ID:4rvS51Kg0氏:七夕

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こなた「ごめーん、待った?」 みゆき「いいえ、私も先ほど来た所です」 そんなはずないよ、もう20分は遅れている。さすがはみゆきさん、かがみなら待っているかどうかも疑わしい。 まぁ、今日はそんなかがみ達の誕生日プレゼントの選定にみゆきさんと待ち合わせしたんだった。 こなた「……あの、遅刻の理由……聞かないの?」 みゆき「謝ったので問題ありません、次回から気をつけて下さい……行きましょう」 な、何だろうこの圧迫感は。日本刀でバッサリ切られた感じだ。かがみが言うのとは重みが違う。普段からギャーギャー言う人よりこっちの方が効果ある。 今度から気をつける事にしよう。 さて、どうするか。もう冗談でプレゼントを選ぶ歳でもないな。この前みたいにコスプレグッズじゃ面白くないし…… 都内の有名デパート。そこで私達は選ぶことにした。 こなた「うーん」 唸るしかなかった。どの品を見ても予算オーバーだった。流石デパート、みゆきさんを見ると鼻歌でも歌うように品定めをしている。経済力の差を見せ付けられた。 こなた「あのー、みゆきさん、ここの品はかがみやつかさはあまり喜ばないような気がするんだけど……」 みゆき「そうですね、どんな物が良いと思いますか?」 こなた「化粧品なんかはどう、口紅とかアイシャドウとか……」 う、咄嗟に出てしまった。化粧品もピンキリ、微妙な選定だ。みゆきさんなら高級品を選びそうだ。 みゆき「……もう化粧をしても良い歳ですね、場所を移りますか」 化粧品売り場に移動する途中だった。 みゆき「泉さん、お昼はどうしますか、もう良い時間ですが」 腕時計を見た。もうお昼をまわっていた。私が遅刻したせいかもしれない。 こなた「私もお腹空いた、お昼食べてからにしようかな」 意見は一致し、レストラン街に進路を変えた。  適当に空いている店を見つけてそこに入った。注文をして少し落ち着いた頃だった。 みゆき「もうすっかり準備が終わっていますね」 こなた「え?」 私が聞きなおすとみゆきさんは窓の外を指差した。外は七夕の飾りつけがされている。この事を言っているのか。 こなた「七夕祭りの笹飾りの事?」 みゆき「そうです」 こなた「今年も梅雨はまだ終わりそうにないよ、織姫と彦星はまた逢えないね」 なんて、心にもない事を言ってみたりした。 みゆき「本来の七夕は旧暦の七月七日です、今で言うと立秋の辺りになりますから昔の方が晴れの日は多かったと思いますよ」 こなた「そうなんだ、しかしかがみもつかさもこんな日が誕生日で良かったね、忘れ難いし……私の誕生日なんか……」 みゆきさんはクスクスと笑い出した。 みゆき「泉さんは五月二十八日ですね、忘れないのは忘れられないからです、その日がどんな日なのかはあまり関係ないと思います」 私は反論せず水を一口飲んだ。みゆきさんは外を見ながら話した。 みゆき「七夕は幼い頃の思い出の方が沢山ありますね、成長するにつれてお祭りをしたのかさえ忘れてしまいます」 こなた「そりゃそうだよ、今になって短冊に願い事なんてね、昔は健気なもんだった」 みゆき「どんなお願い事をしたのですか?」 みゆきさんは目線を私に向けた。はて、何も思い出せない。 こなた「なんだろうね、思い出せないや、みゆきさんは覚えてる?」 みゆき「お恥ずかしながら、私も覚えていません、何か書いたのは覚えているのですが」 こなた「書くとすれば……お母さんに逢いたい、くらいかな」 みゆきさんは黙ってしまった。あれ、そんなに悲しげな表情なんかして。 みゆき「すみませんでした、嫌な事を思い出させてしまいました」 みゆきさんは深々と頭を下げた。いやいや、そんな謝れるほど私は嫌な思いなんかしていない。 そこに私達が注文した料理が運ばれてきた。なんか気まずくなった。こっちも話し辛くなった。あんな事言わなきゃ良かった。 そういえばかがみやつかさはあまりそうゆうのは気にしないな。私の前でよくおばさんの話もするし。 さっきからみゆきさんとかがみ達を比べて私ったらなにやってるんだろ。邪念を捨てないと良いプレゼントなんか選べない。 食事が終わりそのまま化粧品売り場に移動した。 色々見てきたがなんかしっくりこない。別の場所に移った方がよさそうだ。