ID:I.ECl1o0氏:かなた いん ざ ふぉとぐらふぃ

 私、泉かなたは写真立ての中にいます。何故、どうしてかは分かりません。ただ一つ言えることは、オヤシロ・・・・・・あー違う違う。さっきそう君が見てたアニメの台詞が混じってる。
 写真の中から見るそう君の部屋。新鮮、といえば新鮮なんでしょうか。外から見ると小さいテレビを見てるように、写真の中で私が動いているのでしょうか。本当になんだかよく分かりませんが、とりあえずしばらく様子を見てみることにします。


 ・・・同じポーズでじっとしてるのが辛いよ・・・。


  - かなた いん ざ ふぉとぐらふぃ -


 んーっと大きく伸びをする。そう君が部屋から出て行ってくれたおかげで、私はやっと自由に動く事ができました。幽霊でも肩がこるんだねーなどと、妙な感慨ひたっていると、部屋のドアが不意に開きました。私は慌ててもとのポーズにもどります。
「えーっと、箪笥の下から二番目の引き出しの奥の方っと・・・」
 入ってきたのはこなたでした。どうやらそう君に頼まれて、何か取りに来たみたいです。
「お、これだ・・・・・・うわーホントにこんなの持ってたんだ」
 どうやら目的の物を見つけたようですが、それが何なのかは怖くて見れません。
「・・・あれ?」
 部屋を出て行こうとしたこなたが、不意に足を止め私のほうを見ました。眉をひそめて思い切り不審そうな顔。
「今動いた・・・?」
 う、動いてない。動いてないわよこなた。心配しないでそう君のところに戻って。頼まれごとしてたんでしょ?
「ふむ・・・にーらめっこしましょ・・・」
 へ?
「あーぷっぷぇ!」
 ・・・う・・・くくくっ・・・あははははははっ!・・・な、何その顔!?どうやったらそんなのできるの!?あははははははっ!た、助けてお腹痛い~!
「うわぁ!写真が動いた笑った!お父さ~~~~ん!」
 し、しまったぁぁぁぁっ!


 しばらくして、こなたに手を引かれてそう君が部屋に入ってきました。
「ホントだって!動いたんだってこの写真が!」
「っつってもなぁ・・・信じられないぞ?」
 そう君はこなたの言う事をまったく信用していないみたいです。
「この写真がねぇ」
 真剣な顔でそう君が私を見つめてます。昔を思い出してかなり恥ずかしいのですが、ここは我慢です。ここで我慢しきればこなた妄言ということで、話は終わるはずです。多分。
「はい、お父さんそこで一言」
「かなた、愛してるよ」
 ・・・・・・・・・ぽっ。
「赤くなって照れたぁ!?」
 しまったぁぁぁっ!ってそれは反則!


「んで、どうしようかコレ?」
 実の母をコレ呼ばわりですか・・・。
「どうしようっていうか・・・なんでこんな事になってるんだ?」
 そう君、私もそれを一番知りたいよ。
「しかしまあ、アレだな」
 そう君が私の方を見る。うん、この顔はろくでもない事考えてる顔だ。
「写真だと、抱きしめられないのが心底残念だ」
 ソウデスネ。
「ああ、でもお父さん。オカズには使えるかもしれないよ?」
 トンデモないことさらっと言わないでぇぇぇぇっ!
「・・・・・・・・・」
 ホラそう君真剣に悩んでる!この人はそういう事ホンキでやりかねないからぁ!
「まあ、冗談はさておき」
 ・・・冗談でも実の母をオカズとか言わないで・・・そう君・・・絶対育て方間違えてるよ・・・。
「現状維持しかないんじゃない?どうしようとか言われても、どうしようもないし・・・こんな変な形でも、お母さんと話できるのはちょっと嬉しいかなって思うし」
 あ・・・うん、私もこなたと話せて嬉しいよ・・・内容アレだけど。
「そうか。じゃあ、とりあえずこのままでいいか。そうだな・・・普段は居間にでも置いとくか。俺の部屋だとこなた達と話しづらいだろうし」
 うん、ありがとうそう君。


