彼女の心の中にはいつからか鬼が住み着いてしまいました。
彼女はそれを必死で表に出さないようにしていました。
しかし、一度表に出てしまうと、あっという間に彼女は鬼に支配されてしまいました。
そして、瞬く間に終焉を迎えてしまいます。
これは・・・もしかしたらあったかもしれない、猟奇的な彼女の物語。
かがみ「――でさ、それが臭くってさー―」
こなた「うんうん、そうだよねぇー」
つかさ「そうだねぇ、あはは」
こなた「そういえばさ、かがみんや」
かがみ「ん?何よ?」
こなた「もしかして、彼氏できた?」
つかさ「・・・え?」
かがみ「はぁ?何言ってるのよ。いるわけないでしょ」
こなた「そぅ?でも最近S君と仲良くない?」
かがみ「あ・・・あれはちょっと話が合ったから、話すようになっただけで別にそんな――――」
つかさ (お姉ちゃんに・・・彼氏・・・?嘘だよね・・・?)
つかさ「・・・・・・っ!」
かがみ「ん?つかさどうしたの?具合でも悪い?」
つかさ「う、うぅん、そんなことないよ。大丈夫大丈夫」
かがみ「そう?ならいいけど」
こなた「そうやって話を方向転換するとこも怪しいなぁ」
かがみ「あんたはもう黙ってなさい」
その時たしかに・・・私の中に何かが芽生えました。
数日後、下校中にお姉ちゃんと二人きりになった私はとある質問をしてみました。
つかさ「ねぇお姉ちゃん。」
かがみ「ん?どしたの?」
つかさ「あの・・・ね、変なこと聞くんだけど・・・」
かがみ「うん」
つかさ「私とお姉ちゃん、ずっと一緒にいられるかな・・・?」
かがみ「へ?・・・う~ん、そうねぇ。どちらかが結婚するまでは一緒じゃないかしらね」
つかさ「・・・そっか、そうだよね・・・」
かがみ「うん、けどどうしたの急に?」
つかさ「あ、うぅん何でもないよ。ちょっと聞いてみただけ」
かがみ「そっか。でさ、今日こなたがさ――――」
つかさ「・・・・・・」
日に日に、私の中の「ソレ」が大きくなっていくのが分かりました。
「ソレ」が何なのか分からないけど、とても怖くて、悲しかったです・・・。
お姉ちゃんと一緒にいると「ソレ」はおとなしいままで。
だから、私はお姉ちゃんと、ずっと一緒にいないとダメなんです。
・・・ずっと・・・一緒に・・・。
それから数日後。私はこなちゃんとお姉ちゃんと一緒に帰るために、お姉ちゃんの教室に行きました。
こなた「かがみ様~一緒にかえりまっしょ~ぅ」
かがみ「様付けで呼ぶな!っと、ごめん。あたし今日ちょっと用事あるから。先帰ってて」
こなた「え~なんだよ~つれないな~ゲマズ行くならあたしも行くよ!」
かがみ「それはこないだ行ったでしょ・・・とにかく、先に帰っててよ」
こなた「ちぇ~、しょうがないなぁ。つかさかえろー」
つかさ「あ・・・うん。じゃあお姉ちゃん、また後でね」
かがみ「うん、気をつけてねー」
つかさ「・・・・・・」
こなた「しかしあのかがみの反応っぷり。ありゃきっと男だ!うん!」
つかさ「おと・・・こ・・・?」
こなた「かがみにもついに春が来たんだね。春~」
つかさ「・・・・・・さない」
こなた「ん?つかさ何かいった?」
つかさ「え?あ、何でもないよ!・・・何でも・・・」
こなた「ふぅん?しかしほんと熱いね。夏はこれだからいやだよ」
つかさ「・・・・・・」
夜の7時になってもお姉ちゃんは帰ってこなかった。
つかさ「遅いな・・・お姉ちゃん・・・・・・あれ?家の外で話し声が聞こえる・・・」
???「今日はほんとにありがとね。わざわざ送ってもらっちゃって。楽しかったよ」
つかさ「・・・お姉ちゃん・・・と・・・誰・・・?」
窓から家の外を覗き見る。そこにいたのは・・・。そこにあった光景は・・・。
かがみ「!?・・・ちょ、こんなとこでキスなんかしないでよ!家の前だし、恥ずかしいでしょ!」
男の人「・・・ごめん、いやだった?」
かがみ「・・・うぅん・・・嬉しい・・・・・・あ、もういい加減帰らないと家族が心配しちゃうから、また明日ね!」
つかさ「・・・嘘・・・でしょ・・・?嘘だよね?・・・お姉ちゃん?」
つかさ「アハハ・・ハハ・・・アハハハハハ!!」
