ID:MN9g5oUo氏:さらば!怪傑かがみん!

こなた「おはよー!つかさ、みゆきさん!」
みゆき「おはようございます、泉さん」
つかさ「こなちゃん、おはよー。今日は遅刻ギリギリだね~」
こなた「いやー、ちょっとだけのつもりでネトゲに手を出したら、明け方まで盛り上がっちゃってさ」
つかさ「そうなんだ~」
みゆき「夜更かしは体に障りますから、程々にされた方がいいと思いますよ」
こなた「わかっちゃいるんだけどねー……ところで、かがみはもう自分の教室に戻ったの?」
つかさ「それがね、お姉ちゃん今日はお休みなの」
みゆき「どうやら、風邪をひかれてしまったとかで」
こなた「へぇ、そうなんだ。つかさのがうつっちゃったのかねぇ?風邪はうつすと治るって言うし」
つかさ「ひどいよ~、こなちゃん」



~さらば!怪傑かがみん!~



まさか、つかさに続いて私までもが風邪で倒れてしまうとは思わなかった。
昨日つかさに『この時期に風邪なんて気がゆるんでる証拠よ』なんて言うんじゃなかった。
漫画じゃあるまいし、注意したそばから倒れるなんて、姉としての面目が丸潰れだ。

それにしても、やることが無くて困る。
昼食後に薬を飲んでひと眠りしたらだいぶ調子は良くなったが、ベッドを抜け出してウロウロする訳にもいかない。
ベッドの上でも出来る事といったら読書くらいだが、今は頭がボーっとしていて大好きなラノベも読む気にならない。
四の五の言わずに寝ていればいいのだが、私はつかさと違ってそう何時間も寝てはいられない人間なのだ。
そんなことを考えながらじっと天井の一点を見つめていると、ふと先週の出来事が思い出された。

みゆきは怪傑かがみんの正体についてどう考えているのだろうか。

みゆきの発言を額面どおりに捉えれば、みゆきはその正体が私だとは思っていないことになる。
しかし、もしかしたらアレは正体に気が付いた上での私への気遣いなのではないかとも考えられる。
常識で考えれば、目の前で自白して衣装を身にまとったのだから正体に気が付かない訳がない。
……もっとも、本当に本当の常識ってヤツで考えれば一番最初の時にバレてるハズなんだけど。

それともう1つ。
最後にみゆきが私の事を『親友』と表現したあの発言は、正体に気付いている事を踏まえての発言ととれる。
『私は、正体がかがみさんだと気付いていないフリをさせていただきます』という意味にとれなくもないのだ。
さすがにコレは深読みのし過ぎかもしれないが、あの時のみゆきの表情からはそうとしか考えられないから困る。

そういう風に考えていくと、みゆきだけじゃなくこなたも正体に気付いている可能性がある。
自白こそしていないものの、私はこなたの目の前で着替えをした事があるのだ。
あいつも普段はバカっぽい事ばかりしているが、他人の思惑なんかに対して妙に鋭い節がある。
バカと天才は紙一重なんていう言葉があるが、こなたは紙一重で天才の方なのかもしれない。
だとしたら、私の趣味がコスプレだと決め付けてバイト先であんなことをしたのも、あいつなりの気遣いということだろうか。
『私は、正体がかがみだって気付いていないフリをさせてもらうヨ』という考えに基づく行動だと、とれなくもない。

もしかして『ダブル怪傑かがみん』の写真を撮るという2人の行動は、秘密を共有することへの覚悟、或いは気遣いなのだろうか。

仮に、仮に私のこの考えが当たっていたとしよう。
その場合、私が怪傑かがみんを演じる必要はほとんど、いや、まったく無くなってしまうのではないだろうか。
正体がばれているのなら、柊かがみという人間の想いを伝える代役の存在意義は0に等しい。
それにみゆきはあの時――彼女が正体についてどう考えているにせよ――怪傑かがみんにではなく、私、柊かがみに感謝の言葉を捧げた。

怪傑かがみんは必要ないのだろうか。

考えることに少し疲れたので、私は天井を見つめながらボーっとすることにした。
扉が控えめにノックされるのが聞こえたが、面倒なのもあってわざと返事をしない。
しばらくして、遠慮がちにお母さんが部屋の中に入ってきた。

み き「かがみ、入るわよ……あら、起きてたの?調子はどうかしら?」
かがみ「うん、だいぶ良くなったみたい。明日には学校に行けると思うわ」
み き「そう?無理しなくていいのよ?」
かがみ「別に無理なんかしてないって」
み き「ならいいんだけど。辛くなったらすぐに言いなさいね」

かがみ「うん、ありがと……ねえ、お母さん」
み き「なあに?」
かがみ「お母さんも私と同じ様に17歳の頃から怪傑の力を使い始めたんでしょ?」
み き「そうだけど、急にどうしたの?」
かがみ「ただ、この間のお父さんの反応から考えると最近は力を使ってなかった」
み き「ええ、そうよ。あの時はずいぶん久しぶりだったから緊張したわ」

