ID:euVLJ9MV0氏:六月のキツネの嫁入り

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青葉生い茂る峠道を、一台の二人乗りバイクが走っていた。 6月になったばかりで、空高くから太陽が二人を照らす。 400ccの中型バイクは、カーブを器用に曲がりながら徐々に高度をま増していく。 バイクを操るのは日下部みさお。そして後部座席には、あやのがまたがっている。 二人ともフルフェイスのヘルメットをかぶり、薄めのジャンパーを着込んでいた。 この格好では一見して性別は分からない。 途中、別のバイクと刷れ違う事がある。ライダー達は、同じくライダーであるみさお達に対して挨拶をすることがあるのだ。 自分の挨拶している相手がまさか、女性であるとは多分思っていないだろう。 挨拶の仕方は様々だ。 あるライダーはピースをし、あるライダーは敬礼をする。 あやのはそのライダー達に対して、礼儀正しい会釈で返していた。 「あやのー!あんまり動かないでくれよなっ、結構揺れるんだぜ!?挨拶するなら片手を上げたりするもんだぞ!」 「ごめんね、次からそうするね!」 強い風に当てられて、自然と声は大きくなる。 風が涼しい。 山が都会に比べて、季節の廻りがゆったりしている事を感じさせる。 標高が高くなるごとに、季節が逆転していく様だ。 二人にとって、これが生涯で19回目の夏だ。この夏に、あやのの結婚式が開かれる。 式が開かれるのは明日だ。 相手はみさおの兄。すで籍は入れてある。だから二人は正式な夫婦だし、あやのの苗字も峰岸ではなく日下部になっている。 19才。 まわりからは、結婚するには、まだ若いと言われる。しかしみさおにとっては、これでも遅く思える程だ。 二人がそれほどに仲が良かったからだ。 バイクは山の奥へ入り込んでいく。人の気配は無く、少し薄暗い山道。 枝葉が作るトンネルをくぐれば、とてもまぶしいその場所にたどり着く。 そこは清流だった。 バイクはそこを少し下り、充分な広さを持つ河原へ降りる。 バイクを停めて、スタンドを降ろし、ヘルメットを脱ぐ。 二人は伸びをした。 「くあー、着いたぁー。」 「みさちゃんご苦労様。キレイだね。あっ、ほら、カッコウが鳴いてるよ。」 「きゅー、それよりお昼ごはんにしようぜ?お腹すいたよ。」 「そうね、そうしようか。」 6月とはいえ、山の中だからなのか少し涼しい。二人とも強い風に当てられていたため、体はやや冷えていた。 あやのがリュックから魔法瓶を引き出す。その中の味噌汁を器に移すと、はっきり白く見える程、たくさんの湯気が立ち昇った。 あやのは稲荷寿司と味噌汁と、卵焼き等の弁当を用意していた。二人は自分のペースで食事をする。 「久しぶりだよな。二人で弁当を食べるのって。」 「うん、そうだね。高校の時以来だもん。」 「あの時、いっつも柊は隣のクラスに行っちゃってたよな。私、あれはさみしかったなー。」 「でもそのお陰で二人だけでいられる時間が増えたのよ。」 「むー。ものは言い様だよな。」 「もう、みさちゃんてば。でも私は二人でも楽しかったなあ。」 「アハハ、まあなっ。そう言えばあやの、昔ここに来たときの事、覚えてるか?あやのがこんな所に来たいって言ったんだからな。」 「あの頃は小さかったし、ぼんやりとし覚えてないけどね。でも少しは覚えてるよ。夏だったよね?」 二人がここに来るのは初めてではない。 幼稚園に入ったばかりの夏休み。二人と二人の家族は、夏の思い出に、と出掛ける事にしたのだ。 それでやって来たのがここであり、その時はバーベキューなどをした。 「そうそう、それであやのが迷子になるんだよな。」 その時の事件は、バーベキューの片付けの最中に起った。