ゆたかがみなみでみなみがゆたか

sideゆたか

 ジリリリリリリリリリリリリ!
 「う…ん…ふあぁ、もう朝か…」
 何だか少し眠り足らない気分で私は目覚めた。
 「もう朝よー、起きなさーい!」
 下でどこかで聞いたような女性の声が聞こえた。私は急いでベットから飛び起き、そして自分の部屋に立った…?
 「あれ?」
 ふと私に妙な違和感が襲い掛かった。私の部屋じゃないような…
 そこが私の部屋じゃなくて、私の親友みなみちゃんの部屋だと気づいて、私は驚いた。
 確かに昨日はみなみちゃんとここで遊んだけど、私は家に帰ったのに…
 「…私何でみなみちゃんの部屋に…?あれ?」
 私はそこでもう1つの違和感に気づいた。
 「何だかいつもより目線が高いような…」
 いつもなら私が見上げなければ見えないものが、今では私と同じ高さだった。身長が伸びたのかなぁ…。
 とりあえず私は部屋を出てリビングにむかってみることにした。
 「おはよう」
 リビングにはみなみちゃんのお母さんがいた。
 「あ、おはようございます」
 私は笑顔でそう返した。…あれ?みなみちゃんのお母さんが少しびっくりしたような顔つきになってるんだけど…。
 私何か変なこと言っちゃったかな…
 「どうしたの、みなみ?口調が変よ」
 え?みなみ?私はゆたかなんですけど…と言おうとたが、嫌な感じがしたのでやめておいた。私は顔を洗いに洗面所へむかい、そこで鏡を見た。
 「え…あれ…私が…み、みなみちゃんになってる!!!」
 私は驚きのあまり大きな声を出していた。


sideみなみ

 「…あれ?ここはゆたかの部屋…どうして…?」
 私の朝一番はこの奇妙な言葉から始まることになった。とりあえずベットから起き上がり周りを確認してみる。
 …やっぱりゆたかの部屋だ…。私、昨日は自分の部屋で寝たはずなのに。
 「ゆーちゃーん!ご飯できてるよー!」
 下から泉先輩の声が聞こえた。…ゆーちゃん?
 私は部屋を出て辺りを見回したがゆたかの姿はなかった。それにしてもゆたかの部屋のドアノブってあんなに高かったっけ?
 私は泉先輩の声がする方へと足を進め、リビングについた。そこには泉先輩の父親であるそうじろうさんがいた。
 …なにがおかしくてそんなにニヤニヤしてるんだろう…?
 「ゆーちゃんが寝坊なんて珍しいね~」
 泉先輩が話しかけてきた。…え?ゆーちゃん?私はみなみなんですけど………もしかして!
 「え?ちょっとゆーちゃんどうしたの!?」
 「トイレなんじゃなのか?」
 「お父さん無神経すぎだよ」
 そんな泉家二人の会話が聞こえた。
 私は急いで洗面所に向かい、自分の姿を鏡で見てみた。
 「……え?私がゆたかに、ゆたかになってる…」
 私は茫然自失になった。


 結局その後、私はリビングに戻らず部屋でゆたかの携帯から自分の携帯に電話をかけてみることにした。
 …まさか自分の携帯に電話することになるとは…
 ゆたかの電話帳から自分の名前を探して電話した。それにしても自分電話番号って案外覚えていないものだ。
 電話を耳に近づけて、少し待ってみる。すると
 「ただいま、電話に出ることができません」
 今の私にとってはまさに非常な通告が私の耳を貫いた。
 「ゆーちゃ-ん!大丈夫!?」
 リビングから泉先輩の声が聞こえた。とりあえず怪しまれない為にも私はリビングへと足を運んだ。


sideゆたか

 「う~、どうしよう、やっぱり誰も出ないや」
 私がみなみちゃんの家の洗面所で大声を上げた後、みなみちゃんのお母さんが心配して来てくれた。
 私はなんとかごまかして、今みなみちゃんの部屋でみなみちゃんの携帯から私の携帯に電話してみたけど
 「電話に出ることができません」と返ってきた。
 「…どうしよう、みなみちゃん大丈夫かな」
 私は今私が使っている体の本来の持ち主であるみなみちゃんのことを思い浮かべた。みなみちゃん今頃どうしてるんだろう…。
 …もしかしたら私の体の中にいるのかも…。ううん、そうに違いないよ。
 「みなみー、もう出ないと遅刻するわよー」
 部屋の外からみなみちゃんのお母さんが呼んでいる。…今はとにかく学校に行こう、そうすればみなみちゃんにも会えるかもしれない。
 そう考えた私は急いで制服に着替えて家を飛び出した。
 …あ、朝ごはん忘れてた…


sideみなみ

 私はとにかく学校に行ってみることにした。どうして私がゆたかの体になっているのかはわからなかったが、
 学校に行けばゆたかに会えるかもしれない。そこで相談してみようと思ったからだ。
 私は急いで制服に着替えて、失礼だけどかばんの中身を確認し今日の時間割どおりに教科書を入れようとしたが、
 やっぱりゆたかは前日に用意を済ませていた。それにしてもゆたかの制服って体の大きさから考えて少し大きいような…。
 私はかばんを持って部屋を出て玄関で靴を履き替えようとした。
 「ゆーちゃん、一緒に学校行くからちょっと待って」
 泉先輩が私を呼び止めた。正直こんな状態であまり人と接したくない。
 「すみません、私今日は学校に用事があるので先に行きます…あ…」
 気づいたときにはもう遅い。泉先輩はまたしても心配そうに私に近づいてきた。…目線が一緒だ…。
 「ゆーちゃん、今日は何か変だよ、どうかしたの?」
 そう言いながら泉先輩は私のおでこに自分のおでこをくっつけた。…何だか恥ずかしい。
 それにしてもこういう風に熱を測られるのは久しぶりだった。昔はよくお母さんやみゆきさんにやってもらったりしていたが、
 今ではそんなことはしていない。さすがに恥ずかしい…。
 「ん~、熱はないみたいだね」
 私のおでこから泉先輩のおでこが離れた。何だか寂しい…。
 私は赤くなっているであろう顔を先輩から少し背けて、ゆたかの口調で、
 「だ、大丈夫だよ、いず…お姉ちゃん…」
 危ない危ない、一瞬泉先輩って言いかけてしまった。あ…また泉先輩が何か言いかけてる。
 私はいってきますと言って急いで家を飛び出した。すると後ろから
 「ゆーちゃん、自転車乗らなきゃ!」
 私は一旦家に戻って先輩から鍵を渡してもらった。




sideゆたか

 「まだかな…」
 私が学校に着いたのは予鈴の35分前だった。
 学校に着いた私はとりあえず正門で自分の体を待ってみることにした。
 すると「ヴヴヴヴヴヴヴヴ」
 と携帯のバイブ音が聞こえた。とっさに私は自分の…じゃなかった、えっとみなみちゃんの携帯を手にとって液晶に表示された名前を見てすぐに電話に出た。
 「もしもし」
 電話の向こうからは私の声が聞こえた。
 「もしもし」
 私は驚いたが一応私も返事をしてみた。…少しの沈黙、そして…
 「あなたはだれなんですか?」「あなたはだれなんですか?」 
 一字一句同じ言葉を同時に話してしまいまた沈黙。
 今度は私が
 「えっと、あなたは誰なんですか?私は小早川ゆたかですけど」
 私は自分の声に向かって聞いてみた。すると… 
 「ゆたか!よかった、大丈夫!?」
 「やっぱり、みなみちゃんだね。よかった」
 私は心底安心した。みなみちゃん無事だったんだ。…無事…?
 「ねえ、みなみちゃん、もしかして今私の体の中にいるの?」
 私は恐る恐る聞いてみた。返答は予想通り
 「…うん」
 やっぱり…。
 「朝起きたらゆたかの家にいて、鏡を見たらゆたかになってた」
 「私と一緒だよ。私も今みなみちゃんだもん」
 それにしてもなんでこんなことになったんだろう。
 「私もわからない。とにかくこのことはあまり人に知られない方が…あ…すみません…ブチッ、ツ-ツーツー」
 唐突に電話が切れた。私は携帯電話の電池を確かめたが、電池は満タンで電波は三本だった。 
 「みなみちゃんどうしたんだろう」
 私は正門の前で私の姿をしたみなみちゃんが来るのを待つことにした。
 
 
sideみなみ

 「すみません」
 …びっくりした、やっぱり電車の中で電話はまずかったみたい。
 私の声のゆたかと話しているといきなり横から車掌さんが来て注意された。初めてだったのでかなり驚いてあたふたしてしまった。
 …とりあえず学校に行こう、話はそれから…。
 電車は私の降りる駅にもうすぐ着くころあいだった。
 
