その日、かがみは珍しく自分のクラスで昼ご飯を食べていた。
「なー、柊。お前レズってホントか?」
唐突にそう聞いて来たみさおを、かがみが胡散臭そうに見つめた。
「…なんだ急に」
「いや、そういう噂聞いたからさ、ホントかなって」
「それを本人にストレートに聞くなよ…わたしがレズなわけないじゃない」
「そっかー、そうだよな」
「わたしは、女の子が好きなんじゃなくて、こなたが好きなだけよ」
「うわー、言い切ったぞ。それをレズって言うんじゃねえか?」
今度は、みさおがかがみを胡散臭そうに見つめる。
「言わないわよ…あー、でもつかさやみゆきもいいわよね。ゆたかちゃんもなかなか…」
「それでレズじゃないって言い切るか。どういう神経してんだ」
なにかうっとりしているかがみを見ながら、みさおはため息をついた。
「…つーかもう、あたしはどうでもいいのか」
「ん?なに、日下部。わたしに気でもあるの?…悪いけど、ソッチの趣味はないわよ」
「あたしもねえよ。つか、説得力ねえよ」
「みさちゃん」
二人の会話を聞きながら弁当をつついていたあやのが、なにかを思いついてみさおに声をかけた。
「そう言う事なら、わたしでよければいつでも…」
「あやの、うっさい」
そして、みさおに一蹴されていた。
- うだうだ -
一方、こなたのクラス。
「今日はかがみ、向こうなんだね」
こなたがつまらなさそうに、そう呟いた。
「こなちゃん、やっぱりお姉ちゃんがいないと寂しいの?」
つかさにそう言われ、こなたは頷いた。
「なんていうか、こう…オカズに乏しいんだよね」
「オカズ!?」
「チョココロネが主食で、かがみがオカズ」
「そ、そうだったんだ…よ、よく意味が分からないけど…」
「泉さん」
二人の会話を聞きながら弁当をつついていたみゆきが、なにかを思いついてこなたに声をかけた。
「わたしやつかささんでは、オカズになりませんか?」
「ゆきちゃん!わたしの名前もさらっと混ぜないでっ!」
「うーん、つかさやみゆきさんはねー」
「わたしは違うからね!こなちゃん!」
必死に訴えるつかさを無視して、腕を組んで悩むこなた。
「二人はなんか甘ったるいから、オカズと言うよりデザートかな?」
「…あーもー、何処から突っ込めばいいんだよー」
疲れきった表情で、そう呟くつかさ。
「何処からって…いやん、つかさのエッチ」
「変な意味に受け取らないで!」
「つかささん、わたしなら何処からでも…」
「ゆきちゃん、シャラップ」
「…はい」
再びかがみのクラス。
「…ってーか、峰岸って彼氏いなかったっけ。たしかコイツの兄貴だとかどうとか」
「箸で指すなよ柊」
かがみの言葉に、あやのは少し頬を赤らめた。
「うん、そうだけど…」
「じゃ、別にコイツにモーションかける必要ないんじゃない?」
「だから、箸で指すなっつーに」
「うん、だけど…」
あやのは益々顔を赤らめる。
「やっぱり、兄妹丼って憧れない?」
「うわー、よくわかんねえけど、その言葉すげーやばい気がすっぞあやの」
「そうかなあ…姉妹丼とか母娘丼とかなら分かるけど」
「分かるなよ柊。お前、どう考えてもレズだろ」
「だからね、みさちゃん。今度お兄さんと…」
「それ以上は、ものすげーやばそうだからもう黙れ」
みさおにきつめに言われ、しょぼくれるあやの。
「…日下部って意外とSなのね」
「…意地でもソッチ方面に結びつけるか」
しみじみ言うかがみに、みさおはあきれ果てたようにそう言った。
「つーか、柊もちびっ子のことしょっちゅうぶってるし、人のこと言えねーじゃん」
「心外ね。あれは、そういう流れで仕方なくなのよ。好き好んでぶってるわけじゃないわ」
「そうなのか?」
「ぶつよりぶたれるほうが良いに決まってるじゃない。欲を言えば踏まれ…」
「それ以上は、果てしなくやばそうだからやめれ」
みさおは暴走しそうなかがみの言動を遮ると、机の上突っ伏した。
「さて、お弁当も食べ終わったし。デザートにこなたを食べに行ってくるわ」
「結局向こう行くのかよ…もう、好きにすれー」
諦めたように呟くみさおを残して、かがみは教室を出て行った。
「ねえ、みさちゃん」
そのみさおの袖を、あやのが遠慮がちに引っ張った。
「ん、なに、あやの?」
「二人っきりになっちゃったね…」
「なってねーよ。ここ教室だっつーの。ほかの生徒めちゃ残ってるだろ」
みさおはあやののおでこをピシャリと叩いた。
- おしまい -
最終更新:2009年04月03日 01:06