気が付くとあやのの姿がなかったのだ。 一時間もの間見付からず、溺れた可能性も考えて警察に連絡しようかと言う頃に、あやのは見付かった。 「そうだったね。誰にも話してなかったけど、私、あの時不思議な体験をしてたのよ。」 「えー?どんな不思議体験?言ってみな。」 「うん。私ね、あの時、岩の隙間に落ちてたの。暗くて狭い岩の中で、その時の私はずっと一人ぼっち。すごく不安で、すごくさみしかった。 もう不安で不安で、このまま家族において行かれて、ずっと、ず~っとここで一人でいなきゃいけないのかって思った。 あんまりさみしくて、わんわん泣いていたら、穴の隙間にキツネがやって来てこう言ったの。 『泣かないで、僕がずっと一緒にいるから。』キツネが喋るなんてありえないと思うかも知れないけど、あのキツネは確かにこう言ったの。もう私はさみしくなかった。他にもキツネと何かを話した気がするけど、それはちょっと覚えてないや。 でもあの言葉で私は元気づけられたんだよ。このキツネといればさみしくないと思った。それからすぐだったと思う。確かお父さんが私を見付だして、狭い岩の隙間から引き出してくれた。 その時にはもうキツネはいなかった。いつの間にいなくなったのか分からないけど、ずっと一緒にいるって言う言葉は今でも覚えてるんだよ。」 食事を終えたみさおは、石を川に投げていた。石は断続的にいくつかの白い水しぶきを立て、水面をキツネの様に跳ねて行く。 あやのは自分が作った稲荷寿司を、自分が落ちたと言う穴の横に置く。あのキツネへのお礼なのだ。 あやのは森の中に向かって叫ぶ。 「キツネさーん!私は昔ここに落ちてしまって、キツネさんに元気付けられたの。覚えてるかしら?あの時ずっと一緒にいるって言ってくれてありがとう! だけど私は謝らなきゃいけない事があるの。私は明日、結婚式をするの。彼はずっと一緒にいてくれるって、きっとその時に誓ってくれる。私もそう誓うわ。 キツネさんがいなかったら、もしかしたらまだ一人ぼっちだったかもしれない。とっても感謝してるよ。でも私はキツネさんとは違うパートナーを見付けたの。 キツネさんの言葉通りにならなくてごめんなさい!でも、やっぱりキツネさんにずっと一緒にいて欲しい。こんな贅沢叶えてくれるかな?」 みさおの投げた石は対岸までたどり着き、そこで他の石に当たってはじけた。 水面に残る石が残した波紋は、流れに流されながら拡がり、消えていく。 ───今から16年前のこの場所で、少年は川に向かって石を投げていた。ただし一度も跳ねない。 ここで少年は自分の家族と近所の家の人達でバーベキューをしていた。 その中には少女がいた。少女は一緒に着いてきた、近所の家族の娘だった。 少女は森の方へと向かっていく。何か動くものを見付けたのだ。 近付いてみると、図鑑でしか見たことがないが、それがキツネだと言うことに気付いた。 少女に見つかったキツネは、当然逃げる。少女は追い掛ける。 そして少し岩の多い辺りに来て、少女は足を滑らせてしまう。 しばらくして少女がいない事に気が付いたのは少年の妹だった。それを家族に知らせると、事態は騒然となった。 大人達は少年と少年の妹に、その場を動くなと言った。 少年は少女がいない事が不安でしょうがなかった。少女は妹と同い年で、まだ幼いのだ。 よく少年の家に遊びにくるため、少年にとっては妹同然だった。 少年は少女のリュックの上にある、小さなカチューシャを見付けた。大きなリボンがついている。 少年は少しでも少女の存在を感じようと、そのカチューシャを頭につけてみる。 カチューシャは小さくて頭に食い込む。あまりつけ心地は良くない。 大人達は出払ってしまい、その場は静かになり川の流れる音しか聞こえない。