃないか」
 嘲り笑う、”みゆき”であった者。
 壁際に倒れる妹。その手前には最愛の親友。
 それを背に向かってくるのは憎むべき”敵”。
「それでどうするね?」
 かがみは自身の中にいまだかつて無い怒りが込上げて来るのを感じた。
「返してよ!」
 怒りに身を震わし、呼吸が荒くなる。
「うん?小さくて聞こえんな?」
 いつのまにかほどけていたリボンが床に落ち、自由になった髪の毛がかがみの表情を隠す。
「みゆきを返してよ!」
 既に距離は無く、眼前にはかがみの憎悪の対象が腕組みしている。
「ふん、ただの人間の癖に……。癪に障るね」
 みゆきの右手がかがみの頬を打つ。
「これくらいの痛み……」
 顔を上げ、その双眸でみゆきを睨みつける。口元から血が流れ落ちた。
「つかさを、こなたを返してよ!私達の時間を返してよーーーーーー!」
「くどいぞ、小娘がぁーーーーーーーー!」
 かがみが絶叫する!
 激高したみゆきが怒声で返す!
 そして、それに合わせるかのように、彼女の全身を強烈な痛みが襲う。
「うぐっ――――」

 みゆきの右腕は、かがみの腹部を、貫いていた――――



第五夜



 一瞬のことだった。
 かがみが、自身の気持ちを言葉にして吐き出す、と同時に涙が溢れた。
 その涙が滴る間もなく、腹部に激しい衝撃が走る。
 驚きと困惑の為か、痛みすら感じられない。
 そっと手をあてる。どろっとした感触が伝わり、それを確かめようと下を向く。
 かがみの左手が赤く染まり、その色が己の血液だと理解する。
 途端に痛覚が回復し、想像を絶する痛みに意識が薄れる。

 消えていく思考と意識を必死にかき集め、かがみは思う。



――――なんなの?なんなのよ、これ……、格好悪すぎじゃない。

――――つかさに迷惑をかけて、こなたの邪魔をして、みゆきさえ取り戻すことが出来ないなんて……。

――――私って……、なんなの?

――――ねぇ、そこで見てるんでしょ?いるんでしょ?そこに……

――――私には力があるんでしょ?

――――封印されてるけども、私には、力があるんでしょ!?

――――あの子達を救えるのなら、私は人間を辞めてもいい!

――――お願い!お願いだから、私に力を!

――――お願いだから、あの子達を救う為の力を!



「もう……、もう二度と、一人になるのは嫌なのよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」



 かがみの絶叫とともに、淡い紫色の光が少女を包み込む!
「なに!?」
 みゆきが後ずさる。右腕を引き抜くとかがみの血が溢れ出てきた。
 野性の本能――――そう、それが最も近いであろう。
 絡み付いた鮮血を、汚いものでもついたかのように必死に払いのける。
 みゆきの中にいる”狐”はかがみの中の見えない何かに恐れをなしたのだ。
「おねえちゃ……」
 異変に気づいたつかさが顔を上げた。
 彼女の視界に入ったのは夥しい量の血を流しながら立ち尽くす、柊かがみ。
 しかし、つかさが吐き気を催すよりも早く、かがみの様子が変化していく。
 貫かれたはずの傷口がみるみるうちに塞がっていき、柔らかそうな白い肌が再現される。
 さらに、重力に逆らうかのように紫髪が広がり、ゆっくりと彼女の身体ごと宙に浮かんだ。
「な、何者だ!?お前、人間なのか?」
 ”狐”は身構え、かがみと対峙する。
 かがみを包み込んでいた光は次第に彼女の背後へと集まり始め、一つの”像”を浮かび上がらせた。
「か、かが、み……」
 こなたは、全身のに広がる痛みを抑え付け、反射的に立ち上がる。
「だいじょうぶ」
 かがみは落ち着いた、優しい声で彼女を制した。
 それを聞いたこなたは、握り締められた拳はほどき、両腕をゆっくりと下ろした。