 こうして私は、この家に戻ってきました。だいぶ不本意な形だとは思いますが、それは贅沢と言うものでしょう。愛した人と、愛そうとした娘と、もう一度言葉を交わせる・・・それだけでも幸せなのです、きっと。

「あーお父さん。寝るときお母さん部屋に持ってっても良いけど、変なシミつけないでね?」
「・・・あ、ああ。もちろんだとも」
 変なシミって何ぃっ!?そう君、私に何するつもりなのぉっ!?



 *



 日曜日。泉家はお昼ご飯の真っ最中です。
 写真化してる私は食べる事は出来ません・・・お腹は空かないんだけど食べたいなぁ・・・そう君の作るご飯って美味しいんだよね。同棲を始めた当初、そう君の方が料理が上手いって知ったときはそれはショックでした。その時の屈辱をバネに、私も料理がそれなりに上手くなったのだから、世の中何が幸いするか分かりません。
「しかし、今は俺たちだけだからいいけど、お客が来た時とか、かなたをどうするかなぁ」
 私のことは出来るだけ内緒にしといた方が良いでしょうね。こなたのお友達とか遊びに来る事があるそうだし、その時はどこかに隠してもらうとかなんとか対策を・・・。
「あ、そうそう。今日かがみ達遊びに来るから」
 いきなり今日!?そういう事は事前に言ってぇっ!!


- かなた いん ざ ふぉとぐらふぃ2 母娘の相克 -


「うーす、こなた」
「こなちゃん、こんにちはー」
「こんにちは、泉さん」
 こなたのお友達が三人、挨拶をしながら部屋の中に入ってきました。事前にこなたから名前と特徴は聞いているので、どれが誰かは大体わかります。そうです、私はこなたの部屋に据え付けられてます。お友達が来る直前にこなたに持ち出されて、こなたの机の上に置かれてます。お友達がいる間中私に耐えろと言うんでしょうかこの娘は。
「あれ?これってこなちゃんのお母さん?」
 つかさちゃんが私に気がつきました。出来れば気にしないで。観葉植物かなんかだと思って。お願い。
「うんそうだよ。ちょっと気分転換にね・・・良かったらつついてみる?」
 コラ娘。なにを言い出すか。
「つんつん」
 つかさちゃんも素直につつかないで!くすぐったい!顔はくすぐったいよ!写真立てのガラス越しだけどなんかくすぐったい!
「よしつかさ、もうちょい下をつついてみよう」
 どこつつかせるつもりなのぉぉぉぉっ!?
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「お母さん、声おっきいよ」
 しまった。
「あんたは・・・つかさに変なことさせないでよね」
 かがみちゃん冷静にスルー。何もなかったことにするみたいです。
「あ、あの・・・いま、今写真が・・・しゃべしゃべ・・・」
 みゆきちゃんはオロオロしてます。逆境に弱そうな子ね。
「みゆき。そんなことはない。あるはずないのよ」
 よく見るとかがみちゃん足とか震えてます。頑張って我慢してるんですね・・・そういえば私の声を至近距離で聞いたつかさちゃんは・・・。
「・・・・・・」
 凄い。立ったまま気絶してます。
「我が生涯に一片の悔いなーし」
 こなた。それ死に際のセリフじゃなかったかしら?