いや川の流れる音に混じって、聞きなれた泣き声が聞こえる。 河原を見渡してみる。 少年はすぐに、その声が少女の泣き声だとわかった。その位置を探しまわり、岩の隙間に何かを見付けた。 少女だった。 少女は隙間を覗く物が何か分からなかった。逆光のためにシルエットしか分からなかったのだ。 そのシルエットの頭には何かがついている。 突起が二つ。少女にはそれが耳に見えた。 シルエットが少年であり、耳がカチューシャのリボンであるとは気が付かない。 少女はそれがキツネであると記憶した─── 二人乗りバイクは峠道をエンジンブレーキを効かせて、慎重に降りていく。 みさおは、あやのを最初に見付けたのが兄であった事は記憶していた。あやのの言うキツネの正体は兄だ。 しかしそのことをあやのには言わない。 みさおは思う。 いつかはあやのが気が付く時が来るだろうか。キツネは、ずっと一緒にいる、という言葉を守っている事を。 その事は兄が自分で言うかもしれないし、あるいはあやのが自分で思い出すのかも知れない。 まあ、気が付かなくたって良いのかもしれない。これ以上あやのばっかり幸せになるのもなんとなくしゃくだ。 ちょっと意地悪してみてもいいかも知れない。 秘密にしよう。 二人は結ばれている。きっと気が付くだろう。 だから、その時までは……。 ───ある結婚式。 成長した少年と少女が教会から姿を表す。 少年はタキシードであり、少女はウエディングドレスだ。 青い空の下、二人を大勢の人が二人を祝福する。 その中の一人。紫色の髪をツインテールにした女子大生の鼻先が、一滴の雫でポツリと濡れた。 別に涙で塗れたわけではない。 女子大生は空を見上げる。 雲ひとつない快晴だというのに、小降りの雨が降っている。 雨粒は日の光を反射して輝く。虹も見える。 女子大生は呟いた。 「キツネの嫁入りだ。綺麗……。」
青葉生い茂る峠道を、一台の二人乗りバイクが走っていた。 6月になったばかりで、空高くから太陽が二人を照らす。 400ccの中型バイクは、カーブを器用に曲がりながら徐々に高度をま増していく。 バイクを操るのは日下部みさお。そして後部座席には、あやのがまたがっている。 二人ともフルフェイスのヘルメットをかぶり、薄めのジャンパーを着込んでいた。 この格好では一見して性別は分からない。 途中、別のバイクと刷れ違う事がある。ライダー達は、同じくライダーであるみさお達に対して挨拶をすることがあるのだ。 自分の挨拶している相手がまさか、女性であるとは多分思っていないだろう。 挨拶の仕方は様々だ。 あるライダーはピースをし、あるライダーは敬礼をする。 あやのはそのライダー達に対して、礼儀正しい会釈で返していた。 「あやのー!あんまり動かないでくれよなっ、結構揺れるんだぜ!?挨拶するなら片手を上げたりするもんだぞ!」 「ごめんね、次からそうするね!」 強い風に当てられて、自然と声は大きくなる。 風が涼しい。 山が都会に比べて、季節の廻りがゆったりしている事を感じさせる。 標高が高くなるごとに、季節が逆転していく様だ。 二人にとって、これが生涯で19回目の夏だ。この夏に、あやのの結婚式が開かれる。 式が開かれるのは明日だ。 相手はみさおの兄。すで籍は入れてある。だから二人は正式な夫婦だし、あやのの苗字も峰岸ではなく日下部になっている。 19才。 まわりからは、結婚するには、まだ若いと言われる。しかしみさおにとっては、これでも遅く思える程だ。 二人がそれほどに仲が良かったからだ。 バイクは山の奥へ入り込んでいく。人の気配は無く、少し薄暗い山道。 枝葉が作るトンネルをくぐれば、とてもまぶしいその場所にたどり着く。 そこは清流だった。 