私はみゆきさんに声をかけようとしたが見当たらない。 あれ……。さっきから向こうで化粧のデモをやっているけど、もしかして……。 人だかりを掻き分けてデモを見るとそこにはみゆきさんが店員に化粧をしてもらっていた。周りの客は感心して店員の話を聞いていた。 みゆき「すみません、断りきれませんでした……」 何度も私に頭を下げて謝るみゆきさん。正面からみゆきさんを見て驚いた。まるで別人……化粧、化けるとはよく言ったものだ。 そこには大人の女性が立っていた。私と並んだら親子だと勘違いされそうだ。店員がみゆきさんの素質を見抜いて誘ったに違いない。侮れない、みゆきさん。 みゆきさんはバッグから濡れタオルを取り出し化粧を落とそうとした。 こなた「いいよそのままで、たまには大人の気分でいいじゃん?」 みゆき「……何か落ち着きませんが……泉さんがそう言うのであれば……」 さて、もうここに居るのは良いだろう。 こなた「やっぱりかがみ達には違う物が良いと思わない?」 しかしみゆきさんは動こうとはしなかった。みゆきさんの心の中では二人に化粧品を贈るに決定したみたい。しようがない、付き合うか……  あれから一時間は経っただろうか、みゆきさんは化粧品売り場でじっと立ち止まったまま動かなかった。口紅の陳列棚を見ている。 こなた「みゆきさん、決まった?」 みゆき「それが……お二人にどんな色が似合うのか……迷ってしまいました」 なるほど、口紅には決まったけど色で迷っていたのか、適当でいいよ……とは言えないな。あんなに迷っているみゆきさんを初めて見た。 こなた「かがみは出しゃばりで口うるさいから色は薄めでいいよ、つかさはいつも地味で目立たないから濃い色で良いんじゃないの?」 みゆきさんは暫く私の顔を見てから話した。 みゆき「……お二人の性格とは反対の色……そう、そうですね、その発想はありませんでした」 みゆきさんは薄い色の口紅と濃い色の口紅を手に取った。そして私に見せた。 みゆき「これでどうでしょうか?」 そんな事言われても思いつきで言ったのに、真に受けちゃって……みゆきさんの選んだものなら間違いはないかな。 こなた「いいねぇ~これで決まりだよ」 するとみゆきさんはじっと私を見た。 みゆき「泉さんは何かプレゼントを決めたのですか?」 しまった。私はまだ何も決めていなかった。 こなた「ま、まだだったりして」 みゆき「もし良かったら私と泉さんの二人でこの口紅を贈るのはどうでしょうか?」 これはいいかもしれない。便乗できるし割り勘でお財布にも優しい。 こなた「うん、便乗……じゃない、私も今そう思ったところだよ」 私は財布を出して一個分の金額をみゆきさんに渡した。 みゆき「それでは買ってきます」 こなた「それにしても……みゆきさん」 みゆき「何でしょうか?」 みゆきさんは立ち止まった。 こなた「いやね、みゆきさんもかがみを出しゃばりで口うるさいと思っていたのかなって、つかさも地味で目立たないって……」 みゆき「え?」 きょとんとして私を見ている。 こなた「だって、否定しなかったし、それでこの口紅選んだでしょ?」 みゆきさんの顔がみるみる赤くなっていった。化粧をしているせいか少し色っぽくも見える。 みゆき「え、あの、決してそのような……そのような意味ではなく……」 昔、似たような事をつかさに言ったのを思い出した。みゆきさんの仕草がなんとなくつかさに似ている。あの時はインフルエンザの話だったな。 弁解しようとしているけど、何を言っても誤解されちゃうんだよね。 みゆき「取りあえず、買ってきます」 小走りに店員のもとに行った。 あの恥じらい方はかがみにもつかさにも無い、萌え要素……なんて昔は言っていたけど、そんな事が言えるのももう何年もないのかもしれない。ちょっと寂しいかな。 買い物も終わり、駅に向かって私達は歩いていた。みゆきさんが突然立ち止まった。私は二、三歩進んでから止まりみゆきさんの方に振り向いた。 こなた「どうしたの?」 何も返ってこない。うな垂れていたので下から覗き込むように様子を見た。みゆきさんの目に涙がたまっている。 こなた「ちょ、どうしたの、具合でも悪いの?」 みゆき「先ほどの事を思い出すと…何故か……うう……」 みゆきさんの涙は頬をつたって落ちていく。化粧が落ちて崩れてきた。これはまずい。私は辺りを見回し近くのお手洗いにみゆきさんの手を引いて向かった。  