その時・・・私の中で、何かが崩れ去った。大切な、何かが。
晩御飯を食べ終えた後、私はお姉ちゃんの部屋へと向かった。
つかさ「ねぇお姉ちゃん・・・」
かがみ「んー、どしたのー?」
つかさ「さっきお姉ちゃんと一緒に外にいた男の人・・・誰かな?」
かがみ「うわ・・・見られてたんだ・・・ごめんね黙ってて。でも誰にも言わないでね!お願いつかさ!」
つかさ「うん、言わないよ・・・それで、誰・・・かな?」
かがみ「そっか、ありがとうつかさ。あの人はつかさのクラスのS君だよ」
つかさ「そっか・・・ありがとお姉ちゃん」
かがみ「人と付き合ってるなんて知れたら恥ずかしくてねー・・・ってあれ?つかさ?」
つかさ「S君・・・S・・・お姉ちゃんは私の物・・・許サナイよ・・・」
翌日、私はSを「お姉ちゃんが連れてきてって」と騙し、人気のない山奥へ連れ込んだ。
S「なぁ柊、かがみはなんの用なんだ?こんな山奥に」
つかさ「見せたい物があるんだって。お姉ちゃんは先にいって準備してるって」
S「ふぅん・・・しかし見事なまでに木ばっかりだな、歩く道すらほとんどないじゃないか」
つかさ「・・・・・・ここら辺でいいかな・・・」
S「ん、どうした柊、急に立ち止まって。まさかこんな森のど真ん中なのか?」
つかさ「うん。お姉ちゃん呼んでくるから、ちょっと待っててね!」
S「あ、おい!・・・こんなとこで一人って・・・何か怖いなおい・・・」
私はお姉ちゃんを呼びにいくふりをして一度その場を離れ、Sの後ろへ回り込んだ。そして・・・
――――ズシャ!
こちらの足音に気づき振り向いたSの腹部へ包丁を突き刺した。
S「ぇ・・・なん・・・で?・・ひい・・・ら・・ぎ・・・」
つかさ「S君が悪いんだよ?私からお姉ちゃんを奪おうとするから」
つかさ「お姉ちゃんは私だけのもの。だからS君には死んでもらうの」
その場にドサッと音を立てて倒れるS。惨めな姿だよ。お姉ちゃんを奪おうとしなければ死なずに済んだのにね。
つかさ「あーぁ、ちょっと汚れちゃった。この服お気に入りだったのにな」
つかさ「じゃ、サヨナラS君。来世はもっとお利口さんになることだね」
私はSが動かなくなった事を確認し、その場を後にした。
数日後、Sが死体で発見されたとのニュースがあった。
学校では全校集会も開かれた。その中にお姉ちゃんの姿はなかった。
つかさ「お姉ちゃん、元気出して。私がいつでもそばにいるから!」
かがみ「ありがとうつかさ・・・」
こなた「・・・何て言ったらいいのかわかんないけどさ、とにかく元気出してよ、かがみ」
かがみ「うん・・・」
みゆき「本当に・・・心中お察しします、かがみさん・・・」
かがみ「みゆき・・・うん、ありがとう」
かがみ「あたし・・・Sも好きだったけど・・・みんなも大好きだよ・・・ありがとう」
つかさ (・・・みんながいると、私は一番になれない・・・?私が一番になるには・・・)
することは、既に決まっていた。
Sを殺した時点で全て決まっていたんだよね。
だから、私は・・・
一週間後、私はゆきちゃんを二人で遊ぼうという口実で例の山奥へ呼び出した。
みゆき「ここは・・・?こんなところで何をするんですか?」
つかさ「すごいいい景色が見れる場所があるんだよ、こっちこっち!」
みゆき「そうなんですか、それは楽しみですね」
ゆきちゃんはとてもにこやかに笑っていた。この後自分がどうなるかも知らずに。
Sを殺した場所にたどり着いた。少し綺麗になっていたのは警察が捜査をしたからだろう。
つかさ「ねぇゆきちゃん。話があるの。聞いてくれる?」
みゆき「はい、何ですか?急に改まって」
言いながら、私はゆきちゃんに抱きつく。ゆきちゃんはそれに少し動揺していたけれど、優しく抱き返してくれた。
みゆき「・・・何かあったんですか?私でよければ、何でも相談にのりますよ。お力になれるかどうかはわかりませんが・・・」
つかさ「あのね・・・私ね・・・」
言いながら、私はカバンの中に入れておいた包丁を取り出す。
つかさ「私ね・・・ユキチャンに死ンデモライタイんだ」
みゆき「・・・え?」
言い終わるかどうかのところで、私はゆきちゃんの背中に包丁を突き刺した。何度も。何度も。