 
sideゆたか

 「あ…えっと、おはようみなみちゃん…」
 「お、おはようゆたか」
 校門前で私達はようやく会うことができた。それにしても自分に挨拶するって何だか変な気分。でもお姉ちゃんならこういうの喜びそう。
 私は正門にある時計を確認した。予鈴まではあと25分、まだまだ時間はある。 
 私達は学校内のできるだけ人気のない所に移動して話をすることにした。


sideみなみ

 私はゆたかの提案に乗って学校の人気のないところを探し、なんというかよくある感じだけど体育館の裏に向かうことにした。
 しかしゆたかの少し早いスピードに私の体はいとも簡単に悲鳴を上げた。
 「うっ……」
 急に吐き気がこみ上げてきた。そういえば今の私はゆたかなんだ。
 「み、みなみちゃん大丈夫?」
 ゆたかが心配して私の顔を覗き込んできた。自分の顔に覗き込まれるなんて…。
 「だ、大丈夫…だよ、ゆたか…」
 私は何とか元気なふりをしたがゆたかは「そんなことないとい」言って私を抱えた。お姫様抱っこされるなんておもわなかった。
 しかもゆたかに…。私は気分が悪いのも忘れて回りを見たが幸い人はいなかった。それでもかなり恥ずかしい。
 「ゆ、ゆたか」
 「遠慮しなくていいよ、みなみちゃん。いつもみなみちゃんには助けてもらってるしこれぐらいしないとね」
 「あ…う…」
 ゆたかが私にほほえみながらそう言った。私ってあんなにきれいに笑えるんだ。ゆたかってやっぱりすごいな。
 「ここぐらいでいいかな?」
 「…いいと思う」
 色々考えている内に私達は体育館裏に来た。ゆたかはそこで私を下ろした。何だかほっとしたようながっかりしたような…。
 「みなみちゃん、これからどうしよっか?」
 …正直なんて答えたらいいかわからない。とりあえず
 「あまり人に気づかれないようにしないといけないと思う」
 と答えておいた。
 「どうしてこうなっちゃったんだろう?」
 確かにそれが一番の謎である。予想さえすることもできない。こればっかりは博識なみゆきさんでもわからないだろう。
 ふとゆたかを見ると少し心配そうな顔をしている。…どうしてゆたかだと私の顔であんなに表情が出せるのだろう?
 
 「とにかく私はゆたかとして、ゆたかは私として今日をやり過ごすしかない」
 と、私は提案した。ゆたかもこれには納得したが依然として懸案事項は残ったままの状態にある。
 ふと携帯で時計を見ると予鈴の3分前だった。私達は急いで教室へと向かったが、
 いつも通りにロッカーを開けて上履きを履いたためにゆたかは私の体で自分の小さな上履きを履こうし、
 私はゆたかの体で自分の大きな靴を履こうとしてしまった。
 要するに私達は体が入れ替わったことを忘れていつも通りに上履きを履き替えてしまった。
 そのため二人であたふたし、結局私達は遅刻した。
 


                   こうして私達の奇妙な一日は始まった。




一時間目 数学Ⅰ

sideゆたか(inみなみ)

 どうしよう、まさか私とみなみちゃんの体が入れ替わっちゃうなんて…。
 何だか授業にも集中できないけど、ノートはしっかり書かないとね。
 ふと私はみなみちゃんの方を見た。みなみちゃんは先生の話を熱心に聞いているように見えた。私も頑張らないと!
 と思ったときいきなり先生が
 「じゃあこの練習問題の一問目を○○、二問目を××、三問目を岩崎。今呼ばれた三人は問題が出来次第、黒板に解法と解答を書きに来なさい」
 と言った。って、え~~~~~~~~~!私先生の話全然聞いてなかったよ~、どうしよう…。
 と、とにかくこの練習問題の上の例題の解き方を参考にして考えてみよう。
 
 …たぶんこんな感じかな。よし書きに行こうっと。
 
 私は黒板に自分の解法と答えを書いて席に座った。あ~ドキドキした~…
 ん~、でも黒板に書かれた一問目と二問目の解答を見てるとなんだか違和感が…。
 私が座ったのを見計らい先生が一問目から順番に赤いチョークで添削していってる。
 一問目と二問目は丸みたい、三問目は…うわ~なんだかまたドキドキしてきた~。
 そして三問目…って先生なんで何も書かずに私が黒板に書いた私の解法とにらめっこしてるんですか?
 ……あ、私違う練習問題やっちゃった…。さっきの違和感はこれだったんだ。
 その後私は先生に少し怒られて、クラスメートに笑われた。
 ごめんね、みなみちゃん…。
 

sideみなみ(inゆたか)

 それにしてもどうしてこんなことになったんだろう。
 前では先生が熱心に説明をしてるけど私には届かない。私はひたすらぼうっと前を見ていた。
 ふと気になってゆたかを見てみた。
 なんだか奇妙な気分がする。私はここにいるのに私の体はそこで一緒に授業を受けてるなんて。
 それにしてもゆたかはすごいな。ずっと前を向いて熱心に授業を聞いてる。私も見習わないと。
 すると先生が練習問題を解く人を当てていった。岩崎と呼ばれたとき驚いて、体がビクッとした。危ない危ない今は私はゆたかなんだ。
 変なことをしてゆたかに迷惑はかけられない。しっかりしないと。とにかく私も練習問題解かないと。
 …どの練習問題かわからない…
   
 ゆたかは黒板にすごく可愛らしい丁寧な字で解答を書いて席に戻った。
 …あれ?なんだか他の二問と少し違うような…
 先生が問題に赤いチョークで添削を行っている。ゆたかの問題までは全て丸だった。
 そしてゆたかの書いた問題にさしかかったとき先生はチョークを止めた。
 「…岩崎、お前どこの問題をやったんだ?」
 「え、えっと86ページの練習問題12の(3)の問題です…」
 「やるのは練習問題11だ。話をしっかりと聞かないからこうなるんだ」
 「す、すいません」
 私の周りのクラスメートがクスクスと笑っているのが聞こえた。周りから見れば私が間違えた様に見えているだろう。
 ゆたかは耳まで真っ赤にしてうつむいている。
 ゆたか、大丈夫かな…
  

sideひより

 い、岩崎さんが解く問題を間違えるとは驚きっスね。少し疲れてるのかな…?
 でも珍しいものが見れたし、ま、いっか。
 それにしても岩崎さん耳まで真っ赤にしてる。何だか小早川さんみたい。
 で、その小早川さんは心配そうに岩崎さんを見つめてる。何だか今日はふたりの立ち位置が逆な気がするような…
 
 その数分後、私達の鼓膜を予鈴という福音が振るわせた。
 あー、やっと休み時間キターーーーーーー。
 一時間目から数学って息が詰まっちゃうよ。
 あ、そうだ岩崎さんにさっきはどうしたのか聞いてみよっと。
 「岩崎さん、さっきはどうしたの岩崎さんらしくないミスっスね」
 って岩崎さん無視することないよね。聞こえてないのかな。
 「何?田村さん?」
 「いや、小早川さんじゃなくて私が呼んだのは岩崎さんなんだけど」
 「あっ!」
 何だか今日は変な日だなぁ…
 


二時間目 化学Ⅰ

sideゆたか(inみなみ)

 う~~、まさかこんな時に解く問題を間違うなんて…。
 休み時間に田村さんにばれないようにみなみちゃんに謝っておいたけど許してくれたかな。「別にいい、大丈夫」って言ってたけど…。
 それにもしかしたら田村さんに怪しまれてしまったのかもしれないよ…。
 とにかく今度からはしっかりしないと!
 幸いにも今回の授業は当てられることもなく平和に過ぎていった。助かった~…。
 
 
sideみなみ(inゆたか)

 ゆたか、大丈夫かな。それにしてもなんだか物凄く熱心に授業を聞いてる。さっきのことなら気にしなくてもいいのに。
 私だって違う問題をやってたんだから。
 …あ、黒板を写し前に消された…。
 自分のノートだと気にならないけどこのノートはゆたかのなんだからしっかりと書かないといけないのに…。
 どうしよう、後で誰かに見せてもらわないと。
 私は周りを見渡した、田村さんはなんだか過ぎ勢いでノートに何か書いてる。板書してるのだろうか、それとも絵を書いてるのか。
 次にパトリシアさんを見た。パトリシアさんは結構熱心に授業を受けている。パトリシアさんに見せてもらおう。
 ……でも何だか板書できなかったことゆたかに隠すみたいでなんだか嫌。ここは正直にゆたかに見せてもらおう。


sideパティ

 やっとニジカンメがオわりました。ニポンゴわかってもカガクはつらいでス!エイゴでもわからないことだらけでしょうネ…。
 あ、ユタカがミナミとハナしていまス。ナニしてるのかな?ちょっとミにイってみましょう。
 「ゆたか…じゃなくて、みなみちゃん…?」
 「な、なにかなみ…じゃなくてゆたか…?」
 ナンだかフタリともぎくしゃくしていまス。
 「さっきの授業でノートにうつしきれなかったところがあって、ゆ…みなみちゃんのノート見てもいい?」
 「う、うん…はいこれ」
 「あ、ありがとう、ごめん」
 「いいよ」
 …やっぱりヘンでス。キョウのミナミはヒョウジョウがユタカのようにユタかでス。
 でもキョウのユタカはミナミのようにアマりヒョウジョウがデてません。まるでフタリのココロがイれカワってしまったようでス。
 …ていうかフタリともヨコにワタシがいることにキづいてますカ?



