それは、ある日の出来事…
ゆたか「え…みなみちゃんまた学校休み?」ひより「なんか風邪みたいだよ」パティ「ユタカのカゼがウツッタネ!!HAHAHA!!」ゆたか「むーパティちゃんひどいー><」
私、小早川ゆたかは数日前まで風邪をひいていた。こじらせてかなり危ないところだったらしい。みなみちゃんは学校帰りにいつもお見舞いに寄ってくれて夜遅くまで看病してくれていた。これには感謝してもしきれない。
ゆたか「それじゃあ、今日は私がお見舞いに行こう。」ひより「あ、先生が来た。HRが始まるよ」
担任「まず始めにみんなにお知らせがある。岩崎が家庭の事情で転校した」ゆたか「え……っ?」ざわつく教室。ゆたかは今なにを言われたのか理解できなかった…ひより「せ…先生…どういうことッスか…!!」担任「それは…先生にもどういうことかよくわからないんだ…急な家庭の都合…ということくらいしか聞いてない」ゆたか「それって…みなみちゃんにーーーもうーーーーー…」ゆたかは目の前が真っ暗になった。そして、気を失った。ひより「うわぁぁーゆーちゃんしっかり!!保健委員!!保健委員!!」パティ「ホケンイインは…ミナミだった…ネ」
ゆたかが目が覚めるとそこは保健室のベッドの上。ふゆき「気がつきましたか小早川さん。」ゆたか「………。」ふゆき「もう昼休みですよ。まだ体調が優れないようですが……」ゆたか「……今日は……早退……させてください」それだけの言葉を発するのが今のゆたかには精一杯だった。ふゆき「わかりました。担任の先生にはそう伝えておきますね」教室に荷物を取りに戻ると、心配したひよりとパティがいろいろ声をかけてくれたが、ゆたかの耳には入っていなかった。いつもなら保健室通いのゆたかに軽口を叩く男子も、ゆたかの気持ちを察したのか何も言ってこない。そのまま、教室を後にするゆたか。パティ「ユタカ…」ひより「もう今は…そっとしてあげるしかないよ…」
帰宅しているゆたかの足は、知らず知らずのうちに泉家とは逆の方向に向かっていた。ゆたかの足が止まった先は…みなみの家『だった』場所の前。岩崎という表札は外され、人の気配はなく入り口は固く閉ざされていた。ゆたか「みなみちゃん…本当に…いなくなっちゃんだね…どうして…どうしてなの…せめてお別れの…挨拶くらいさせてよ…う…うわぁぁぁぁん!!!」それまで我慢していた感情が噴き出し、ゆたかは、声をあげて泣いた。
「どうしたんですか」ゆたかが振り向くと、そこには、みゆきが立っていた。ゆたか「…た、高良先輩…」みゆき「…小早川さんですか。まあここでは何ですから、中にどうぞ。お茶でも飲んで落ち着きましょう」ゆたか「え……あ、はい。お邪魔します」
みゆき「そうだったんですか…そういえば昨日みなみさんの家が慌しかったような気がします…そんなことが…」ゆたか「あの…先輩は何か知って…」みゆき「………。」ゆたか「あの……先輩?」みゆき「……小早川さん……もう一度…みなみさんに…会いたいですか?」ゆたか「え……?」みゆき「会って…真実を知ったとしても……後悔しませんか?」ゆたか「…………みなみちゃんに…会える……?あ、会いたいです!!」みゆき「そう言うと思っていました。これで手荒なことをせずに済みました。手間が省けましたよ………」そのみゆきの一言とほぼ同時に、激しい眠気に襲われるゆたか。ゆたか「せ…さっきのお茶に…何を……」ゆたかの意識は闇に落ちていった…みゆき「ふふっ。すぐに会えますよ…ただし、あなたが知っているみなみさんではないですけどね……」
