ID:pzz12Qt90氏:日下部みさおの事情

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最近日下部みさおの様子が変だ。 変というのは顔がおかしいとかそういう意味では無い、元々元気の塊のようなみさお が悲しい顔とかをするのはほとんど珍しい事と言えるであろう。 みさおの変貌ぶりは友達どころかクラスメートだってわかる事だ、放課後になると 陸上部員であるみさおはうさぎのようにぴょんぴょん跳ね回ってグランドに行くものだ。 しかし最近と来たら部活にも行かず友人であるかがみやあやの誘いも断るといった 状態がもう1週間にもなる。 もしみさおの悩んでる事がみさお自身の問題なら友達であっても口出しは無用である。 だが何かあったなら心配するのは友人として当然であろう。 「みさお。」 話し掛けたのはあやのだ。全体の名前は峰藤あやの。 一見見ると大人しそうで真面目そうな印象を受ける、実際はそうだ、オレンジ色の 長髪をカチューシャで纏めた女で活発なみさおとは対照的な印象を受ける。 「何・・・。」 やっぱり様子が変だ、みさおのこんな悲しい顔は長く友人として付き合ったあやの でも見た事が無い。 「何かあったの・・・?最近様子が変よ?」 「別にそんなつもりは無いけど・・・。」 「嘘よ!じゃあ何で陸上部に行かなかったりそんな顔したりするの!」 窓には輝く汗を流し、部活に励んでいる学生達がいる。 みさおは勉強の類は嫌いだが決して乱暴な真似や不真面目な事はしなかった、陸上 に関しては誰よりも愛している筈だとあやのは思っていた、そのみさおがこんなに 陸上をさぼるなんて考えられなかった。 「やっぱ変に見えるかな・・・?」 「誰だって思ってるわよ・・・クラスメートの人達だって不思議に思ってるわよ?」 するとみさおは少し沈黙を置きこう呟いた。 「私もう走れない体になったって医者に言われた・・・・。」 みさおの話だとこうだ、それはいつもの練習中に起きた事件だ。 練習種目は100m走だ、別にこの時は何も以上が無かった、起きたのは走った途中だ。 みさおはいつものようにロケットのようなスタートダッシュで全力疾走した、100m走 は誰もが知っている競技でマラソンみたいにかなり体力を消耗するような大それた競技で は無いのだ。 「・・・・!」 突然みさおの足に激痛が走り転げ落ちてしまった。 みさおの尋常じゃないもがいている所を見て周りは騒然となった、その後親に連絡を 入れ病院に見て貰って今に至るという事だ。 「それじゃあもう走れないって言われたの・・・?」 「うん・・・・軽い運動なら努力次第で何とかなるって・・・。」 「じゃあまた頑張れば―」 「そんな簡単な問題じゃないよ!」 みさおの怒鳴り声が廊下に響き渡った、今は放課後なので声が反射してこだまする。 「大会には無理って言われた・・・今までの努力が水の泡になったんだよ・・・。」 あやのはそれ以上話せなかった、運動部員でないあやのに運動に全てを掛けている みさおの屈辱はわかりはしない。みさおの陸上に関する話はいつもいきいきして あやのもどれだけみさおが陸上好きなのかわかっていた。今まで相当な努力を したのはわかっていた、だが真面目に努力をした結果がこれとなったら悔やんでも 悔やみきれないだろう。 「もういいよ私・・・。」 みさおは吐き捨てるように言った。 「私・・・部活辞める・・・。」 突然のみさおの告白に眼を白黒させたあやの。それをよそにみさおは言葉を続ける。 「何でよ・・・あんなに頑張って来たんじゃないの?」 「もう私は疲れたの・・・あやのにはわからないよ・・・。」 あやのは確かにこれ以上物を言う権利は無いと知っていた、だがここでみさおを 奮起させなければ後で何か後悔しそうな気がした。言い知れぬ何かがあやのを 突き動かした。 「よく考えたら?何かこんなのみさおらしくないし・・・。」 「しつこいなぁ・・もういいでしょ!」 「よくないよ!じゃあ何でこんな所に居るの!」 放課後みさおがいつも決まって部活動を見ている、何かしら未練があるのはわかっていた。 だがあやのはみさお自身の問題だと思い今まで黙っていた。 「はっきり言うよみさお!諦めきれないんでしょう?だからこんな所に居るんでしょう!」 今度はみさおが黙る番だった。 「ねぇ!諦めないでよみさお!」 「私だって!」 あやのの真剣な声に答えるようにみさおは答えた。 「最初陸上部に入った時は楽しかったよ、きつかった練習も自分なりについて行こう したし・・・。」 「それで・・」と最初に置き、冷静な口調でみさおは続ける。 「よく考えて周りを見渡してみたら何か私だけ浮いてるような気がしてさ・・・ここって 運動でも偏差値でも全然有名な高校じゃないんだよね、他の人達は楽しければいいとか って人がほとんどでさぁ・・・でも先生達は期待してくれてるしグランドだって道具だって あるし・・・これね、怪我をして冷静に考えた時に結論が出たんだ・・・だから私は もう陸上部辞めたいんだと思う・・。」 