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補足:安価は含めていません 私が目を覚ますと、既に昼と言っていい時間になっていた。 今日はこなちゃん達と出かける約束があったのに、これでは間に合わないかもしれない。 私はどうして起こしてくれなかったのかと不満に思いながら、お姉ちゃんの部屋を訪れた。 「お姉ちゃん。一緒に行くのにどうして起こしてくれなかったの?」 ノックの音にも反応がなく、返事はない。 諦めた私が着替えるために部屋に戻ると、ドアには一行の文が書かれているメモが張られていた。 「100回ほど起こしたわよ 」 それは、怒り狂う姉の姿が伝わってくるような荒々しい文字で書かれていた。 「ど、どうしよう……」 テープで止められたメモを剥がし、何度も裏表を確認するがそれ以上の事は何も書かれていない。 私は怒られることを覚悟の上で遅い朝食を終えると、家を飛び出して目的地へと走った。 疲れた私はアイスを食べながら歩き、二時を過ぎた頃にようやくウィニャイマルカにたどり着いた。 ウィニャイマルカというのは最近人気の観光スポットで、滅びた魔女の村とも呼ばれている遊園地だ。 「みんなごめん。急いだけど、だいぶ遅くなっちゃった……」 頭を下げる私に対して、二人はそれぞれ言葉をかける。 「仕方ないよ、つかさだし。ていうか、私もよく遅れるしね」 「お気になさらないでください。私達もご飯を食べて待っていましたから」 かがみお姉ちゃんだけが何も言わず、頭を上げた私と目が合ってはじめて口を開いた。 「……風邪で動けないのに置いてきちゃったのかと、ちょっと心配したじゃない」 その口調は文句を言っているようで、ほとんど許している時のものだ。 後一押しだと感じた私は、お姉ちゃんに抱きついた。 「心配してくれてありがとう。大好きだよ」 「す、好きって……。こら、暑いんだから離れなさいよ」 「えへへ。ごめんなさい」 言われるままに身体を離した私は、姉が普段と違う物を身に着けているのに気づいた。 全員が普段よりも少しだけお洒落な服を着ている中でも、姉のそのリボンは特に目を引く物だった。 「お姉ちゃん。そのカニのリボン可愛いね」 「カニって……どう見てもザリガニでしょ。ここのお土産でも人気商品なのよ?」 「へえ~。ハサミがついてるし、赤いから間違えちゃった」 あはは、と笑いながら私は「ザリガニか」と、心の中で呟いた。 人気のある商品ほど偽物がよく出回るけれど、このザリガニはまさにエビの偽物ではないかと思う。 「よし。これで全員揃ったし、まずはアレから行こうか」 こなちゃんの元気な声に合わせて、私達は全員で歩き出した。 赤福ミュージアム、と大きく書かれた看板をくぐりながら私は言った。 「私、ここテレビで見たことあるよ。たしか、赤福作りを体験できるんだよね」 「そうそう。回収した製品を再利用して作るから、無料で参加できるってのがいいよね」 楽しそうな私達とは逆に、お姉ちゃんとゆきちゃんの二人は暗い顔になっていた。 「あの……かがみさん」 「た、食べなきゃ大丈夫よ。食べなければ……」 なんだろう? 二人とも急に元気をなくしたみたいで心配だ。 「二人とも、私が作った分も食べて良いから元気出して」 「! つかさ。悪いけど私ダイエット中だから」 「えー、そうなんだ。じゃあ……」 ゆきちゃんはどうだろう? 「☆」 「…………」 目配せをしてみると、ゆきちゃんはものすごい勢いで顔を背けた。 ゆきちゃんもダイエット中なんだろうか……。 そう思っていると、後ろから私達に向かって声がかけられた。 「なんだ、"委員長の高良さん"じゃねぇか」 このガラの悪そうな声の主は、ゆきちゃんの知り合いなんだろうか? 私はこなちゃんとお姉ちゃんの間で視線を彷徨わせ、どちらに頼るべきかと迷った。 「こなちゃん!」 迷った末に、私はこなちゃんに助けを求めた。 