いつから

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いつから」(2008/03/31 (月) 12:19:23) の最新版変更点

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<dl><dd>人間は、動物と比べると、かなり鈍感なんだと思う。<br /> まあそれは、動物は常に危険と隣り合わせに生きているからだろうけど、それでも、人間は本当に鈍感だ。<br /> 例えば地震が起きる直前。鳥達はみんな一斉に飛び立つらしいし、犬や猫などの動物も落ち着きがなくなるらしい。<br /><br /> じゃあ、人間はどうなの?<br /><br /> 直前まで、気が付かないのがほとんどだと思う。揺れ始めてから、やっと『地震が起きた』と気付くくらい。<br /> 地震観測機なるものも開発されてるけど、機械に頼ってるようでは『人は敏感になった』とは言えない。<br /> 鈍感なのは、なにも災害だけじゃない。日々の変化にも鈍感だと思う。<br /> 特に、人の気持ちに対しては鈍感じゃないかな。人それぞれなんだろうけど。<br /><br /> じゃあ、私はどうだろう?<br /><br /> 私は人の気持ちに対して敏感なのか、鈍感なのか……<br /> そう問われたら、今この場で断言できる。私は、間違いなく鈍感だろう。<br /> だって……<br /><br /> 「……私は……かがみが好きなの……」<br /><br /> こいつの心の変化に、まったく気が付かなかったんだから――<br /><br /><br /><br /> ホントの気持ち、偽りの心(前編)<br /><br /><br /><br /> 「かがみ『が』作ったお弁当、今日『も』質素だねぇ」<br /> 「こなちゃん、それ、私が作ったんだよ」<br /> 「ナンデスト!?」<br /> 「昨日はまつり姉さんが買い物をするはずだったんだけどね? すっかり忘れてたらしくて、冷蔵庫は空っぽよ」<br /> 「ふむふむ……今日の当番がつかさだったからこそ、そんな状態でもお弁当が作れたのか……」<br /> 「ちょっと待て、こなた。それはつまり、『私が当番だったら弁当にすらなってなかった』ってことか?」<br /> 「わーん、かがみ怖いー」<br /><br /> いつの間にか、こなたが元に戻ってた。<br /> まだよそよそしいところはあるけれど、少し前に比べたらだいぶ良くなったみたい。<br /> 『自分で解決しなくちゃいけない悩み』っての、解決したのかしら。<br /><br /> 「ねぇ、かがみ……」<br /> 「何よ?」<br /><br /> ただ、二人になった時だけは急に口数が減る。しかも、顔がちょっとだけ赤いし。<br /> ……私ってそんなに暑苦しかったっけ……<br /><br /> 「あ、あのさ……ほ、ほ……」<br /> 「ほ?」<br /> 「ほ……北海道で人気の動物園ってなんて言ったっけ?」<br /> 「旭山動物園」<br /> 「あ、あ! そうだった。ありがとう、かがみ。……ハァ」<br /><br /> こんな調子が、何日も続いてる。私にいろいろと尋ねてきて、答えると最後に溜め息……<br /> 何かしら? おもしろい答えでも求めてるっての?<br /><br /> 「私、ちょっとトイレに行ってくるね」<br /> 「オッケー」<br /><br /> 席を立ったと思ったら、そそくさと出ていってしまった。<br /> 私……やっぱりこなたに嫌われるようなことしたのかしら……<br /><br /><br /><br /> それから十分経っても、こなたは帰ってこなかった。<br /><br /> 「もう、早くしないとお昼休み終わっちゃうじゃない」<br /><br /> お腹でも壊してるのかしら?<br /> しょうがないわね……ちょっと見に行くか。<br /><br /> トイレに着くと、こなたは洗面台に手をついて、鏡に向かって小さく溜め息を吐いていた。<br /> なんだかボソボソ呟いてるみたいだけど……<br /><br /> 「こなた、どうしたのよ?」<br /> 「やっぱり、今日中には……ってうわぁ!? か、かがみ!?」<br /><br /> 私の存在に気付いたこなたは数メートルほど後退りして後ろの壁に激突した。