「えーっと、それじゃホントにこなたのお母さんなんですか・・・」
 つかさちゃんが意識を取り戻した後、とりあえず三人に事情を話しておきました。
「ちょっと・・・いえ、かなり信じ難い出来事ですが・・・」
 うん、私も未だにちょっと信じきれない部分があるんだけどね。
「お化け・・・なんですよね?・・・お化け・・・」
 うんまあそうなんだけど・・・おばさん怖くないよ?祟ったりしないから、そんなに怯えないで。
「変なお母さんでゴメンね」
 母親の写真を友達につつかせるあなたに変とか言われたくありません。
「いやー、みんながどういう反応するか見たくてねー」
 最初からバラす気満々だった訳ですね。この馬鹿娘は。
「・・・馬鹿って」
 馬鹿でなければ阿呆。
「むー・・・ていっ」
 わぶっ!・・・写真立て伏せるなー!
「さて、お母さんも静まったところで宿題の写しを」
 コラー!元に戻しなさい!あと宿題の写しって何!?そんなことのために友達呼んだの、あなたは!?
「こなた。静まるどころかボルテージ上がってるわよ・・・」
「しょうがないなー・・・よいせっと」
 ふーやっと元に・・・こらこなた!あなたって子は・・・・・・えーっと・・・そのペンはなにかしら?なにか凄く嫌な予感がするんだけど。
「だいじょぶだいじょぶ、水性だからね、洗えば取れるよ」
 いや、そういう問題じゃなくて・・・ちょ、ちょっと待って!・・・こーなーいーでー!

「なんか騒がしいと思ったら・・・」
「あ、おじさん。お邪魔してます・・・」
 うわーん!やめてー!描かないでー!
「あの、泉さんを止めなくていいんでしょうか・・・?」
「うんまあ、お互い楽しそうだからね」
「楽しそうなんだ・・・」
 びえーん!ぞうぐーん!ごなだが!ごなだがー!
「・・・奥さんマジ泣きしてません?」
「なんか母親と言うより、姉にいじめられる妹みたいだな・・・」
 なんでこんなことするのよー!こなたのばかー!



 *



「おじゃましまーす」
 あれ?誰か入ってきた。こなた、玄関の鍵閉めずに出て行ったのかしら。とりあえず、玄関の方に移動してみましょう。
「・・・・・・かなたさん?」
 玄関に立っていたのは、こなたのお友達のかがみちゃんでした。
「なに・・・してるんです?」
 何って移動です。最近気がついたんだけど、写真の中で上手く体重をかけるとすり足みたいに移動できるの。ズリズリと。
「ちょっと・・・いや、かなり不気味な光景なんですが・・・」
 失礼な。これに気がついたからこそ、そう君に頼らずに少しは自力で家の中を動けぶぎゃっ!
「あ、こけた」
 ・・・ごめんなさい。起こして。前に倒れると自分じゃどうにもできないの・・・。
「・・・前から思ってたんですけど」
 なにかしら?
「かなたさんって頭悪いですよね」
 なんでそういうことはっきり言っちゃうのぉぉぉっ!?


- かなた いん ざ ふぉとぐらふぃ3 月のように -


 かがみちゃんはこなたに呼ばれて家に来たそうなのですが、外でこなたと会い『ちょっとコンビニ行ってくるから、家に入っといて』と言われたそうです。人を呼んどいて出掛けるとは、我が娘ながら身勝手な子です。
 それにしてもかがみちゃん。いきなり人を頭悪い子呼ばわりとは、失礼じゃないですか?
「いやすいません。顔がこなたじみてるので、ついそれ用の対応を」
 それは何?私がこなたに似てるってこと?逆よ逆、こなたが私に似てるのよ。
「そうふてくされないで・・・えーっとそのこなたとは最近どうです?」
 どうといわれても。泥棒ヒゲとかドジョウヒゲとか、額に犬とか米とか中とか肉とか、よくあれだけ落書きのバリエーションがあるものだと・・・。
「あはは・・・あーっと、でもそれって写真立てのガラスの上からですよね?」
 ええ、流石のあの子も写真に直接描くほど鬼畜ではないようです。
「描かれた後にかなたさんがずれたら、落書きにならないんじゃないですか?」
 あ。
「思うんですが、かなたさんって・・・」
 言わないで。お願い。泣きそうだから。
「頭悪いですよね」
 だから言わないでってばぁぁぁぁぁっ!


