ID:M2aXj7+f0氏:いつも側に…

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「あのさ…」 「ん?どうした~?」  昨日の放課後、必死になって探し当てた同人誌を必死になって読み耽っていたよね。  私が声をかけても気づかないぐらいに。  だから、私も適当な本をつまみ出して、没頭してたのに…。  それなのに自分から振ってくるなんて、言葉にも表情にも出さなかったけど、ちょっと嬉しいかな。 「なんかさ、不思議だなぁ~って思って…」 「だから何よ?」  何が言いたいんだろ? 「今さ、私とかがみがこうして一緒の布団に寝てるじゃない?これって偶然なのかな?」  いきなり何を言い出すんだこいつは!?  目の前のそいつは、少し上目遣いに私の方を見て、普段は見せない憂いを込めた瞳を湛えている。 「ん~、どうなんだろうね?」  そう言って、私は少し考える。これって偶然?必然?  人生というレールが敷かれていたとする。そうするとその上を走っていくことは必然なんだろう。  だけど、その途中にはいくつもの枝分かれした分岐点があり、その結果はそれぞれ違うはずだ。 ――――平行宇宙?  言葉で言えばそういうこと。  例えば、ストレートでおさげの私、ポニテにしてどっかの北高生に萌えられる私。  つかさと仲が悪かったり、みゆきよりも勉強出来ちゃう私。峰岸や日下部と毎日お弁当を食べる私。  考えたくないけど、あんたと出会わない私…。  つまり、どの分岐点でどの道を選ぶかは偶然なんだ、きっと。  じゃあ、私とあんたが出会ったのは偶然なのかな?  たまたま、どこかの分岐点で、私が気まぐれに選んだ結果がこうなのか?  なんとなく、なんとなくだけど、「それじゃ嫌だ」って”私の中の誰か”が叫んでる。 「もし、もしもだよ?」  ちょっと待て!何で涙目?何で声を震わしてる!? 「もしも、たまたま、偶然、うっかりと、私とかがみが出会ったなら…」  出会ったなら? 「なんか…嫌だ…」  びくんと心臓が鳴る。 「私、一人になるの嫌だ…」  そんなの、誰でもそうに決まってる。 「ずっと、一人でいたの…。小学生の時も、中学生の時も。だから、一人になるのは嫌…」  あ、そうか、まだ私には”私の知らないあんた”が”在る”。  お願いだから、その澄み切ったエメラルドグリーンの瞳に涙を溜めるのをやめろ。  もらい泣きする私はどこのSSでも好評だ!  じゃなくて、今、私はここにいるよ?それじゃダメ?  ”私の中の誰か”が吐き出した疑問。それをあんたが今、口に出してる。 ――――これって偶然? 「私は……」  くるりと仰向けになり天井を見つめる。いや、見てるのは天井じゃないんだろうな。  私もそれに倣い、読みかけの本を閉じて仰向けになる。  枕もとのスタンドは少し眩しすぎる。そっと手を伸ばして灯りを消す。 「私は、かがみとずっと一緒にいたいな…」  このときほど暗闇に感謝したことはない。  体温が上がり、頬が紅潮していく…。  ふざけてるのか?お前は!?私の顔を朱に染まらせるのがお前の趣味なのか? 「…ずっと、一人だったの」  うん、それはさっきも聞いた。風の噂に陵桜に入る前のあんたを聞いた事もある。 「だけどね…」 「え?うわ!?」  不意に私の方を向いたかと思うと、両腕で私の首を掴まえて、少ない胸に頬を埋めてくる。  どうしたの?らしくないよ?  いや、もしかしたらこれが”私の知らないあんた”なの?  じゃんけんで決まっただけなのだけど、私はベッドで寝る権利を得た。  つかさは得意の手料理を披露したせいか、疲れて一番に眠ってしまった。  みゆきにはそもそも夜更かし自体が出来ない。  私に合わせてくれたのか、PCを立ち上げることもせず、隣にいてくれる、大切な親友。  今、何時なんだろう?夢中になって本を読んでると時間の感覚を忘れる。  夢中?嘘。本に夢中になった覚えは今日は一度もない。  ずっと、あんたの事だけ考えていた。