ID:5tLmAMM0氏:泉かなたの出現

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空にある雲が地面にきたかのような土曜日。 傘を差し、歩いても歩いても白い水蒸気にまみれ、ただでさえ水溜りでズボンが濡れるというのに前まで気にしなくてはいけない。 降り注ぐ雨の足音が折角の休日に水を差しているようだ、正直な感想を言わして貰うと鬱陶しくて仕方が無い。 今、ズボンの1番下が濡れた、水の飛沫によって色が濃くなった。その感覚が足に伝って気色が悪い。 勿論こんな雨の中だから人っ子1人居ない、休日に傘をさしてまで街を歩こうなんて居ないだろう。 傘の端から落ちてくる雨の雫にせめて両肩だけでも濡れさせないと、身を縮こませながら1人の少年は歩いている。 そんな時、ある1人の女性が目に止まった。 いや、少女と言うべきだろうか、青い長髪が印象的だ、何故少女と思ったのかと言うとその雰囲気が語っている。 背の低さから推測するに少女だと最初思った。しかし少女らしい明るい雰囲気は感じ取られない。 自分は高校生で同じ年頃の女子なら見ている、いつも明るくて元気な筈だ。それなのにこの不思議な感じは一体何だろう。 気がつけばその少年はその女性に興味を持ち、自分でも知らない内にその長髪の女に近付いていた。 「これ、やってみません」 屈託の無い笑顔に少年はたじろいてしまった、やっぱり女性だ。高校生の女がこんな笑顔をする筈が無い。 しかし年齢らしからぬ女だと少年は次に思った、女性の居る場所が場所だからだ。 「雨宿りのついでにゲーム…ですか…」 そこはゲーム売り場だった、しかも長髪の女がやってるのは外にある宣伝用のゲームで内容は恋愛シュミレーションときている。 何故女性の身でありながらこんなゲームをやってるのか、大体恋愛シュミレーション等外で堂々とやって恥ずかしく無いのか。 何故このゲーム屋は恋愛シュミレーション等外に出しているのか、もっと他にマシなゲームは無いのか等色々と疑問は 山ほどあるが人前でやったら羞恥心が出る程のゲームをまるで物ともせずやっている女性の姿を見ていたらどうでもよく なっていた。 「あの…その…俺はそういうの好きじゃ無いですから遠慮しときます」 「もしかして貴方見た目で判断してるでしょう、駄目よ、そういうのは」 「でも俺は早目に家に帰りたいんですよ、だってほら雨降ってるし」 確かに少年の言う事はもっともだ、この肌寒い霧の中、事故や犯罪も起こる可能性が高い。自分は喧嘩はからっきしなのだ。 女であるならそれはそれで危険度が上がるだろう。 少年はその女性の姿をまじまじと見詰めた。全身が白いワンピースにそれと同じくらい肌も白い。こうして見ると綺麗な人だ。 しかしまた感じたこの妙な感覚、自分はこの女性と会話もしているしちゃんと眼で捉えている。けど何か不確かな透明感を 感じる、存在感が無い訳では無いがどう言ったらいいかわからない。 「傘持って無かったら俺が家まで送りましょうか?」 「…そう?それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわ、でもちょっと待ってね、このルートを最後まで言ったら…」 結局終わるまで5分間掛ってしまった。顔に似合わない人もいるものだとそう思いながら少年は待った。 「貴方どこの学校なの?」 「陵桜学園の高等部です」 「あら、それじゃあうちの娘と同じじゃない」 雨の道を歩いていく中、他愛も無い会話をしている内に驚く事実を耳にした。別にこれだけでそんなにという程 驚くものでも無いのだがこの少年はこの人の娘を知ってるかもしれないのだ。 見覚えのある青い長髪は見間違える訳が無いだろう。 「へぇ~、こんな偶然もあるもんですね」 少年が適当に聞き流した後で今度は少年が聞き返した。 「貴方は何でこんな雨の中に居たんです?」 「娘に会いに行くためよ」 その女性の表情が暗くなったので何か聞いてはいけなかったかと思った。 「すいません…余計な事を聞いてしまって」 「謝る事無いのよ、ちょっと仕事があって別々に離れてただけなの」 その女性は物思いにふける様にポツリポツリと語り始める。 「それが随分遠い所に住む事になってね、娘には申し訳無いって思ってるわ。母親の事を冷やかされてないか心配でね… でもどうする事もできなくて…」 わかった、この人は娘の事を大切に思ってる人なんだ。 自分にはどっちが悪いかはわからない、けど母親が娘に会いたいのに理由なんかいらないだろう。 その人の雰囲気でわかった、こんな母親を持って幸せな親子なんだろうと思った。 「ここでいいわ、ありがとう」 雨でよく周りを見渡せなかったが、ここは町を一望できる小高い丘の上だった。 「あれ?ここって家とか建ってましたっけ?」 「私の家って小さいから人目に付かないのよ」 そして女性は右手を開けて少年に差し向けた。 「これ、挙げるわ」 「ビー玉…ですか?」 「綺麗でしょ」 「どうしてです?」 「助けてもらったお礼だと思って」 そうだと背中を向け帰ろうとした時にその女性が振り向いた。 「うちの娘を学校でもよろしくね、あの娘オタクって言われてるけど良い子だから」 「あの、その娘さんは何ていう名前なんですか?」 「泉こなた」 「待ってくださいそれって!わぁ!」 道の角で後を追おうとしたら誰かにぶつかった。 「君、大丈夫かい?」 少年は地面についた尻をさすりながら目を開けた、青い髪。しかし長髪では無い短髪。男だ。 「すいません」と少年が先に謝った。 「いや、いいよ私こそ悪かったね…」 男の後ろには見慣れた顔を見た。 「泉…」 「こなた、知り合いかい?」 「うん、同じクラスメート」 思いがけない級友の出会いに感動している場合では無い、少年は1番気になる事を喋った。 「さっき白いワンピースを着た、長い青い髪の女の人が通りませんでした」 「いや、私達はこの一本道を来たけど人一人いなかったよ?」 少年はそれ以上の言葉を発する事ができなかった、泉こなたとあの女性は言った。 もし自分の想像している通りになったらとんでもない事になる。 「もしかして…妻の墓参りに来たんですか…」 「え?何でわかったんだい」 色々と話を聞いた、その男の妻の名前は泉かなたという。今日はその墓参りに来たというのだ。 そして当然のごとく泉かなたの娘の名前はこの目の前に居る泉こなただという事はわかっている。 「ほら、ここに墓があるんだよ」 少年は今までのあの女性の出会いを思い出していた、ゲームをやってるあの姿も一緒に歩いた事もこの世には無いのだ。 その時、異変が起こった。 少年のポケットに暖かい感触がした、咄嗟に少年はビー玉を出した。 鼠色に染まっている空を掻き消すようにそのビー玉は光の粒子をまき散らしながら天へと昇って、消えて行った。 その粒子が雲を晴らし、青い空が見え、光が町中を照らした。 その奇跡を見ているのは少年1人。 「天国でも私達の事を見守ってくれるといいんだがな…」 「見守ってくれてますよ…近くでね…」 その少年には恐怖は無かった、胸に込み上げる温かいを思いを抱きしめ、前へ進む。 「じゃあな、泉、また学校で」 「うん」 それは雨の日に起きた不思議な出来事。

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