さよなら、大好きな人

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さよなら、大好きな人」(2008/04/04 (金) 07:32:02) の最新版変更点

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<dl><dd>かがみの息遣いが荒くなっていく。当たり前だよね、友達だと思っていた同性に告白されれば。<br /><br /> 「かがみ……」<br /><br /> 沈黙が嫌になって、かがみの名前を呼んでみる。<br /> すると身体がピクッて動いた。今まで思考回路が停止してたんだろうね。<br /> かがみの後ろにまわしていた手をかがみの肩に持っていく。<br /> 抱き付いたままじゃ、かがみの目が見れないから。<br /><br /> 「こなたが……私を、好き?」<br /> 「うん。もちろん、友達としてなんかじゃないよ」<br /><br /> 私の目を見つめているように見えて、でもかがみは私を見てはいなかった。<br /> 激しい動揺からか、かがみの瞳は揺れに揺れまくっている。<br /> それからしばらく、沈黙が続く。やっと口を開いたかと思ったら、投げ掛けられた言葉は見当違いなものだった。<br /><br /> 「なん……で……?」<br /><br /><br /><br /> さよなら、大好きな人<br /><br /><br /><br /> なんで……か。かがみは本当に鈍感なんだか敏感なんだかわからないや。<br /><br /> 「理由なんかないよ。強いて言うなら……かがみが魅力的だからかな」<br /><br /> 『人を好きになるのに理由はいらない』。そう何かで聞いたことがある。<br /> 最初は半信半疑だったけれど、実際にかがみに恋してみてわかった。<br /> いつのまにか、かがみの顔が真っ赤になっていた。呼吸も苦しそうで、ちょっと危ないかも。<br /><br /> 「かがみ、だいじょぶ?」<br /> 「……ごめん……ちょっと、落ち着かせてもらっていいかしら……」<br /> 「うん」<br /><br /> もともと私がこの事態を引き起こしたのに、なんで私が尋ねられてるんだろう。<br /> そんなことを思いつつ、私は座り込むかがみをずっと見つめていた。<br /><br /><br /><br /> しばらくして、どうやら呼吸は落ち着いたようだ。<br /><br /> 「こなた……」<br /> 「落ち着いた? かがみ」<br /><br /> 立ち上がるかがみの姿を見て、一応尋ねてみた。<br /> かがみはコクリと頷いて、私の目をずっと見つめている。</dd> <dd> <p>「考えは、まとまった?」<br /> 「……ええ」<br /><br /> 怖い。<br /> 自分から告白しておきながら、返事を聞くのが、物凄く怖い。<br /><br /> 「曖昧な答えはだめだよ。ちゃんとした、かがみの返事が聞きたいんだから」<br /><br /> いや、言わなくても大丈夫なはずだ。かがみなら、最初っからわかってる。<br /> 曖昧な答えは、私だけじゃなくて、自分自身をも傷つけてしまうということを。<br /><br /> 「私もこなたは好きだけど、それは友達としてでしかないの。みゆきや峰岸、日下部に対して抱くのと同じ感情なの。だから……」<br /><br /> その先にくる言葉はもう決まったようなものだ。<br /> 私は目を瞑り、かがみの返事を待った。<br /> かがみの顔を直視したまま、その言葉を聞くなんてできないから。<br /><br /><br /><br /> 「だから私はこなたを、こなただけを特別視することはできない。こなたを恋愛感情で見ることは……できない」<br /><br /><br /><br /> 予想は、的中した。<br /> 最初からわかってはいたはずなのだ。<br /> かがみは普通の女の子。同性に告白されて、オーケーを出すはずがない。<br /> わかってはいたのに。<br /> 覚悟は出来てたはずなのに。<br /> なんで。<br /><br /> 「そっか……やっぱりそうだよね……」<br /> 「こなた……ごめんね」<br /> 「謝らないでよ、かがみ。かがみは自分の思うことを正直に言っただけだもん」<br /><br /> それに、悪いのは私の方なんだ。<br /> だってこれは、私の勝手だから。<br /> 私が勝手にかがみを好きになって。