<br /> そんなアニメみたいなことをリアルでやってくれるとは、さすがこなた。<br /> ……って、今気にするべきことはこれじゃない。<br /><br /> 「どうしたのよ、こなた。もう十分くらい経ってるわよ?」<br /> 「う、うん……」<br /><br /> 背中を擦りながら、こなたが小さく返事をしてきた。<br /> 間違いない、こいつ……<br /><br /> 「まだ、悩みは解決してないのね?」<br /> 「!」<br /><br /> 身体をビクッと震わせた後、顔を下げて固まってしまった。<br /> 私はこなたに近づいて、肩に手をポンと置いた。<br /><br /> 「どんな悩みなのよ? 私に教えなさいよ。誰かに話したら、案外楽になるものよ?」<br /><br /> 迷っているのか、こなたは視線を泳がせている。<br /> そして小さく頷いたかと思うと顔をあげ、今度は私の目を見つめてきた。<br /><br /> 「かがみ」<br /> 「なに?」<br /> 「ほ……本当はシシャモはキャペリンって名前の魚だって知ってた?」<br /> 「ええ、みゆきに前聞いたことがあるわ」<br /><br /> ……えっと……また、こういう展開なの……?<br /> こなたは私の手を離れて、壁に手をついて……頭を何度もぶつけ……<br /><br /> 「違う!! そうじゃなくてそうじゃなくてそうじゃなくて~~~~!!!」<br /> 「ちょ、こなた!?」<br /><br /> な、なにやってんのよあいつ!?<br /> 私は急いで駆け寄ってこなたの身体を羽交い締めにした。<br /><br /> 「こなた、落ち着けってば!」<br /> 「かがみ!」<br /> 「はいぃ!?」<br /><br /> ちょ、いきなり振り向かれると驚くじゃない!!<br /> って……うっわ……こなたの額、真っ赤……!!<br /><br /> 「かがみ。放課後、屋上に来て。全部話すからさ」<br /><br /> それだけ言うと、こなたはさっさとトイレから出ていった。<br /> 私はそれを見送った後、いろいろなショックで腰を抜かし、地面に崩れ落ちた。<br /><br /> 「な、なんなのよ、一体……?」<br /><br /> しばらく惚(ほう)けていた後、こなたが額をぶつけてた壁に何気なく目をやった。<br /> ……!? 陥没してる!? どんな石頭だよ、こなた!<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /> 「……中学の頃から、屋上は好きなんだ。一人でのんびりできるし、こういう景色だって見えるし」<br /><br /> 屋上のフェンスに寄りかかり、沈みかけている夕日を見ながらこなたが呟いてきた。<br /> その横顔は、夕日に照らされてるせいか『大人の女性』っぽいオーラを醸し出しているように見える。<br /> 体型は……そのままだけど。<br /><br /> 「今日はいろいろな意味で、忘れられない日になりそうだよ。かがみ」<br /><br /> 振り返り、フェンスに腰掛けるその顔は、愁いを含んでいるような、そんな感じがした。<br /> いつものこなたからは想像も出来ないようなこなたが……今、目の前にいる。<br /><br /> 「……わざわざこんなところに呼び出した理由を聞かせてほしいわね」<br /><br /> 本当は、大方理解していた。今ここには、私とこなたの二人きり。<br /> 誰にも聞かれたくない、重大な悩みなんだろうと。<br /><br /> 「あれ? まだわからないんだ。かがみって意外とギャルゲ主人公の属性あるよ」<br /><br /> だけどこなたは、いつものようにおちゃらけていた。<br /> いつもなら罵声を浴びせるところだが、敢えて反論しなかった。その言葉にも、なんらかの意図があるように思えたから。<br /><br /> 「ま、いいや。ここに呼んだ理由だけど……」<br /><br /> こなたはフェンスから離れて私の方にまで歩いてくる。<br /> そしてその距離が1mほどになった時、こなたはポケットから小さな箱を取出し、私に向かって出してきた。<br /><br /> 「かがみ、受け取って。