三時間目 英語

sideゆたか(inみなみ)
 
 …う~ん、やっぱりこの状況にはなれないなぁ。
 さっきだって呼び方間違いそうになっちゃったし…。
 でも朝よりかは大分なれてきたかな。
 …よく考えたら慣れることも大事だけど戻る方法を探すことのほうが大事なのかもしれない、…じゃなくて大事だね。
 本当にどうしたらいいんだろう…?そもそもどうしてこうなったんだろう?前日の晩ははいつも通りに布団に眠ったけど…。
 …寝相…かな…?
 やっぱり思い当たる物がないなぁ。
 あ、もしかしたら昨日じゃなくてもっと過去のことに原因があったのかもしれない。
 確か一昨日は…そういえば、学校で体育の時間に久しぶりに参加していつもよりかなり気分が悪くなっちゃって病院に行ったっけ。
 あの時は本当に皆に迷惑をかけたなぁ。う~ん、でもこのこととはあまり関係なさそう。…はぁ…。
 私は小さくため息を吐いた。
 …とにかく授業に集中しようっと。
 

sideみなみ(inゆたか)
 
 …この状況にはどうにも慣れることができない。さっきもついつい呼び方を間違えたし…。
 今日はゆたかに迷惑ばかりかけてしまっているし、しっかりしないと!
 …そういえばどうしてこんな不可解な事がおこったのだろうか…。
 特に前日の行動にいつもと違うことはなかった。ゆたかと一緒に私の家でおしゃべりしたり、一緒にチェリーの散歩に行ったぐらい。
 これらのことをしてもこんな事になるとは到底思えない。
 …じゃあその前の日は……確かゆたかが体育のときに倒れちゃってとてもひどい状態だったから病院に運ばれたっけ…。
 あの時はすごく心配したな。学校を早退してゆたかのお見舞いに行ったっけ…。幸い医者とその時一対一で話して、
 心配要らないって言われてすごく安心したのを今でもよく覚えている。でも顔はこわばったままだったと思うけど…。
 確かその後に泉先輩が病室に大きな音をたてて入ってきた。でもさすがにこれらのことは関係性がなさそう。
 …一体何が原因でこんなことに…、とにかくその理由を特定できれば解決法もおのずとわかる可能性が高い。
 次は少し長い休憩時間だし、その時に二人でまた人気のないところで話すことにしよう。
 


休憩時間(20分.ver)

sideこなた

 ふわ~、よく寝た~。ほんとこの時間帯の授業って眠たくなるよね~、ってこの前かがみに言ったら
 「あんたの場合は年中無休でそうじゃない」
 と言って頭をピシャリと叩かれたっけ。
 「こなちゃん、お弁当一緒に食べようよ」
 「私もご一緒させて下さい」
 いつも通りにつかさとみゆきさんがお弁当を持って私の席まで来てくれた。もうちょっと待てばかがみも来るだろう。
 「うん、食べよっか」
 とりあえず私は二人と近くの席を寄せ集めた。
 そうしてるとかがみがお弁当を持ってやって来た。私達は今日も四人でお弁当を食べる……はずだった。
 「ねえ、そういえば今日学校の玄関のところでゆたかちゃんとみなみちゃんが二人して急いで校舎の中に走っていったけどさ、
 しかも予鈴がなった後なんだけど。二人にしては珍しいよね?」
 え?ゆーちゃんは私よりも随分早く家を出たけど。…なんだか様子は変だったけど。
 それって人違いじゃない?
 「そんなことないわよ、確かにゆたかちゃんとみなみちゃんだったわよ。顔もちゃんと見たんだから間違いないわ」
 …どういうことだろう。私より早く出て遅刻?私だって今日は遅刻寸前だったのに。
 「みなみさんが遅刻するとは珍しいですね、今までそのようなことは一度もなかったと思いますよ」
 みゆきさんも不思議に思っているようだ。
 確かに真面目なあの二人ならそんなことはまずないと言ってもいい…あ!
 私は今日の朝に見たゆーちゃんの妙な様子を思い出しゆーちゃんのクラスに行くことにした。
 どうしたんだろう、ゆーちゃん。学校に着くまでに気分が悪くなったのかな。少し心配だ。
 かがみ達には適当に言っておいて、私は教室を出た。
 …あ!お弁当忘れるところだった…。
 

sideゆたか(inみなみ)

 三時間目が終わって、20分の休憩時間が始まった。
 とにかく今はみなみちゃんとお話したいな。色々考えたけどこのままみんなに隠しとおせる自信がない。
 もういっそみんなに話してしまったほうがいいのかもしれない。
 私はゆっくりと席を立ってみなみちゃんのいる元私の席へと足を進めた。
 

sideひより

 さーて、いつも通りに岩崎さん達と一緒にお弁当食べようかな。
 岩崎さんの方へお弁当を持って行った。岩崎さんの席には小早川さんがいた。二人で何か話しているみたい。
 「岩崎さん、小早川さん、お弁当食べよう」
 私は二人に言ったが
 「…ごめん、今日はちょっと用事がある」
 「ごめんね、田村さん」
 そうっスか。ん?やっぱり二人の言動がおかしい気がする。なんだか二人が入れ替わってる感じなんだけど…。
 あ、二人とも「ヤバッ!」見たいな顔してるし。本当に変だなぁ。
 「イッショにおヒルタべませんカ?」
 パティがお弁当を持ってきた。私はパティに二人は用事があるから今日は無理って言ってたって言った。
 その後小早川さんと岩崎さんは二人でお弁当もってどこかに行っちゃった。
 とりあえず私達は二人でお弁当を食べることにした。
 

sideパティ

 キョウのランチはヒヨリとフタリでタべることになりましタ。
 いつもならユタカにミナミもイッショにタべるけどキョウはいません。ヨウジがあるらしいでス。
 「一体どうしたのかな、二人とも」
 「ウ~ム、もしかしたらフタリともできてしまったのかもしれませんネ」
 とりあえずジョウダンでカエしましたがタシかにキになりまス。
 キノウとかにこんなコウドウをフタリがミせてもベツにおかしいとはオモいませんが、
 キョウはフタリともヨウスがヘンでしたからミョウにキになりまス。と、そこに
 「Yahoo!パティ、ひよりん!」 
 OH!コナタがトツゼンやってきましタ。どうしたのでしょうカ?
 

sideみゆき

 いつもなら四人で囲んで食べる昼食ですが今日は三人で食べています。
 なぜか泉さんがゆたかさんのところに行ったからです。ゆたかさんが遅刻したのが気になるのでしょうか…?
 四人で食べているのに慣れているせいか、少し寂しく感じてしまします。
 そういえば、先程かがみさんが小早川さんだけでなく岩崎さんも遅刻していたと言っていました。
 よく考えると今日、みなみさんと一緒に学校へ行こうとしてみなみさんの家を尋ねてみましたが、
みなみさんはすでに学校に行った後でした。
 無論私は遅刻はしていません。これは少々不可解ですね。後でみなみさんに聞いてみましょう。
 

sideみなみ(inゆたか)

