――きょうのうちに とおくへいってしまうわたくしのいもうとよ みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ―― 宮沢賢治・著、永訣の朝。死に別れの妹に向けた詩。国語の授業でそれを読んでいるのは、私の友達。私の境遇を知ってるその友達は、クラスのみんなは、先生は、さっきから私の方をチラチラ見てくる。私はというと……肩をふるわせながら、必死に涙を堪えていた。 ――死ぬといういまごろになって わたくしをいっしょうあかるくするために こんなさっぱりした雪のひとわんを おまえはわたくしにたのんだのだ ありがとうわたくしのけなげないもうとよ わたくしもまっすぐにすすんでいくから―― ああ、もう無理だ。私は声をあげながら、大粒の涙を流していた。クラスのみんなが、先生がなぐさめてくれたけど、授業が終わるまで涙が止まることはなかった。
たった1ヶ月前の出来事だった。
『……私……まだ死にたくない……。お姉ちゃんと一緒にいたい……!』
そりゃあもちろん体調崩す時はあったけど……まさか不治の病だったなんて……
『私は、もう……ダメみたい……だから、お姉ちゃん……私の……ぶんま……で……』
それが、あの子の最期の言葉だった。
お願いだから帰ってきて。
じゃないと私……淋しさで壊れちゃうよ。 「お願いだから……帰ってきてよ……ゆーちゃん……」 何度そう呟いただろうか。
その願いが叶うことは、永遠にないのに……
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。
下から選んでください: