2―2
こなた達一行はデ・ザート砂漠を西へ向かっていた目的はもちろん、オアシスに住んでいるという高良家である
「風旋脚!!」
これまでに何度も遭遇したサソリの魔物を文字どおり蹴散らしながら三人は進む
「ふう、これで何体目だろ。町の人からもらったレガースとグローブがなきゃ、手足がボロボロになってたよ」
右手にはめた、町の老人が使っていたグローブを撫でながらこなたは呟いた「サンドワームから助けてくれたお礼」ということで、老人が昔ラミア軍に所属していた際の武器をいくつかもらったのだ表面には、ラミア軍の紋章が刻まれている
「やー、人助けって良いものだネ」「実際に助けたのは私だけどね。あんたは逃げ回ってただけでしょ?」「はぅ!!」
そのやり取りを見ていた、昨日一日ぐっすりと眠って元気一杯になったつかさはクスッと笑った
「あ、あれじゃないかな?」
つかさの指差した先には、うっすらとだがオアシスらしき影があった
「よっし、もう少しだね」「行きましょう!」それから数十分後、三人はオアシスに到着したパフラインよりは小さなオアシス。そのなかに、あり得ないほどに豪華な屋敷が一軒そびえ立っていた
「でか……!!」
かがみ達の暮らしていた村はおろか、アウレにもここまでの屋敷は存在しない三人はあまりに巨大な屋敷に圧倒されていた
「……と、とにかく話を聞きましょ」「う、うん」
かがみは屋敷のインターホンを押すこれだけの豪邸、出てくるだけでも相当時間がかかりそうだなぁ、とこなたは思っていたすると突然、門の上からガラスのようなものが降りてきた
「わ!!」「な、なにこれ!?」
そこに、桃色の髪の美しい女性が映し出された
『はい、どちら様ですか?』「な、なんであんな小さなところに人が入ってるの?」『すみません、驚かさせてしまいましたか?』
女性は三人に向かってペコリと頭を下げたどうやらこちらの姿も声も、向こうに届いているようだ
『これは投影機というもので、離れた位置の様子を映し出す装置なんです』「なんだ……びっくりした~……」「……なんだって言ってるケド……これ、相当な技術力だよ……?」
そう呟いたこなたの姿を見て、女性は一瞬、顔をしかめたそしてにこやかな笑顔に戻り、何かを操作しはじめた
『今、門の鍵を開けました。すぐに迎えにあがりますので、玄関ホールでお待ちください』
出現した時とまったく逆の軌道を描き、投影機が収納されていく未知なる技術に圧倒されながらも、三人は言われた通りに門をくぐった
「うぅ……苦ぁ……」「こなたにはまだ早すぎたかしら?」
応接室に通された三人は机に座りながら、彼女――高良みゆきが出した紅茶を啜っていたかがみとつかさは美味しそうに飲んでいるが、こなたは舌を『んべっ』と出した
「おおむね事情は理解できました」
紅茶を啜る三人を見て、みゆきは言った
「パフライン、そしてオーフェンの人々を救うために、私の力を貸して欲しいと」「ええ、ダメかしら?」「私達には、戦力が必要なの」
二人の問いに答えず、みゆきは立ち上がって窓際まで歩きだした
「……なるほど、今度はそういう方法できましたか」「え……それって、どういう……」
こなたが尋ねようとした次の瞬間、かがみとつかさが机に頭を落とした
「か、かがみ! つかさ!」
身体を何度も揺するが、反応はないしばらくして、二人からかすかに寝息が聞こえた
「やはり少量しか飲んでない人間には効き目はありませんか……」
振り返ったその顔には、先ほどまでの笑顔は露ほどもなかった
「何の真似?」「自分の身を守るためですよ。『ラミア軍の方』」
その言葉に、こなたは面食らった。どうやら彼女は自分達をラミア軍の人間だと思っているようだあんな奴らと間違われるのは心外だが、反論しても無駄だこなたは悟った彼女が勘違いしている理由はおそらく自分の武具にあるのだろう、そう思ったからだなぜならこなたが装備している武具には『ラミア軍の紋章が刻まれている』
「母を連れていき、三賢者としての力が既にないとわかったら私を力付くで連れていこうとして、今回は協力を必要とするフリをする…… そこまでして我が一族の力を手に入れようだなんて、一体何が目的ですか?」
こなたは一言も発せず、ただみゆきを見つめていたラミア軍の目的――らき☆すたーを手に入れるためだろうが、それだけとは限らないのだそれに、下手なことを言って刺激するよりは、だんまりを決め込んだほうがいい
「……黙秘、ですか。それもいいでしょう」
みゆきは背中に背負っていた鞘から剣を抜き、こなたに向けるその剣を見た瞬間、こなたの目の色が変わった
「あーー! そ、それ、伝説の『光剣ワルキューレ』!! 実物をナマでみられるなんて!!」「この剣に対する知識はおありのようですね。では、おわかりでしょう? この剣の強さも」
みゆきのえらく冷静な声で、こなたは我に返ったそうだった、今は興奮してる場合じゃない!
