「ID:IokxDns0氏 サイバー☆ゆーちゃん～小早川ゆたかの危機～」の編集履歴（バックアップ）一覧はこちら
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<p>「メイン動力システム…駆動系…冷却系…神経回路系統…」<br /><br />
ある休日。その日、私は自分の身体の点検をしていました。<br />
基本はメンテナンスフリーのこの身体…なんですが、<br />
いざという時にちゃんと動くかどうか、ちゃんとチェックしないと不安で不安で…。<br />
とにかく、そんなわけで週に一度はこうしているってわけです…。<br /><br />
ふぅ…ちょっと腕の握力が強いかも。<br />
私はお腹のカバーを開けて出力レベルの調整を始めました。<br />
確かにバトルのときには役に立つけど、あんまり力が強すぎるとまともな生活が出来なくなっちゃうしね。<br />
この間なんか握力が強すぎて、卵を持とうとして割っちゃったからなぁ…うぅっ。<br />
本当、新品の身体だから、早く慣れなくっちゃ…。<br /><br />
そうして出力調整をしていたその時、突然地震がきました。<br />
私は急いで机の下に身を隠そうとしたんだけど…。</p>
<p>――ガッ…ブチッ！<br /><br />
「…っ！」<br />
急にお腹に何かが突き刺さった間隔と、激しい電撃が走りました。<br />
机の上においてあったハサミが、お腹の中の配線に刺さったのです。<br />
…早く抜かなきゃ……でも、異常電圧が身体に流れているせいで思うように手が動きません。<br />
そうしている間にも、電流は容赦無く私を襲います。<br /><br />
「あぐぅっ…くぅ…痛い…痛いよぉ…」<br />
痛みとシステムエラーで動けない私。このままじゃ…このままじゃ…私は…<br /><br />
そうだ…『脱出システム』を使えば、何とか記憶は守れるかも…<br />
さっそく私は脱出システムへのアクセスを図りました。<br /><br />
…だけど、次の瞬間、私の頭を電撃が襲います。<br />
電流が逆流して…アクセスが…できない…！？<br /><br />
…いや、まだ手はある…操作盤の赤いボタン、これを押せば作動するはず…<br />
動いて…せめて、左腕だけでも…。<br /><br />
私は渾身の力を込めて左腕を動かそうとしました。<br />
電撃のせいで何度か弾かれそうになるけど…それでも、必死に動かしました。<br />
…あと少し……あと少しで……。<br />
そう…あと少し…で、スイッチに届くと思ったその時でした。</p>
<p>――バチィッ！<br /><br />
あ………？<br />
そんな……もう少し……もう少シ…なの…ニ……。<br />
助けテ…意識が……遠のイ…テ……。<br /><br />
私は…最後の賭けニ…でマした……。<br />
後ろニある本ニ……首を、当てレば……電源が、落チテ、止まル、ハず…。<br /><br />
私は…一気ニ、体、を…後ろニ…倒しマしタ。<br />
これでスイッチが切れ…電源ガ…落ち…テ…。<br />
最後ニ、わたシハ…こなたお姉ちャんノ、携帯ニ、めっせーじヲ……オクリマシタ……。<br /><br />
『コナタ…オネエチャン……タ・ス…ケ……テ…………』<br /><br />
――CYBernetic ORGanism System U-588"YUTAKA"<br />
――System Down…Power Off</p>
<p> </p>
<p>～こなた視点～<br />
携帯にゆーちゃんからの緊急メッセージを受け取った私は、<br />
急いで車を走らせ、ゆーちゃんが留守番をしている泉家に急いだ。<br />
今回はひよりんと一緒にコーヒーを飲みながらマンガの打ち合わせをしていたのだが、<br />
状況が状況だけに、それどころではなくなってしまった。<br />
…お願い、間に合って…間に合って…ッ！！<br /><br />
「ゆーちゃん！？」<br />
「小早川さん！！」<br />
私が家に着いたころには、ゆーちゃんは全身から煙を噴き上げ…そのお腹にはハサミが刺さっていた。<br />
電源は…自分で体を倒して切ったのだろう、目の前で虚ろな目をしていてピクリとも動かない。<br />
…私は、ゆーちゃんの頭を急いで外すことにした。<br />
そして、ゆーちゃんの後頭部に隠されている充電コードをコンセントに差し込んであげた。</p>
<p> </p>
<p>～再びゆたか視点～<br />
「ゆーちゃん！しっかりしてよ、ゆーちゃん！」<br />
「…あ、こなたお姉ちゃん…それに……田村さん…」<br />
「よかったぁ…気がついたんスね…」<br />
「いやぁ、一時はどうなることかと思ったよ。ゆーちゃん、大丈夫？」<br />
「うん…なんとか記憶は守れたけど……」<br />
私は目に涙を浮かべて言いました。<br />
「ごめんなさい…身体…壊しちゃった……」<br />
「こ、小早川さんは悪くないよ、地震があったんなら仕方ないよ」<br />
「そうだよ、ゆーちゃんが謝ることなんてないよ」<br />
「でも…でも……」<br /><br />
次から次へと涙がこぼれて止まりません。<br />
そんな私を心配そうに見つめるお姉ちゃんと田村さん。<br />
でも、お姉ちゃんは溜息をついたあと、私に話し掛けてくれました。<br /><br />
「ゆーちゃん。身体が壊れたぐらいで落ち込むことなんてないよ。ゆーちゃんは心を…自分の心を守りきったじゃん。それでいいんだよ」<br />
「私の、心……」<br />
「そうだよ、ゆーちゃんには心がある。人間の心がね。どんなに機械の身体でも、ゆーちゃんには本物の心があるんだよ。ゆーちゃんが、ゆーちゃんだっていう証拠がね」<br /><br />
…しばらくして私は…また泣き出してしまいました。<br />
だけど今度は悲しみの涙じゃない。それは…嬉し涙でした。<br />
「うわぁぁぁぁん！お姉ちゃん、田村さん…ありがとう、ありがとう…」<br />
「ちょ、ちょっ…小早川さん！？」<br />
「よしよし、身体の方はすぐ修理してあげるから、安心してくれたまへ～」<br /><br />
……そう、私はサイボーグ。<br />
身体は確かに冷たい機械の塊かもしれません。<br />
だけど、私のその身体の中には…本当の心があるんです。<br />
私が私だっていう、唯一の証拠が……。<br /><br />
<おわり></p>
