ep02 第六夜

「ep02 第六夜」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ep02 第六夜」(2007/12/06 (木) 16:14:30) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

第六夜 白金色の影が形を成す。それはやはり”狐”。  しかし、先程のそれとは違い身体は数倍大きく、体毛は艶やかに光り輝き、 九つに分かれた尾が威嚇するように揺らめいている。 「九尾……」  そんな言葉がかがみの口を動かす。 「せっかく私に丁度いい身体を手に入れたと言うのに……」  白金に輝く”狐”の口が裂け、悲しそうな遠吠えをしてみせる。 「私を怒らせた罰を受けるがいい!」  九尾は頭を尻の方に向け、向きを変えるようにくるりと回る。  九本の尾が扇のように広がり、そこから巨大な衝撃波が放たれる。 「きたわね~!?そりゃっ!」  かがみは両腕を前に突き出し、上下に広げる。  伸ばしきった腕をそのまま左右別々の方向へと、円を描くように回した。  描かれた両腕の軌跡が光り、”雪女”の前に透明の膜が形成された! 「こなた!後ろへ!」  あるはずの無い地面を蹴りつけ、こなたはかがみの背後に回る。  大きな音共に”雪女”の作り出した膜は真っ白になり、砕けた。 「ほひょ~!さっきまでのとは威力が違うね~」 「何のんきに言ってるのよ!ほら、また来たわよ!」  自らの放った衝撃波を追いかけるように九尾が近づいてくる。  こなたは右手へと散開し、かがみは”雪女”に抱えられるように後退していく。 九尾の目標はかがみであったのだろう。  自らの絶対的優位をいとも簡単に覆し、あまつさえ、不意の事とはいえ、後ずさりさせられるという辱めを受けた。  九尾は長大な尾をなびかせながら、かがみに突っ込む。  しかし、かがみも簡単にはやられない。  ひょいと上空に飛び上がり、九尾の背後から”つらら”を撃ち放つ。 「甘いんだよ!」  九尾は九本の尾を広げ、それを球状に自身の身体にかぶせる。  さながら、ドーム型のバリケードといった風貌。  つららは、そのドームに当たり、跳ね返され砕け散る。  上にいるかがみへと身体を向け、咆哮する九尾。  その咆哮と共に九尾の周りに数体の”狐”が出現する。 「うお!増えたぁ~!」  九尾の背後を衝こうとしたこなたの目の前にも”狐”が現れる。 「やっかいね……」  尾を振るごとに放たれる衝撃波を”雪女”と共に軽やかに交わすかがみ。  しかし、その表情に余裕は無い。  あまりにも連続する攻撃に、先手を取れないでいたのだ。 「つかさがもどれば……」 別行動をとっていたつかさは必死に走る。  頭上で戦闘を繰り広げる九尾に気づかれぬよう、視界の外側を走る。  ちょうど、体育館を半周し、氷柱となったみゆきの背後へと達した。  その瞬間、突如出現した”狐”が唸りを上げ、つかさの前に立ちはだかった! 「うわあぁ!」  咄嗟に袖から短刀を取り出し応戦する。  運よく突き出した刃が、頭上から飛び込んできた”狐”の胸部を貫き、危機を脱する。  ”狐”は悲鳴すら上げず煙のように消失していく。  その煙の向こうには、いつの間にか大量に現れていた”狐”と死闘を繰り広げるかがみとこなたがいた。 「うそ!は、はやくしなくちゃ!」  わたわたと慌てふためき、短刀をしまうと、目の前の氷柱に手を当て呪を唱える。  つかさの両手から褐色の光があふれ出し、それが氷柱を取り囲む。  徐々に氷柱は小さくなっていき、中からピンク色の長い髪の毛が見えてきた。 「ゆきちゃん!」 ふらふらと立つみゆき。  背後からではみゆきの状態が分からない。  正面に回り、もう一度名前を呼ぶ。 「……ん、ふあ?あ、れ、つかさ、さん?」  みゆきは、焦点の合わない瞳を少しずつ下に落とし、可愛らしい巫女を見つけた。 「ゆきちゃん!よかったぁ!」  思わずつかさはみゆきに飛びついた。  余りに突然のことで、みゆきは背後に倒れそうになったが、何とか踏みとどまり、つかさを受け止める。 「よかったよぉ!うれしいよぉ!」 「つかささん……」  つかさはまるで子供のようにはしゃいだ。  みゆきが戻ってきた。ちゃんと体温も感じる。鼓動も聞こえる。 「ほら、心臓の音がとくとくって……ほへ?やわらかい、ね」 「え!?あ、あああの、つ、つつつつつかささん!わ、私、なんでこんな格好に……」  みゆきはようやく正気を取り戻し、自らが全裸であることに気づいた。  が、すぐさま、恥ずかしさが限界に達し、意識が遠のいていく。  みゆきは、薄れ行く意識の中で、つかさにされた”キス”を思い出し、恍惚とした表情で床に抱かれていった。 「こんなんじゃ、キリがない!」 「かがみんや~、なんか大きいの一発ぶっぱなしちゃってよー」  次々と襲い掛かる”狐”。  それ自体はさして強くもないが、時折放たれる九尾の衝撃波がかがみ達の動きを妨げる。  さらに、九尾が咆哮するたび、共鳴するように蘇る”狐”。  全くもって埒があかない。  四方八方からの攻撃に、少々疲労を感じ、互いに背中を預けるこなたとかがみ。 「ま、まだ、慣れないのよ。あんたの方が戦い慣れてるんでしょ?なんとかしてよ!」  こなたが自らの手足を使い、呪を織り交ぜながら敵を駆逐していくのに対し、かがみはほぼ防戦を強いられていた。  是非もない。かがみはつい先程、力を自分のものにしたばかりだ。  どれほどその潜在能力が高かったとしても、使い方を知らないのであれば、全ては無意味だ。 「がんばって、リーダー!」  こなたはかがみにウィンクをする。  横目でそれを確認し、かがみはうなずいた。  だが、意識すればするほど”雪女”は動いてくれない。  どうすればいい? 「くっくっく……。そろそろ終わりかい?」  九尾の顔がにやけたかのように見えた、その時!  かがみとこなたの周りを黄金の光が包む。 「召喚します。草薙の剣!」  声と共に、周りにいた”狐”が横一文字に分断されていく。 「つかさ!」 「ごめん、遅くなっちゃった」  あれだけ無数にいたと思われる”狐”の群れは周囲に無く、ただ一体、九尾を残すのみとなっていた。 「なんなんだい!なんなんだい、お前達は!?」  激昂し、身震いする九尾。  ざわざわと森の木々が葉を擦るように、九本の尾が揺らめく。  白金色に輝いていた毛並みが逆立ち、周囲を強力な瘴気が取り囲む。 「もう許さないよ!後悔する間もなく捻りつぶしてやる!」  天井に向かい大きく唸りを上げる九尾。 「一気に!」  こなたが叫ぶ。彼女の勘が指し示す、勝敗の分かれ目。  かがみは迷いを打ち消し、頷く。  まずは、動かなくちゃ!さっきもそうだった。  難しいことは分からないけど、とにかく動くんだ!

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。