「お帰りになられるなら、命だけは助けてあげましょう」「そうはいかないよ。こっちだって事情が事情だからね」「そうですか……では!」
地面を蹴り、みゆきがこなたに向かって突進、こなたに切り掛かる!そのたびに、こなたは後ろへと飛び、しゃがみ、飛び上がり、剣を回避する例え反撃をしても、それがガードされてしまえば一巻の終わり。無防備になったところを襲われ、下手をすれば殺される素手 VS 剣。圧倒的に素手の方が不利だ!
「なかなかやりますね。では、これはどうですか?」
みゆきが高く剣を掲げる。と、その時、剣が炎に包まれた!
「イフリートの加護を受けた、私の魔術を食らいなさい! ――スパイラルフレア!!」「うそ!?」
一気に振り下ろされた剣から巨大な火の玉が出現、こなたに向かって飛来する!
「く!」
直撃。床に着弾した瞬間、爆風が一気に吹き上げる。終わったと、みゆきは思ったのだが炭と化しているはずだったこなたは、傷ひとつ負っていなかった体内にある魔力を周囲に拡散させ、スパイラルフレアの威力をほぼ無にしたのだ
「防御技のひとつ、粋護陣……なかなかやりますね。……ですが」
多大な魔力を放出しなければならないため、粋護陣の使用後は魔力が大幅に減ってしまうのだその後の戦闘は当然厳しいものになっていく。それに加え……
「はぁ……はぁ……!!」「その状態では、もう戦えそうにありませんね」
こなたは魔術師ではない。魔力は通常の人間と同程度、つまり生命維持に必要な魔力くらいしか持っていないのである前述したが、粋護陣は魔力を多大に消費する技。右手の甲にある白晶石のおかげで常人よりは魔力があるものの、それももう切れかけていた
「終わりにします」「はぁ……! み、ミラージュアタック!」
こなたとの間合いを一気に詰め、一閃!!しかし手応えはなく、それどころかこなたの身体をすり抜けて壁に激突しそうになった振り返って見ると、先ほどまでこなたがいた場所にはこなたの形をした白い塊があるだけこなたの本体はみゆきのはるか後ろにいた。最後の力を振り絞り、自分の分身を作り出したこなたは瞬時に離脱したのだ
「……驚きました。まだそんな力が残っているなんて」「や……やられる……わけ……には……いかない……か……ら……」
戦いを続けようと構えをとるが、彼女はもう限界にまで達していたこなたの身体は、地面に吸い込まれるように倒れていき、それきり動かなくなった
「……息はありますね……」
ゆっくりとこなたに近付き、脈をはかる弱々しくではあるが、呼吸もちゃんとしているし脈もある
「どうしましょ……外に放り出すわけにもいきませんし……仕方ありませんね」
そうぼやきながら三人の身体を担ぎ、みゆきは部屋を後にした
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