第8話 奇妙な異変

第8話 奇妙な異変

電気街に出るまで私とつかさは無言だった。
つかさはずっと俯き加減で元気がなかった。
確かにつかさが原因かもしれないが、ちょっと言いすぎたかもしれない。
気まずい・・・今はケンカとかしてる場合じゃなかったのに・・・。
私は少し反省して、つかさに声をかけた。

「あー・・つかさ、さっきは、あの・・ごめんね。言いすぎたよ」

「・・・え?あ、ううん、いいよ。私の所為だったんだし・・・」

つかさは頭を振って、苦笑した。
それでもまたすぐに俯いてしまう。

「ちょっと頭に血が昇っちゃってさ・・・」

私は後ろに付いて歩いていたつかさに笑いかけた。
こんなときだからこそ、冷静にならなくては。
不安な気持ちもあるけれど・・・もっと前向きに考えよう。

「で、でも・・・私の所為で・・・お姉ちゃんとゆきちゃんが、き、消えちゃ」

「・・・2人がもう助からないって決まったわけじゃないよ」

まだ、きっと間に合う。2人は無事だ。
過去の失敗を咎めたってどうにもならない。
今はできることを、する。
かがみとみゆきさんだってそんな簡単にやられるタマじゃない。

「う、うん!2人ともすごいもんね!しっかりしてるし、私たちなんかより頭いいし」

「私たちなんかよりって・・・どして複数形なのかな?つかさ?」

「えっ・・・?あ、違う違う、私、私だけっ!」

慌てて訂正するつかさ。私は自然と笑みがこぼれる。
それを見てか、つかさも笑顔になる。
うん、やっぱつかさは笑顔じゃないとね。

電化製品店が立ち並ぶアキバ。
パソコンはすぐにみつかった。

「よし、じゃあ早く3次元に戻ろっか。2人を助ける作戦は、それから考えよう」
「うん、分かった!」

2人は顔を見合わせて、頷いた。
それからポケットからフィギュアを取り出し・・・・

異変が起こった。

意識が、飛んだ。
突然だった。
徐々に朦朧とするのではなく、急に。
まるで誰かにいきなり意識をかすめとられたかのような。
私は立っていられずに、その場に倒れ込んだ。
目を開いているのに、焦点が合わずほとんど何も見えなかった。
不思議な感覚だ。
私は恐怖した。何が怖いのか分からない。
しかし本能的に私は恐怖していた。

「・・・こなちゃん!?こなちゃんっ!!」

つかさの声が、遠くで聞こえたきがする。
何が起きているのかさっぱり分からなかった。
私の視界がフェードアウトしていく。
耳も徐々に聞こえなくなっていく。


・・・。

・・・・・。

・・・・・・・。

私は、目を覚ました。
視界には夜のアキバの街並み。
耳にはにぎやかなアキバの喧騒。

私は誰かに抱き起こされた。
すすり泣く声が間近で聞こえた。

「・・・つかさ?」

抱き起こしてくれたのはつかさだったらしい。
何故だか目に涙をいっぱい溜め、泣いている。

「こなちゃん・・・?」
「うん」
「良かったぁあああ!目を覚ましてくれて・・・!」

つかさは涙を溢れさせながら私を抱きしめた。
私は混乱した。

「え?何何?何が起こったの?私、どうして・・・?」
「何も覚えてないの?」
「・・・うん」

さっきまで意識が飛びそうだったのが嘘のようだ。
私の身体は私の思うように動くし、目も耳もちゃんと見えるし、聞こえる。

「3次元に帰ろうって言って、パソコンの前まで来たのは覚えてる?」
「うん、それで、フィギュアを取った瞬間に、突然意識が遠のいて・・・」
「そうなの。それでこなちゃん、倒れちゃって、私すっごく驚いたよ。突然だったし」
「私も驚いたよ。何が起こったのか分からなくて。つかさ、私の事呼んだよね?」