「いや・・・その・・・すいません、つい・・・そろそろ機嫌直してくれません?」
 いーえ、もう知りません。なんで娘の友達にまでひどい扱い受けなきゃいけないんですか。こなたに何を頼まれたか知りませんけど、みんなで私をイジメようって事ですよね?そーですよね?
「だから謝って・・・ってあれ?今なんて?」
 みんなで私をイジメようって事ですよね?そーですよね?もう、そう君以外信じられません。
「いや、そこじゃなくてこなたにって・・・ってかさりげにのろけ追加しないでください」
 こなたに何か頼まれてたんでしょ?
「分かってたんですか・・・」
 なんとなくね。そういう勘だけは昔からよく働いてたから。
「こなたに『お母さんがわたしをどう思ってるか、少しでいいから聞いてみて欲しい』って頼まれまして」
 そう。
「あの・・・どう思ってるのか気になるなら、どうしてこなたはあんな事するんでしょう?」
 そうね・・・あの子はきっと、私に嫌われたいのか私を嫌いたいのか、どっちかね。
「・・・え」


 その夜、私はそう君に頼んで夜空を見させてもらいました。とても月が綺麗です。
「明日が満月だったかな」
 ごめんねそう君、黙ってて。
「なにを?」
 多分、明日が最後だと思う。私がここにいられるの。
「・・・そうか」
 なんだか言い出せなくて・・・ごめんなさい。
「かなた。こなたとはこのままでいいのかい?」
 ・・・伝えたい事はあるの。それが叶えば、それでいいと思う。
「・・・明日、だな」
 うん、明日。

 私は月を見上げて祈りました。この綺麗な月のように終わることが出来たら、と・・・。



 *



「ふーん、そうなんだ」
 そっけない返事。私が今日居なくなるということを、こなたはサラッと受け流しました。
「じゃあ、わたしは部屋に戻るよ。最後の日なんだし、お父さんと居たいでしょ」
 私はこなたの話がしたいの。
「わたしは嫌。話したいことなんかない。聞きたいことも何にもないよ」
 冷たい返事。予想はしてたけど、ちょっと胸が痛い。でも、それでも私はこなたに伝えたい。こなたが聞きたくなくても、私は話したい。
「やめてよ。わたしはもう、お母さんのことこれ以上知りたくないんだよ」
 こんな時、こなたを抱きしめられたらと思う。少しでも側で、こなたの近くで話せたらと思う。神様は意地悪だ。言葉だけでは伝えきれない事もあるというのに、何故私はこんな姿なんだろう。


- かなた いん ざ ふぉとぐらふぃ ふぁいなる 思い出となるために -


 私は最初、こなたは強い子だと思っていました。私を見て泣いたりするどころか、すぐにからかったり悪戯を始めたりして。私という存在を、私はいない人だという事実をしっかりと受け止めて、それでも私と自分なりに正面から向き合っているのだと、そう思っていました・・・でも、それは違っていたんです。
「これ以上知っちゃったら、明日からわたしどうなるのか分からなくなっちゃうよ・・・」
 こなたはただ知らなかっただけ。知らないから悲しまずにすんだ。知らないから羨まずにすんだ。
「お母さんいなくなって、泣きたくなったらどうすればいいんだよ・・・お母さんがいるかがみ達が羨ましくなったらどうすればいいんだよ・・・わたし、分からないよ」
 知ってしまえば、きっと今まで通りには過ごせない。
「だから・・・だからわたしは、そんなこと教えようとするお母さんが」
 だから、こなたは。そのことに気がついたこなたは。
「お母さんが大っ嫌いだ!」
 わたしを嫌おうとした。わたしに嫌われようとした。何も知らずに終わらせるために。

 こなたが居間から出て行った後、私はしばらくぼーっとしていました。すぐに追いかけたかったけど、うまく動けない自分の姿を思い出したんです。
「かなた、こなたのところに行くかい?」
 ありがとうそう君、でももう少しだけ考えたいの。この姿でどうすればこなたに伝えられるのかって・・・。
「でも、もう時間がないんだろ?」
 うん。時間はない。いい言葉も思いつかない。焦りばかりが心を埋めていく。後ほんの少しだけ想いが形になればいいのに。こなたのところに向かえる足が、こなたを抱きしめれる腕があれば。そう、こんな狭い写真の中なんか出て行きたい、こんな邪魔な写真立てのガラスなど通り抜けたい。この向こうに・・・こなたのいるこの向こうに!