バイクはそこを少し下り、充分な広さを持つ河原へ降りる。 バイクを停めて、スタンドを降ろし、ヘルメットを脱ぐ。 二人は伸びをした。 「くあー、着いたぁー。」 「みさちゃんご苦労様。キレイだね。あっ、ほら、カッコウが鳴いてるよ。」 「きゅー、それよりお昼ごはんにしようぜ?お腹すいたよ。」 「そうね、そうしようか。」 6月とはいえ、山の中だからなのか少し涼しい。二人とも強い風に当てられていたため、体はやや冷えていた。 あやのがリュックから魔法瓶を引き出す。その中の味噌汁を器に移すと、はっきり白く見える程、たくさんの湯気が立ち昇った。 あやのは稲荷寿司と味噌汁と、卵焼き等の弁当を用意していた。二人は自分のペースで食事をする。 「久しぶりだよな。二人で弁当を食べるのって。」 「うん、そうだね。高校の時以来だもん。」 「あの時、いっつも柊は隣のクラスに行っちゃってたよな。私、あれはさみしかったなー。」 「でもそのお陰で二人だけでいられる時間が増えたのよ。」 「むー。ものは言い様だよな。」 「もう、みさちゃんてば。でも私は二人でも楽しかったなあ。」 「アハハ、まあなっ。そう言えばあやの、昔ここに来たときの事、覚えてるか?あやのがこんな所に来たいって言ったんだからな。」 「あの頃は小さかったし、ぼんやりとし覚えてないけどね。でも少しは覚えてるよ。夏だったよね?」 二人がここに来るのは初めてではない。 幼稚園に入ったばかりの夏休み。二人と二人の家族は、夏の思い出に、と出掛ける事にしたのだ。 それでやって来たのがここであり、その時はバーベキューなどをした。 「そうそう、それであやのが迷子になるんだよな。」 その時の事件は、バーベキューの片付けの最中に起った。気が付くとあやのの姿がなかったのだ。 一時間もの間見付からず、溺れた可能性も考えて警察に連絡しようかと言う頃に、あやのは見付かった。 「そうだったね。誰にも話してなかったけど、私、あの時不思議な体験をしてたのよ。」 「えー?どんな不思議体験?言ってみな。」 「うん。私ね、あの時、岩の隙間に落ちてたの。暗くて狭い岩の中で、その時の私はずっと一人ぼっち。すごく不安で、すごくさみしかった。 もう不安で不安で、このまま家族において行かれて、ずっと、ず~っとここで一人でいなきゃいけないのかって思った。 あんまりさみしくて、わんわん泣いていたら、穴の隙間にキツネがやって来てこう言ったの。 『泣かないで、僕がずっと一緒にいるから。』 キツネが喋るなんてありえないと思うかも知れないけど、あのキツネは確かにこう言ったの。 もう私はさみしくなかった。 他にもキツネと何かを話した気がするけど、それはちょっと覚えてないや。 でもあの言葉で私は元気づけられたんだよ。このキツネといればさみしくないと思った。 それからすぐだったと思う。確かお父さんが私を見付だして、狭い岩の隙間から引き出してくれた。 その時にはもうキツネはいなかった。いつの間にいなくなったのか分からないけど、ずっと一緒にいるって言う言葉は今でも覚えてるんだよ。」 食事を終えたみさおは、石を川に投げていた。石は断続的にいくつかの白い水しぶきを立て、水面をキツネの様に跳ねて行く。 あやのは自分が作った稲荷寿司を、自分が落ちたと言う穴の横に置く。あのキツネへのお礼なのだ。 あやのは森の中に向かって叫ぶ。 「キツネさーん!私は昔ここに落ちてしまって、キツネさんに元気付けられたの。覚えてるかしら?あの時ずっと一緒にいるって言ってくれてありがとう! だけど私は謝らなきゃいけない事があるの。私は明日、結婚式をするの。彼はずっと一緒にいてくれるって、きっとその時に誓ってくれる。私もそう誓うわ。 