 彼女の目に映ったそれは、淡く美しい紫色。
 けれど、内部から溢れ出る光で、白銀にも見える。
 それはどこか懐かしさと暖かさを感じずにはいられない不思議な色。
 妖艶にして美麗。
 滑らかな肌は美しく輝き、伸びやかな四肢はギリシアの彫像のそれを思い出させた。
 衣服の類は身に着けておらず、かがみを生きうつしたような、輝く紫銀色の幻影。

 それは、まさしく――”雪女”。


「ふざけろーーーーー!」
 正気に戻った”狐”が両手から無数の衝撃波を放つ!
「無駄」
 かがみは広げた両腕を、本を閉じるように目の前へ突き出す。
 それを忠実にトレースした”雪女”の指先から荒れ狂う吹雪が渦を巻き、直線に放たれる!
「なに!?」
 吹雪と衝撃波は互いの間で衝突!相殺、音も無く消えていく。
 驚嘆を隠せないみゆき。目を見開き、しばし、硬直する。
「かがみ!」
「おねえちゃん!」
 つかさとこなた。二人の表情がにわかに明るくなる。
「ごめん……。待たせたね」
 かがみは相変わらず照れながら、微笑み返す。
 その微笑をすぐに打ち消し、みゆきへと向き直るかがみ。
「いい加減にしなさいっ!」
 かがみの両腕がだらりと垂れ下がる。
 そして、すばやくそれを振り上げ、目の前で交差させた。
「な、何をする気だ!?この身体がどうなっても――――」
 ”雪女”の振りぬかれた両腕から白銀の光が伸び、みゆきを包み込む。
 断末魔は白銀の光に包まれ凍結し、遮られた。


「あんたたち、しっかりしなさいよ!?」
 床に降立ち、かがみが親友と妹を交互に見つめる。
「おねえちゃん、かっこいいー!」
 かがみの横には、自らに癒しを施し、笑顔を見せるつかさがいた。
「さてさて~、リーダーのお手並み拝見と参りましょうかね~」
 何度となく打ち付けられ、とっくに限界を越えているであろう身体をさすりながら、こなたが近づいてくる。
「待て!いつリーダーになったんだ!?てか、なんのリーダーだ!?」
「もちろん!」
 小さな身体をいっぱいに伸ばし、思い切り胸を張ってこなたが答える。

「世界の大いなる闇を薙ぎ払う、セーラー服の団、SOS団に決まってるじゃん!!!」

 かがみの眼前に、激しく自己主張する人差し指が突き出される。
「えへへ、それに決まったんだ?」
「くっだらない!」
 かがみは溜息混じりに悪態をつき、つかさは口に手を当てて、楽しそうに笑う。
 かがみを中心に、右にこなた、左につかさ。そして背中には、今では天使にさえ思える、かがみの分身。
「あったま悪いわね~!でも……でもそれ……」
 かがみは顔を上げ、一点を見つめる。
「一人、団員がたりないわよね……」
 かがみの言葉に、二人は力強くうなずき、視線をはずす。
 三人の視線の伸びる先には、氷柱となった、みゆき。
 そして、そこから抜け出る魂のように揺らめく、白金色の影。


「準備はいいわね?」
「うん!」
「もちろ~ん」
 つかさの詠唱が始まる。三人は神聖なる光に包まれた。
「つかさはみゆきをお願い!」
 かがみが跳躍し、空に浮かぶ。それに付き従うように”雪女”も舞い上がる。
「うん、わかったよ!」
 つかさは更に言霊を重ね、すばやく左側に散開する。
「こなた!あんたは私についてきなさいよ!」
「あいあいさ~!」


 笑顔で返事をするこなた。
 彼女にとって、こんなに嬉しいことは久しくなかった。
 ずっとつき続けてきた嘘に苦しみ。
 それが終わり友を救い出そうとも、終わらぬ戦いが友との時間を奪い、友を傷つける。

 いま、目の前にいるのは自分の最も信頼すべき、愛すべき親友。
 そして同じく最愛の仲間とともに一つの目的に向かっている。
 最愛の友を救うという目的に向かって。
 それが、こなたには嬉しくてたまらなかった!