 いつみならお昼を食べている時間だが、今日はゆたかと一緒に学校の屋上で食べることにした。
 それにしても未だに中身がゆたかとわかっていても自分の姿と話すのは中々慣れない。
 屋上に着いた私達は二人で座ってお弁当を食べ始めた。少し経ってからゆたかが話しかけてきた。
 「みなみちゃん、これからどうしよっか?」
 …私にもわからない。原因不明だしどうしようもない。
 「わからない、でもこのままこのことを皆に隠しとおせるのは無理だと思う」
 私は考えていたことを言った。そろそろ田村さんかパトリシアさんかが気づくとはいかないとしても違和感は感じているに違いない。
 「じゃあ話すの?」
 それも正直不安だ。もし誰かに話して学校中に広まりでもしたら周りから何か言われることは間違いない。 
 私はそういうのが苦手だから話すのは避けたい。でも誰かに話したい、話して楽になりたい。
 「…みゆきさんに相談してみるのは?」
 私はゆたかにそう意見を提示した。
 ゆたかは少し考えてるそぶりを見せてから、あまり時間をかけずに
 「そうだね、私もそれでいいと思う。このまま二人だけで抱え込むのは正直辛いしやっぱり他にも相談相手がほしいからね」
 ゆたかは微笑みながらそう言った。


sideこなた

 私がゆーちゃんの教室に着くとひよりとパティがお弁当を食べてた。教室を見渡してもゆーちゃんどころかみなみちゃんもいない。
 とりあえず私は二人を呼んでみた。
 「Yahoo!パティ、ひよりん!」
 パティが私に気づいて声をあげた。
 「OH!コナタ!どうしましたカ?」
 私は二人の席まで歩いた。
 「ゆーちゃんかみなみちゃんにちょっと用事があってね。ふたりがどこに行ったか知らない?」
 「ウ~ン、シりませんネ」
 「私もっス」
 …そっか、二人も知らないんだ。
 私は二人に今日の朝のゆーちゃんの様子が妙だったこととゆーちゃんが私よりもかなり早く出たのに遅刻したことを話した。
 「確かに妙っスね。それに今日二人ともなんだか様子が変だったっス」
 「ミナミはヒョウジョウユタかになってたり、らしくないミステイクをおかしましたし、ユタカはなんだかムヒョウジョウでした」
 ん~、何だか二人が体か心が入れ替っちゃったみたいだね。
 「そう、それっス!私もそう思うっス!」
 「ワタシもです!でもそんなことありえないですヨ。マンガやゲームじゃないですシ…」
 何だかそう言われると本当に二人が気なってきたな~。そうだ!
 「ねえ二人とも、ゆーちゃんとみなみちゃんを探しに行かない?」
 私がこう言うと二人は少し考えてから私の誘いを承諾した。

 とかなんとかあって今私達三人は学校の屋上の扉の裏から、ゆーちゃんとみなみちゃんが二人でお弁当を食べているのを覗いている。
 私達が着いたころには二人は座ってお弁当を食べているようだった。
 私達は三人で耳を澄まして会話を聞いてみることにした。
 「…私達何やってんでしょうかね?」
 ひよりんが疑問を口にした。
 「シー!ヒヨリ、シズかにするでス」
 「パティも声が大きいよ。まあここはなんか出て行きにくい感じだし空気読んでここで聞いてるんだから。
 今いきなり二人に声をかけるより大分ましだよ」
 と言って私はひよりんを静かにさせた。まあひよりんもまんざら二人の会話に興味のないわけではないらしい。
 私達は集中して二人の会話を聞きにはいった。
 「みなみちゃん、これからどうしよっか?」
 みなみちゃんが自分で自分の名前呼んでるんだけど。
 「わからない、でもこのままこのことを皆に隠しとおせるのは無理だと思う」
 …え、何を?やっぱり何かあったんだ。ていうかゆーちゃんの口調がおかしいよ。朝もこんな感じだったっけ。
 「じゃあ話すの?」
 何だか今日のみなみちゃんは表情がよく出てるね。
 「わからない、でもこのままこのことを皆に隠しとおせるのは無理だと思う」
 …やっぱり私達に何か隠してるみたい。
 「…みゆきさんに相談してみるのは?」
 あれ?ゆーちゃんいつからみゆきさんのことを高良先輩じゃなくてみゆきさんって呼ぶようになったんだろう?
 「そうだね、私もそれでいいと思う。このまま二人だけで抱え込むのは正直辛いしやっぱり他にも相談相手がほしいからね」
 ここで二人はお弁当を食べ終えたようだ。立ち上がってこちらの方へ来ようとしていたので私達は急いでその場から離れた。
 それにしても、ゆーちゃんとみなみちゃんは私達に何を隠してるんだろう…。
 その後は廊下でパティとひよりと別れて私は教室に戻った。その時には予鈴三分前だった。
 …私、お弁当食べてないよ。



四時間目 数学A

sideゆたか(inみなみ)

 やっぱりなかなか解決策は見つからないなぁ。とりあえず高良先輩には相談することにしたけど他の皆には話したほうがいいかな。
 でももしかしたら信じてもらえないかもしれないし…。…はぁ…。
 そういえば五時間目は体育だったっけ。もしかしたらこの前みたいに気分が悪くなって皆に迷惑かけないで思いっきり楽しめるかも。
 でも、みなみちゃんは…、私の体じゃ参加できないよね。私も見学しようかな…。 
 「じゃあこの練習問題の一問目を○○、二問目を岩崎、三問目を××。今呼ばれた三人は問題が出来次第、黒板に解法と解答を書きに来なさい」
 はう!まさかまたなんて…、どうしようまたどこの問題か聞いてなかったよ~。
 ふとみなみちゃんの方を見ると私に手でどこの問題か伝えてくれた。ありがとう、みなみちゃん。
 それにしても自分はここにいるのに体は違うところにあるなんてやっぱり不思議な気分だなぁ、どうにも慣れないよ。
 私は問題を手際よく解いて黒板へむかった。
 

sideみなみ(inゆたか)

 この授業の後は確か体育だ。でも次のお昼休みに高良先輩に相談しようと私は思っている。授業が終わればすぐに行かないと。
 …そういえば今、私はゆたかの体だから体育は見学したほうがいいかもしれない。
 今日の朝も気分が悪くなってゆたかに抱いてもらったこともあるし…。
 確か見学の場合はジャージに着替えて先生に見学することを伝えるのだったかな。したことないからよくわからない。
 とりあえず授業に集中しておこう。一時間目に様なことがまた起こるかの知れないし。
 そして予想通り同じことが起こった。まさか同じようなことが起こるなんて。
 でも今回はしっかりと話は聞いてたし大丈夫。ゆたかは……何だか不安そうにこっちを見てる。
 私は手でゆたかにどの問題をやるのか伝えてみることにした。
 


お昼休み

sideみゆき

 予鈴がなってお昼休みの時間となりました。まわりでは外に元気に出て行く人や誰かとおしゃべりしている人などがいます。
 私も少し体を動かしたい気分です。最近は受験勉強にとられる時間が多くて…。
 一年生や二年生のときよりゆったりできる時間は減っています。
 あ、そういえばみなみさんに少々聞きたいことがありましたね。すっかり忘れていました。
 幸い次の時間は英語ですので少し遅くなっても大丈夫そうですね。
 私は席から立ち上がりみなみさんのところへむかうため教室を後にしました。
 
 一年生の廊下を歩き、みなみさんのクラスが見えてきました。
 すると私の目線の先にみなみさんとゆたかさんの姿が見えました。
 私は呼ぼうと思いましたが小早川さんとみなみさんからこちらに近づいてきたので呼ぶのはやめました。
 「少し聞きたいことがあるのですが…、お時間は大丈夫ですか?」
 私はそう二人に話しかけました。


sideみなみ(ゆたか)

 ゆたかと一緒にみゆきさんのところへ行こうとするとみゆきさんが教室の近くにいたので私達は難なくみゆきさんと会うことができた。
 「少し聞きたいことがあるのですが…、お時間は大丈夫ですか?」
 「ごめんなさい、今はあまり時間はなくて……、みゆきさん、ちょっと着いてきてください」
 私はもう自分をゆたかと偽るのはやめていつも通りに話すことにした。 
 みゆきさんは少し不思議そうな顔していた。

 私達は体育館の裏の方へ行った。
 「どうしたのですか、みなみさん、小早川さん。何だか二人とも様子がいつもと違いますよ」
 「みゆきさん」
 私はみゆきさんにゆたかの体で話しかけた。
 「は、はい」
 「これから話すことをよく聞いてください。すべて本当のことです。信じられないかもしれませんがお願いします」
 みゆきさんの頭上には珍しくクエスチョンマークが浮かんでいるようだった。
 「みなみちゃん」
 ゆたかが少し心配そうに見つめている。
 「とにかく話を聞きましょう」
 みゆきさんがそう言ったので私は全て話した。今日のこの不可解な現象のこと、その全てを。
 
 
sideゆたか(inみなみ)