 あ。

 思わず声が出た。私の足が、地面を踏む感覚。自分の手を見て、そして周りを見渡す。そう君と目が合った。これ以上はないってくらい、驚いた顔をしてる。多分、私も。
「かなた・・・お前・・・」
 奇跡と言うのか御都合主義と言うのか分からないけど、私は写真の外に出ていた。


 私が部屋に入っても、こなたは窓の外をじっと見ていました。多分こちらに気がついていないのでしょう。こなたが見上げる空。そこには大きな満月。もう月があんなに高い・・・本当に時間がないことが分かりました。
「お父さん・・・?」
 こなたが私に気がつきました。そしてこちらを見て驚きに目を大きく開きました。
「お、お母さ・・・」
 こなたの言葉を待たず、私はこなたを抱きしめていました。私とこなたの背はあまり変わらないから、胸の中に抱きとめるということは出来ませんでしたけど。
「どういうことコレ・・・?」
 ずっと、こうしたかった。あなたを抱きしめたかった。私の全てを伝えたかった。ただそれだけを、強く願っただけ・・・。
「馬鹿だねお母さん。こんなチャンスこそ、お父さんといればいいのに・・・なんでわたしなのさ」
 そう君はいいの。そう君の中で私はちゃんと思い出になれてるから。
「思い出に?」
 うん。しっかりと思い出になれてるから、私はそう君の中で生きていける。だから、懐かしむ事はあっても、その悲しみに潰れたりはしない。
「でもわたしには・・・」
 そう、こなたに私の思い出は無い。だから私はあなたの思い出となりに来たんだと思う。あなたの思い出となって、あなたの中で生きていくために、私はこうしてあなたを抱きしめている。
「分からないよ・・・急にそんなこと言われても」
 今はわからなくてもいいの。覚えていて欲しいの。私の声も、姿も、抱きしめているこの瞬間も。月日が経てば、きっとあなたの思い出になれるから。その時まで悲しくても・・・ずっと覚えていて欲しいの。
「意外とわがままだね、お母さん」
 うん、結構ね。そう君といたから、あんまりそう見えなかったのかも。
「お母さん・・・」
 こなたがギュッと抱きしめ返してきました。月がその輝きを増しています。あと少し・・・ほんの少し。
「お母さん。お母さん。お母さん。お母さん・・・お母さん・・・」
 同じ言葉を繰り返すこなた。その言葉の中に私を刻み付けて欲しい。

 そして、月が一際大きく輝いたその時に、
「・・・・・・行かないで!」
 絞り出すようなこなたの声が、私にはっきりと聞こえた。



 ごめんねこなた。こんなお母さんで。



- こなた いん ざ えぴろーぐ -

 その日わたしは、久しぶりにお父さんと一緒に寝た。寝付くその瞬間まで、わたしは泣き続けていた。
 それから数日間、わたしはひどく塞ぎこんでいた。学校でもひどい状態だったけど、事情を知ってるかがみ達がよくしてくれたおかげで、わたしは徐々にいつもの調子を取り戻していった。
 お父さんはあの日以来、お母さんの話をしなくなった。わたしから話を振らなくなった事もあるだろうけど、きっとお父さんはわたしを・・・そして、わたしに思い出をくれたお母さんを信頼しているのだろう。

 お母さんが思い出になるには、まだ大分時間がかかりそうだけど。いつかわたしが出会いに恵まれて子供が生まれたら、この話をしようと思う。
 信じてはくれないかと思うけど、その時こそ本当にお母さんが思い出になるんじゃないか・・・そんな気がするんだ。