そして、中を見て……」<br /><br /> なんだかよくわからないけれど、これが何か関係していることは確か。<br /> 受け取った私は、何か爆弾でも扱うかのように慎重に箱を開いた。<br /><br /> そこにあったのは、一つの指輪だった。どうみても、安物に見えない宝石を付けたそれを持ち上げて眺める。<br /><br /> 「それね、15万したんだ。お小遣いが全部なくなっちゃったよ」<br /> 「じゅ……!?」<br /><br /> 15万……!? こなた、なんてモン買って……<br /> って驚愕してると、こなたがまた小さく溜め息をついた。<br /><br /> 「やっぱりここまで来ても気が付かないんだねぇ、かがみは。もうちょっとよく見てよ」<br /><br /> その言い方がカチンときたけど、今の私に反論する権利はない。言われた通りに指輪を穴が空くほど見つめた。<br /><br /> 「……ん……?」<br /><br /> 側面をよく見てみると、なにか文字のようなものが刻まれているのが見えた。<br /><br /> 「えと……KONATA&KAGA……」<br /><br /> そこまで呟いて、私はある一つの仮説に辿り着いた。否、辿り着いてしまった。<br /> 前にこなたが言っていた、ある言葉だけが、頭の中をぐるぐる回っている。<br /><br /><br /> ――ギャルゲの主人公ってさ、愛に対しては鈍感なんだよね――<br /><br /><br /> 「かがみ」<br /><br /> その呼び掛けに我に帰り、はっとしてこなたを見る。<br /> そして、気が付いた。こなたの指にも、同じ指輪がはめられていることに。しかも……左手の薬指に。<br /><br /> 「やっと気が付いたみたいだね。鈍感さん」<br /> 「こ……こなた……じ、冗談、よね……?」<br /> 「冗談なんかじゃ、こんなこと言わないよ」<br /><br /> 引きつっているであろう笑顔をこなたに向けるも、その顔に、冗談の類は一切見られなかった。<br /> こなたはゆっくりと歩きだし、私との距離を詰める。<br /> そして、こなたは私の背中に手を回して優しく、そして力強く抱き締めてきた。<br /><br /> 「……私は……かがみが好きなの……」</dd> </dl>
<dl><dd>人間は、動物と比べると、かなり鈍感なんだと思う。<br /> まあそれは、動物は常に危険と隣り合わせに生きているからだろうけど、それでも、人間は本当に鈍感だ。<br /> 例えば地震が起きる直前。鳥達はみんな一斉に飛び立つらしいし、犬や猫などの動物も落ち着きがなくなるらしい。<br /><br /> じゃあ、人間はどうなの?<br /><br /> 直前まで、気が付かないのがほとんどだと思う。揺れ始めてから、やっと『地震が起きた』と気付くくらい。<br /> 地震観測機なるものも開発されてるけど、機械に頼ってるようでは『人は敏感になった』とは言えない。<br /> 鈍感なのは、なにも災害だけじゃない。日々の変化にも鈍感だと思う。<br /> 特に、人の気持ちに対しては鈍感じゃないかな。人それぞれなんだろうけど。<br /><br /> じゃあ、私はどうだろう?<br /><br /> 私は人の気持ちに対して敏感なのか、鈍感なのか……<br /> そう問われたら、今この場で断言できる。私は、間違いなく鈍感だろう。<br /> だって……<br /><br /> 「……私は……かがみが好きなの……」<br /><br /> こいつの心の変化に、まったく気が付かなかったんだから――<br /><br /><br /><br /> いつから<br /><br /><br /><br /> 「かがみ『が』作ったお弁当、今日『も』質素だねぇ」<br /> 「こなちゃん、それ、私が作ったんだよ」<br /> 「ナンデスト!?」<br /> 「昨日はまつり姉さんが買い物をするはずだったんだけどね? すっかり忘れてたらしくて、冷蔵庫は空っぽよ」<br /> 「ふむふむ……今日の当番がつかさだったからこそ、そんな状態でもお弁当が作れたのか……」<br /> 「ちょっと待て、こなた。それはつまり、『私が当番だったら弁当にすらなってなかった』ってことか?」<br /> 「わーん、かがみ怖いー」<br /><br /> いつの間にか、こなたが元に戻ってた。