<br /> 私が勝手に……かがみに想いを伝えただけなんだから。<br /> 自分でもびっくりするくらいに声が震えてた。想像以上にショックが大きかったみたい。<br /> 必死に笑顔でいようとした。かがみに、これ以上迷惑をかけたくないから。<br /> なのに、おかしいな。瞳から、涙が溢れた。泣きたくなんて、ないはずなのに。</p> <p>「……かがみ、私達はもう……友達じゃいられないよね……」<br /><br /> 私はかがみに振られた。<br /> つまり、私達の関係は、終わったんだ。<br /> もう、元の生活には戻れないんだよね。友達でいられた、あの頃には……<br /><br /> 「……そう、ね……。もう、戻れないわね……」<br /><br /> もう戻れない。<br /> その言葉が、私の身体に重くのしかかる。<br /> フラフラになりながらも、屋上を出ようとして、そして、思い出した。<br /> まだ、かがみに――<br /><br /> 「こなた」<br /> 「かがみ」<br /><br /> お互いがお互いを呼ぶ声が重なり合う。<br /> 二人の声が完全に止まった。聞こえるのは、風の音だけ。<br /><br /> 「かがみ。私はずっと、かがみの幸せを祈ってるよ」<br /><br /> かがみの言葉を聞きたくなくて、私は伝えたいことを一気に言った。<br /> 声が震えてるのが自分でもわかる。涙がまた、私の瞳から溢れだす。<br /> でも、ダメだ。最後に見せる顔が、泣き顔なんて。<br /><br /><br /><br /> 「今までありがとう、かがみ」<br /><br /><br /><br /> だから私は、最高の笑顔を彼女に送った。<br /><br /> 「じゃあね、かがみ。さよならっ」<br /> 「あ……」<br /><br /> かがみが何か言いたげだったが、私は無視して走り去った。<br /> 階段を駆け降りて、廊下を走り抜けて、みさきちやゆーちゃんにぶつかったのも気にしない。<br /> ただ、一人になれる場所を求めて走った。<br /><br /><br /><br /> 「……ひっく……うあぁ……」<br /><br /> ひたすらに走って、辿り着いたのは体育用具室。<br /> ドアにもたれかかり、私はひたすらに嗚咽をあげて涙を流していた。<br /> 誰にも見られたくなかった。私が泣く姿を。</p> <p>「お姉ちゃん……」<br /><br /> ドアの向こうから、聞きなれた声がしてきた。<br /> 多分、廊下でぶつかった後、私を追い掛けてきてくれたんだろう。<br /><br /> 「ゆーちゃん……私……かがみに振られちゃった……」<br /> 「……うん……」<br /><br /> ゆーちゃんはそれきり、黙り込んでしまった。<br /> その方がよかった。私の気持ちを鎮めるには、喋り続けなくちゃいけないから。<br /> だけど。<br /><br /> 「覚悟は……できてたんだよ? かがみに振られることを、何度もシミュレーションした。それなのに……」<br /><br /> ドアを乱暴に開けて、ゆーちゃんの胸に飛び込んだ。<br /> それだけはしないようにと、何度も我慢してきたのに。<br /> 我慢が出来なかった。気持ちを鎮めることが出来なかった。<br /><br /> 「それなのに、なんでこんなに心が痛いの……!? なんでこんなに悲しいの……!? なんで……なんで……!? うあぁ……あああああああああああ!!」<br /><br /> 私の涙腺という名のダムは、完全に崩壊した。<br /> 私はゆーちゃんの胸の中で、子供のように泣きじゃくった。<br /><br /> 「……こなたお姉ちゃん……私はずっと、お姉ちゃんの味方だからね……」<br /> 「ゆーちゃん……ゆーちゃん……!!」<br /><br /> いきなりの出来事なのに動揺した様子もなく、ゆーちゃんはただ、私の頭を撫でてくれていた。<br /><br /><br /><br /><br /><br /> 今日は本当に、忘れられない日になった。<br /><br /> 私の初恋が終わった日。そして、かがみとの関係が終わった日。<br /><br /> 明日からは、また新しい日常が始まるんだ。<br /><br /> かがみがいない、私とゆーちゃんとの日常が。<br /><br /> だから、私は今までの日常に別れを告げる。<br /><br /> もう二度と会うことのない、それでも、私の大好きな人へ……<br /><br /><br /><br /><br /><br /> ――さよなら、かがみ。そして……ありがとう――</p> </dd> </dl>