第六夜


白金色の影が形を成す。それはやはり”狐”。
 しかし、先程のそれとは違い身体は数倍大きく、体毛は艶やかに光り輝き、
九つに分かれた尾が威嚇するように揺らめいている。
「九尾……」
 そんな言葉がかがみの口を動かす。
「せっかく私に丁度いい身体を手に入れたと言うのに……」
 白金に輝く”狐”の口が裂け、悲しそうな遠吠えをしてみせる。
「私を怒らせた罰を受けるがいい!」
 九尾は頭を尻の方に向け、向きを変えるようにくるりと回る。
 九本の尾が扇のように広がり、そこから巨大な衝撃波が放たれる。
「きたわね~!?そりゃっ!」
 かがみは両腕を前に突き出し、上下に広げる。
 伸ばしきった腕をそのまま左右別々の方向へと、円を描くように回した。
 描かれた両腕の軌跡が光り、”雪女”の前に透明の膜が形成された!
「こなた!後ろへ!」
 あるはずの無い地面を蹴りつけ、こなたはかがみの背後に回る。
 大きな音共に”雪女”の作り出した膜は真っ白になり、砕けた。
「ほひょ~!さっきまでのとは威力が違うね~」
「何のんきに言ってるのよ!ほら、また来たわよ!」
 自らの放った衝撃波を追いかけるように九尾が近づいてくる。
 こなたは右手へと散開し、かがみは”雪女”に抱えられるように後退していく。

九尾の目標はかがみであったのだろう。
 自らの絶対的優位をいとも簡単に覆し、あまつさえ、不意の事とはいえ、後ずさりさせられるという辱めを受けた。
 九尾は長大な尾をなびかせながら、かがみに突っ込む。
 しかし、かがみも簡単にはやられない。
 ひょいと上空に飛び上がり、九尾の背後から”つらら”を撃ち放つ。
「甘いんだよ!」
 九尾は九本の尾を広げ、それを球状に自身の身体にかぶせる。
 さながら、ドーム型のバリケードといった風貌。
 つららは、そのドームに当たり、跳ね返され砕け散る。
 上にいるかがみへと身体を向け、咆哮する九尾。
 その咆哮と共に九尾の周りに数体の”狐”が出現する。
「うお!増えたぁ~!」
 九尾の背後を衝こうとしたこなたの目の前にも”狐”が現れる。
「やっかいね……」
 尾を振るごとに放たれる衝撃波を”雪女”と共に軽やかに交わすかがみ。
 しかし、その表情に余裕は無い。
 あまりにも連続する攻撃に、先手を取れないでいたのだ。
「つかさがもどれば……」

別行動をとっていたつかさは必死に走る。
 頭上で戦闘を繰り広げる九尾に気づかれぬよう、視界の外側を走る。
 ちょうど、体育館を半周し、氷柱となったみゆきの背後へと達した。
 その瞬間、突如出現した”狐”が唸りを上げ、つかさの前に立ちはだかった!
「うわあぁ!」
 咄嗟に袖から短刀を取り出し応戦する。
 運よく突き出した刃が、頭上から飛び込んできた”狐”の胸部を貫き、危機を脱する。
 ”狐”は悲鳴すら上げず煙のように消失していく。
 その煙の向こうには、いつの間にか大量に現れていた”狐”と死闘を繰り広げるかがみとこなたがいた。
「うそ!は、はやくしなくちゃ!」
 わたわたと慌てふためき、短刀をしまうと、目の前の氷柱に手を当て呪を唱える。
 つかさの両手から褐色の光があふれ出し、それが氷柱を取り囲む。
 徐々に氷柱は小さくなっていき、中からピンク色の長い髪の毛が見えてきた。
「ゆきちゃん!」