「・・・・・・。」 クラスで多人数の利がある、人が同じ意見を持ってそれが大勢な時人は調子に乗ったり 強かったりするものだ、そして残りの少人数の者は大勢な意見に流されて自分を見失ってしまう。 みさおは陸上が好きだ、努力をすれば何とかなるこの状況で何故みさおがこんなに渋ってるのか あやのは理解した。 運動がしたい、ちゃんとした環境がある。だがこれ以上の努力をして自分が壊れて しまったらという恐怖がある。したいがやりきれないもどかしさがみさおにはあった。 「あの・・・」 第三者の声が後ろからした。 「私も話に加わらせて貰ってよろしいでしょうか?」 それは後輩のパティことパトリシア=マーティンだった。 場所は屋上に移された、もう夕方になりあたりはオレンジ色の染まっている。 門には家路に着く生徒達がたむろっていてそれを下に3人の女生徒達は対峙する。 提案したのはパティだ、どうやらあまり人に聞いて欲しくない話があるという。 「そんで・・・何で、パティでいいんだっけ?私に話があるの?」 パティとはみさおどころかあやのだって親しくない、多少の顔は知ってるが会話 するというほどの仲では無いのだ。 「みさおさんは・・・ようするに浮いてるのが嫌なんですよね?」 「そうだよ」 「じゃあ私と一緒です、私もアメリカからの留学生で周りから煙たがられましたから・・・。」 「ねぇパティ」とみさお。 「何ですか?」 「あやのとの会話聞いたの・・・。」 「はい」 一瞬の沈黙が置かれた。 「えぇひどいよ!これは凄い真剣な話だったんだよ!」 「だから御詫びといっては何ですが私からも話をします。」 栗色のくせ毛のあるパティが口を開く、いつも陽気な印象を持つパティだが今回は いつも見ない真剣な表情で話を切り出した。 「さっき言いましたよね?煙たがられたって。」 「うん。」 「正直嫌でした、何かトラブルが起こるといつも決まってこう言うんです『外国人の癖に!』って。 その時死にたい位のショックを受けました。」 パティの顔の真剣な表情は変わらなかった。 「でもアメリカの友達が励ましてくれたんです、それを聞いているとここで逃げたら あの人達の言う通りになってしまうんじゃないかなぁと思って今みたいな明るく振舞ったら 友達も出来てもう外国人だからという理由で馬鹿にする人も居なくなりました、勿論 凄く苦労はしましたけど・・・。」 「凄いねパティはでも私と場合は違うんじゃない?」 みさおは言葉を続ける。 「パティの場合は心の底から信頼し会える仲間居たからじゃん、でも私の場合は やる気あっても無くても居ていい連中だし『やる気出せ!』って言ってもそれは 私が正しいとは限らないし・・・。」 「みさお。」 あやのが静かに口を開く。 「何をぶつぶつ言ってるのよ。簡単な事じゃない!ようするに今まで通り頑張れば いいのよ。あまり親しくないパティだってこんなに影響与えたんだから大丈夫よ、それに・・・」 あやのがグランドを指す。 「全員が全員やる気が無いって訳じゃ無さそうよ。」 そこにはまだ居残って部活動に精を出している部員達が居た。 みさおの知っている陸上部員も少数ではあるが走り込みや基礎鍛錬をしている 者だって居た。 「みさお、諦めるには早いんじゃない?1人じゃ駄目でもあの人達と一緒だったら何とかなるかもね。」 「みさおさん・・・・。」 2人がみさおの発する言葉を待っていた、みさおは陸上部を全てを知っていたつもりで 1人で落ち込んでいた、怪我で無理かもしれないとわかっているのに何故こんなに自分 の体は震えるのだろうと思った。 「わかった・・・私まだ・・続けたいんだ・・・陸上部。」 「ようやくわかったわね・・・大体影で努力した人達の事も見てないのにそんな に何もかもやりきった顔しないでよね、それとそういうのはちゃんと相談してよ。 こうして解決だって出来たんだし・・・。」 「うん・・・ごめんあやの・・・じゃあ私練習してくるね。」 「でも下校まで30分くらいしか無いよ。」 「いいのいいの!今日は無償に練習したい気分なんだ!それじゃあ先に帰ってて!」 こうしてみさおはうさぎのように飛び跳ねて屋上を後にした。 「ねぇパティ。」 「何ですか?」 「どうしてみさおの事見てたの?」 「田村さん達が噂したのを聞いたんですよ。」 「そっか・・・。」 あやのは思った、みさおの存在はこんなにも周りの人達に影響を及ぼしたんだ きっと陸上部でもやっていけるだろうと・・そう願いを込め少女達は帰っていった。 陸上部に活気が戻った、みさおの努力が周りの部員達に影響されていったらしい。 練習全てまでとはいかないが数々のフォローで明るくなったみさお。 みさおはもう浮いたりしない、彼女の周りにはこうも頼もしい仲間が居るのだから。 終了

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