「らき☆すた関ヶ原冬の陣」 ID:Vzf23kE0氏

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ある日、珍しいことに関東地方に雪が積もった。<br>  山間部のみならず、都市部まで美しい純白に染め上げられた。クリスマスにでも降っていればなお良かった。<br>  近頃、地球温暖化という言葉が社会を賑わせているが、この光景を目の当たりにすると、果たして本当なのかと首をかしげたくなる。<br>  今朝はやけに冷えるなと目を覚まし、カーテンを開いて納得したり驚愕する人が大勢いた。<br>  岩崎家では愛犬のチェリーが文字通り、喜び庭駆け回っていたそうである。<br>  交通機関を麻痺させたり、雪かきに追われたりと、とにかく雪は厄介者扱いされることが多い。<br>  しかし、世の中には雪が降らなければ成り立たない商売もある。<br>  雪を売り物にしている観光産業、ウィンタースポーツ業界などだ。<br>  この積雪、まさに格好の掻き入れ時といえた。<br> <br>  ここは埼玉に存在する陵桜学園。雪が降ったとはいえ、それほど深刻ではなかったため休校にはならなかった。幸か不幸かは人それぞれである。<br>  今は昼食の時間。四人の生徒が机を寄せ合っている。<br> 「私をスキーに連れてって~」<br>  発言者は泉こなた。<br> 「いきなり何を言い出すのよ、アンタは」<br>  かがみが切り返す。<br> 「いやー、今朝の雪見てたら無性にスキー行きたくなっちゃって」<br> 「まあ、気持ちは分かるけど」<br> 「ところで泉さん」<br>  みゆきが会話に入り込んできた。<br> 「さっきからどうして私の方を見てるんでしょうか?」<br>  少し困惑した表情を向けながら尋ねる。<br> 「アンタまさか、みゆきにタカるつもり?」<br>  こなたが答えるより早く、かがみが問い詰める。日頃授業のノートをこなたに「貸している」かがみには、こなたがそう考えているとしか思えなかった。<br> 「やだなー、タカるなんて人聞きの悪いこと言わないでよ。うまいことみゆきさんに連れてってもらえればいいなー、なんて思ってるだけだよ」<br> 「それを世間ではタカるっていうのよ……」<br> 「むー、かがみったら……つかさはどう? スキー行きたいよね?」<br>  こなたは多数派工作に出た。<br> 「えっ、わ、私? えーと、えーと……」<br>  突然話を振られたつかさはひどく慌てた。ギャグ漫画なら目が点になっていたことだろう。<br> 「うーん、行きたい……かなぁ?」<br>  五、六秒悩んだ末に答えた。<br> 「つーかーさー」<br>  姉は見事にダシにされてしまった妹を軽くにらんだ。その目は、空気に流されやすいんだからと語っていた。<br> 「あう……で、でもお姉ちゃんも行きたいでしょ?」<br> 「……あのねえ、私ら一応受験生よ? 滑っ――」<br>  途中まで言いかけてかがみは自分の浅はかさを呪った。<br>  その場の気温が下がったのは、もちろん寒さのためではない。<br>  重たい空気が流れる。<br> 「え、えーと、でしたらスキーではなく別のことはどうです?」<br>  みゆきが何とか場を盛り上げようと提案した。<br> 「別のことって何? みゆきさん」<br> 「そうですね、温泉はいかがですか? ちょうど日光に別荘がありまして」<br> 「いいねー、あ、でもゆきちゃんの方はいいの?」<br> 「私でしたらお構いなく。皆さんと楽しく過ごせたら私もうれしいので。あと、雪遊びも出来そうですね」<br> 「それじゃ今度みんなで一緒に行こうか。ね、かがみ?」<br> 「まあ、みんなが言うなら……」<br>  つかさに負けず劣らず空気に流されやすいかがみであった。<br> <br>  当日がやってきた。<br>  四人のはずが大幅に人数が増えて、高良家の別荘には十人もの人間が押しかけた。<br>  三年生からは、みさおとあやの。<br>  一年生からは、ゆたか、みなみ、ひより、パティ。<br>  先日行なわれた文化祭でチアダンスの出し物をやったメンバーである。<br>  これだけ人数が増えても余裕があるというのだから大したものだ。<br>  荷物を各人の部屋に置くと一同は居間に集合した。<br> 「温泉にはまだ早いしどうする?」<br>  と、かがみ。<br> 「せっかく雪も積もってるし、やっぱ雪遊びとかしてーよなっ」<br>  みさおが応じる。<br> 「雪遊びだったらさ、雪合戦とかどう?」<br>  こなたが案を出す。<br> 「雪合戦か……何だか懐かしいわね」<br>  かがみは相槌を打った。<br>  結局その場の流れで雪合戦をすることに決定した。問題はゆたかはどうするかだった。<br> 「私もやろうかなぁ」<br>  誰もが息を呑んだ。