海が青く、浜は白く、そして緑は満ち溢れていた。草木は刈られたことなどないかのようにすき放題にのびていて手入れをする人間などいないことを物語っている。そこは無人の島だった。ビヴァ!無人島!泉こなたは現在、そんな風に喜べるような心境ではなかった。
こなた「あれぇ・・・」
視界いっぱいに広がる海と、振り向くとこれまた視界を覆いつくす緑。直感的にここが島だと分かるとこなたはしばらく呆けていた。
こなた「まぁ・・・ゲームにはありがちな展開かもしれないけどさ・・・」
こなたは何故自分がここにいるのか理解できなかった。哲学的な意味ではなく、単純な意味でここにこうしていることが理解できなかった。確か最後の記憶は―っと考えたところで記憶が欠けていることに気づく。昨日のことも一昨日のことも思い出せるが、今日の朝から今までのことはまったく思い出せなかった。
こなた「うーん・・・ま、なんとでもなるでしょ」
考えることが怖くなってきたのか、それとも面倒になったのか、こなたは思考を停止した。そして一歩踏み出すと本当にここが無人島なのか確かめるために歩きだした。
とりあえず砂浜を沿って歩いてみた。案外短い時間で周り終えることができたことからこの島がそんなに大きな島ではないことを知った。ちなみに現在のこなたの服装はセーラー服である。オプションでついてきた鞄を目印に島を1週し終えたことを知ったわけだ。
島の外周には船が止まれるような設備もなく、それどころか人工物の気配さえなかった。ただいくら無人島とはいってもまったく人がこないなんてことはないんじゃないか、とこなたは考えた。その内この島に寄り付く人がいるかもしれない。それに、もしかしたらあの緑の奥にヘリポートやら別荘やらなにやらがあるかも――と希望を持ちこなたは島を回り終えた。しかし森に入るのは恐ろしかった。
こなた「馬鹿な・・・この『泉こなた』である私が森などに・・・っ!」
こなたは森に足を踏み入れた。今は大丈夫でも夜になれば浜も冷える。早めに安全な場所を確保する、というのはゲームから得た知識だった。恐れを心のうちにしまいこんでこなたは進んだ。そして意外に簡単に寝床になりそうな洞穴を見つけた。なにかいるかも、と少しどきどきしながら探索したが特におかしなところはなく、しばらくの拠点ができた。
こなた「まさかこんなゲームみたいに上手くいくなんてねぇ」
幾分興ざめした様子でこなたは洞穴の中で腰を下ろした。さて、これからどうしようか。そこでやっと所持品のチェックをしようという考えに至り、鞄を浜に置きっぱなしにしていたことを思い出した。
鞄の中身
チョココロネ筆記用具生徒手帳ノートサバイバルナイフDS携帯電話瓶がいくつか
こなた「・・・なんでナイフとか・・・確かにあると便利かも、とは思ってたけど」
とりあえず漂流でお馴染み瓶に手紙をつめて流す行為をしてみた。とはいってもここがどこかも正確にはわからないし、伝えるべき情報はほとんどない。「私は生きている」というのがなんとか父や友人に伝わればよかった。きっと、どこかで心配してくれているはずなんだ。
こなたは鞄を持ち洞穴に戻ると深い眠りについた。
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