キツネさんがいなかったら、もしかしたらまだ一人ぼっちだったかもしれない。とっても感謝してるよ。でも私はキツネさんとは違うパートナーを見付けたの。 キツネさんの言葉通りにならなくてごめんなさい! でも、やっぱりキツネさんにずっと一緒にいて欲しい。こんな贅沢叶えてくれるかな?」 みさおの投げた石は対岸までたどり着き、そこで他の石に当たってはじけた。 水面に残る波紋は、流れに流されながら拡がり、消えていく。 ───今から16年前のこの場所で、少年は川に向かって石を投げていた。ただし一度も跳ねない。 ここで少年は自分の家族と近所の家の人達でバーベキューをしていた。 その中には少女がいた。少女は一緒に着いてきた、近所の家族の娘だった。 少女は森の方へと向かっていく。何か動くものを見付けたのだ。 近付いてみると、図鑑でしか見たことがないが、それがキツネだと言うことに気付いた。 少女に見つかったキツネは、当然逃げる。少女は追い掛ける。 そして少し岩の多い辺りに来て、少女は足を滑らせてしまう。 しばらくして少女がいない事に気が付いたのは少年の妹だった。それを家族に知らせると、事態は騒然となった。 大人達は少年と少年の妹に、その場を動くなと言った。 少年は少女がいない事が不安でしょうがなかった。少女は妹と同い年で、まだ幼いのだ。 よく少年の家に遊びにくるため、少年にとっては妹同然だった。 少年は少女のリュックの上にある、小さなカチューシャを見付けた。大きなリボンがついている。 少年は少しでも少女の存在を感じようと、そのカチューシャを頭につけてみる。 カチューシャは小さくて頭に食い込む。あまりつけ心地は良くない。 大人達は出払ってしまい、その場は静かになり川の流れる音しか聞こえない。 いや川の流れる音に混じって、聞きなれた泣き声が聞こえる。 河原を見渡してみる。 少年はすぐに、その声が少女の泣き声だとわかった。その位置を探しまわり、岩の隙間に何かを見付けた。 少女だった。 少女は隙間を覗く物が何か分からなかった。逆光のためにシルエットしか分からなかったのだ。 そのシルエットの頭には何かがついている。 突起が二つ。少女にはそれが耳に見えた。 シルエットが少年であり、耳がカチューシャのリボンであるとは気が付かない。 少女はそれがキツネであると記憶した─── 二人乗りバイクは峠道をエンジンブレーキを効かせて、慎重に降りていく。 みさおは、あやのを最初に見付けたのが兄であった事は記憶していた。あやのの言うキツネの正体は兄だ。 しかしそのことをあやのには言わない。 みさおは思う。 いつかはあやのが気が付く時が来るだろうか。キツネは、ずっと一緒にいる、という言葉を守っている事を。 その事は兄が自分で言うかもしれないし、あるいはあやのが自分で思い出すのかも知れない。 まあ、気が付かなくたって良いのだけど。これ以上あやのばっかり幸せになるのもなんとなくしゃくだ。 ちょっと意地悪でもしてみてもいいかも知れない。 秘密にしよう。 二人は結ばれている。きっと気が付くだろう。 だから、その時までは……。 ───ある結婚式。 成長した少年と少女が教会から姿を表す。 少年はタキシードであり、少女はウエディングドレスだ。 青い空の下、二人を大勢の人が祝福する。 その中の一人。紫色の髪をツインテールにした女子大生の鼻先が、一滴の雫でポツリと濡れた。 別に涙で塗れたわけではない。 女子大生は空を見上げる。 雲ひとつない快晴だというのに、小降りの雨が降っている。 雨粒は日の光を反射して輝く。虹も見える。 女子大生は呟いた。 「キツネの嫁入りだ。綺麗……。」

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