濡れタオルで涙を拭うみゆきさん。もうすっかり化粧は落ちてしまった。いつものみゆきさんに戻った。やっぱりまだこっちの方がみゆきさんらしくて良い。 落ち着いたら喫茶店で休むことにした。 みゆき「お騒がせしてすみませんでした、もう大丈夫です」 喫茶店の中、もうみゆきさんは大丈夫の様だ。 こなた「さっきはどうして?」 答えてくれるとは思わなかった。突然道端で泣き出すなんてよっぽどの事がなければ出来ない。でもあえて聞いてみた。 みゆき「……口紅を買った時から、思っていました、いつまで私達はこうしていられるのかと、これからの事を思うと急に寂しくなってしまって……」 以外にすんなり答えてくれた。そんな悩みは悩んでもどういようもない。 こなた「私達は高校時代、自然に出会った、だから最後は自然に別れるのはしょうがないね、これからの事を考えると、就職、結婚、引越し、病気や事故での……」 みゆき「……すみません……そんな事ではありませんでした」 こなた「へ?」 みゆきさんは私が話しているのに割り込んで止めた。これまたみゆきさんらしくない。 みゆき「お別れはいずれ……そうなるのは分かっています、私は……私は、かがみさんを出しゃばりで口うるさい……つかささんを地味で目立たないと思っていたなんて……」 落ち着いたはずのみゆきさんの目がまた潤み始めた。 こなた「……ぷっ!! ふふふ、」 思わず吹き出して笑ってしまった。まだあの事を考えていたなんて。もうとっくに終わったと思ったのに。 みゆき「なぜ、何故笑うのですか?」 こなた「ふふふ、だって、私達っていったい何年付き合っているのさ、私がかがみやつかさ、みゆきさんに良いイメージしかないなんて無いから、それはかがみやつかさも     同じだよ、今まで私とかがみ達の会話や態度で分からなかった?」 みゆき「それは……」 こなた「好かれようとすれば良い所だけ見せれば良い、なんて思ってると悪いところが余計に目立っちゃうもの、でもそれで良いんだよ、かがみとつかさを見て     そう思うようになった、それにあの二人はそれを意識していないから、きっと四姉妹だからその辺の交際術が自然と看に付いたんじゃないのかなって、     私とみゆきさんは一人っ子だしね、みゆきさんもたまには思った事をそのままあの二人に言ってみれば?」 みゆき「そうですか、そうですね……泉さんは行き当たりばったりでお調子者ばかりだと思っていましたけど、しっかり考えているのですね」 こなた「そうそう、行き当たりばったりで……ちょ、いくらなんでもそれは酷い……」 みゆきさんは笑った。そして早速私に今までに無い事を言ってきた。これが本音なのだろうか。そんなのはどうでもいい。良いことばかりしか言わなかったみゆきさん。 みゆきさんは良いと思ったのはすぐに採用してしまう。それだからあれだけの博学になったのだろうか。この切り返しの早さに感心するばかりだ。 みゆき「ところで七月七日なのですが、私の主催で行いたいのですがよろしいですか?」 みゆきさんの家でやるのか。それも良いかもしれない。 こなた「かがみとつかさが承知すれば良いよ」 七月七日、今日は休日。 柄にも無く少し早めに来てみゆきさんの手伝いをした。さすがに料理の豪華さには驚かされた。 約束の時間通り主役の二人は来た。 かがみ・つかさ「こんにちは、お邪魔します」 みゆき「いらっしゃい、どうぞ中へ」 みゆきさんが二人を自分の部屋に案内した。そこには既に私が居る。かがみはえらく驚いた顔をした。 かがみ「こなたが約束の時間より早く来るなんて……雪でも降るかもしれないわね」 予想通りの台詞だ。この程度で反応していたらかがみの友達にはなれない。 こなた「お誕生日おめでとう、つかさ」 つかさ「ありがとう」 かがみ「……一人忘れていないか?」 みゆき「かがみさん、つかささん、お誕生日おめでとうございます、少ないですが召し上がって下さい」 料理をテーブルに並べた。 それから私達は、食事をしながら楽しいお喋りを続けた。 みゆき「かがみさん、つかささん私達から、心ばかりのプレゼントです、受け取って下さい」 かがみ「私達?」 みゆき「はい、私と泉さんで選びました、気に入っていただければ幸いです」 つかさ「なんかワクワクするよ」 こなた「二時間も考えて選んだんだよ」 ほとんどみゆきさんが選んだだけど。