 みなみちゃんが高良先輩に全て話し終えた。高良先輩は驚いた顔していましたが、私とみなみちゃんの真剣な眼差しのせいか信じてくれたみたい。
 「…つまりみなみさんとゆたかさんの心が入れ替わってしまった、ということですね」
 「…はい」
 「…え~と、今小早川さんが話したということはみなみさんが話したということですよね」
 「はい、すいません、わかりにくくて…」
 「いえ…そうようなことは…」
 みゆきさんは少し困惑顔で話している。 
 「高良先輩、どうしたら元に戻れますか?」
 私は単刀直入に聞いた。
 「……すみません、私には全く…わかりません…」
 「…そうですか」 
 正直やっぱりとは思ったが、小さな期待が私の中にあったのかもしれない。少しがっかりした。
 「このことを私以外に話しましたか?」
 「いえ、みゆきさんだけです。あとできれば秘密にしておいてください。他の皆さんにはまた色々考えてから伝えようかなと思っているので」
 高良先輩の質問にみなみちゃんが答えた。
 「わかりました……けれども一体どうすれば……原因などで心当たりなどはおありですか?」
 「それも特には…、色々考えましたがそういう事は全くなかったと思います」
 私も聞かれたが、みなみちゃん同様に答えた。本当にこれからどうしよう…。


sideこなた

 あれ?みゆきさんがいないや。もしかしたらみなみちゃんのところかな。確か二人はみゆきさんに相談するとか言ってたっけ。
 じゃあ、今はみゆきさんはみなみちゃんやゆーちゃんと話をしてるのかな。
 それにしてもゆーちゃんどうしたんだろう、私達に内緒なんて。皆の誕生日はまだまだ先だし…。
 …私達が知らなくてみなみちゃんがだけが知ってることかぁ。何かあったっけ…。
 私は席に浅く腰掛けて上を向いて考えを巡らせた。…何だか私っぽくないね。
 あ、そういえば確か一昨日にゆーちゃんが体育で倒れて病院に運ばれたな。私が病室に行ったときみなみちゃんが先にいたっけ…。
 なんか医者から話を聞いてたみたいだけど、みなみちゃん何かすごく怖い顔してたような。
 ……まさか……そんなことないよね……でももしかしたらゆーちゃんの体に何かが……。
 ははは、まさかねー……。
 でも、さっきの二人の会話はかなり怪しい…。
 確かに病院にいたのゆーちゃんは少し苦しそうな感じはあったけど今は元気だし、
 でもじゃあ今日の朝のゆーちゃんの妙な様子はなんだろう。
 それに私より早く家を出たのにどうして私より遅い上にみなみちゃんと一緒なんだったんだろう。
 まさかもう時間がないからって遊んでた、いやどこかでおしゃべりしてたとか……。
 私はこの後つかさとかがみに話しかけられるまで上を向いて考えていた。
 あはは…そんなことないよね…。後でみゆきさんに二人と何を話したか聞いてみよう。
 …またお弁当食べるの忘れてた…



五時間目 体育

sideゆたか(inみなみ)

 結局高良先輩と話したけどあまり成果は上げられなかったなぁ。でも誰かに相談できて少しだけスッキリした気がする。
 今日の体育はバスッケットボール、私はいつも見学してるか、参加できてもみんなと同じように素早く走り回ることができない。
 それどころか途中で気分が悪くなって倒れそうになってチームを抜けてみんなに迷惑をかけちゃったりする。
 でも今回は違う。今はみなみちゃんなんだから。今までろくに参加できなかった分今日は張り切っていくぞ~!!!

 ホイッスルが鳴り私の試合が始まる。私は積極的に動いてボールを受け取ってはドリブルで相手に突っ込んでいった。
 でもなかなか上手くいかない、それどころか上手にドリブルがつけない。結果相手チームにボールを何回も取られちゃった。
 あんまり授業に参加してないツケが回ってきたみたい。でもすごく楽しかった。体を動かすと気持ちいいし、何だか気分が高揚する。
 …確かお姉ちゃんがそういうことを「最高にハイッってやつ」って言ってたっけ。
 結局私達のチームは四試合やって一勝しかできなかった。
 でもその勝った試合で私のシュートが始めて入ったときはその場にへたり込んでしまった。
 もう泣きたいぐらいに嬉しかった。今だけ心が入れ替わったことに感謝できる、…みなみちゃんには申し訳ないけど…。


sideみなみ(inゆたか)

 お昼休みにみゆきさんに相談したせいか、今は相談する前より少し気が楽な感じがする。
 今日の体育、私は見学せずに参加することにした。
 前回の授業でゆたかが倒れてしまったせいか担当教師は止めたが私はそれを聞き入れなかった。
 ゆたかも「無理しないほうがいいよ」って言ってくれた。
 でも、前回途中で抜けて、ただでさえ見学が多いのにこれ以上授業に参加しなでいるとゆたかの体育の成績が下がってしまいそうな気もした し、それにたまにはゆたかだって出来るところをみせたいはず、と思いできるだけ私は頑張ってみることにした。

 そして試合は始まった。私はいつもよりさらに気合を入れて臨んだ。ちなみに試合はハーフコートではなくオールコートだった。
 最初のうち私はドリブルで相手を抜き、そのままレイアップや三点シュートを連発し取れるだけ点をとった。
 この小柄な体は相手を抜いてリングの下まで向かうのにかなり好都合だった。でも数分で気分が悪くなって交代を余儀なくされてしまう。
 交代して脇で座って休んでいると、同じチームの休憩している人や他の人達が来て、
 「どうしたの小早川さん、すごいじゃない!」・「キョウのMVPはユタカですネ」・「今回は調子いいんだね、安心したよ」と言ってくれた。
 何だか私は嬉しくて、少し恥ずかしくなった。
 「小早川さん顔真っ赤だよ」・「あはは、かわい~」・「も、萌えるっス」とも言われた。
 何だかこの体も悪くないな、と思った、…ゆたかには悪いけど…。

 そうこうしているうちに今まで最高に楽しかった体育の時間は終わった。ゆたかもすごく楽しんでいた。
 ゆたかとは敵チームだったけど、一緒に試合をした時は本当に楽しかった。
 私はゆたかのシュートを阻止したり…背が全然足りなかったけど。私のドリブルしているとボールを取られて、また取り返したり。
 私は自分の体のこととか忘れていた。
 だからその後気分が少し悪くなってしまったけど、最高に充実した授業だった。
 ちなみに一番勝った回数が多かったのは私のチームだった。その後私はみんなにMVPに選ばれて軽い胴上げまでされた。
 …明日も確か体育あったはず、心が入れた替わった状態が明日まで続いてもいい気がしてきた。

 その後私達は教室で着替えた。
 昼休みに着替えたときはみゆきさんに相談した後で時間がなかって急いでいたからあまり気にしなかったけど、
 ゆたかって胸結構あるんだ…。
 皆に、特にゆたかにばれないように気をつけて少しだけもんでみた。…やわらかい。いいな…。
 私は小さなため息をついた。それは周りの喧騒の中に消えていった。


sideこなた

 ようやく五時間目が終わった、疲れた~。半分眠っていたような感じだったよ。
 そんなことよりみゆきさんに何を話していたか聞いてこよっと。
 私は席を離れてみゆきさんの席へ行った。みゆきさんは何だかぼうっとしていた。
 「ねえ、みゆきさん」
 「……」
 へんじはない ただのしかばねのようだ
 …じゃなくて、どうしたんだろう。何だか考え事で頭が一杯みたい。そういえば授業中も当てられてしどろもどろで答えてた。
 四時間目まではこんなことなかったのに、やっぱり原因はゆーちゃんとみなみちゃんの話を聞いたからかな。…たぶんそうだろうね。
 そんなに大変なことになっちゃってるのかな…。本当にゆーちゃんが心配になってきたよ。
 「みゆきさん!」
 私は少し大きな声で呼んでみた、すると
 「わひゃぁ!」
 と可愛い声を出した。
 「な、ななななんんですか、泉さん?」
 「…びっくりしすぎだよ、みゆきさん」
 「す、すいません、少々考え事があって」
 「ゆーちゃんとみなみちゃんのことだよね」
 私は単刀直入に切り出した。みゆきさんは驚いたような顔をした。
 「…泉さんも知っていましたか…」
 「まあね」
 知らないけどここはわかってるフリをしておく。さっき盗み聞きした時のゆーちゃんとみなみちゃんの会話で
 「でもこのままこのことを皆に隠しとおせるのは無理だと思う」って言ってたってことは皆には隠すつもりでいるってこと。
 たぶん皆には内緒にするようにみゆきさんは言われてるだろうけど、
 ここは知っていることにして適当に話を合わせれば大体のことはわかるかもしれない。
 だてに私もバカじゃないってことだね。今まで色んなゲームをしといてよかったよ。
 「しかし大変なことになりましたね、泉さんも心配ですよね…」
 みゆきさんはとても心配そうな顔で話し始めた。やっぱり何かあったんだ…。
 「…そうだね」
 私は適当に相づちをうった。
 「あんな状態の治し方なんて医学界には存在しませんし、私もそんな症例自体聞いたこともありませんし」
 「え……?」
 私はすごく嫌な感じがした。やっぱり病気?…治らない?
 「でももしかしたらすぐにでも…泉さん?」
 私はみゆきさんの言葉を聞く前にみゆきさんの席から離れた。……すぐにでも……死ぬ……とかだったり……。
 怖い、その後を聞くのが怖い、怖くて怖くてたまらない。
 どうしよう、ゆーちゃんが死んじゃったら…どうしよう…。私お姉ちゃんなのに…何で気づいてあげられなかったんだろう。
 私は予鈴が鳴り先生に注意されるまで呆然と立っていた。この後の授業は頭に入らなかった。

