ID:6zK5dqMo氏:スピード狂想曲

SIDE--こなたーー
大学3年生への進級もきまりのほほんと過ごしていた春休み。
「ゆたかも大学に合格したことだし、旅行に連れて行ってあげよう」とゆい姉さんが言い出したのだった。
「場所はどこにするの?」
「群馬県の山荘でいいところを見つけてあるのだよー」
「おおー、さすがゆい姉さん。準備がいいねー」
「群馬かー。ゆいちゃん、車で行くんだよな?気をつけてな。」
というわけで私とゆーちゃんとゆい姉さんの旅行が決まった。お父さんは締め切りがあるからいけないということで涙を流してたけどね。
時は流れて出発日
「こなたー、ゆたかー。おそくなってごめーん。仕事が長引いちゃって。」
「大丈夫だよ、おねえちゃん。連絡はうけてたし」
「ゆい姉さんや。私は姉さんの車の後ろのワゴンRが気になってしょうがないんですが。」
「泉ー、小早川も久しぶりやなー。といっても昨日は同じパーティーだったな。」
ちょっ、なんで黒井先生がいるんだか。ゆい姉さんが一緒に飲みに行ったついでに誘ったらしい。二人ともノリがいいから。
「先生、また姉さんに突き放されても知りませんよ」
「ふーん、そう言ってられるのも今のうちやでー。そや、うちも一人やとつまらんさかい。成美さん、泉はうちの車でも構わへんか?」
「どぞどぞー、じゃあゆたかは私の車で」
このとき私は助かったと思った。ゆい姉さんの車に乗るよりは黒井先生と珍道中のほうがましだからね。
「泉ー、なんか失礼なこと考えてるんちゃうかー。」
「そっそんなことないです。しゅっぱつしんこー」

SIDEーーS--
ゆいちゃんの車はいつも通りの音だな。だけど黒井先生の車は。こなたから聞いていた話とはだいぶ違うな。やっぱり原稿を早めにあげといて正解だったかもな

SIDEーーこなたーー
「先生、この車前回乗った時と雰囲気違いませんか。なんかエンジンがうるさいというか。整備不良じゃないでしょうねー」
「まったく、車検は通るっちゅーに。まあそのうちわかるで」
結局、群馬にはいった時には夜中になってしまった。その時だった。何台もの車が一気に追い抜いていく。前を走るゆい姉さんも気付いたみたい。なんかパッシングしてるし。
「おっ。合図やな。泉、ベルトしとけよー。」
「先生、何してるんですか。えー、今気付いたけど、このワゴンRマニュアルじゃん。まえはオートマだったはず」
「やっと気付いたんか。成美さんに勧められて改造したんや。」
ゆい姉さんのヴィヴィオが急加速する。それに続いて先生のワゴンRもうなりをあげる。カーブせまってるし。ヴィヴィオがきれいなドリフトをしてほかの車と差を縮める。先生はというと、さらに加速する。次の瞬間、ハンドブレーキを引いてドリフト。もう何が何だか分からなくなってるし。

SIDE--たくみーー
今日は赤城レッドサンズとの交流会の日。たくみはインプレッサで来ていた。突然に池谷先輩から無線連絡がはいった。秋名でチームのメンバーが2台の軽に追い回されてるらしい。それを聞いて啓介さんの目つきが変わった。
「アニキ、けちらしてきていいよな。」
「まて、秋名最速はたくみだ。たくみに決めさせろ」
「俺はいくつもりです。啓介さんも一緒に行きませんか」
「わかった。二人とも行くなら、俺も行く。軽いギャラリーとしてな」
FD、インプレッサ、FC、3台が連なって走り出す。
しばらくすると、メンバーの車が見えてきた。確かにその中に見慣れない軽が混じってる。どちらもハンドリングが的確だった。それに車のポテンシャルを最大限に引き出すチューニングをしている。何かが違う。これまでに競ってきた相手とは異なるものを持っている。俺はアクセルを踏み込んで突っ込んでいった。

SIDE--こなたーー
「先生、なんか新しいのが来たよ。ほかの車より断然早い」
「いよいよ、峠最速のやつらの投入やな。」
「先生大丈夫なんですか?この車、軽ですし。」
「乗るとき、ナンバー見なかったんか。もうこの車は黄色やないで」

