~嵐の夜の惨劇~エピローグ

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<p>エピローグ</p> <p>「一周していい匂いだよな」<br /> 「……そうね……」</p> <p>あの事件から一週間が過ぎた<br /> 明日は陵桜学院の入学式。二・三年生の始業式も、その前に行われる</p> <p>みさおはこの日、かがみの家に遊びに来ていた<br /> ……いや、『無理やりかがみの家に来た』と言ったほうが適切だろう<br /> 現にかがみはみさおの言葉に相づちを打つだけ。心ココにあらず、といった感じだ</p> <p>「……やっぱり、悲しいのか? あいつらが死んで……」<br /> 「……当たり前じゃない……!!」</p> <p>かがみは声を震わせながら、みさおの問いに答える</p> <p>「たった一日で……親友を四人も失ったのよ……!? 悲しいに決まってるじゃない……!!」</p> <p>こらえきれず、かがみの瞳から涙がこぼれ落ちる<br /> みさおはまだよかった。死んでしまった四人の中で、みさおの親友は一人だけ。それでも、悲しみはとても深かった<br /> だけどかがみにとっては四人全員が親友。一気に四人もの親友を失った悲しみは、みさおのソレとは比べものにならないほど深かったに違いない</p> <p><br /> みさおは小さく息をついて立ち上がり、窓の方へ歩きだす</p> <p>「なあ、柊」<br /> 「……なによ……」<br /> 「柊にとって、私ってなんだ?」<br /> 「え……?」</p> <p>予想だにしなかった質問に、かがみは戸惑った</p> <p>「私にとっての日下部……もちろん、親友に決まってるじゃない……」<br /> 「だろ? 私もそう。柊は、私の親友だと思ってる」</p> <p>窓を開けると、やわらかな風が部屋の中に吹き込み、みさおとかがみの髪を優しく揺らす</p> <p>「こういっちゃなんだけどさ、私はあの時、屋敷が崩れてよかったと思った。あのまま崩れないで柊が行っちまったら、柊まで死んじまってたからな」<br /> 「あ……」</p> <p><br /> ――あのまま屋敷が崩れないで私が突っ込んでいたら、日下部が今の私みたいに――</p> <p><br /> 「柊は一人じゃない。まだ、私が残ってるじゃないか。親友をみんな失うよりは、マシだと思うぜ? だからさ……」</p> <p>みさおは顔をかがみに向けた。輝く太陽のような、暖かい笑顔で</p> <p>「笑ってくれよ、柊。お前がそんなんだと、あいつらが安心して眠れないじゃん」<br /> 「……」</p> <p>目に涙を浮かべたかがみは立ち上がると、みさおの胸に顔をうずめた</p> <p>「ひ、柊……?」<br /> 「そういうのは……もっと早く言うもんじゃない……?」</p> <p>少し小声だったその言葉は、いつものかがみのものだった</p> <p><br /> 「……んだよ、素直じゃねぇな~。これが噂のツンデレってやつか」<br /> 「ばっ! 私は別にツンデレなんかじゃ……!」</p> <p>顔をうずめたまま怒るかがみの頭を、みさおの腕が優しく包んだ</p> <p>「今は思い切り泣け、柊。その変わり、もうあいつらのことで泣かないって、約束してくれ」<br /> 「……日下部……いいの……?」</p> <p>そうは言いつつも、みさおに向けたかがみの顔はすでに涙と鼻水でくしゃくしゃになっていた</p> <p>「みずくせーな。私達は親友だろ? 私の胸でよかったら、いつでも貸してやるよ。柊に比べたら小さいけどな」<br /> 「……あ……あり、が……くさ、かべ……う……うわあああああああ!!!」</p> <p>かがみは、まるで子供のように、みさおの腕の中で泣きじゃくった</p> <p>そのかがみを抱き締めるみさおの瞳からも、一筋の涙が流れた</p> <p><br /> (みんな……私は、みんなの分まで、しっかり生きてやるからな……柊と、二人で……)</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p>「ううう……ひっぐ……うああああ……!!」<br /> 「お、おい。いくらなんでも泣きすぎじゃないか……? 服がびしょびしょになっちまうじゃんか……」</p> <p><br /> みさおの額に脂汗がにじみ出るが、それはただの照れ隠しに過ぎなかった</p> <p>本当は――</p> <p><br /> (……もう少し……このままでいたいな……)</p> <p><br /> 親友を抱くみさおの腕の力が少し強くなった</p> <p>そう、ほんの少しだけ――</p> <p> </p> <p>~Fin~</p> <p> </p> <p><br /> (あくまでも)予告</p> <p>あの嵐の夜の惨劇から一ヶ月が経った</p> <p>「時間っちゅーもんは、残酷やな……」</p> <p>彼女達、かがみとみさおの二人での生活が『日常』になりつつあった</p> <p>「紹介するわ、日下部。こなたの従妹、小早川ゆたかちゃんと、みゆきのご近所さん、岩崎みなみちゃんよ」</p> <p>陵桜学院に入学した一年生の人達とも仲良くなり、少しは悲しみも癒されてきた</p> <p>「アニ研の田村ひよりっス!」<br /> 「留学生のパトリシア=マーティンデス!」</p> <p>平和な生活が続けばいいと願っていた、そんなある日――</p> <p>「ゆ……たか……?」<br /> 「見ちゃだめだ! 岩崎!」</p> <p>またしても<br /> 悲劇は、起こってしまった</p> <p>「これは……ダイイングメッセージ!?」</p> <p>――続く殺人!</p> <p>「た、田村さん!」<br /> 「ノ……Noooooooooo!!!」</p> <p>――混乱する親友たち!</p> <p>「ナんで!? ナんでヒヨリまで死ななキャいけないンですカ!!?」</p> <p>そして、殺害現場に残された、ダイイングメッセージが意味することとは……?<br /> その裏に隠された、愛と憎しみの悲しき真実とは……?</p> <p>――ワタシハ……イキナクチャイケナインダ――</p> <p><br /> 『らき☆すた殺人事件~愛憎の陵桜学院~』</p> <p><br /> 「ご……ごめん……な……ひいら……ぎ……元気で……いろ……よ……」<br /> 「イヤ! 逝かないで! 私を一人にしないでよ!! 日下部ーーーーーーー!!」</p> <p>彼女の叫びは、届くのか…<br /></p>

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