ID:ecZtnV60氏:事件との関連性

最近、あるゲームシリーズの最新作が発売された。
特殊工作員である主人公を駆使し、世界制覇を目論むテロ組織を打ち砕く、
といった、いわゆるアクションゲームである。
進化したCG、人と寸分違わぬ滑らかな動き、更に音声まで付いたその様は
ゲームでありながらも、まるで映画のようでもあると、多くの人から絶大な支持を受けていた。
このゲームには過激な演出が多く、Z指定として市場に出回っている。
エロくはないがエロゲー同等の処遇である。
成人指定の壁は極めて厚い。
少年少女の純潔、精神を守るため、販売店は18歳未満と見られる者には18歳以上である
という証明がなされない限り販売は行わない。
故に18歳未満の者等にとっては成人指定作品は高嶺の花、であるはずだった。

泉こなた15歳、彼女はかのゲーム、『金属歯車単板参・蛇喰』にはまっていた。
15歳、やってはいけない年齢である。
そうと知りつつ、父、そうじろうは娘に買い与え、彼もまたこのゲームを楽しんでいた。
こなたはTV画面に食いつき、作戦を遂行していた。
ステージは敵の兵器生産基地、氷山の一角にひっそりと健立された秘密基地で今、
敵の大型兵器が完成されようとしていた。
主人公スネイクは敵兵を発見するや、暗視モニターや、その兵の隙を掻い潜り、
そしてひっそりと彼の首に腕を掛けた。ゴキリと鈍いを戸を立て、その兵の命は尽きた。
しかし次の瞬間、
「誰だ!」
スネイクは遂に見つかってしまった!
その兵の一声により、各所に散っていた仲間達が一斉に押し寄せてくる。
ーチートー
こなたは卑劣にも裏技を使っていた。
もし知る者がいたのなら、押し寄せる波に向って、こう叫んだだろう。
「慌てるな!孔明の罠だ!」
こなたは次々現れる『獲物』を見てにやりと頬を歪め、そしてスネイクは
どこからともなく裏技の賜物、映画、ターミネーター2でT800(シュワ)がぶっ放した
M134ミニガン、俗にいうガトリング砲を持ち構えた。
そして狂銃は無遠慮に無数の敵に牙を剥いた。

「むふふ…快…感♪」
数秒後、無尽蔵の砲は完膚なきまでに敵を撃ちのめしていた。
死んだ敵には血の色が滲み、しかしその他のゲームのように消え去りはしない。
死体は血みどろになりながら、その場に延々と残されるのだった。
大虐殺。ゲームだからこそ許される、大惨事。
少しゲーム脳がちなこなただったが、そこら辺は十分弁えていた。
つもりだった。
「こなたぁ~、実際にやってみたい、なんて、思っちゃだめだぞ?
 変な事件なんか起しちゃ、お父さん、心臓発作で死んじゃうからな?」
椅子に腰を掛け、新聞を読みつつちら見していたそうじろうが釘を刺す。
「ん~」
そっけない返事。
こなたはもう一度ボタンを押すと、誰もいない空間に轟音だけが響き渡った

それから3年、迷い無くオタ道を歩んでいたこなたは、犯罪とは無縁の人生を送っていた。
そんなこなたの元に、従妹のゆたかが下宿にやってきた。
経緯、理由については語るまでもなく。
オタ家に身を置いてしまったが為、微かにだが、着実にゆたかも2人の色に染まりつつあった。
2人の会話に参加する為に様々な言語を覚えたし、ひよりのエロ同人も既に目に入れてしまっていた。
かといって、ゆたか自身はそれから先へ進もうとはしなかった。
ゆたかの趣味はゆたかの趣味、それは不可侵の領域であるようで、不可出の領域でもあるようだった。
ゆたかにフィギュア趣味はないし、エロゲーの趣味も、同人趣味もない。
ゆたかはゆたか。それ以上でもそれ以下でもなかったのである。