ふらふらと立つみゆき。
 背後からではみゆきの状態が分からない。
 正面に回り、もう一度名前を呼ぶ。
「……ん、ふあ?あ、れ、つかさ、さん?」
 みゆきは、焦点の合わない瞳を少しずつ下に落とし、可愛らしい巫女を見つけた。
「ゆきちゃん!よかったぁ!」
 思わずつかさはみゆきに飛びついた。
 余りに突然のことで、みゆきは背後に倒れそうになったが、何とか踏みとどまり、つかさを受け止める。
「よかったよぉ!うれしいよぉ!」
「つかささん……」
 つかさはまるで子供のようにはしゃいだ。
 みゆきが戻ってきた。ちゃんと体温も感じる。鼓動も聞こえる。
「ほら、心臓の音がとくとくって……ほへ?やわらかい、ね」
「え!?あ、あああの、つ、つつつつつかささん!わ、私、なんでこんな格好に……」
 みゆきはようやく正気を取り戻し、自らが全裸であることに気づいた。
 が、すぐさま、恥ずかしさが限界に達し、意識が遠のいていく。
 みゆきは、薄れ行く意識の中で、つかさにされた”キス”を思い出し、恍惚とした表情で床に抱かれていった。

「こんなんじゃ、キリがない!」
「かがみんや~、なんか大きいの一発ぶっぱなしちゃってよー」
 次々と襲い掛かる”狐”。
 それ自体はさして強くもないが、時折放たれる九尾の衝撃波がかがみ達の動きを妨げる。
 さらに、九尾が咆哮するたび、共鳴するように蘇る”狐”。
 全くもって埒があかない。
 四方八方からの攻撃に、少々疲労を感じ、互いに背中を預けるこなたとかがみ。
「ま、まだ、慣れないのよ。あんたの方が戦い慣れてるんでしょ?なんとかしてよ!」
 こなたが自らの手足を使い、呪を織り交ぜながら敵を駆逐していくのに対し、かがみはほぼ防戦を強いられていた。
 是非もない。かがみはつい先程、力を自分のものにしたばかりだ。
 どれほどその潜在能力が高かったとしても、使い方を知らないのであれば、全ては無意味だ。
「がんばって、リーダー!」
 こなたはかがみにウィンクをする。
 横目でそれを確認し、かがみはうなずいた。
 だが、意識すればするほど”雪女”は動いてくれない。
 どうすればいい?


「くっくっく……。そろそろ終わりかい?」
 九尾の顔がにやけたかのように見えた、その時!
 かがみとこなたの周りを黄金の光が包む。
「召喚します。草薙の剣!」
 声と共に、周りにいた”狐”が横一文字に分断されていく。
「つかさ!」
「ごめん、遅くなっちゃった」
 あれだけ無数にいたと思われる”狐”の群れは周囲に無く、ただ一体、九尾を残すのみとなっていた。
「なんなんだい!なんなんだい、お前達は!?」
 激昂し、身震いする九尾。
 ざわざわと森の木々が葉を擦るように、九本の尾が揺らめく。
 白金色に輝いていた毛並みが逆立ち、周囲を強力な瘴気が取り囲む。
「もう許さないよ!後悔する間もなく捻りつぶしてやる!」
 天井に向かい大きく唸りを上げる九尾。
「一気に!」
 こなたが叫ぶ。彼女の勘が指し示す、勝敗の分かれ目。
 かがみは迷いを打ち消し、頷く。
 まずは、動かなくちゃ!さっきもそうだった。
 難しいことは分からないけど、とにかく動くんだ!