<p>かがみの息遣いが荒くなっていく。当たり前だよね、友達だと思っていた同性に告白されれば。<br /><br /> 「かがみ……」<br /><br /> 沈黙が嫌になって、かがみの名前を呼んでみる。<br /> すると身体がピクッて動いた。今まで思考回路が停止してたんだろうね。<br /> かがみの後ろにまわしていた手をかがみの肩に持っていく。<br /> 抱き付いたままじゃ、かがみの目が見れないから。<br /><br /> 「こなたが……私を、好き?」<br /> 「うん。もちろん、友達としてなんかじゃないよ」<br /><br /> 私の目を見つめているように見えて、でもかがみは私を見てはいなかった。<br /> 激しい動揺からか、かがみの瞳は揺れに揺れまくっている。<br /> それからしばらく、沈黙が続く。やっと口を開いたかと思ったら、投げ掛けられた言葉は見当違いなものだった。<br /><br /> 「なん……で……?」<br /><br /><br /><br /> さよなら、大好きな人<br /><br /><br /><br /> なんで……か。かがみは本当に鈍感なんだか敏感なんだかわからないや。<br /><br /> 「理由なんかないよ。強いて言うなら……かがみが魅力的だからかな」<br /><br /> 『人を好きになるのに理由はいらない』。そう何かで聞いたことがある。<br /> 最初は半信半疑だったけれど、実際にかがみに恋してみてわかった。<br /> いつのまにか、かがみの顔が真っ赤になっていた。呼吸も苦しそうで、ちょっと危ないかも。<br /><br /> 「かがみ、だいじょぶ?」<br /> 「……ごめん……ちょっと、落ち着かせてもらっていいかしら……」<br /> 「うん」<br /><br /> もともと私がこの事態を引き起こしたのに、なんで私が尋ねられてるんだろう。<br /> そんなことを思いつつ、私は座り込むかがみをずっと見つめていた。<br /><br /><br /><br /> しばらくして、どうやら呼吸は落ち着いたようだ。<br /><br /> 「こなた……」<br /> 「落ち着いた? かがみ」<br /><br /> 立ち上がるかがみの姿を見て、一応尋ねてみた。<br /> かがみはコクリと頷いて、私の目をずっと見つめている。</p> <p>「考えは、まとまった?」<br /> 「……ええ」<br /><br /> 怖い。<br /> 自分から告白しておきながら、返事を聞くのが、物凄く怖い。<br /><br /> 「曖昧な答えはだめだよ。ちゃんとした、かがみの返事が聞きたいんだから」<br /><br /> いや、言わなくても大丈夫なはずだ。かがみなら、最初っからわかってる。<br /> 曖昧な答えは、私だけじゃなくて、自分自身をも傷つけてしまうということを。<br /><br /> 「私もこなたは好きだけど、それは友達としてでしかないの。みゆきや峰岸、日下部に対して抱くのと同じ感情なの。だから……」<br /><br /> その先にくる言葉はもう決まったようなものだ。<br /> 私は目を瞑り、かがみの返事を待った。<br /> かがみの顔を直視したまま、その言葉を聞くなんてできないから。<br /><br /><br /><br /> 「だから私はこなたを、こなただけを特別視することはできない。こなたを恋愛感情で見ることは……できない」<br /><br /><br /><br /> 予想は、的中した。<br /> 最初からわかってはいたはずなのだ。<br /> かがみは普通の女の子。同性に告白されて、オーケーを出すはずがない。<br /> わかってはいたのに。<br /> 覚悟は出来てたはずなのに。<br /> なんで。<br /><br /> 「そっか……やっぱりそうだよね……」<br /> 「こなた……ごめんね」<br /> 「謝らないでよ、かがみ。かがみは自分の思うことを正直に言っただけだもん」<br /><br /> それに、悪いのは私の方なんだ。<br /> だってこれは、私の勝手だから。<br /> 私が勝手にかがみを好きになって。<br /> 私が勝手に……かがみに想いを伝えただけなんだから。<br /> 自分でもびっくりするくらいに声が震えてた。想像以上にショックが大きかったみたい。<br /> 必死に笑顔でいようとした。かがみに、これ以上迷惑をかけたくないから。