 …もう何も考えられなかった…。



六時間目 古典

sideゆたか(inみなみ)

 今日最後の授業は古典。…やっぱり難しいや。
 それにしても何だかこの体でいるのも結構なれてきたかな。まだ小早川や、ゆたかと呼ばれると反応したりしてしまうけど。
 そういえばさっきの休み時間みなみちゃん何だか体育の時間の時よりも少しだけ暗くなってた感じがしたけどどうしたのかな?
 あと田村さんとパトリシアさんが何だか私とみなみちゃんの方を見て内緒話をしてたし、どうしたんだろう。…ばれちゃったのかな…?
 私は教室にある時計を見た。授業終了まではあと15分だった。放課後に本格的に治す方法を考えたほうがいいね。
 …とりあえず、みなみちゃんと高良先輩と一緒にどこかに行くことにしよう。


sideみなみ(ゆたか)

 今日の授業終了まではあともう少し。今日は突然こんなことになって驚いたけど楽しいときもあったし、
 今はそれなりに落ち着いてきている。
 今日の放課後は事情知っている私とゆたかとみゆきさんで話し合って今後どうするか決めることにしよう。
 「次のところを…小早川、読んでくれ」
 …あ、今のゆたかは私なんだった。ちょっと油断してた。
 私は先生に指定されたところを読み、ホッと安心してまた考えを巡らし始めた。
 とりあえず放課後は三人で今後のことについて話し合ってみようかなと思う。

 その数分後授業終了を伝えるチャイムの音が学校中に響き渡った。



放課後

sideゆたか(inみなみ)

 今日の学校がやっと終わった。
 私はみなみちゃんを誘って二人でみゆきさんを誘って三人で、とりあえずみなみちゃんの家にむかうことにした。


sideみなみ(inゆたか)

 私はゆたかの願ってもない提案に乗り、みゆきさんと三人で私の家にむかうことにした。
 私はゆたかとみゆきさんのクラスに行き、みゆきさんを呼んで三人で帰った。
 そういえばみゆきさんのクラスを覗い時、泉先輩が自分の席でぼうっとしていた 。どうしたんだろう、授業は終わっているのに…。
 私達には全く気づいていないみたいだった。
 道中でも三人で色々話してみたが、結局解決策は見出せず、気がつくともう私の家についていた。

 みゆきさんは家に一旦荷物を置きに行った。
 ゆたかと私が庭に入るとチェリーがゆたかにじゃれついてきた。散歩に行きたいのだろうか…。
 …何だか少し寂しいな。最近チェリーは私にそっけなかったのにこういうときに限ってじゃれついている。
 ゆたかがうらやましい…。私はちょっとだけ微笑みながらチェリーをなでた。するとチェリーは尻尾を振ってじゃれついてきた。
 あれ?もしかして今のゆたかは私だって気づいたのかな、さっきまでじゃれついていたゆたかにはあまり構わなくなったし。

 私達はチェリーと一緒に家に入った。中ではお母さんが「久しぶりね、ゆたかちゃん」と言ってくれた。
 …さすがにお母さんにこう言われると悲しい。
 ゆたかはおじゃましますと言いかけたが、途中で気づいてただいまと言った。
 「こんにちは、おじゃまします」
 「あら、みゆきちゃん、こんにちは」
 みゆきさんが入ってきた。お母さんがうれしそうにみゆきさんを迎えた。
 その後私達三人は私の部屋に入った。


sideこなた

 「こなちゃん、こなちゃん、どうしたの?」
 「何ボーっとしてるのよ、とっくに授業は終わったわよ。ていうか学校自体終わったけどな」
 私は誰かに体をゆすられて何もない思考から目覚めた。
 「よかった~、どうしたのかと思ったよ~」
 「ほんと何やってんだか…」
 私をゆすっていたのはつかさだった。安心した様な顔をしている。
 横にはあきれ顔をしたかがみがいた。二人を確認した後私は周りを確認した。教室には生徒が数人いるだけだった。
 窓から差し込んでくる夕焼けが私にはとてもまぶしく感じられた。
 「あっ!」
 私はがばっと起きて時計を見た。時刻は六時間目終了から15分経っていた。もちろんみゆきさんはもうクラスにはいない。
 「もう、びっくりっせないでよ、こなちゃん」
 「何驚いてんのよつかさ。ほら、こなたも変な事してないで帰るわよ」
 「みゆきさんは!?」
 私は二人に聞いた。おそらく大声だったのだろう、二人は驚いていた。
 「ど、どうしたのこなた」
 「いいからどこ行ったの!?」
 「ゆ、ゆきちゃんならもう帰ったよ、ゆたかちゃん達と帰るって言ってたけど…こ、こなちゃん!」
 私はつかさからそこまで聞くと勢いよく立ち上がり、かばんも持たずゆーちゃんのクラスへ向かった。

 ゆーちゃんのクラスを覗くとそこにはひよりんとパティが二人で話していた。他にも何人か生徒がいる。
 「い、泉先輩、どうしたんスか?」
 「コナタ、どうしたネ?イキがアがってますヨ」
 教室にはやっぱりゆーちゃんとみなみちゃんの姿はない。
 「ゆーちゃんとみなみちゃんは!?」
 私は二人に聞いた。ここでも大きな声だったのだろう、教室の中にいる人の目線が私に集まった。
 しかし今の私には気にならなかった。
 「こなた!落ち着きなさい!」
 突然後ろから声がした。
 「カガミ!」
 私が振り向いて誰か確認するよりも早くパティが答えた。
 「あんた何をそんなに焦ってるのよ。とにかく落ち着け!」
 かがみは私の肩をつかんで結構な大声で言った。私は少しずつ落ち着いきを取り戻してきた。かがみの横ではつかさが肩で息をしている。

 「落ち着いた?」
 「う、うん、ごめんかがみ」
 「いきなり教室からでていくんだもん、びっくりしたよ。はい、かばん」
 教室に忘れてきたかばんをつかさが渡してくれた。…必死になって忘れてたんだ、今思い出したよ。
 「ありがと、つかさ」
 私はつかさにお礼を言った。
 「で、いきなりどうしたんスか?」
 ころあいを見計らってかひよりんが本題をぶつけてきた。
 「ユタカとミナミのことですカ?」
 話が早くて助かった。私はみんなに話した。


sideかがみ

 「うそ…そんな…」
 横ではつかさが顔を真っ青にしている。今にも泣きそうだ。私はつかさの手を握ってあげた。
 「ね、ねえこなた、さすがにそれはないんじゃない?」
 私もこなたの話はさすがにいきなり信じることはできなかった。ゆたかちゃんが死ぬなんて…。
 「た、確かに泉先輩の話は的をえてるっス」
 「…ワタシもそうオモいまス」
 田村さんとパトリシアさんはこなたの話を少なからず信じているようだ。
 「でも朝の様子が変で遅刻しただけでそれはいくらなんでも…」
 私はこなたに反論した。
 「でも…一昨日に病院でみなみちゃんが怖い顔をして医者と話してるのを見たし…」
 「で、でもそこでそんなゆたかちゃんの命の話なんてしないはずよ、まずは家族に話すもんでしょ」
 「…今日、ゆーちゃんとみなみちゃんが屋上で話してるのをひよりんとパティと一緒に聞いたんだ。
 そこでゆーちゃんが皆に隠してるってはっきり言ったんだよ」
 「違うことなのかもしれないじゃない」
 反論していく私にも何だか嫌な感じがしてきた。
 「それに二人はみゆきさんに相談するって言ってたんだ。だから五時間目の後の休み時間でみゆきさんに聞いてみたんだ」
 こなたの声がどんどん重くなってくる。
 「みゆきは何て言ってたの?」
 この先を聞くのが少し怖かったが、私はこなたに聞いた。
 「あんな状態の治し方なんて医学界には存在しませんし、私もそんな症例自体聞いたこともありませんって…言ってた…」
 こなたの目から一筋の涙がこぼれた。…これは本当にやばいのかもしれない。
 田村さんとパトリシアさんは無言でうつむいている。つかさはこなたの倍以上の涙を流していた。
 「…じゃあ…こなたの言うとおり…ゆたかちゃんは…」
 私の中でもこなたと同じ結論が出た。
 「みんな、ゆたかちゃんを追うわよ!」
 私達は五人でゆたかちゃんのもとに急ぐことにした。