ここは自分も参加しているのをアピールしないと。 みゆきさんは机の引き出しを開けて二つの品を取り出した。 みゆき「それでは出しゃばりで口うるさい、かがみさんにはこちら、地味で目立たない、つかささんにはこちらを」 そうそう、二つの口紅はそれぞれ違った色……あれ、みゆきさんは何て言った…… その時、私は悪寒が背筋を過ぎったのを感じた。 かがみ「……みゆきが自らそんな事を言うはずはないわ、わざわざ早くから来てみゆきにそう言うようにした訳ね……」 鋭い目線が私に突き刺さる。だめだよみゆきさん、合同プレゼントなんだからそんな事言ったら私が疑われるじゃないか。と言える状態じゃない。 いつもは聞き流してくれるはずのつかさまでが私を睨んでいる。 つかさ「ゆきちゃんにそんな事言わせるなんて……許さないよ」 こなた「あ、あの、これは言わせたんじゃなくて……話の成り行きでこうなったのであって……」 みゆきさんは事の重大さに気付いていない。ポカンとして私達を見ていた。 かがみ「こなた、あんたちょっとこっちに来なさい、今日と言う今日はお仕置きが必要ね、最近少し図に乗りすぎなのよ……」 かがみのお説教が始まってしまった。つかさもそれを後押しする。私には弁解などをする隙さえ与えてくれなかった。私はかがみの足元に正座をさせられている。 確かに私が本当にみゆきさんにあんな事を言わせたのなら、誕生日にすることじゃないしみゆきさんに大きな傷を負わすことになる。 私だってそのくらい分かるよ。あれはみゆきさんが自分の意思で言ったんだよ。プレゼントを選んだ時の話をすればかがみだって分かるよ。 しかしそんな心の叫びがかがみに届くはずもない。 かがみ「今更泣いても遅いわよ、帰って頭を冷やしなさい」 いつの間にか涙が出ていた。これが私の悪戯なのなら笑ってやったさ。だけど……どうすればいいのか分からない。泣くしかなかった。 私は自分の家に帰っていた。帰されたと言った方がいいのかもしれない。もう日はすっかり沈んでしまった。もうかがみ達も帰ったかな。 かがみとつかさの誕生日を祝うはずがこんな結果になるなんて。 これがかがみとつかさ、みゆきさんの別れになってしまうのでは。みゆきさんが悪いのか。違う、私が悪い。 普段の行いの結果。これ以外にない。それは謝る。だけどこのままお別れなんて納得できないよ。もう一度会わせて欲しい。弁解は出来なくなくとも謝りたい。 そうじろう「おーい、こなた居るか?」 ノックと共にお父さんがノックと共に部屋のドアを開けた。 そうじろう「悪いがこの回覧板をお隣に渡してきて欲しいのだが」 こなた「いいよ」  家を出て回覧板を見てみるとお隣さんは閲覧のチェックがしてあった。まったくお父さんは良く見ないんだから。もう一つ先の家だな。 回覧板を渡した帰り道。 「行き当たりばったりでお調子者の泉さん、どこへいくのですか?」 後ろから声をかけられた。後ろを向くとかがみとつかさが居た。 かがみ「さっきから声をかけているのに……鈍いわね」 つかさ「私達が来たって言ったらたぶん出てきてくれないと思ったから、おじさんに頼んでもらったの」 私は立ち止まって二人を見たまま動かなかった。動けなかった。 かがみ「話は全てみゆきから聞いた、みゆきもタイミングが悪かったわね、そうゆう所が疎いと言うのか……今回はこなたに非は無かった」 つかさ「ごめんなさい」 いきなり謝られてもしっくりこない。 こなた「でも……私は今まで……」 かがみ「そうね、今までのこなただったら絶交していたかもしれない、だけどあんた、みゆきを庇ったでしょ?」 こなた「うんん、庇ってなんかいない」 かがみは一回溜め息ついた。 かがみ「それなら何故『私はしていない』って言わなかった、言い訳なら十八番でしょうに、それに絶対に涙なんか流さなかったでしょ?」 つかさ「こなちゃんがしていないって言ったら、ゆきちゃんの立場が無くなっちゃうよね、そうでしょ?」 そんなに積極的に庇ったわけじゃない。したともしなかったとも言えなかった。 かがみ「こなた、行くわよ!!」 じれったくなったのか、高校で放課後、帰る時のように声をかけられた。 こなた「行くって、どこに?」 かがみ「決まってるじゃない、みゆきの家よ、私達の誕生日まだ終わってないわよ」 こなた「でも……」 かがみ「でももへちまも無いわよ、私はまだこなたに祝いの言葉を言ってもらってないから」 つかさ「こなちゃんの好きなゲームも持ってきて良いから、行こうよ」 まるでわがままな妹を諭しているように私を誘ってきた。