ID:54HZLp8l0氏:萌え上がる女たちの戦場(民明書房刊)

「ID:54HZLp8l0氏:萌え上がる女たちの戦場(民明書房刊)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ID:54HZLp8l0氏:萌え上がる女たちの戦場(民明書房刊)」(2007/10/17 (水) 21:42:33) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

その場所には、おびただしい数の「声」が響いていた。 名乗りを上げる者、号令する者、呼応する者、断末魔の叫びを上げる者、声にならぬ叫びを上げた者――そこは紛れもなく戦場だった。 時間の経過は、ひたすら冷酷に優劣を明らかにしていくこととなる。 この戦い、押されているのは、泉こなたを総大将とする陵桜軍である。 絶対的な人手不足による多方面戦線維持の失敗、それが敗因であった。 もともと少人数であった上、この一帯は各地に群雄が割拠し、何度戦っても勝利を得られなかった。 超えられない壁が存在したのである。 「今回も相当厳しいわね……」 そう言って嘆息するのは、柊かがみ。 楽天的なこなたにあきれることもあるが、こなたが最も信頼している陵桜軍の副将であり、かがみもこなたを信じ抜いている。 「お姉ちゃん、ごめんね、私にも才能があったら……」 声の主は柊つかさ――かがみの双子の妹である。気弱で凡庸、しかし心優しいつかさは姉の、仲間達の苦悩を忸怩たる思いで見つめていた。 そのつかさの様子を見て、高良みゆきは声をかけた。 「一つだけ、時間を稼ぐ方法があります……」 眼鏡をかけた知的な面貌、上品な物腰から発せられる言葉は常に正確であり、軍師としてなくてはならない存在であった。 「みゆきさん、その方法って?」 沈黙を守っていたこなたが、みゆきに尋ねた。 「それは……」 「無茶よ!本当にみゆきはそれでいいの!?」 かがみは声を荒げて、反対の意を明らかにした。 「分かってます……でもこれしか手段がないんです。お役に立てなくて申し訳ありません」 みゆきの表情からは、これが苦渋の決断だということがひしひし伝わってくる。だからこそかがみは強硬に反対したのだ。 みゆきの示した案とは、戦力の一点集中であった。だがその間、誰かが孤軍奮闘を強いられることになる。 極めて基本的な作戦であるが、実行するには至らなかった。互いに仲間を思いやる気持ちが強いために……。 重い雰囲気の中、こなたが口を開いた。 「もう、やるしかないのかも……」 かがみは耳を疑った。そして思わず食って掛かった。 「アンタ、どういうつも……ま、まさか!」 かがみは言葉を続けることができなかった。こなたの考えていることが分かってしまったのだから。 「こなちゃん……」 「泉さん……」 こなたは返事をせずに、いつものニヤけた表情に戻った。 あの一件以来、かがみはこなたが何を言ってきても無視し続けた。その都度自己嫌悪に陥りながら……。 かがみが後ろ向きな態度を取り続けたところで、作戦決行日が近づくのを止めることはできない。 「その日」は容赦なく訪れた。 「柊ー、いいのかよ?」 日下部みさお――元気なことが取り柄の、かがみの親友である。 「知らないわよ!あのバカのことなんか!」 まただ、とかがみは心の中でつぶやいた。 「柊ちゃん……そういう言い方はないと思うよ」 そう言ってかがみをたしなめたのは、峰岸あやの――やはりかがみの親友で、温和な性格だが時には厳しい物言いをする。 かがみは何も言い返せなかった。あやのはさらに言葉を続けた。 「柊ちゃんと泉さんってその程度で壊れるような仲だったの?違うでしょ?」 さっきより幾分柔らかな雰囲気を漂わせていた。 「行ってきなよ、柊」 みさおのその言葉を聞いて、かがみの中で何かが吹っ切れた。 「二人とも……。そうだね、ほんとにバカだったのは私だったよ」 「柊ちゃんったら」 「行くんだろ、柊」 「うん、行ってくるよ!」 こなたが出陣の準備を整えていると、かがみが来たとの知らせがあった。 「や、やあ……どしたの、かがみ?」 ぎこちない調子で尋ねた。 「見送り……来てあげたのよ」 「え?」 こなたは驚きを隠せなかった。あれほど反対していたかがみがなんで……。 「ちゃんと生きて帰ってきなさいよ」 その言葉を聞いた瞬間、こなたは胸が熱くなってくるのを感じ、そして強く言い放った。 「うん、行ってくるよ」 二人の目はほんの少しだが、光っていた。 こなたが単身敵軍と戦っている間に、みゆきの策が功を奏し、陵桜軍は逆転勝利を収めることになった。 次は軍を返し、こなたの救援に向かわなければならない。 「急ぐわよ!もうあいつ一人じゃ持たない!」 先頭を切って進むのはかがみであった。 「あいつも生き残って……それで私たちの勝ちなんだからね!」 かがみはさらに足を速めた。 「もうすぐ……もうすぐかがみたちが来る」 そう自分に言い聞かせながらこなたは耐えていた。だがそれももう限界が近づいていた。 足はふらつき、目はかすみ、いるはずのないかがみの声が聞こえてきた。 「私もう駄目かも……かがみ、ごめん」 覚悟を決めて目をつぶった。 「こーなたー!」 「かがみの声……?空耳に決まって……」 「こーなたー!」 それでも、と目を開けた先には、見覚えのある顔があった。 「か、かがみ……」 その後かがみの姿に元気付けられたこなたは、かがみとの連携で敵を打ち破り、こなたとかがみの武勇伝は語り草となった。 あらゆる困難、圧倒的多数を誇る敵を突破するその力はやがて、幸運の星を意味するらき☆すたと呼ばれる。 近年、インターネット掲示板において、スレッドを維持するための行為を保守と呼ぶが、これは星が保守に転じたもので、その由来がこの戦にあることは言うまでもない。 「……って、民明書房の本に書いてあったよ。じゃ保守しよっか」 こなたがかがみのツッコミをくらうのは二秒後のことであった。 完

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。