 この言葉についてこない人は 誰もいなかった


sideつかさ

 ゆたかちゃんが…死んじゃうなんて…信じられないよ、信じたくないよ…。
 私はお姉ちゃん達と急いで校門まで来た。
 「そ、そういえばユタカはどこにイったんでしょうカ!?」
 パトリシアさんがお姉ちゃんに聞いた。
 「よ、よく考えたらわからないわね」
 確かによく考えたらゆたかちゃんがどこにいるか私達わからないや。
 隣ではこなちゃんが電話をしていた。…あ、今切った。
 「…みんな、ゆーちゃんはみなみちゃんの家だって」
 「わかったわ、ありがとうこなた」
 「こなちゃん、誰に電話してたの?」
 私が聞いた。
 「みゆきさんの家に電話したんだよ。みゆきさんやゆーちゃん達だと言ってくれないかもしれないからね。
 みゆきさんが一緒に帰ったんならみなみちゃんかみゆきさんのどちらかの家だと思ってたし。
 さすがにみゆきさんもお母さんに口止めするのを忘れてたみたいだね。みゆきさんがかばんを置きに来たときに言ってたみたいだよ」
 「す、すごいねこなちゃん。まるで探偵みたいだね」
 私は素直に感心した。他の三人も驚いているみたい。
 「あんた案外すごいじゃない。みんな、みなみちゃんの家に急ぐわよ!」
 再びお姉ちゃんの号令に従って私達は急いでみなみちゃんの家へとむかった。
 それにしてもここまで必死なこなちゃんなんて始めて見たよ。


sideかがみ

 私達は今、みなみちゃんの家にむかうために電車に乗っている。
 それにしてもこなたってすごいわね。こんなに頭がきれるなんてね。
 …やっぱりゆたかちゃんが大事なんだ。私にも妹がいるからその気持ちはすごくわかる。
 そういえば私が読んでる小説に、ピンチになったら急に頭のきれるって人がいたわね。正確には人だったものだけど。
 …さすがにこんなこと考えてる場合じゃないわね。…ゆたかちゃん…大丈夫かな…。
 こなたの話を聞く限りふざけているようなそぶりはなかった。それどころかこなたのマジ泣きなんて始めて見た。
 それにこなたの話には文句がつけられない。反論できるところが存在しなかった。
 電車がみなみちゃんに家の最寄り駅に近づくにつれて私の心臓の鼓動はどんどん高まっていった。


sideひより

 まさかこんなことになるなんて…小早川さん、どうして私達に教えてくれなかったんだろう。
 やっぱり日ごろの行いかな。そう言われると反論なんてできないし。
 でも今日の体育の様子から考えるとまだ信じられないよ。あんなに頑張って、すごく活躍してたのに…。
 もしかしたらもう時間がないからあんなに張り切って活躍していたのかもしれない。
 電車は私達の降りる駅の二つ手前だった。


sideパティ

 ユタカ…ダイジョウブでしょうカ…。
 すごくシンパイでス。せっかくここにキてできたシンユーなのに…それをウシナってしまうなんてたえられません…。
 …ミナミはそんなジュウヨウなことをシっていてどうしてワタシタチにオシえてくれなかったのでしょうカ?
 いくらユタカにクチドめされていたとしてもひどいでス。ワタシタチだってゆたかのシンユーなのに…。
 デンシャはワタシタチのオりるエキのヒトツテマエでしタ。


sideこなた

 心臓がバクバク鳴ってるのがすごくわかるぐらいに私は緊張してる。
 みゆきさんの「でももしかしたらすぐにでも…」って言葉を思い出すたびに私は心が壊れそうな程に締め付けられる。
 私は窓の外の景色を見てそれらの気持ちから逃避を試みた。しかし、外に走っている救急車が目に入り、私は咄嗟に目をそらした。
 ……怖いよ……。
 電車のスピードが落ち始めた。私達の降りる駅に着くようだ。


sideゆたか(inみなみ)

 みなみちゃんの家に来てもう30分ぐらい経ったかな。
 三人で色々話したけど具体的な解決策は全くない。
 とりあえず明日にはみんなを集めてこのことを言うっていうのは決まったけど…。
 私達ずっとこのままなのかな…。部屋は静けさに満ちていた。

 すると下からインターホンが鳴り響く音が聞こえた。
 みなみちゃんのお母さんが出たみたい。
 「みなみー!田村さん達が来たわよー!」
 私達は階段を駆け降りてドアを開けた。
 「ゆーちゃん!」
 するといきなりお姉ちゃんがみなみちゃんに飛びついた。みなみちゃんは困惑顔に少しばかりの朱を添えた顔をしている。
 「み、みなさん、どうしたんですか?」
 みゆきさんの驚いた声とともにドアのほうを見てみるとそこには、かがみ先輩につかさ先輩、田村さんにパトリシアさんまでいた。
 「岩崎さんどうして言ってくれなたんスか!?」
 「そうでス!ひどいですヨ!ワタシタチシンユーなのに…」
 私はいきなり田村さんとパトリシアさんから糾弾をうけた。
 「別に隠すことなかったんじゃない」
 「…そうだよ~」
 横では抱きつかれたままのみなみちゃんにかがみ先輩とつかさ先輩が諭すように言っている。つかさ先輩は今にも泣きそうだ。
 私はとりあえず皆にみなみちゃんの部屋へ行くように促した。


sideみなみ(ゆたか)

 私の部屋には今、私を入れて八人の人がいる。
 どうやらみんな私とゆたかを心配して来てくれたようだ。…やっぱりばれてたんだ。
 「どうして隠してたの?」
 泉先輩が口を開いた。
 「あ…えっと…余計な騒ぎを起こしたくなくて…」
 ゆたかが答えた。
 「私達すごく心配してたんだよ」
 「そうでス!」
 「別に話してもよかったんじゃない?」
 「そうだよ、ゆたかちゃんにみなみちゃん。それにゆきちゃんも」
 つかさ先輩がみゆきさんを糾弾した。
 「すいません、二人の意思を汲んだつもりでしたが私の間違いだったようですね」
 「それで…治す方法は…ないの…?」
 泉先輩がつらそうにみゆきさんに質問した。
 「すいません。三人で話したのですが私も聞いたことがない状態なので…」
 みゆきさんの声が若干しょんぼりしているように聞こえる。
 「ゆーちゃん、体は大丈夫なの?」
 泉先輩が私に向かって話した……あれ?泉先輩、ゆたかは私じゃなくてあっちなんですけど…。
 「…あの泉さん…」
 みゆきさんが怪訝な顔で泉先輩に話しかけた。
 「何?みゆきさん?」
 「泉さん達の言う私達の隠し事はどのような内容なのですか?」


sideこなた

 みゆきさんが隠し事の内容を聞いてきた。正直ゆーちゃんを問いただしたかったけど、
 何だか今のみゆきさんは無視したらやばそうな感じだったので答えることにした。

 私が話した後、ゆーちゃんにみなみちゃん、みゆきさんは唖然としていた。…え?どうしたの?何か変なこと言った?
 「わ、私が死んじゃうの!?」
 みなみちゃんが答えた。
 「え?いや死ぬのはゆーちゃん…じゃないの?みなみちゃんじゃないでしょ」
 「そ、そういえばどうして今日は岩崎さんが小早川さんの名前で反応して、小早川さんは岩崎さんの声で反応してるの?」
 ひよりんが尋ねた。そういえば屋上での会話でそんな事あったような…。
 「皆さん、小早川さんは死にません。あなた達は大きな勘違いをしています」
 みゆきさんが立ち上がって言った。え?どういうこと?
 「実は…」
 みんながみゆきさんの声に耳を傾けた。さっきまであんなに騒がしかった部屋は静まりかえっている。

 「小早川さんとみなみさんは、今心が入れ替わった状態なんです」

 一瞬の静寂が辺りを包み込みその後
 「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
 私達五人は大きな声で答えた。



その夜


sideゆたか(inみなみ)