遠のく意識の中、つかさが私を呼びかけてくれたことを思い出した。
そう言うとつかさは表情を曇らせて、奇妙なことを言った。

「う、うん。でも、何か・・・こう言っちゃ悪いんだけど・・一瞬、こなちゃんのこと分からなくなった」

「は・・・?分からない・・・?何ソレ?」

「なんていうか・・・名前が浮かんでこなくて、一瞬、うん、一瞬だったけど・・・」

つかさは思案顔で言葉を選びながら言った。
私はますます意味が分からなくなった。

「どういうこと?」
「え、どうって言われても・・・うーん・・・よく分かんない・・・気が動転しちゃってたのかなぁ」

名前を呼ぼうとした、けど名前が一瞬浮かんでこなかった、と。
歳をとって、脳が老化するとそういうことがたまにあったりするらしいけど・・・。
かと言って、この状況で、つかさが・・・?
確かにパニックだったのかもしれないけれど・・・何なのだろう。
何か、嫌な予感がする。

「それで、どうしたの?」
「え、うん、それで私はこなちゃんの手を引いて、パソコンから3次元に・・・」
「あ、そっか。ここ・・・3次元なんだ」

でも普通、人が倒れたりしたら、周りの人に助けを求めるようなモンだ。
何で3次元に行くことを優先したのだろうか。
パニックしていて思考がうまくできなかったのだろうか。

「うん、こなちゃんが倒れたの、2次元の異変かと思って・・・」

「え?」

予想外の答えに私は驚いた。

2次元の異変。
峰岸さんの影響によりオカシくされた2次元。
それが実態を伴って、起こる異変。
現に、ゆーちゃん含め、私たちの周りの2次元のみんなは今活力を失っている。
これも2次元の異変であり、峰岸さん曰く、原作者の力を行使して存在を封印しているらしい。
そもそもその異変から私たちを遠ざけるために、原作者は私たちを3次元に飛ばしたんだっけ。

その、異変?
・・・なのだろうか。
でも、現に3次元に戻ったとたんに意識は回復している。
ということは、これは2次元の異変だったのだろうか?

でもオカシいな。
異変が起こるにしても、あんなに突然起こるものなのだろうか?
前2次元に戻ったとき、みゆきさんが異変で眠りかけていたっけ。
でも、先ほどのは眠いなんていう生易しいレベルではなかった。

「そっか・・・」

運が良かった。
つかさが隣に居て、それにパソコンの目の前だったから。
もし、あれ以上長い間2次元に留まっていたら・・・どうなっていたんだろう。

一体、2次元はどうなってしまったんだ?

うん、でも結果オーライ?
つかさが異変だと気付いて、3次元に行くことを優先してくれたので良かった。
窮地に立つとなぜか頭の回転が早くなるなぁ・・・つかさのくせに~。

「ありがとう、つかさ。何か、助けられちゃったみたいで」
「えっ!?う、ううん、そんな大したことしてないよ・・・私だってパニックだったし・・・」

つかさは照れながらえへへと笑った。

「それに、あんなミスしちゃったんだし・・・私も、役に立たないとね」

まだ責任を感じているらしい。。
私はつかさに笑い返しながら、立ちあがった。

2次元の異変についてますます謎が深まってくる・・・

しかし、本来の目的を忘れてはならない。
私は2人を助けるために一旦2次元に戻り、そして再び3次元へと戻って来た。
しかし、実際に3次元に帰って来たところで、2人を助ける策があるわけではなかった。
再び廃ビルに攻め込むのもいいが、私たち2人が突撃したところで結果は目に見えている。

「・・・つかさ、何かいい案ある?」

「んぇ?」

突然話を振られてビクンと瞬きする。
こりゃ、何も考えてなかったな・・・。

「んー・・・えっと・・・」

最初は頑張って考えようとする姿勢だったものの、だんだん目がトロンとしてくる。
しばらくして、盛大に欠伸をした。

「・・・ぅー・・・」

眠そうに目を擦っている。

「ん、どしたの?眠いの?」
「ぅん、眠いー・・・」
「ちょっ、寝ないでよ・・・?これから2人を助けに行かなきゃいけないんだから」
「ぅ、うん・・・」

とりあえず、どうしよう。
再び携帯で峰岸さんとコンタクトを取るか?
それとも不意打ちを狙うか・・・不安な気持ちが何かかしらアクションを起こせと急かす。
携帯で時刻を確認すると、午後9時をまわっていた。
もうこんなに経ってたのか・・・マズいなあ、どうしよう。
どうりでつかさが眠いというわけだ・・・。
寝る場所の確保もそうだけれど、辺りはもう暗くなってきていて、危ない。