ゆたか「う…ううん…ここは…」知らない広い場所。薄暗いが上の方に大きな窓がある。ゆたか「まるでどこかの研究所みたい…」起き上がろうとして、手が動かせないことに気がついた。首を回して後ろを見ると、後手に手錠をかけられていた。ゆたか「ど…どうしてこんなものが…高良先輩が…?」周りを見回すと、もう一つ人影があることに気がついた。ゆたか「…だ…誰ですか?」ふらふらとその人影に近づいていくゆたか。その顔が見えるところまで近づいていく。ゆたか「み……みなみちゃん?」みなみ「………。」ゆたかの姿を見てもみなみは直立したまま何の反応も示さない。まるで魂が抜けてしまったかのように。ゆたか「みなみちゃん!私だよ!ゆたかだよ!」みゆき「無駄ですよ。みなみさんは肉体機能停止していますから。」扉が開き、みゆきが入ってくる。ゆたか「え…ど、どういうこと…ですか…?」みゆき「ふふっ。…真実を…教えてあげましょう……みなみさんは…私の細胞から作った私のクローン…のはずでした。それがどういうわけか私とは全然似ても似つかない姿になったので…研究用に泳がせていたのです……正式名称は『実験体373』ですね本以外には全く興味を示さなかった実験体373でしたが…あるとき、一人の人間に興味を示したのです。それが、あなたですよ。小早川さん。そしてそのやりとりを全て監視してきたのです…ですが、もう十分なデータが取れたのでもう必要ありません。研究は次の段階に入っています。」ゆたか「せ…先輩…あなたは…一体…」みゆき「高校生…というのは偽りですよ。私はある機関の研究員です。もちろん高良みゆきという名前も偽名です。ふぅ…さて、実験体373に対する最後の実験です。小早川さん。あなたを殺して反応を見る。それのデータさえ取れればもう実験体373はもう用済みです。実験に多少の犠牲はやむを得ません。このデータは生体兵器を量産するのに役立つことでしょう…」そう言いながらナイフを片手にゆたかに近づくみゆき。ゆたか「い、嫌…こ…来ないで…」ゆたかは腰が抜けてしまいまともに動けない。ゆたか「た…助けてぇ…みなみちゃーーん!!」みゆき「ふふっ。無駄です…な…!?」みなみがみゆきに飛び掛り、みゆきを押さえこむ。みゆき「ぐ…そんな莫迦な…あなたの肉体は制御されて…動けないはず…」みなみ「もう私はあなたの所有物じゃない……ゆたかに危害を加えるというのなら…」みゆき「創造主に逆らうとは…まあいいデータがとれたのでよしとしましょうか……」ゆたか「み、みなみちゃん!!」みなみ「ゆたか、私はいいから早く…逃げて!!」みゆき「データ送信完了…ふふっ、この研究所にももう用はありません。早く逃げないと10分で爆発しちゃいますよ?」ゆたか「だったらみなみちゃんも一緒に逃げよう!!」みなみ「私は…だめ。定期的にメンテナンスを受けないとこの肉体は一週間ともたないから…今ならゆたかだけは逃げられる!!私の分まで…生きて!!」ゆたかを突き飛ばすみなみ。ゆたかが扉を抜けると同時に閉じられる扉。みなみ「ゆたか…さよなら。」そして爆音とともに崩れ落ちる建物。ゆたか「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
帰路につくひより。ひより「うう…渾身のネタだったのに…」みゆき「田村さん。こんにちは。」ひより「うぉぉぉぉっ!!」みゆき「!?」ひより「いや、ちょっとびっくりしただけッス。こんにちは先輩。あ、先輩に頼みが…」みゆき「同人のことですねわかります。」ひより「へ?何でわかるんスか?」みゆき「そういえば小早川さんとみなみさんはどうしてますか?」ひより「たしか今日は二人とも風邪で休み…」みゆき「本当に風邪だと…お思いですか?ふふっ。」ひより「へ?」みゆき「それでは…うふふふ…」
その後、ゆたかとみなみの風邪が治り学校に戻ってくるまで、気が気ではないひよりだった……
終
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