<br> 「ゆたか、ほんとに大丈夫……?」<br>  みなみは心底ゆたかを心配していた。以前、体育の授業でドッジボールをした時、敵味方に分かれてしまったことがあった。その時はゆたかが外野にまわることで、ゆたかが狙われることはなかったが……。<br> 「大丈夫だよ、みなみちゃん。絶対に無理しないから」<br> 「ゆたか……」<br>  かくして雪合戦に参加する人数は十人、つまり全員となった。<br> <br> 「あ、そうだ。普通にやったんじゃつまんないから、負けたチームは罰ゲームで何か面白いことやってね」<br>  何やらこなたが不吉なことを言いながらくじを十本つくった。うち五本の先端を黒マジックで塗られている。<br> 「せーの」<br>  一斉にくじが各自の手に握られた。それぞれの先端部分に目をやる。<br>  徐々に高まる鼓動。<br> (んっふっふ、このメンバーか)<br> (あら? 勝たせてもらうわよ、つかさ)<br> (ふぇ? そんなぁ……お姉ちゃ~ん)<br> (ど、どうしましょう……)<br> (へっへへー、もらったぜ!)<br> (みさちゃん、表情に出すぎ……)<br> (み、みなみちゃん……)<br> (そんな、ゆたかが……)<br> (こ、これはロミオとジュリエットーッ!?)<br> (オー、衝撃の展開デース)<br>  あまりに戦力差がありすぎた。<br>  日光という場所に合わせて東軍と西軍に分けると次のようになる。<br> <br> 東軍<br> 泉こなた<br> 柊かがみ<br> 日下部みさお<br> 岩崎みなみ<br> パトリシア・マーティン<br> <br> 西軍<br> 高良みゆき<br> 柊つかさ<br> 峰岸あやの<br> 小早川ゆたか<br> 田村ひより<br> <br>  明らかに西軍に不利である。<br>  勝敗は火を見るより明らかかと思われたが、ところがその夜辱めを受けることになるのは、意外にも東軍のメンバーであったのだから世の中とは分からないものである。<br>  西軍の戦術は、ゆたかとつかさを敢えて最前線に配置し、東軍に心理的な圧力をかけ、その隙に東軍の主力を集中攻撃するというものであった。<br>  何ともあっけない幕切れにこなたは思わず叫んだ。<br> 「これでいいのかーっ!」<br>  そうしているうちにも、ネタを考えなくてはならないこなたと東軍のメンバーたち。人を呪わば穴二つという格言をこなたはその身をもって理解したのであった――。<br>
ある日、珍しいことに関東地方に雪が積もった。<br>  山間部のみならず、都市部まで美しい純白に染め上げられた。クリスマスにでも降っていればなお良かった。<br>  近頃、地球温暖化という言葉が社会を賑わせているが、この光景を目の当たりにすると、果たして本当なのかと首をかしげたくなる。<br>  今朝はやけに冷えるなと目を覚まし、カーテンを開いて納得したり驚愕する人が大勢いた。<br>  岩崎家では愛犬のチェリーが文字通り、喜び庭駆け回っていたそうである。<br>  交通機関を麻痺させたり、雪かきに追われたりと、とにかく雪は厄介者扱いされることが多い。<br>  しかし、世の中には雪が降らなければ成り立たない商売もある。<br>  雪を売り物にしている観光産業、ウィンタースポーツ業界などだ。<br>  この積雪、まさに格好の掻き入れ時といえた。<br> <br>  ここは埼玉に存在する陵桜学園。雪が降ったとはいえ、それほど深刻ではなかったため休校にはならなかった。幸か不幸かは人それぞれである。<br>  今は昼食の時間。四人の生徒が机を寄せ合っている。<br> 「私をスキーに連れてって~」<br>  発言者は泉こなた。<br> 「いきなり何を言い出すのよ、アンタは」<br>  かがみが切り返す。<br> 「いやー、今朝の雪見てたら無性にスキー行きたくなっちゃって」<br> 「まあ、気持ちは分かるけど」<br> 「ところで泉さん」<br>  みゆきが会話に入り込んできた。<br> 「さっきからどうして私の方を見てるんでしょうか?」<br>  少し困惑した表情を向けながら尋ねる。<br> 「アンタまさか、みゆきにタカるつもり?」<br>  こなたが答えるより早く、かがみが問い詰める。日頃授業のノートをこなたに「貸している」かがみには、こなたがそう考えているとしか思えなかった。<br> 「やだなー、タカるなんて人聞きの悪いこと言わないでよ。うまいことみゆきさんに連れてってもらえればいいなー、なんて思ってるだけだよ」<br> 「それを世間ではタカるっていうのよ……」<br> 「むー、かがみったら……つかさはどう? スキー行きたいよね?」<br>  こなたは多数派工作に出た。<br> 「えっ、わ、私? えーと、えーと……」<br>  突然話を振られたつかさはひどく慌てた。ギャグ漫画なら目が点になっていたことだろう。<br> 「うーん、行きたい……かなぁ?」