夢中になってたとすれば、ただ、それだけ…。 「こうやって、かがみんと出会う運命が必然だったとしたなら、 悲しくて、辛くて、死にたくなる様な、忘れてしまいたい夜も、幸せだったって思えるの―――」 「…」 「ううん!偶然だとしても、幸せなことには変わりないよ」  首に巻かれた両腕に力が入り、胸に押し当ててくる頬も密着率を増す。  頭で考えることなく、それに本能が反応して、小さな頭を優しく抱きしめる。  艶やかで、さらさらと手触りの良い髪の毛。  右手でそれを感じながら、まだ足りない私は、彼女の肩に左手をあてる。 「夢を見たの。かがみが出てくる夢…」  何を言い出すのかと思ったら、馬鹿馬鹿しい…。  …いや、私も同じことを、想像してたっけ…。  必死になってあんたを追いかける私。必死になって私を追いかけるあんた。  ある時は私の命を救い、ある時は共に戦った。  あんたに仕えたときもあったし、あんたと………ここはちょっと言えない。  頬の熱で全身が溶けてしまいそうだから。    それは昼間すっきりとした頭で聞いていたなら、きっとこう言うはず。  (はぁ、あんたって人はもう!相変わらずね。現実を見なさい!?) でも、言わなかった。  なんで?  窓から零れる月明かりのせい?寒くて凍えそうな冬のせい?  ちがうわね、そうじゃない。  私は今、あんたと同じ時間を共有して、あんたと同じ世界を生きている。  あんたと同じくらい二人のことを考えて、あんたと同じ事を考えている。 「この先ね、かがみに恋人が出来て、結婚して、大好きな旦那様と一緒に寝て、赤ちゃんが生まれて…」  胸のところに息遣いを感じながら、よりいっそう強く抱きしめる。  唇が塞がれて、紡ぎだしていた言葉が止まる。 「うん。続きはこうでしょ?」  私は嬉しそうに呟く。 ―――その子の世話に必死で駆け回り、彼氏?ううん、彼女かも知れないわね?連れてきた異性に不安や期待を抱きつつ、 ―――やがて結ばれる二人を笑顔で見送り、新たに生まれる生命(いのち)の誕生に喜ぶ。 ―――同じように必死で駆け回る子供を見て、孫を見て、最期にはその人たちに看取られて、この世界を去っていったとしても…。 「私はあんたの側にいる―――」 小さな掌が私のパジャマを強く握る。  首ではなく、いつの間にか私の背中にまわっていた両手は力強く私を抱きしめる。  胸元に少し荒くなった吐息。  これはその湿気のせい?それとも別の…。    持って来たパジャマはいつの間にかぐしゃぐしゃ。  せっかくお気に入りの奴を自分で洗濯してきたのに!  でも―――  でも、パジャマなんて、どうでもいいこと。  私とあんたはやっぱり同じだったんだ。 それが嬉しい。  今更?ようやく?―――ううん、気づいてた。  ”私の中の誰か”がずっと囁いていたじゃない。  この運命は、いつ、いかなる状況でも変わらない。  私にはあんたが、あんたには私が、  いつも、いつでも必要なのよ。  だから―――  答えは”NO”!  私たちが今、こうして二人で抱きしめあいながら、頬を濡らす現在(いま)は”必然”。  いつどんな時代でも、いかなる世界でも…。  貴方と私がこうして、時間を共にする事は決められた事。  ほら、神様が見てくれてるよ?  窓の外には無数の星々が幻想的に瞬いていた。  私は少しだけ力を緩めて、彼女を解放する。 「ねぇ…」  返事がない。ただの屍のようだ…。 「ふふふ、寝ちゃったのね」  涙の跡を人差し指でなぞる。柔らかい感触が伝わってくる。  もっと話していたいけど、今日は寝ましょうか?  時間ならこれからもずっとずっと、それこそ無限にあるんだから!  はからずも頬が緩む。  私は、小さな頭をそっと撫でながら、呟く。  幾重にも”偶然”の重なったこの”現在(いま)”という”必然”に感謝しながら。 ――――おやすみ、こなた。 fin

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