<br /> まだよそよそしいところはあるけれど、少し前に比べたらだいぶ良くなったみたい。<br /> 『自分で解決しなくちゃいけない悩み』っての、解決したのかしら。<br /><br /> 「ねぇ、かがみ……」<br /> 「何よ?」<br /><br /> ただ、二人になった時だけは急に口数が減る。しかも、顔がちょっとだけ赤いし。<br /> ……私ってそんなに暑苦しかったっけ……<br /><br /> 「あ、あのさ……ほ、ほ……」<br /> 「ほ?」<br /> 「ほ……北海道で人気の動物園ってなんて言ったっけ?」<br /> 「旭山動物園」<br /> 「あ、あ! そうだった。ありがとう、かがみ。……ハァ」<br /><br /> こんな調子が、何日も続いてる。私にいろいろと尋ねてきて、答えると最後に溜め息……<br /> 何かしら? おもしろい答えでも求めてるっての?<br /><br /> 「私、ちょっとトイレに行ってくるね」<br /> 「オッケー」<br /><br /> 席を立ったと思ったら、そそくさと出ていってしまった。<br /> 私……やっぱりこなたに嫌われるようなことしたのかしら……<br /><br /><br /><br /> それから十分経っても、こなたは帰ってこなかった。<br /><br /> 「もう、早くしないとお昼休み終わっちゃうじゃない」<br /><br /> お腹でも壊してるのかしら?<br /> しょうがないわね……ちょっと見に行くか。<br /><br /> トイレに着くと、こなたは洗面台に手をついて、鏡に向かって小さく溜め息を吐いていた。<br /> なんだかボソボソ呟いてるみたいだけど……<br /><br /> 「こなた、どうしたのよ?」<br /> 「やっぱり、今日中には……ってうわぁ!? か、かがみ!?」<br /><br /> 私の存在に気付いたこなたは数メートルほど後退りして後ろの壁に激突した。<br /> そんなアニメみたいなことをリアルでやってくれるとは、さすがこなた。<br /> ……って、今気にするべきことはこれじゃない。<br /><br /> 「どうしたのよ、こなた。もう十分くらい経ってるわよ?」<br /> 「う、うん……」<br /><br /> 背中を擦りながら、こなたが小さく返事をしてきた。<br /> 間違いない、こいつ……<br /><br /> 「まだ、悩みは解決してないのね?」<br /> 「!」<br /><br /> 身体をビクッと震わせた後、顔を下げて固まってしまった。<br /> 私はこなたに近づいて、肩に手をポンと置いた。<br /><br /> 「どんな悩みなのよ? 私に教えなさいよ。誰かに話したら、案外楽になるものよ?」<br /><br /> 迷っているのか、こなたは視線を泳がせている。<br /> そして小さく頷いたかと思うと顔をあげ、今度は私の目を見つめてきた。<br /><br /> 「かがみ」<br /> 「なに?」<br /> 「ほ……本当はシシャモはキャペリンって名前の魚だって知ってた?」<br /> 「ええ、みゆきに前聞いたことがあるわ」<br /><br /> ……えっと……また、こういう展開なの……?<br /> こなたは私の手を離れて、壁に手をついて……頭を何度もぶつけ……<br /><br /> 「違う!! そうじゃなくてそうじゃなくてそうじゃなくて~~~~!!!」<br /> 「ちょ、こなた!?」<br /><br /> な、なにやってんのよあいつ!?<br /> 私は急いで駆け寄ってこなたの身体を羽交い締めにした。<br /><br /> 「こなた、落ち着けってば!」<br /> 「かがみ!」<br /> 「はいぃ!?」<br /><br /> ちょ、いきなり振り向かれると驚くじゃない!!<br /> って……うっわ……こなたの額、真っ赤……!!<br /><br /> 「かがみ。放課後、屋上に来て。全部話すからさ」<br /><br /> それだけ言うと、こなたはさっさとトイレから出ていった。<br /> 私はそれを見送った後、いろいろなショックで腰を抜かし、地面に崩れ落ちた。<br /><br /> 「な、なんなのよ、一体……?」<br /><br /> しばらく惚(ほう)けていた後、こなたが額をぶつけてた壁に何気なく目をやった。