<br>  五、六秒悩んだ末に答えた。<br> 「つーかーさー」<br>  姉は見事にダシにされてしまった妹を軽くにらんだ。その目は、空気に流されやすいんだからと語っていた。<br> 「あう……で、でもお姉ちゃんも行きたいでしょ?」<br> 「……あのねえ、私ら一応受験生よ? 滑っ――」<br>  途中まで言いかけてかがみは自分の浅はかさを呪った。<br>  その場の気温が下がったのは、もちろん寒さのためではない。<br>  重たい空気が流れる。<br> 「え、えーと、でしたらスキーではなく別のことはどうです?」<br>  みゆきが何とか場を盛り上げようと提案した。<br> 「別のことって何? みゆきさん」<br> 「そうですね、温泉はいかがですか? ちょうど日光に別荘がありまして」<br> 「いいねー、あ、でもゆきちゃんの方はいいの?」<br> 「私でしたらお構いなく。皆さんと楽しく過ごせたら私もうれしいので。あと、雪遊びも出来そうですね」<br> 「それじゃ今度みんなで一緒に行こうか。ね、かがみ?」<br> 「まあ、みんなが言うなら……」<br>  つかさに負けず劣らず空気に流されやすいかがみであった。<br> <br>  当日がやってきた。<br>  四人のはずが大幅に人数が増えて、高良家の別荘には十人もの人間が押しかけた。<br>  三年生からは、みさおとあやの。<br>  一年生からは、ゆたか、みなみ、ひより、パティ。<br>  先日行なわれた文化祭でチアダンスの出し物をやったメンバーである。<br>  これだけ人数が増えても余裕があるというのだから大したものだ。<br>  荷物を各人の部屋に置くと一同は居間に集合した。<br> 「温泉にはまだ早いしどうする?」<br>  と、かがみ。<br> 「せっかく雪も積もってるし、やっぱ雪遊びとかしてーよなっ」<br>  みさおが応じる。<br> 「雪遊びだったらさ、雪合戦とかどう?」<br>  こなたが案を出す。<br> 「雪合戦か……何だか懐かしいわね」<br>  かがみは相槌を打った。<br>  結局その場の流れで雪合戦をすることに決定した。問題はゆたかはどうするかだった。<br> 「私もやろうかなぁ」<br>  誰もが息を呑んだ。<br> 「ゆたか、ほんとに大丈夫……?」<br>  みなみは心底ゆたかを心配していた。以前、体育の授業でドッジボールをした時、敵味方に分かれてしまったことがあった。その時はゆたかが外野にまわることで、ゆたかが狙われることはなかったが……。<br> 「大丈夫だよ、みなみちゃん。絶対に無理しないから」<br> 「ゆたか……」<br>  かくして雪合戦に参加する人数は十人、つまり全員となった。<br> <br> 「あ、そうだ。普通にやったんじゃつまんないから、負けたチームは罰ゲームで何か面白いことやってね」<br>  何やらこなたが不吉なことを言いながらくじを十本つくった。うち五本の先端を黒マジックで塗られている。<br> 「せーの」<br>  一斉にくじが各自の手に握られた。それぞれの先端部分に目をやる。<br>  徐々に高まる鼓動。<br> (んっふっふ、このメンバーか)<br> (あら? 勝たせてもらうわよ、つかさ)<br> (ふぇ? そんなぁ……お姉ちゃ~ん)<br> (ど、どうしましょう……)<br> (へっへへー、もらったぜ!)<br> (みさちゃん、表情に出すぎ……)<br> (み、みなみちゃん……)<br> (そんな、ゆたかが……)<br> (こ、これはロミオとジュリエットーッ!?)<br> (オー、衝撃の展開デース)<br>  あまりに戦力差がありすぎた。<br>  日光という場所に合わせて東軍と西軍に分けると次のようになる。<br> <br> 東軍<br> 泉こなた<br> 柊かがみ<br> 日下部みさお<br> 岩崎みなみ<br> パトリシア・マーティン<br> <br> 西軍<br> 高良みゆき<br> 柊つかさ<br> 峰岸あやの<br> 小早川ゆたか<br> 田村ひより<br> <br>  明らかに西軍に不利である。<br>  勝敗は火を見るより明らかかと思われたが、ところがその夜辱めを受けることになるのは、意外にも東軍のメンバーであったのだから世の中とは分からないものである。<br>  西軍の戦術は、ゆたかとつかさを敢えて最前線に配置し、東軍に心理的な圧力をかけ、その隙に東軍の主力を集中攻撃するというものであった。<br>  何ともあっけない幕切れにこなたは思わず叫んだ。<br> 「これでいいのかーっ!」<br>  そうしているうちにも、ネタを考えなくてはならないこなたと東軍のメンバーたち。人を呪わば穴二つという格言をこなたはその身をもって理解したのであった――。<br>

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