SIDE--たくみーー
「恐ろしくはやい。前のスバルは軽なのにカーブに平気で突っ込んでいく。FFの特性をつかんでる。それにあのワゴンRはなんなんだ。ナンバーが黄色じゃない。ということは排気量も大きくなっているはずだ」
すでにほかの車は消えた。プロジェクトDで培ってきた自分の技術はすべて出しつくしている。FDもついて行くのが精いっぱいというところだ。このままじゃ負ける。その時FCが前に飛び出した。久しぶりに涼介の本気をみた。それでも謎の2台との差が縮まることはない。
「きっと涼介さんも仕掛ける技は出しつくしているはずだ。」
たくみの脳裏に父親のインプレッサがよみがえる。
「こんなとき親父だったらどうする?相手の動きには無駄がない。どんな技を繰り出しても追いつけない。」
その時だった。FDを抜きインプレッサを抜きFCすらも抜き去っていく86。文太だった。なぜここに現れたのか。それはGSでの情報を聞きつけてだった。それほど利用者も多くない田舎町のGS。見慣れぬ車が立ちよればすぐに噂は広まる。それが完璧なチューンを施した車ならなおさらだ。文太も久しぶりに流すつもりで来たのだが、目の前に広がる光景を受け入れるほどの余裕はなかった。たくみと高橋兄弟はだれが見ても速いという走り屋のはずだ。それがスポーツタイプとはお世辞にも言えない車に突き放されている。
「親父、戸惑っているのか。親父がてこずるような相手に勝てるわけがない。」
それは涼介も啓介も分かっていた。誰からともなくハザードをたき山頂に戻って行った。
それを確認した文太は何としても前を走る2台に追いついていこうとしていた。青のスバルの走り方を見ているうちに、ふと昔のことを思い出した。自分が現役の走り屋だったころ、どうしても勝てないドライバーがいた。青のアルシオーネを駆り文太の目を譲ることはなかった。前を走るスバルがそのドライバーの走り方にそっくりなのだ。しかしもう引退しているはず。

SIDE--こなたーー
「なんか、また違うのが出てきたけど、何ですかね?」
「隠し玉やな、今までのより格段上の走り方や、長いことこの峠を走って知り尽くしてるような奴や」
「どうするんですか、これ以上は無理ですよ。」
「何いっとるんや、成美さんに付いていかへんと、また道に迷うでー。」
「もうカーナビでもなんでも使いましょうよ。」
「あいにくカーナビは外してあるんや、軽量化でな。まあ安心せい」
「何を安心すればいいんだか」
こなたが何かに気付いた。
「先生、別の車が追ってきてませんか?ゆい姉さんの車ともこの車とも違うエンジン音ですよ。」
「なんや、後ろのポンコツ車ともちゃう音やなー。」
バックミラーで確認すると後ろの白黒ツートンの後ろにヘッドライトの光が見える。
「やっぱりきてますよ。敵も増えてどうするんですか。」
「まあ成美さんがどうにかするやろ、うちらはこのままゆったりクルージングや。」
「どこがゆったりなのかはツッコミ禁止ですね」

SIDE--文太ーー
これでもかというほど踏み込んでいるのに追いつかない。文太は焦っていた。久しぶりに車の限界を感じていた。よりによって相手が軽とは信じられないが。直線を飛ばしているときだった。86の広いリアウィンドウから強い光が差し込んできた。
「おいおい、こんなときに変なあおりは勘弁してくれよ。しかしこのバトルに付いてこれるとは腕は認めてやってもいいか。」
しかしバックミラーに映るリトラクタブルヘッドライトをみて絶句した。いまどきあんな旧型車に乗っている人間はそういない。文太がどうしても勝つことができなかったあのドライバーが再び現れたことを、アルシオーネのリトラクタブルヘッドライトは示していた。いつも後ろから眺めていたナンバーも記憶のとおり「143」のままだった。

SIDE--S--
予想通りの展開だな。ゆいちゃんと黒井先生にはこれ以上の無理はさせないほうがいいな。もっとも一番無理してるのはあいつだがな。とりあえず俺があいだに入るか。しかしいまだに86とは。

SIDE--こなたーー
「あれ、後ろの車が入れ替わってる。しかも邪魔してるように見えるし。」
「うちらを抜かすというよりはポンコツの邪魔してるよにしか見えへんなー。どういうこっちゃ」
「でも先生このままでと時期に山を下っちゃいますよ」
「そやなー、そうなったらそうなったで、一度どこかに停めよか。成美さんも気付いてるみたいだし」

SIDE--文太ーー
「結局、昔のままか。俺は抜かれて絶対に前にはでれない。それにしてもなんで前の車を抜かないんだ。俺の車をこれ以上踏み込ませないようにしている。」
86はいつエンヂンブローしてもおかしくない状態だった。水温計が振り切れそうである。しかしアルシオーネの邪魔が入ったせいで強制的にクールダウンしていた。
「もうすぐ山をおりる。このままいくか。どの道、かなわない相手だ」