みゆき「ぁ・・・あ・・・つか・・さ・・・さん・・・どうし・・・て・・・?」
つかさ「ごめんねゆきちゃん。私がお姉ちゃんの一番になるにはみんなに死んでもらわないとだめなんだ」
つかさ「だから・・・バイバイ」
そして数日後・・・ゆきちゃんの死亡がニュースになった。
警察は連続殺人事件とみて捜査するようだ。もうあの場所は使えないかな。
かがみ「なんでみゆきが・・・」
こなた「みゆきさん・・・」
つかさ「・・・・・・」
次はこなちゃん・・・こなちゃんをどこかに呼び出すのは難しい気がする。
とすると、こなちゃんの自宅に行くのが一番いい方法・・・かな。
そして数日後、私はこなちゃんの家へと遊びに行った。
幸いにして父親のそうじろうさんはいないらしい。
こなた「適当にくつろいでていいよー」
つかさ「あ、うん。あ、この漫画読んでもいい?」
こなた「もっちろん、あたしその間ちょっとパソコンいじってるね」
日常は始まり、そして壊レル。私が壊ス。
適当な時間をおいて、カバンにいれておいた包丁を後ろ手にこなちゃんに歩み寄る。
こなちゃんがこちらを振り向いて、何かを喋ろうとした。その前に私は・・・こなちゃんののど元に包丁を突き刺した。
こなた「・・・さ・・・んで・・・」
つかさ「あは、やっぱり首に穴が開いちゃったら喋りにくいんだね、勉強になったよ」
こなた「・・・さ・・め・・・て」
つかさ「何言いたいのかわからないや、ごめんねこなちゃん。バイバイ」
こなちゃんはその場に倒れ、死んだ。
これで私が一番になった。私がお姉ちゃんの一番。
つかさ「アハハハハ!やったよ!!私が一番だよ、お姉ちゃん!!」
翌日・・・家にこなちゃんが死んだ事が連絡された。お姉ちゃんは部屋に一人放心状態だ。
つかさ「お姉ちゃん・・・元気だして。私がずっと一緒にいるから。ね?」
かがみ「つかさ・・・つかさはあたしの前からいなくなったりしないよね?」
つかさ「え?なんで?」
かがみ「みんな死んじゃった。あたしの大好きだった人がみんな死んじゃった!」
つかさ「・・・・・・」
かがみ「S君も、みゆきも、こなたも!みんな大好きだったのに、死んじゃった!」
つかさ「お姉ちゃん・・・・・・」
私はお姉ちゃんを優しく抱きしめる。抱きしめながら、勝利の味を噛み締めた。
つかさ「私はいなくならないよ、お姉ちゃんのそばにずっといるんだ」
かがみ「本当に?絶対?」
つかさ「うん、絶対にいなくなったりしないよ。ずっとそば・・・」
そこまで言って私の言葉はお姉ちゃんの言葉に遮られた。
かがみ「ウソダヨ」
つかさ「・・・え?」
かがみ「嘘ダヨ、それ。だって、つかさ死ンジャウもん。あたしに殺サレちゃうもん」
刹那、背中に今までに味わったことのない激痛が走る。刺されて・・・る?
かがみ「知ッテルんだよ、つかさが全部殺ッタって。そんなつかさ、あたしの知ッテルつかさじゃない」
かがみ「鬼ダヨ。あんたは鬼ダ。だから、あたしがあんたを殺スんだ。鬼に殺サレタみんなのために」
つかさ「そう・・・か・・・双子だからお姉ちゃんにも・・・鬼が・・住み着いてたんだね・・・不覚だ・・よ・・・」
そして私は死んだ。私の中の鬼もろとも。
その翌日、部屋で発見されたのは、二人で抱き合いながら死んでいた、私とお姉ちゃんの姿でした。
こうして、猟奇的な彼女の物語は終わりを告げる。
しかし、それはその世界での彼女の話。
彼女の中の鬼は世界を渡り、人の心に住み着いていく。
まるで子供が遊ぶように、気まぐれに。
終わりのない鬼の物語。繰り返されるのは悪夢か、現実か。
かがみ「でさー、こないだこなたに漫画借りたんだけどさー」
かがみ「これがまた後味の悪い終わり方なのよ」
かがみ「誰も救われないまま終わりなんて、ひどいと思わない?」
かがみ「こなたは笑えるって言ってるけど、あいつ頭のネジ外れてるんじゃないかしら?アハハ」
つかさ「へぇーそうなんだー」
つかさ「ところで話は変わるんだけどお姉ちゃん、一つ質問していいかな?」
かがみ「ん、なぁに?」
つかさ「私とお姉ちゃん、ずっと一緒にいられるかな?」
最終更新:2007年06月03日 22:58