第七夜



九尾は力をため、次の一撃にかけるかのように全身を小さく震わす。
 こなたが突っ込む!
 全身に炎の鎧を纏い、一直線に向かっていく!
「かがみ、あと、任せたよ!」
 目標まで数十センチのところで九尾の全身から放たれる巨大な衝撃波!
「ぐくぅ……」
 押し返される小さな身体。わずかに残っている勢いで、右の拳が九尾の体表に触れる。
 しかし、不十分。相手にダメージを負わすことなく、こなたの身体が吹き飛ぶ!
「うわぁーっ!」
 叫び声を上げるこなたに追撃のかぎ爪が襲い掛かる!
 度重なる攻撃に、ついにこなたの身体が悲鳴を上げた。
「こなちゃん!」
 つかさが声とともに巨石を召還した。
 九尾の周りに焦げ茶色の霧が浮び、それが中心に引き寄せられるように物質化すると、
妖魔の身体はからめとられ、石に捕まった。


「な、生意気なぁーーーー!」
 振り上げた右前足が硬直し、そのままの形を維持する。
 が、すぐに巨石に亀裂が入り始める。
 長くは持たない!
「かがみー!」
 満身創痍。疲労と怪我で動くことの出来ないこなたが叫ぶ。
 その声を合図に、かがみと”雪女”が舞い上がる!
「とどめぇーーーー!」
 かがみは両手を大きく振り上げ、頭上へと持ち上げる。
 大きく身体をそらし、弓なりになると、”雪女”の身体に触れた。
 一瞬のうちに”雪女”は形状を変え、かがみの倍はあろうかという紫銀色の曲刀が出現する!
「危ない!」
 つかさは思わず顔を背け、目を閉じた。
 巨石がその形を保てなくなり、崩壊する。
 かぎ爪が勢いを取り戻し、こなたを切裂く!!!


「雪の舞、氷華繚乱!」

 一閃!
 かがみの斬撃がわずかに早く、九尾の動きを止めた!
 曲刀はその持ち主を軸に大きく弧を描いていく。
 巨大な扇を広げたかのような軌跡をたどり、九尾の額に触れると、
垂直に振り下ろされた刃は、白金に輝く全身を真っ二つに切裂いた。

 重たい砂袋を放り投げるような音がして、九尾の身体が床に落ちる。
 切断面を覆い隠していた氷の膜が、侵蝕するように広がっていき、
九尾であったものは無機質な氷塊に変わっていった。
 気がつけば、氷塊の周りには、短く刻まれた蒼髪がいくらか散らばっており、
かがみ、つかさ、そしてこなたが取り囲むようにそれを見下ろしていた。
「ネトゲにおいで……」
「たまにだったら付き合ってあげるわよ」
 こなたの拳とかがみの曲刀が振り下ろされ、九尾は無数の結晶となり、消失した……。



「ふう、おわたよ~~」
 こなたは両手を広げてその場にお尻から倒れこむ。
「おつかれさま~」
 つかさはこなたの脇に膝をつき、細かい擦り傷を一つ一つ丁寧に癒していく。
「玉藻前(たまもまえ)――。美しい女性の姿を借り、朝廷や時の権力者を誘惑し、世を混乱させると言われています。
狐狗狸さん同様、憑き物。それも、とても強力な……。言い換えれば、”狐”達の女王だったのでしょう……」
 みゆきの冷静で落ち着いた響きが聞こえた。
「なるほどね~。雑魚が集まって、かたまって、上位妖魔に変化したってところね」
 紫銀色の曲刀が掌に吸い込まれるように消えた。
「それにしても……なぁ、みゆき。あんたその格好どうするの気!?」
 かがみは意地悪っぽい笑みを見せ、問いかける。
「いやぁ、私はもう少しそのままでもいいんだけどねぇ~」
「あんたには聞いてないけどな」
 どこからか拝借してきたであろう白い布切れで身体を隠すみゆき。
 それを猫口のこなたが舐めるようにじっくりと鑑賞する。
「え!?いや、こ、こここれは。ど、どうしましょう?」
「ゆきちゃん、すっごく柔らかいんだよ?えへへへ」
「つ、つかささん!」
 人差し指で頬をかき、にっこり笑うつかさ。
 こそこそと這いずり、みゆきの布切れを奪おうとする、こなた。
 足首を掴んでそれを阻止するかがみ。
「お、お、お恥ずかし…………」
 赤面リミット限界突破。
「みゆき!」
「ゆきちゃん!」
「ちゃ~んす!」
 3人は再び床に倒れていくみゆきに飛びついた!