「さあ、みゆきさん。観念したまえ。ふっふっふ」 「あ、あれ……?」 どういうわけか、こなちゃんは見知らぬ男の陣営に加わっていた。 「いやあ、こっちのほうが面白そうだからね」 こなちゃんの行動に男の人は戸惑いながらも、二人で逃げ道を塞ぎつつゆきちゃんに近づいていく。 えっと私はこなちゃんの仲間で、こなちゃんは男の人の仲間だから……。 「さあ、ゆきちゃん。そろそろ諦めたら?」 私は男の仲間に加わることにした。もちろん責任はこなちゃんにある。 三人対一人という絶望的な状況で、お姉ちゃんはゆきちゃんを庇うようにして立った。 「なにしてるのよ、あんたたち。事情は知らないけど、みゆきは早く逃げなさい!」 ああ、なんだろう。この感情は。 「ダメだよ。私、お姉ちゃんがいなきゃダメなの!」 「つかさ……?」 急に泣き出した私に、お姉ちゃんだけではなくその場の全員の注目が集まる。 知らない男の人はすっかり気をそがれたらしく、集まってくる人ごみから逃げるように立ち去った。 もう涙を流す必要はない。 だけど、これは遊園地に着いたばかりにやった演技とは違っていた。 作戦だとか、駆け引きだなんてものではない。 ただ、お姉ちゃんが私とは違う人を選んだのが悲しくて、涙が止まらなかった。 「つかさ。泣かないで」 優しい声とともに抱きしめられた私は、あの日のことを思い出した。 それは子供の頃の誕生日。 七夕の日に産まれた私達は、織姫と彦星の伝説に特別な想いを持っていた。 一年に一度だけ会える二人、それがロマンチックだと姉は言い、私はとても怖いと思った。 だって、二人はずっと一緒にいたいのに、どんなに願っても引き裂かれる。 その伝説の日に産まれた私達も同じように、いつかは離ればなれになってしまうかもしれない。 そう考えると眠ることさえ怖かった。 私が眠っている間に姉妹がバラバラになったらどうしよう。 お姉ちゃんから手を離した瞬間、ずっと会えなくなったらどうしよう。 それが怖くて、七夕の伝説を知った日はお姉ちゃんから離れられなかった。 「大丈夫よ、つかさ」 「だって……」 一つのベッドに入った後で、お姉ちゃんは頭を撫でてくれたっけ。 「いい? 私達はずっと一緒よ。つかさが嫌だって言っても、双子だから私達は二人でひとりなの」 「ふたりで、ひとり?」 「うん。だから天の川だって割り込めないし、だから大丈夫」 お姉ちゃんはそう言うと、ずっと繋いでいた手を離した。 「右足が一歩進んだって、左足がそのまま置いてはいかれないでしょ。それと同じ。ずっと一緒よ」 「……ずっと一緒」 その日から私たちは、いつでも二人一緒だった。 クラスは違ったけれど学校でも、仲良くなる友達も、思い出も。 あんまり共有してきたせいで、何か一つが違っただけで全部が壊れてしまうと思ったのだ。 「つかさ」 「……もう、大丈夫だよお姉ちゃん。二人も、心配させてごめんね」 「生ものですのでお早めに口を閉じて下さい、だって。箱への詰め方で賞味期限変わるのかな」 「でもそんなの関係ねぇ。という意見もあるそうですよ?」 私が二人のほうを向くと、どちらもよくわからない話をしていた。 どうやら興味は赤福へと移っているらしい。 「まったくあの二人は……」 お姉ちゃんは呆れたように言うと、鞄から特徴的な赤いリボンを取り出した。 「つかさ。ちょっとだけ、動かないでね。あと目も閉じていて」 「うん」 それが何かは見えてしまったのだけれど、私は素直に頷いた。 私達はどんなに違っていても、同じ姉妹だ。 髪型も趣味も、性格や能力だって全然違う。 だけど七夕の伝説の二人のように、こうしてたまに一緒になれるんだ。 「これでよし、っと」 お姉ちゃんの声に二人が振り向くと、こなちゃんは驚いたように声をあげた。 「うわ、ザリガニが増殖してる!?」 終わり。

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