 ・・・・・・ってな感じに、わたしは綺麗にまとめるつもりだったんデスケドネ。
「あ、そう君お醤油取って」
「おう」
 なんでまだいやがりますかね、この母親は。しかもなんかコツ掴んだらしくて、しょっちゅう写真からでてきやがるし。なんか飯まで食うし。
「何、こなた?また難しい顔して」
 わたしの涙を返せ。
「・・・・・・『いかないで』って言ってくれたくせに」
 多分それは一生の不覚として、あの日の日付が変わった瞬間の『あ、あれ・・・?』という、最高に間抜けな母の声と共にわたしの心に深く刻まれる事だろう。

 もしこの世に神様のようなものがいて、お母さんを失うわたしを哀れんで、このような三流の安っぽい奇跡を用意してくれたんだとすれば・・・わたしはその存在にこう言いたい。


 余計なお世話だコノヤロー。


- はっぴーえんど? -



 *おまけ



 ねえ、こなたちょっとやってみたいことがあるんだけどいいかな?
「・・・別にいいけど」
 ありがとう。じゃ、やってみるわね。

- かなた あうと ざ ふぉとぐらふぃ 高みより落つ -

 ほーら、高い高ーい♪高い高ーい♪
「・・・・・・」
 んー、こなたが赤ん坊のころ、こうやってあやしたのを思い出すわ・・・ほーら高い高ーい♪
「・・・・・・」
 どうしたの、こなた?やっぱり恥ずかしい?
「うん、まあ恥ずかしいね・・・ちっとも高くなくて」
 えぇ!?
「・・・チビ」
 チビって!?こなたの方が小さいじゃない!?
「わたしはまだ伸びる可能性あるからねー」
 何言ってるの。高校一年のときに5ミリも伸びてなかったくせに。私は高校のときは毎年ちゃんと1センチづつ伸びてたんですからね。あなたと一緒にしないで欲しいわ。
「・・・・・・」
 あ、何その目。言っとくけど私はもう動けない写真じゃないんだからね。簡単に落書きとかされ・・・あ、ちょ、顔怖っ。待ってそれ痛そう・・・。

「はう、また始まった・・・こなちゃん、わたしたちがいる事忘れてるんじゃないかな」
「お二人とも仲がいいですよね」
「そ、そうかな・・・なんかホンキで喧嘩してるっぽいんだけど・・・あれ、お姉ちゃん?」
「・・・ちょっとシメてくるわ」
「か、かがみさん。出来れば穏便に・・・」


 ばーかばーか!こなたのばーか!
「馬鹿って言うほうが馬鹿だから。今のはお母さんの方が三倍馬鹿だ!」
 何その理屈!?
「・・・いい加減にしなさーい!!」
 ひぃ!?
「かがみ!?」
「あんたら・・・ちょっとそこ直れ」
 直れって・・・。
「そんな怖い顔しないでよかがみ・・・」
「い・い・か・ら・す・わ・れ」
 は、はい。ごめんなさい・・・。
「すんませんした・・・」
「あんたらねぇ。客人ほっぽってなにしてるのよ?こなたといい、かなたさんといい。いつもいつも・・・」

「な、長くなりそうですね」
「うん、お姉ちゃんああなると長いよ・・・ゆきちゃん、わたしたちはちょっと外でとこっか?」
「そうですね・・・」


「かなたさんは母親とか大人の自覚ってものが・・・って聞いてるんですか!?」
 ひっ・・・ぐすっ・・・はい、聞いてます・・・すいません、ごめんなさい・・・うぐっ・・・。
「あ、あのかがみ・・・もうその辺で・・・流石にお母さん可哀相だし・・・」
「こなたもこなた!いつも変な風に茶化すからこうなるんでしょうが!」
「ひぃ!す、すみませんでした!」


 この後、説教は3時間ほど続きました・・・ぐすん。
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