かがみ「何か理由があったの?」
み き「理由?何の?」
かがみ「怪傑の力を使わなくなった理由。何か特別な理由とかきっかけみたいなものがあったのかなって」
み き「そうねぇ……忘れちゃったわ。ずいぶん昔のことだから」

お母さんは少しだけ考える仕草をしてから、笑顔でそう答えた。

かがみ「結構大事なことだと思うんだけど、本当に忘れちゃったの?」
み き「そんなことより、お友達がお見舞いに来てるわよ。起きてるなら、あがってもらってかまわないわね」
かがみ「お母さん、私の質問に――」
み き「あら、いけない。そういえば、お鍋を火にかけっぱなしだったわ」
かがみ「ちょっと、お母さんってば……ああ、もう。まだ話は終わって無いってのに」

逃げられた。おそらく私の質問に答える気は無いということだろう。
まあ、お見舞いに来ている友人を放ったままにしておくにはいかないし、今は答えを追求するのは諦めよう。
数分後、お見舞いの品と思しきぽっきー1箱を携えて、こなたが姿をあらわした。

こなた「やふー、かがみ。元気してたー?」
かがみ「風邪ひいて学校休んでる人間が元気なわけ無いだろ」
こなた「うむ、なかなかの反応だネ。元気そうで何よりだよ」
かがみ「人の体調をどこで判断してるんだ、あんたは」

こなた「――でさ、つかさはまた携帯電話を没収されたってわけなんだよ」
つかさ「うわああ、こなちゃん。それはお姉ちゃんには言わないでって言ったのに~」
こなた「あれ?そだっけ?」
かがみ「ふふ。まったく、つかさはしょうがないんだか……ケホッ、ケホッ」
つかさ「お姉ちゃん、大丈夫?まだ喉が痛むの?」
かがみ「ああ、心配しなくても大丈夫よ。ちょっと違和感が残ってるだけだから」

こなた「ちょっとしゃべり過ぎちゃったカナ?とりあえず、何か飲んだ方がいいんじゃない?」
つかさ「そうだね。私、何か飲み物もってくるよ。こなちゃんも何か飲むでしょ?」
こなた「あー、おかまいなく」
つかさ「遠慮しなくていいよ。お茶がいい?それともコーヒーがいいかな?」
こなた「んー、じゃあかがみと一緒のでいいや。ありがと、つかさ」

つかさが台所へと降りていき、こなたと2人きりになった。
私の喉を気遣ってか、こなたは何もしゃべらずに部屋の中を見回したりしている。

かがみ「ねえ、こなた」
こなた「んー?」
かがみ「変な遠慮しなくていいから、何か話しなさいよ」
こなた「あ、ばれてた?」
かがみ「まあね」

話を仕切りなおすためか、それとも照れ隠しのためかはわからないが、こなたはアハッと笑った。

こなた「そだねー、じゃあ何を話そうかな」
かがみ「私が休んでる間にあった事とかでいいじゃない」
こなた「もうほとんど話しちゃったよ。後はみゆきさんが、かがみにくれぐれもお大事にって言ってたくらいかなぁ」
かがみ「おい。それって一番最初に言わなきゃダメだろ」
こなた「まあまあ、忘れずに言ったんだからいいじゃん」
かがみ「おまえなぁ……みゆきに申し訳ないとは思わんのか?」

こなた「あー、それとさ、かがみがいない間に怪傑かがみんは1回も登場しなかったから」
かがみ「は?」
こなた「ん?」
かがみ「えーっと、何でその情報を私に言う必要があるんでしょうか、こなたさん?」
こなた「え?だって、かがみはコスプレするくらいにあの人の大ファンなんでしょ?気になるかと思って」

どうやらこなたは紙一重でアレの方だったようだ。
せっかくだから、少し試してみようか。

かがみ「ごめん、こなた。ちょっとトイレいってくる」
こなた「いってらー」

つかさの私服を無断借用して着替えを済まし、こっそり持ち出した仮面とマントを身に着ける。
部屋に戻ると、都合の良い事に中にはこなた1人しかいなかった。
どうやら、つかさはまだ飲み物の準備をしているみたいだ。
当のこなたはやることが無くて余程ヒマだったのか、私の机の周りでなにやらゴソゴソしていた。

こなた「うわっ!?か、かがみ、コレは違うんだよ!?別に家捜しとかしてたわけじゃ……あれ?」

こなたは扉の前に立つ私をもう一度よく見る。

こなた「か、怪傑かがみん!?」
怪傑K(あー、やっぱりそうなっちゃうんだ。この間、目の前で着替えた時は柊かがみって認識してたのになぁ)
こなた「な、何でここに?私、今日は別に悩み事なんて無いですよ?」
怪傑K(完全に気が付いてないな、あの表情は。とりあえず、これでこなたはシロだって確認できたわね)
こなた「もしかして、私じゃなくてかがみに用があるんですか?」
怪傑K(残るはみゆきか……いっそのこと、今週末にでも家に招待して同じように試してみようかしら)

