ID:S9LId1Vh0氏:タイトル不明2

偽善者と優しい人
その違いは、一体何なのだろう

よくゆたかは、私の事を優しい人だと言ってくれる
それはとても嬉しい
その言葉を聞く度に、心が温かくなる

でも、その度に、一つの不安が生まれる

私は、ゆたかにそう言って欲しいだけで
ゆたかに優しくしてるフリをしてるのかもしれない

だから、ゆたかが悪く言われた時とか
悪く言った人に必要以上に凄んでしまうのかもしれない

最初に会った時にハンカチを差し出したのも
もしかしたら何かを期待してたのかもしれない

そう思うと、胸が苦しくなる

私はゆたかを、自分のために利用してるだけなんじゃないかって
そんな不安が、頭をよぎる

「どうしたの?みなみちゃん」

ベランダで一人考え事をしていた私
不意に聞き覚えのある声が背後から聞こえる

「……ゆたか」
「どうしたの?なんか不安そうだよ?」
「……なんでもない」

そう嘘をつく

「嘘でしょ?」

ハッとゆたかを見つめる
ゆたかはちょっと怒ったような顔で私を見ていた

「私にも言えないの?
 私、みなみちゃんの力になれるなら、なるよ?
 もし私に遠慮してたりなんかしてるんだったら、やめて欲しいな
 私はみなみちゃんの友達だから、不安があるんだったら聞かせてよ」

ゆたかはそう一気にまくしたてた
ゆたかは私の事を心配してくれてる

お礼を言わなきゃ、ありがとうって

「……どうして?」

でも私の口から出た言葉は、ありがとうじゃなかった

「え?」
え?

私が私の言葉に疑問を持つのと、ゆたかの呟いた言葉はほぼ同時だった
私は何を言った?
ゆたかに、ゆたかに何を言った?

「どうしてゆたかは、私にそこまでしてくれるの?」

口は勝手に言葉を紡ぐ
やめて、お願い

ゆたかは一瞬怯む
当然だ

「私、私はみなみちゃんの友達、だから」

小さく呟くゆたか
心が、痛い

私は何でこんなことを……

「私、みなみちゃんにいっぱい優しくしてもらったから、だからお返しをしたくて」
「でも、私は──

私は自分が次に何を言うのか怖くなった
怖くなって、口を紡ぐ

 ──私は、もしかしたら……」
「みなみちゃん?」

でも口は止まってくれない
止まってくれない

「ただ、ゆたかにそう言われたいだけでゆたかに優しくしてるのかもしれない」
「え?」
「ゆたかに嫌われたくないから、好きで欲しいだけで優しくしてるのかもしれない
 ゆたかは私を優しいって言ってくれてるけど
 それはゆたかのためじゃなくて、私自身のためなのかもしれない
 私は……ただの偽善者……かも、しれな、くて」

止まらない
さっきまで考えていた不安が
まるで決壊したダムの水のようにあふれ出てしまう

ゆたかは呆然としてる
当然だ
私だって言いたくなかった

でも、不安だった
不安で、不安で、仕方なかった

「……それの何が悪いの?」

ゆたかは毅然とした態度で、言葉を放った

「え?」
「私だって、みなみちゃんに好かれたいし、そうしてるよ?
 それの何が悪いの?」

ゆたかは続けた
私は、いつもとは違う強気のゆたかの言葉に、ただ耳を傾けた

「私はみなみちゃんの事が好きだし
 みなみちゃんに好かれたいよ
 だって、友達でしょ?」
「……友達」
「そうだよ、それにみなみちゃんが優しくしてくれると、私とっても嬉しいよ」
「それは、私が……」
「それかもしれないけど、それでも、私、凄く嬉しいもん」

私がしようとした言い訳を、一瞬で断ち切るゆたか

「だって、みなみちゃん、私のこと、大切にしてくれるんだなって、思うもん
 大切にしてくれてるから、好きになって欲しいんだよね?
 私だって、そうだもん
 ……それとも、みなみちゃんはそうじゃないの?」
「……」

何も言い返せなかった
ううん、言い返す必要なんて無かった


「それにね?
 偽善ってね、人の為の善って書くんだよ?」
「ゆたか……」
「人のために何かが出来るんだもん、やっぱり、やっぱりみなみちゃんは優しいんだよ」

嬉しかった

私の中の不安を一瞬で全て消してくれた

そうなんだ、私はゆたかが好き
ゆたかの事を凄く大切に思ってる
だから、私は何一つ間違ったことをして無い

好きだから、好きになって欲しい

それはきっと、とても当たり前の感情

「ありがとう、ゆたか」
「ううん、みなみちゃんも、私の事、好きでいてくれてありがとう」

そう、私は、これでいい
今のままでいい

そして、もっともっとゆたかに好きになって貰おう

私が、ゆたかをもっともっと好きになっていくように

-fin-
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