<br /> ……!? 陥没してる!? どんな石頭だよ、こなた!<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /> 「……中学の頃から、屋上は好きなんだ。一人でのんびりできるし、こういう景色だって見えるし」<br /><br /> 屋上のフェンスに寄りかかり、沈みかけている夕日を見ながらこなたが呟いてきた。<br /> その横顔は、夕日に照らされてるせいか『大人の女性』っぽいオーラを醸し出しているように見える。<br /> 体型は……そのままだけど。<br /><br /> 「今日はいろいろな意味で、忘れられない日になりそうだよ。かがみ」<br /><br /> 振り返り、フェンスに腰掛けるその顔は、愁いを含んでいるような、そんな感じがした。<br /> いつものこなたからは想像も出来ないようなこなたが……今、目の前にいる。<br /><br /> 「……わざわざこんなところに呼び出した理由を聞かせてほしいわね」<br /><br /> 本当は、大方理解していた。今ここには、私とこなたの二人きり。<br /> 誰にも聞かれたくない、重大な悩みなんだろうと。<br /><br /> 「あれ? まだわからないんだ。かがみって意外とギャルゲ主人公の属性あるよ」<br /><br /> だけどこなたは、いつものようにおちゃらけていた。<br /> いつもなら罵声を浴びせるところだが、敢えて反論しなかった。その言葉にも、なんらかの意図があるように思えたから。<br /><br /> 「ま、いいや。ここに呼んだ理由だけど……」<br /><br /> こなたはフェンスから離れて私の方にまで歩いてくる。<br /> そしてその距離が1mほどになった時、こなたはポケットから小さな箱を取出し、私に向かって出してきた。<br /><br /> 「かがみ、受け取って。そして、中を見て……」<br /><br /> なんだかよくわからないけれど、これが何か関係していることは確か。<br /> 受け取った私は、何か爆弾でも扱うかのように慎重に箱を開いた。<br /><br /> そこにあったのは、一つの指輪だった。どうみても、安物に見えない宝石を付けたそれを持ち上げて眺める。<br /><br /> 「それね、15万したんだ。お小遣いが全部なくなっちゃったよ」<br /> 「じゅ……!?」<br /><br /> 15万……!? こなた、なんてモン買って……<br /> って驚愕してると、こなたがまた小さく溜め息をついた。<br /><br /> 「やっぱりここまで来ても気が付かないんだねぇ、かがみは。もうちょっとよく見てよ」<br /><br /> その言い方がカチンときたけど、今の私に反論する権利はない。言われた通りに指輪を穴が空くほど見つめた。<br /><br /> 「……ん……?」<br /><br /> 側面をよく見てみると、なにか文字のようなものが刻まれているのが見えた。<br /><br /> 「えと……KONATA&KAGA……」<br /><br /> そこまで呟いて、私はある一つの仮説に辿り着いた。否、辿り着いてしまった。<br /> 前にこなたが言っていた、ある言葉だけが、頭の中をぐるぐる回っている。<br /><br /><br /> ――ギャルゲの主人公ってさ、愛に対しては鈍感なんだよね――<br /><br /><br /> 「かがみ」<br /><br /> その呼び掛けに我に帰り、はっとしてこなたを見る。<br /> そして、気が付いた。こなたの指にも、同じ指輪がはめられていることに。しかも……左手の薬指に。<br /><br /> 「やっと気が付いたみたいだね。鈍感さん」<br /> 「こ……こなた……じ、冗談、よね……?」<br /> 「冗談なんかじゃ、こんなこと言わないよ」<br /><br /> 引きつっているであろう笑顔をこなたに向けるも、その顔に、冗談の類は一切見られなかった。<br /> こなたはゆっくりと歩きだし、私との距離を詰める。<br /> そして、こなたは私の背中に手を回して優しく、そして力強く抱き締めてきた。<br /><br /> 「……私は……かがみが好きなの……」</dd> </dl>

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