こなた「おーい」
怪傑K「はっ!?……な、何か用かしら?」
こなた「それはこっちの台詞なんですけど」
怪傑K「あ、ああ、ええっと……その、今日は柊かがみに会いに来たんだけど、どうやらいないみたいね」
こなた「そうですか。かがみならすぐに戻ってきますから、待ってたらどうですか?」
怪傑K「え?い、いや、そうもいかないのよ。ほら、こっちにも事情ってもんがあるし」

こなた「むー……?」
怪傑K「な、何よ、そんなに私の事をじっーと見て。何か変かしら?」
こなた「いや、いつもと何か違うなーって思いまして」
怪傑K「ち、違うって、どこが?」
こなた「髪型がツインテールじゃなくてストレートなトコとか、服装が制服じゃなくて私服っぽいトコとか……」
怪傑K(ヤバッ、バレるかも!?どうしよう、今更だけどこれはコスプレだってことにしようかしら……でもそれもなんか嫌だな)
こなた「ああっ!?もしかして!?」
怪傑K(まさか、バレちゃった!?とりあえず否定しなきゃ!!)

こなた「2号?」
怪傑K「違うの!!……は?あれ?2号って?あれ?」

こなた「違うんだ。じゃあ、あなたは誰なんですか?」
怪傑K「あれ?え?……え、ええ~っと、私は、その……そう!V3よ!怪傑かがみんV3!」
こなた「V3!?ということは3人目!?」
怪傑K「ま、まあ、そうなっちゃうわね」
こなた「かがみにも教えてあげなきゃいけないね、怪傑かがみんは3人いるって。ってことは、いずれ3人揃ったところとかも見れるのかなぁ」
怪傑K「ええっ!?そんなの無理に決まってるじゃないッ!!……あ、えっと、そうじゃなくって。違うのよ。3人もはいないから」

こなた「ふぇ?なんで?だって、あなたはV3で、3人目の怪傑かがみんなんですよね?」
怪傑K「それは、ほら、アレよ、アレ。まあ、アレっていったらアレしかないじゃない?」
こなた「アレ?」
怪傑K「だから、アレよ、アレ……そ、そう!消えたの!1号と2号は消えちゃったのよ!」
こなた「な、なんだってーーーーー!!!?」



かがみ「はぁ~……なんか、ものすごい墓穴を掘ってしまった気がするわ……」

困っている人々を救うため、悪の組織に立ち向かうことを決めた怪傑かがみん1号と2号。
V3にすべてを託し、彼女らは組織の本拠地へと乗り込んでいった。
そして彼女らの活躍により組織は壊滅し、その本拠地も謎の大爆発により消え去ったのだった。
しかしそれ以降、1号と2号の姿を見た物はいない。

勢い余ってそんな話をしてしまった。

とりあえず、つかさの部屋で再び着替えて自分の部屋へと戻る。
扉を開けると、こなたは目をキラキラと輝かせながら興奮気味に話しかけてきた。

こなた「かがみ!すっごい情報を入手したよ!」
かがみ「わ、わかったから、少し落ち着け。何よ、すごい情報って?」
こなた「怪傑かがみんってさ、なんと3人もいたんだよ!」
かがみ「へ、へえー、本当に?」
こなた「本当だヨ!力の1号に技の2号、そのすべてを受け継いだ力と技のV3!彼女らは世界をまたにかけ、地球征服を企む巨大な悪と闘ってるんだって!」

こいつ、もう話に尾ひれをつけてやがる。
なんだよ力と技って。地球征服って。

こなた「――でね、ついに1号と2号はその身を犠牲にして、悪の首領もろとも炎の中へと消えていったんだってさ!いやー、燃える展開だよねー!」
かがみ「はいはい。どうせまた、何かのネタかなんかでしょ?まったく信じらんないわよ、そんな話」
こなた「えー、少しくらいは信じようよ。せっかく教えてあげたのに」
かがみ「はいはい。もうわかったから……それにしても、つかさ遅いわね。何やってんのかしら?」
こなた「言われてみれば、結構時間たってるよね。ちょっと見てこようか?」
かがみ「いいわよ。そのうち来るでしょ」



それから数十分後、心なしか元気のない顔をしたつかさが飲み物を持ってきた。
戻ってくるまでやけに時間がかかったし、台所で何か失敗でもしたのかしらね。
私は飲み物を口にしながら、再びこなたが『怪傑かがみん』の最新情報をつかさにまくしたてる姿を少し呆れて眺めていた。


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