雀がかーかー鳴いている。秋から冬になりかけた一際寒い朝。道行くサラリーマンはコートに身を包み、また、散歩中の犬も衣類を纏ってこの寒さを耐えている。と、飼い主は思い込んで、元気有り余るその犬にぐいぐいと引っぱられているのであった。外界と内界の温度の差は歴然としたものだった。外が極寒なら、内は朗らかな夏になりかけの春。蕾は花開き、向日葵が今かとその時を待ちわびるそんな暖かで心地のよいパラダイス。ここは、彼らだけの秘密の館、陵桜館。 全てが純白で彩られた巨大な円形の部屋、蕩融の間。その中心に間を縮小した様な円形のベッドが置かれている。そこで、折り重なる様にして彼らはささやかな安らぎに身を委ねていた。そよぐ風が彼らに目覚めの時を知らせる。清々しさに耐えきれず、最初に身を起こしたのは白石みのるだった。同年代の少年より些か引き締まりを見せる彼の上半身を朝日が凛然と照らし出す。みのるはなまった身体を天に伸ばす。小さな唸りが暖気に吸い込まれ、それからゆっくりと腕を降ろした。彼の次に目を覚ましたのは彼とは似ても似つかない風体の、せいいちだった。脂肪の乗りすぎた身体を彼もまた同じ様に伸ばした。そして先駆者の白石を見やった。「白石君、おはよう」「おはよう、せいいち」「僕は今、天国にいるような気分だよ」「ああ、ここはきっと、天国だ……」
2人を皮切りに、少年達は次から次へと目を覚ます。純白のシーツにくるまれた若々しい肉体、白磁や象牙、また褐色の宝玉の如き異風の美を放つ少年、彼らは皆、神話時代の英雄よろしく究極と言わんばかりの勇壮さ、妖艶さをその身から醸し出していた。それは肉塊と揶揄されねないせいいちも然りであった。彼の胸板に顔を沈める少年があった。「せいいち君、きみは何故こうも心地が良いんだ。君からはそう、母に似た優しい温もりを感じるよ」「華奢な君からは、そうだ、年場の行かない弟の様な、そんな危うさを感じる。 抱きしめたら折れてしまいそうだ」「ひどいな、せいいち君は。僕だって立派な男の子だ。その証拠を見せてあげるよ」「遠慮はいらないよ……さぁ、来るんだ、立木君。……んぐ!!かはぁ!」
アッー!
「みのる君、君のその身体が羨ましいよ」きめ細かな谷口の指が白石の身体を滑る様に這ってゆく。腕から胸、脇、背中、臀部、その身を取り込む為のまじないかの様に、執拗に白石の肉体を撫で回す。「谷口……」「その唇から、君のエネルギーは得られるのかい?」背後からの急襲。口は塞がれ、谷口独特の甘い香りが白石の鼻腔を、そして脳をかき乱す。捻り込まれる舌と唾液、それらはまるで禁断の蜜、虚ろな意識の中で、白石は今から始まる狂乱に胸をときめかすのだった。
「具体的なかシーンはまだ何も書いてないから、OKだよね」BL作家、コバユタ(敬称略)は原稿用紙を見直すと、ゆっくり背伸びをした。「明日はみなみちゃんと……早く終わらせなきゃ!」そしてペンを握ると、再び少年達の淫らな夢の世界を描き出す作業に戻るのだった。
ー終ー
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