 「じゃあね、みなみちゃん、高良先輩」
 「またね、ゆたか」
 「みなさんさよなら」
 日がかなり傾き、辺りは少し暗くなっていた。みなみちゃん達はみなみちゃんの家を後にした。
 今私はみなみちゃんの体なのでみなみちゃんの家に泊まることになった。高良先輩も一緒に泊まってくれるので安心できた。
 高良先輩が真実を話した後、お姉ちゃん達はすごく驚いていた。お姉ちゃんは私に泣きながら抱きついてきた。
 ちょっと恥ずかしかったけど、私は嬉しかった。だってお姉ちゃんが私のことすごく心配してくれたのが痛いほどわかったから。
 かがみ先輩はお姉ちゃんに何か言いたそうだったけど、泣いているお姉ちゃんを見て何も言わないことにしたみたい。
 つかさ先輩も安心したのか泣いていた。田村さんもパトリシアさんも目に涙を溜めていた。やっぱり皆には話したほうがよかったみたい。
 あの時のみんなの様子を見て私は思った。
 しかしこの状態を治す方法は結局思いつかなかずに、お姉ちゃんの「明日になったら治ってるよ」の一言でなぜか片付いた。
 私はみんなが帰った後、高良先輩とみなみちゃんのお母さんと一緒に晩御飯を食べて、その後一緒にお風呂に入った。
 二人で背中を流し合ったりしてすごく楽しかったな。
 体育で疲れたせいもあってか、お風呂はすごく気持ちよかった。
 …それにしてもみなみちゃんの家のお風呂ってすごく大きいんだね。びっくりしたよ。


sideみなみ(inゆたか)

 ゆたかとみゆきさんと別れて、私達は泉先輩や柊先輩達、それに田村さんやパトリシアさんと一緒に帰宅の途についた。
 「あんたねえ、本当にいい加減にしなさいよ」
 「あはは…今回はわざとじゃないし許してよ~かがみん」
 「上目遣いしても無駄だっつの」
 泉先輩の頭上に拳骨が降り落ちた。泉先輩はうめきながら頭を抱えている。
 それを見てつかさ先輩はおろおろし、田村さんやパトリシアさんは笑っている。私もついつい笑顔になってしまう。
 「それにしてもこばや…じゃなくて、え~と…岩崎さん…?」
 「何?」
 田村さんはまだ慣れていないようだ。
 「今日一日なかなか大変だった?」
 「…大変だったけど、すごく充実してた。いろんな人と話せたしそれに…」
 「それニ…?」
 隣からパトリシアさんが話しに入った。
 「…みんなが私達の事をすごく心配してくれているのがわかってうれしかった」
 私は言い切ると恥かしさのあまりうつむいた。
 「あはは…」
 「トウゼンですヨ!」
 田村さんは少し照れ笑い、パトリシアさんは胸をはって言った。…あんまり胸を強調しないでほしい…。
 「でも本当に安心したよ」
 泉先輩が言った。拳骨からは回復したようだ。
 「はい…本当にすいません。迷惑をかけてしまって」
 「いやいや、勘違いした私も悪いんだし別にいいよ」
 と言って泉先輩は笑った。本当に安心したような笑顔だった。…でも私とゆたかはまだ入れ替わったままなんですけど…。
 「でもまだ入れ替わった心を戻す方法はわからないまだだから安心できないよ、こなちゃん」
 つかさ先輩、ナイスです。
 「大丈夫だって、つかさ。一日経てば元に戻るよ」
 どういう理論かわからない。
 「それはあんたのギャルゲーの話だろ」
 …ギャルゲー…ですか…。
 泉先輩にかがみ先輩がつっこみを入れた。何だか面白くて私は笑った。
 「…ゆた、じゃなくてみなみちゃんも笑ってる場合じゃないでしょ」
 「まあまあかがみんや。私の持ってる漫画に、その姿で自分の望んだ事をやれば元の戻るってのが…」
 「だからそれは漫画の話でしょうが!」
 かがみ先輩の拳骨が再び快音を響かせた。こういうのを見ているとこのままでも悪くない気がしてくる。


 私達は駅に着くたびにバラバラになっていき、最後に柊先輩達が電車を降り、泉先輩と家にむかった。
 家に着いた私は泉先輩に続いて朝以来にこの家に入った。確か朝のときはすごく焦って大慌てだったっけ…。
 私は家に入り、泉先輩は晩御飯の準備を始めたので私も少なからず手伝った。
 その途中に泉先輩が「みなみちゃんはいいお嫁さんになるね」と言ってくれた。
 すなおに嬉しかったが父親の前ではゆーちゃんと呼んでくれないと怪しまれますよ。
 晩御飯が大体できて来た時泉先輩が何かをレンジで暖め始めた。
 「…何を暖めてるのですか…じゃなくて暖めてるの?」
 すると泉先輩はにんまり笑って「今日食べそびれたお弁当」と言った。泉先輩の晩御飯の量は二食分だった。
 そして晩御飯を無事に食べた私はお風呂に入ることにした。
 私が脱衣所に入ろうとすると泉先輩が一緒に入ろうと言っていきなり入ってきて服を脱ぎだした。
 私は遠慮したがなんだかんだで一緒に入ることになった。湯船はそれほど大きくはなかったが私達二人が入っても十分に余裕があった。
 私達は二人でずっとおしゃべりを楽しんだ。
 お風呂から上がった私は泉先輩の部屋で勧められた漫画などを読んでいた…いや読まされたと言うほうが的確な表現なのかもしれない。
 それにしてもすごい部屋だと思う。壁にはアニメのポスターが貼られ、パソコンや机の周りにはフィギュアが所狭しと並んでいる。
 しかも泉先輩はあきらかに男性が好むようなゲームし始めた。やらないか?と言われたがさすがにこれは断った。
 ただ漫画は結構楽しかった。そうしていると私…じゃなくてゆたかの携帯が鳴った。ゆたかからのメールだった。

 「こんばんわ、みなみちゃん
 そっちは大丈夫?こっちはとても楽しいよ。チェリーちゃんもなんだかすごくなついてくれてるしね。
 今日は迷惑ばかりかけてごめんね。あとありがとう。明日には元に戻ってるといいね。」

 私はそのメールに返事を送って部屋にある時計を見た。もう11時だった。いつもの眠る時間を大幅に過ぎていた。
 漫画の続きが気になったが私は泉先輩にオヤスミと言い、部屋を後にした。ていうか先輩受験生ですよね、勉強しないといけないのでは?
 そう思い、私はもう一度部屋に戻って泉先輩に言った。
 すると泉先輩はなんとか話をそらそうとしたが結局はパソコンを消して勉強し始めた。
 私はそれを確認してゆたかの部屋に戻り、ベットの上で今日一日を思い返しながら眠りについた。
 …が明日の学校の用意を忘れていたことを思い出して明日に必要な教科書をカバンに入れて、もう一度ベットに入り今度こそ眠りに落ちた。

 明日には元に戻っていることを祈りながら…



次の日


sideゆたか

 「う~ん、よく寝た~」
 私は大きくあくびをすると周りを見渡した。…あれ?ここはどこ?
 私は部屋を出ると隣の部屋からつかさ先輩が出てきた。すごく驚いたような顔をしている。
 「あ、あれどうしてかがみが…?ていうかどうして私はここに…!」
 つかさ先輩は何かに気づいて走ってどこかへむかった。私もついていった。
 つかさ先輩の向かった先は洗面所だった。そこでつかさ先輩は
 「えーーーーーー!私がつかさになってるーーーーーー!」
 私も鏡を覗くとそこには予想通り私の顔でなくかがみ先輩の顔が写っていた。
 「…昨日よりひどくなってる…」
 この私の言葉を聞いてつかさ?先輩が私の方を向いて
 「え…それって…、あの一応聞きたいんだけどあなた…誰?」
 と聞いてきた。
 「えっと…小早川…ゆたか…です…」
 「ちょっ!ゆーちゃん!?」
 朝の柊家に二人の双子?の声が響き渡った。
 

sideみなみ

 「う…うん…」
 私が目覚めるとそこは文字通り私の部屋のベットの上だった。
 「よかった…元に戻ってる」
 私は安心して横を見た…何で私が寝てるの?
 そして自分の体をよく確認してみた。長い桃色の髪、そして…大きな胸…これって…みゆきさん…。
 「う…みゅぅ……ふわ~~…」
 隣で寝ている自分が起きた。
 「あれ?ここどこ?…確かみなみちゃん家だっけ?」
 まさかこの人も…
 「あの、あなたは誰ですか?」
 私は尋ねた。
 「ふぇ?私はつかさだよ~」
 外では小鳥があさから美しい音色でコーラスを奏でている。
 私は朝からため息をついた。



                      こうして私達のさらに奇妙な一日が始まった。
ツールボックス

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