こなたが高校を卒業してから数か月、ゆたかは2年に上がり、将来のことで悩んでいた。
いくつか候補が思い浮かぶものの、それが本当に正しい道かはわからない。
帰宅後、渡されたプリントになるべき候補を書いては消してを延々と繰り返しているのだった。
「う~ん、フラワーアレンジメント…絵本作家…」
様々な将来像が頭の中を過っていく。
しかしそのどれもが自分のなりたいモノと違う様な気がして、ゆたかは頭を掻きむしるのだった。
「私…本当に何になりたいんだろ…」

夏休み、専門学校の寮からこなたが帰省するのと同時に、ゆたかも実家へと帰省していた。
生憎両親は出かけていなかった。
ひぐらしの鳴き声を聞きながら、ゆたかは漫画を読んでいた。
夕方5時、その頃になってようやく両親が帰ってきた。
「お父さん、お母さん、お帰りなさい」
久しぶりの対面。満面の笑みを浮かべるゆたかに対して、
2人の顔は怒っているかの様に恐恐としていた。
「2人とも…どうしたの?そんな怖い顔して…」
2人はダイニングで一息つくや、ゆたかに座るように命じた。
「どし…たの?」
最初に口を開いたのは母のゆきだった。
「さっきね、兄さんの、そうじろう伯父さんの家に行ってきたの」
父は煙草に火を付け
「お前の将来の事でな」
「私の将来?」
「あの家の事はよく聞いている。母さんの兄さんだから悪く言いたくはないが…」
「ゆたか、兄さんの家、どう?兄さんに変な事されてない?こなたちゃもあんな性格だし…」
「2人とも、何言ってるの?伯父さん達とは仲良く暮らしてるよ?2人とも優しいし、それに」
「ゆたか、夏休みはずっとこの家にいなさい。それに新しい住居も探しておいてある」
「新しい…住居?何の…事?」
「お父さんの仕事の知り合いで学者がいるんだ。その人の所でゆたかを預かってもらうことにした」
トントンと進んでいく2人の会話。突飛すぎる内容に、ゆたかは半ば混乱しながらそれを聞いていた。


「もうあの家には戻れない…」
夜中、ゆたかは先程の話を思い返していた。
2人の話が実は嘘で、自分を驚かすだけの嫌な冗談、だったら良いと思った矢先、
ゆたかの携帯にメールがやってきた。
〔ゆーちゃん、今まで一緒にいてくれてありがとう。とても楽しかったよ。  
 それと変な道に引きずり込んじゃってごめんね。もう会えないかもしれないけど、元気でね〕
こなたからのメール。それと同時にもう一通。こなた同様謝罪の言葉と、その最後に、
〔荷物は明日にでも送るようにするから〕
そうじろうからのメッセージであった。
何度見返しても自分が戻れるという事には繋がらない。自分はもう戻れない。
いつしかゆたかは布団の中で嗚咽を漏らしていた。
涙とともに楽しい思い出が流れてしまいそうで、必死に泣くのを堪えたゆたかだったが、
現実がそれを許さなかった。
ゆたかはこれから別の家で生活をすることになる。こなたには会えない、そうじろうにも。
2人はゆたかにとってもう1つの、本当の家族だった。
卒業して別れるのではない、両親の独断での別れ、とても納得のいくものではなかった。
ゆたかはどうする事も許されず、ひたすら朝が来るまで涙を流していた。