「ははは、実に面白い戦いでしたね?」
 深い紺色の袈裟を羽織った男が、無精ひげの残るあごを掻きながら呟く。
「そうですね。特にあの二人の成長には驚かされるばかりです」
 それに紫色の袴を着けた常装の男が答える。
「ただ……」
 烏帽子をはずし、常装の男がうつむく。
「さすがに”アレ”は予想外でしたね……」
「……柊さん……」
 柊と呼ばれた男の顔はどこと無く不安げで、苦悩に満ちていた。
「まあ、何とかなりますよ。かなたは、俺達なんかとは比べ物にならないくらい素晴らしい術を持ってたじゃないですか!」
 無精ひげの男が明るい声を放つ。
 大きな体育館裏の草地に風が吹いた。
「さて、そろそろ行かないと見つかりますな」
「そうですね。それより、そうじろうさん……」
「ん?なんです?」
「鼻血……拭いたほうが……」
 柊の声にそうじろうが反応し、右手で鼻をこする。
「うおおおっ!こ、これはですね!」
「あぁ、いいんですよ。私も見ちゃいましたし……。どうやって育ったんですかね?」
「確かに、ウチのと何が違うんだろ……?」
 二人の男は腕組みし、くびを傾げる。
「勝ち組だけど、5等分?」
「勝ち組だけど、幼女趣……げふん、げふん」
 そういって、男達は体育館を後にする。
 草地に夥しい量の血痕を残して……。


 いつの間にか日は傾き、夕映えが美しく空を染めていた。
「それにしても、おねえちゃんが来てくれて、すっごい助かったよー!」
「そだねぇ~。一時はどうなるかと思ったけどね~」
 いつもの制服に着替え、のんびりと歩く4人。
「あはは。あ、あんた達だけじゃ、心配だからね」
「うそうそ~。『ご、ごめぇ~ん!』とか言って入って来たじゃん?」
 こなたが両手を組んで、かがみのモノマネをしてみせる。
「ば、そ、そんなこと言ってないわよ!」
 かがみが赤面し顔を背ける。
「うふふ。でも、本当に助かりました、かがみさん。改めてありがとうございます」
「え?あ、うん。気にしないで。あはは」
 みゆきの言葉に赤面。どちらにしても赤面。
「ところで、あの”スタンド”!名前決めたの!?」
 こなたははしゃぎながら、かがみに擦り寄る。
「”スタンド”?あぁ、”雪女”ね。わ、私がその、”雪神”だから、”雪兎”なんて、どうかな?」
 頬を人差し指で掻きながら、呟く。
「かわいい!”雪兎”ちゃん!おねえちゃんと同じ髪型だし、すっごくいいと思うよ!」
「ふむふむ~。あの厨二病ぽい技名を恥ずかしげもなく叫んだ人の命名としてはまともだねぇ~」
「ちょ、厨二病って誰のことよ!」
 かがみは左手を振り上げた。
 それに応じて、こなたが頭を抱えて走り出す。
「ちょっと、待ちなさいよ!ちょっと、こなたー!」
「うふふふ」
「あははは」
 次第に暗闇が押し寄せる街中に少女達の笑い声が響く。
 寒空の下、暖かな気持ちがあふれ出す。









――ばか!あんたが言ったんじゃない。「かがみんはうさちゃん」って……。
――兎は寂しくなると死んじゃうんだよ……?


「もう!こなたぁ!電車来たわよー!」

Fin
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