強い、強い風が吹いていた。
ずっと、ずっと吹いていた。
私は飛ばされぬよう、必死で足に力を入れ、
上着を身体に巻きつけるように両腕でしっかりと掴んだ。
理由は分からないが進まなくてはならない。
何も教えられないまま進まねばならない。
休むことも許されず、ただ、ただ進まねばならなかった。
疲れていた。あらゆることに。
強い風にこのまま飛ばされてどこかへ飛ばされてもいいと思った。
ふと顔を見上げると少しだけど太陽の光が差し始めていた。
力強く、清らかな、暖かな光。
次第に風は弱まり、上がる体温に上着は要らなくなった。
進むことが楽しい。もっとこの光を受け続けていたい。
私が進む理由はただ一つ、この光を浴び続ける為だけに進む。
出会えたことに感謝する。ありがとう、ゆたか。
みなみ
ずっと待っていた。
その日が来るのを待っていた。
長い長い、悠久の呪縛から解き放たれるその日を待っていた。
誰かが迎えに来るのを待っていた。
深い深い海の底から見上げる世界はどんな世界なの?
私がいる世界と何が違うの?
光り輝いて、眩しくて見えないけれど、とてもきれいな世界が広がってたら素敵。
太陽があるって、空があるって、果てなく広がる大地があるって。
海の底からでは決して見れない世界があるって聞いた。
誰か私に二本の足を下さい!
眩き太陽の下を歩ける足を!清清しき空の下を歩ける足を!暖かい大地を踏みしめる足を!
私に足をくれたのはあなた?
ありがとう!私はずっと付いて行く。あなたにずっと付いて行く。
私に二本の足をくれたあなたに。私に世界をくれたあなたに。
迎えに来てくれたんだね!ありがとう!みなみちゃん!
ゆたか
最終更新:2007年11月10日 01:40