そのとき私は肩に重みが加わるのを感じた。
つかさが私の肩に寄りかかっていた。

「つかさ・・・!ちょっと!!寝ないでって言ったでしょ!?」

私は両手でつかさのを支えながら言った。
当のつかさは既に目を閉じている。
ていうか立ったまま寝るとか・・・大物だ。
ていうかこんな街中で寝られても困るよ。

「・・・重い」

つかさを支えているのに必死で、1歩も動けない。
どうしよう・・・。

「お、こなたんいたいたー!ww」

「え?」

見るとオタクの人たちが2人ほど私たちに近づいてくる。
見たところ、峰岸さん陣営ではなさそうだけれど・・・

「どこ行ったかと思ったぜwwwwww」

あ、そういえば。
私に協力してくれるオタクの人たちがいたっけ。
その人たちのうちの2人なのかな。

「お、つかさも一緒かwwwwみつかって良かったなwwwwwwww」
「他のみんなは一緒じゃないのか?もしかして、まだみつかってないとか?」

「え、あ・・・うん」

そっか。
かがみたちとはぐれたから探してくれるって言ってたっけ。
今は居場所まで判明しているけれど・・・・。

「悪いなー、俺たちも頑張って探してるんだけど、みつかんなくて」

「あ、あの、場所は分かるんだけど・・・」

「え?」

「えっと・・・」


「何だ、場所が分かってんなら話が早いぜwwwwww」
「どこにいんだ?wwww」

「えっと・・・廃ビル。峰岸さんたちに捕まっちゃってて・・・」

「ちょwwwwまじかよwwwwwwww」
「捕まってるてwwwwwwww」

私たち2人では無理かもしれない。
けど、オタクの人たちの力を借りれば、2人を助けだせる?
先ほど廃ビルにいた峰岸さん陣営の数は十人前後・・・あれで全部かは分からない。
けれど、あれで全部なのだったら、こちらとて人数に不足はないはず。

「うん・・・あの、協力、してくれるかな?」

「!!!!!!!!!」
「しますしますします全力でします」

そう言うや否や2人は携帯を取り出し、いじり始めた。
みんなを収集するのだろう。
私はその間、立ったまま寝てるつかさを揺すった。

「つかさっ・・・、起きてってば・・!」

反応なし。

「つかさ、ヤバいよ。お化けが出るよ!!」

「・・・え、お、お化け!?どこどこどこどこ!!!???」

飛び起きた。
まるで漫画のようだ。
・・・って、この世界から見ればマジに漫画のキャラだけどさ。

「むぅ、やっと起きたか。筋金入りの寝ぼすけめ」
「あ・・・れ?あ、あははは・・・」
「これからかがみたちを助けに行くからね」
「え・・あ、うん・・・。えーと・・・?」
「あ、えーとね、この人たちは私たちの味方だよ。協力してくれるんだって」

オタクの人たちを見ながら言う。

「そうなんだ~。ありがとうございます~」

お人好しなのか、怪訝な顔1つせず、全く警戒心のない笑顔でおじぎまでするつかさ。
まあ、つかさらしいと言えばつかさらしいけれど。

「いやいやいいってwwwwww当然だしwwwwwwww」
「こなたんは俺の嫁wwwwwwwwww」

数分後。オタクの人たちが10人前後くらい集まった。

「そいじゃーいきますかぃwwwwwwwwww」
「まさかあやのにファンがいたとはなwwwwwwww」
「ちょwwおまwwww失礼だぞっwwwwwwww」
「じゃあ俺たちはこなたん党員というわけでwwwwwwww」

というわけって何・・・?恥ずかしいからやめてほしいんだけどナー・・・。
んで、「こなたん党員」と称された集団+私とつかさは廃ビルの前までやって来た。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。