<br /> なのに、おかしいな。瞳から、涙が溢れた。泣きたくなんて、ないはずなのに。</p> <p>「……かがみ、私達はもう……友達じゃいられないよね……」<br /><br /> 私はかがみに振られた。<br /> つまり、私達の関係は、終わったんだ。<br /> もう、元の生活には戻れないんだよね。友達でいられた、あの頃には……<br /><br /> 「……そう、ね……。もう、戻れないわね……」<br /><br /> もう戻れない。<br /> その言葉が、私の身体に重くのしかかる。<br /> フラフラになりながらも、屋上を出ようとして、そして、思い出した。<br /> まだ、かがみに――<br /><br /> 「こなた」<br /> 「かがみ」<br /><br /> お互いがお互いを呼ぶ声が重なり合う。<br /> 二人の声が完全に止まった。聞こえるのは、風の音だけ。<br /><br /> 「かがみ。私はずっと、かがみの幸せを祈ってるよ」<br /><br /> かがみの言葉を聞きたくなくて、私は伝えたいことを一気に言った。<br /> 声が震えてるのが自分でもわかる。涙がまた、私の瞳から溢れだす。<br /> でも、ダメだ。最後に見せる顔が、泣き顔なんて。<br /><br /><br /><br /> 「今までありがとう、かがみ」<br /><br /><br /><br /> だから私は、最高の笑顔を彼女に送った。<br /><br /> 「じゃあね、かがみ。さよならっ」<br /> 「あ……」<br /><br /> かがみが何か言いたげだったが、私は無視して走り去った。<br /> 階段を駆け降りて、廊下を走り抜けて、みさきちやゆーちゃんにぶつかったのも気にしない。<br /> ただ、一人になれる場所を求めて走った。<br /><br /><br /><br /> 「……ひっく……うあぁ……」<br /><br /> ひたすらに走って、辿り着いたのは体育用具室。<br /> ドアにもたれかかり、私はひたすらに嗚咽をあげて涙を流していた。<br /> 誰にも見られたくなかった。私が泣く姿を。</p> <p>「お姉ちゃん……」<br /><br /> ドアの向こうから、聞きなれた声がしてきた。<br /> 多分、廊下でぶつかった後、私を追い掛けてきてくれたんだろう。<br /><br /> 「ゆーちゃん……私……かがみに振られちゃった……」<br /> 「……うん……」<br /><br /> ゆーちゃんはそれきり、黙り込んでしまった。<br /> その方がよかった。私の気持ちを鎮めるには、喋り続けなくちゃいけないから。<br /> だけど。<br /><br /> 「覚悟は……できてたんだよ? かがみに振られることを、何度もシミュレーションした。それなのに……」<br /><br /> ドアを乱暴に開けて、ゆーちゃんの胸に飛び込んだ。<br /> それだけはしないようにと、何度も我慢してきたのに。<br /> 我慢が出来なかった。気持ちを鎮めることが出来なかった。<br /><br /> 「それなのに、なんでこんなに心が痛いの……!? なんでこんなに悲しいの……!? なんで……なんで……!? うあぁ……あああああああああああ!!」<br /><br /> 私の涙腺という名のダムは、完全に崩壊した。<br /> 私はゆーちゃんの胸の中で、子供のように泣きじゃくった。<br /><br /> 「……こなたお姉ちゃん……私はずっと、お姉ちゃんの味方だからね……」<br /> 「ゆーちゃん……ゆーちゃん……!!」<br /><br /> いきなりの出来事なのに動揺した様子もなく、ゆーちゃんはただ、私の頭を撫でてくれていた。<br /><br /><br /><br /><br /><br /> 今日は本当に、忘れられない日になった。<br /><br /> 私の初恋が終わった日。そして、かがみとの関係が終わった日。<br /><br /> 明日からは、また新しい日常が始まるんだ。<br /><br /> かがみがいない、私とゆーちゃんとの日常が。<br /><br /> だから、私は今までの日常に別れを告げる。<br /><br /> もう二度と会うことのない、それでも、私の大好きな人へ……<br /><br /><br /><br /><br /><br /> ――さよなら、かがみ。そして……ありがとう――</p>

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