SIDE--こなたーー
「先生、もう終わっちゃいましたねー。とりあえずそこのコンビニに停めましょーよ。」
「そうしよか、成美さんもそのつもりみたいやし。」
2台が並んで停まる。
「成美さん、流石やなー。ほれぼれしてしまいましたわ。」
「いやいや、黒井さんも今日はのってたよねー」
「こなたお姉ちゃん、帰りは車代わって。」
「ゆーちゃん、どちらも大差はないと思うよ。」
「それにしても黒井さんの後ろを走っていた車速かったよねー。でも途中で変なのが間に入ってきて。」
「そやそや、なんかうちらを抜かさせないように走ってたんや。」
そこに2台の車が入ってくる。今ではめったに見かけない旧型車である。
「あっ、あれさっきのくるまやないか。」
「そうだよねー、ドライバーはどんな人なんだろ」
先におりてきたのは白黒ツートンの車の人だった。なんというか無愛想としか形容できないタイプのおっさん。これがさっきまで先生とゆい姉さんの車を追いかけまわしてた人なのか。
「さっきはすまなかったな。久しぶりに走り屋の血がさわいぢまった。しかしどちらも軽とは思えないな。いやそっちのワゴンRは軽ではないか。何CCだ?」
「2000CCです。しかしおっさんの車はこれといっていじってないように見えるんやけどなー。なんでそんなに早いんや?」
「一応エンヂンは換装してるからな。それでもそっちの2台のエンヂンよりは古いんだが」

SIDE--S--
さて任務終了か、皆が無事なら俺はそろそろ消えるか。

SIDE--こなたーー
「ちょっと、そこの車も止まりなさい。止まらないと公務執行妨害にするよ」
「公務ってあんた警官だったのか。」
「まあそれはだまっててくださいね。それでその車の運転手さんにもお話聞かせてもらえますか」
ゆっくりとドアが開く。出てきたのは
「お父さん!!}
なんでここにいるのか、原稿とか言ってなかったっけ。それ以前に我が家に車あったんだ。いろいろ突っ込みたいことがあるけど。
「仕方ないな。すべて話すしかないようだね。俺とそこのおっさんは昔の知り合いなんだよ。」
それからお父さんが話したことは私たちが何も知らないことだった。若いころのお父さんが走り屋だったこと。その当時乗っていた車を今もこっそり車検に通して近所の駐車場で保管していたこと。そして走り屋だったころの親友というかライバルがおっさんというか文太さんだったという話。ゆい姉さんが群馬に行く聞いてなんとなく予感がしていたんだって。それで今日は後から追ってきたというわけだ。
「皆の車を無茶させるわけにはいかないからねー。そこで俺の出番なわけだよ。」
「おじさん、昔の話なんて一度もしたことなかったじゃないですかー。私が車に乗り始めた頃なんて気をつけなねの一言で。」
「正直、おれみたいにはなってほしくなかったんだよ。まあ血は受け継がれているんだろうけどね。」
「泉さん、すごいやないですかー、もう何年も走ってなかったんでしょう。」
「昔取った杵柄ですよ。それと黒井先生、その車はいろいろいじっているみたいですけどベースは軽なんです。気をつけてくださいね」
「おまえは何にも代わってないな。まず安全ありきなところがな。さっきだってわかってたんだろう。俺の車が危ないことも。」
「さあどうだか。プライドが高くてエンヂンブローまで自分からはバトルをおりられない癖は相変わらずだな。」
「ところでお父さんや、あの車のナンバーの由来を教えてもらおうか。お父さんのことだから、なにかあるんでしょ?」
「当時はナンバーは自由に決められなかったからなー。なんにもないよ。」
もっともな顔で話すお父さんに文太さんが噴き出す
「陸運局の知り合いに掛け合ってやった恩は忘れたのか。」
「そっそれは言わない約束だろ。」
「どうせお父さんのことだからお母さん関係だよね。誕生日じゃないし」
そう言ってお父さんの反応をうかがうと案の定動揺している。
「わかったわかった、あれはなーかなたの身長なんだ。こっそり測って調べたんだぞ」
その場にいた人がみんな凍ってるし。身長とは私も不覚だったよ。こっそりとはどんな方法かは聞かないけどね。

その後私たちはお父さんも交えて旅行を満喫した。初日の疲れが大きくてゆーちゃんは眠そうだったけどね。
帰りにまた峠で私が車の窓に押しつけられたのは言うまでもない。


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