社会技術研究論文集 vol.3,241-258,Nov.2005
馬場健司・木村宰・鈴木達治郎
http://shakai-gijutsu.org/ronbun3/p241-258.pdf
ウィンドファームの立地に係わる環境論争と社会意思決定プロセス
・大規模風力発電所:ウィンドファーム
-地球温暖化対策として公益性の高い事業
-だが、大規模な地域開発を伴うため
環境論争が起こる。
・欧米での取り組み
-@アメリカ
AWEA(American Wind Energy Association)
パブリック・インボルブメント(PI)手法について議論
-@イギリス
DTI(通商産業省)
洋上での立地に際して戦略的環境アセスメントを実施
⇒欧米では風力発電所開発におけるステークホルダー同士の
コミュニケーションの重要性が認識されている
⇒しかし、日本での風力発電所開発において参加型手法は
あまり行われていない。
・ステークホルダー同士のコミュニケーションとNIMBY
-NIMBYとは
Not In My Back Yardの略。
その施設の必要性・公共性は理解できるが
自分の家の側にあってほしくないという感情。
-NIMBYを発生させる可能性のある施設の立地に係わる
意思決定プロセスにおいて、市民やステークホルダーの
意思の反映や関与が求められるようになっている。
・ウィンドファーム建設の特徴
-従来のエネルギー施設を建設していた業者が
風力発電施設を作るわけではない
(従来までの意思決定プロセスが通用しないことが多い)
-環境影響評価法の対象外
-「重要な電源開発に係わる地点の指定」対象外
・ウィンドファームの立地を巡る価値観の対立
-地球環境(マクロ)/地域環境(ミクロ)
-保全/保護(環境倫理学の視点による)
-保全(conseervation)
功利主義的な発想に基づいて、人間の将来の
消費のために自然資源を保護する、
従って開発行為も容認する、という考え方
-保護(preservation)
環境主義的な発送に基づいて、道徳的適格性や
法的な当事者適格性を自然物そのものに認めつつ
人間の活動を規制して自然資源を保護する、という考え方
・価値観の対立についての研究者の見解
-鬼頭
地球全体主義(地球をすべての価値判断に優先して尊重する)
に疑問を投げかける。
地域での社会的公正さと普遍的倫理を折衷し、
ローカルな環境倫理のあり方を模索
-桑子
温暖化対策というグローバルなレベルでの公共性・
公益性は必ずしもすべてに優先されるものではない。
当該事業や計画、政策がローカルレベルでの公共性・
公益性と何らかの齟齬を持つ可能性がある場合、
当該地域における新たな価値選択を模索する「場」が
必要である。
・参加型手法の必要性
-参加型手法とは
多様な立場、利害、関心をもつ人々を
意思決定プロセスに関与させるための「場」や
手続きを整える取り組み
-参加の「場」の意義
- 多様なアクターに対して平等な機会を提供する
-公共性・公益性について理性的に議論することで
それぞれの私的利益から離れた公共的判断を
可能にする
-判断の質を高められる可能性がある
-人々の公正感を満たせる可能性がある
-「場」で決定した事項を受容してもらえる可能性が高まる
・参加の「場」における専門知/現場知の扱い
-専門知
-現場知:地元の環境、その問題に係わる現場感覚
-藤垣
不確実性を含む科学技術の導入に際しては
科学的合理性と社会的合理性を同時に持つ知識が
必要と指摘。
-馬場・木村・鈴木
専門家と一般市民の双方向で知識を共有・理解する
必要がある。
相互理解を促進することで社会的学習が深まる。
-その地域における公益とは何か
-「場」における課題設定は重要:抽象⇒具体
・課題設定と公式・非公式プロセス
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