それから数日、ゆたかは抜け殻のように生気のない、まるで生き死人の様な生活を送っていた。
返事をしても返すのは生返事、みなみから来たメールにも反してはいない。
涙が感情すらも流していたかのように、あの時以降ゆたかは虚ろであった。
お昼を食べ終え、ゆたかは自室へとやってきた。
宿題もやる気が起きない、何も、ただボーっとしているだけ、無為な時間だけが過ぎゆき
そして夕飯時にダイニングに呼ばれ、夕飯を食べて、その後入浴、それかた床に着く。
これが今のゆたかの生活パターン。
かつての様な発作が出ない事が奇しくも幸い、と呼べるものであった。
望まなくても時間は過ぎていく。
何もない
からっぽな時間。
心の隙間を埋めるのは、楽しかった泉家との思い出。それだけ。
あの家にはこの家にはないありとあらゆるモノが存在した。
戻りたい戻りたい戻りたい戻りたい……
願う事はただそれだけ。決して叶わぬ切な願い。
いくら考えたところで答えは決まっていた。
ゆたかの想いは、爆発しそうなまでに心の中で膨張していた。


ある日の夕方
ゆたかは本棚から一冊の漫画本を取り出した。
未来から来たネコ型ロボットが、未来技術の超道具を使って難題を解決する、
また、騒動が引き起こされる、といったアニメにもなった児童向け漫画であった。
ゆたかの生まれる前から連載されるその漫画は、絵本作家を夢見たゆたかにとって
理想の参考書と言える代物だった。
アイデアを少し拝借して自分の話に盛り込んだこともあったし、似たキャラクターも
登場させたこともいくらかあったほどだった。
でも、あんな事があったせいで、今ではかつてのような熱は抱けないでいた。
今のゆたかにとってその本は、数ある漫画のうちの、1冊でしかなかったのである。
その本は現在までに50巻まで発売されていて、ゆたかは全巻揃えていた。
ゆたかがあらかじめ持っていたのは5巻までで、
残りはゆたかの夢を知ったそうじろうがゆたかに買い与えた物だった。
これを読んでいるうちは泉家が身近に感じられる、そう思えるようになり
この本を読むことでゆたかは泉家との繋がりを感じ、自身を保ち続けていたのである。

現行最終巻、最後までを読み終え、ゆたかは天井を仰いだ。
時間はすでに午前の1時を廻っていた。
「読み終わっちゃった。…どうしよう…どうしよう…」
繋がりの潰えたのを実感し、ゆたかは抗いようのない不安を感じていた。
「私も過去へ行けたらな…」
漫画に出てきたアイテムが頭を駆け巡る。様々な願いを叶える不思議な道具達。
「私も異次元ポケットがあったらな…」
異次元ポケット、ネコ型ロボットのお腹についている、
道具の沢山詰まった不思議なポケットである。

「私も…わたしも……わた…そうだ!」


ゆたかは何かを閃き、すっくとベッドから起き上がった。

ゆたかは確信していた。
「私だってもってるじゃない。何で気がつかなかったんだろ」
ゆたははパジャマをめくりあげると、色白のお腹が姿を現した。
「えへへへ、過去に行けばやり直せるんだ!」
確信、その腹を撫で、ゆたかはにっこっりと微笑む。
「待っててね、こなたお姉ちゃん、そうじろう伯父さん」
確信するからこそ、ゆたかは卓上のカッターを握り、その刃をせり出した。
そしてそれを腹にあて、一息に刺すと同時に、一気にかっぴいた。
「ぁぁあぁ!!!!い、痛たたた………ど、どこでも…タイム…マシン…!」
溢れる出る腸を掴み、ゆたはは絶え絶えの声でそう叫んだ。
ゆたかは確かに耳の奥で道具出現時のファンファーレを聞いた気がした。
「こなたお姉ちゃん…伯父さん…今…行く…ね…」
薄れゆく意識の中、ゆたかは時間が巻き戻っていくのをひしひしと感じていた。

タイムマシン、走馬灯号はゆたかを乗せて時を逝く。
行き着く先は過去でも未来でもない、誰も知らない無の世界。
「あんな〇と…いいな♪…でき…○ら…いいな♪…あんな夢…こんな夢…た○さん…ある…○…ど」
あの頃に戻れるとゆたかは期待に胸をふくらませ、そして静かにその眼を閉じた。

流れ出る血がまるで手向けの花のように、ゆたかの周りで妖しく咲き乱れていた。

ー終ー
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