これが姉妹ってやつなのかな……なんか涙が出てきた。 かがみ「……泣くことなんかないじゃない……分かったわ、無理強いはしない、5分待ってあげる、それまでに向こうに止めてある車に来て、来なくてもいいわよ」 つかさ「私がここまで運転してきたんだよ、私は来て欲しいな」 私は二人の顔を見た。急に空が明るくなった。月明かりが射してきたようだ。二人の唇がいやに目立って見える。そうか、あの口紅を塗ったのか。 かがみは控えめな薄い色、つかさは艶やかな濃い色だった。あの時のみゆきさんみたいに二人とも大人びて見えた。 かがみ「それじゃ」 二人は車の止めてある方に歩いて行った。  ふと空を見た。まん丸の月が夜空を照らしていた。雲が流れている。このまま綺麗な夜空になりそう。 明日も休日、時間はまだたっぷりある。私はまだあの二人を祝っていない。みゆきさんにも一言言わないとね。 今日は七夕、夜空が晴れれば願い事が叶う日。さっき家で願ったあの願い、叶えられそう。 私は車の方へ歩いて行った。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - 私を満足させてくれる男性様を募集しています。(´-ω-) http://sns.44m4.net/ -- 杏 (2012-06-30 07:06:57)
こなた「ごめーん、待った?」 みゆき「いいえ、私も先ほど来た所です」 そんなはずないよ、もう20分は遅れている。さすがはみゆきさん、かがみなら待っているかどうかも疑わしい。 まぁ、今日はそんなかがみ達の誕生日プレゼントの選定にみゆきさんと待ち合わせしたんだった。 こなた「……あの、遅刻の理由……聞かないの?」 みゆき「謝ったので問題ありません、次回から気をつけて下さい……行きましょう」 な、何だろうこの圧迫感は。日本刀でバッサリ切られた感じだ。かがみが言うのとは重みが違う。普段からギャーギャー言う人よりこっちの方が効果ある。 今度から気をつける事にしよう。 さて、どうするか。もう冗談でプレゼントを選ぶ歳でもないな。この前みたいにコスプレグッズじゃ面白くないし…… 都内の有名デパート。そこで私達は選ぶことにした。 こなた「うーん」 唸るしかなかった。どの品を見ても予算オーバーだった。流石デパート、みゆきさんを見ると鼻歌でも歌うように品定めをしている。経済力の差を見せ付けられた。 こなた「あのー、みゆきさん、ここの品はかがみやつかさはあまり喜ばないような気がするんだけど……」 みゆき「そうですね、どんな物が良いと思いますか?」 こなた「化粧品なんかはどう、口紅とかアイシャドウとか……」 う、咄嗟に出てしまった。化粧品もピンキリ、微妙な選定だ。みゆきさんなら高級品を選びそうだ。 みゆき「……もう化粧をしても良い歳ですね、場所を移りますか」 化粧品売り場に移動する途中だった。 みゆき「泉さん、お昼はどうしますか、もう良い時間ですが」 腕時計を見た。もうお昼をまわっていた。私が遅刻したせいかもしれない。 こなた「私もお腹空いた、お昼食べてからにしようかな」 意見は一致し、レストラン街に進路を変えた。  適当に空いている店を見つけてそこに入った。注文をして少し落ち着いた頃だった。 みゆき「もうすっかり準備が終わっていますね」 こなた「え?」 私が聞きなおすとみゆきさんは窓の外を指差した。外は七夕の飾りつけがされている。この事を言っているのか。 こなた「七夕祭りの笹飾りの事?」 みゆき「そうです」 こなた「今年も梅雨はまだ終わりそうにないよ、織姫と彦星はまた逢えないね」 なんて、心にもない事を言ってみたりした。 みゆき「本来の七夕は旧暦の七月七日です、今で言うと立秋の辺りになりますから昔の方が晴れの日は多かったと思いますよ」 こなた「そうなんだ、しかしかがみもつかさもこんな日が誕生日で良かったね、忘れ難いし……私の誕生日なんか……」 みゆきさんはクスクスと笑い出した。 みゆき「泉さんは五月二十八日ですね、忘れないのは忘れられないからです、その日がどんな日なのかはあまり関係ないと思います」 私は反論せず水を一口飲んだ。みゆきさんは外を見ながら話した。 みゆき「七夕は幼い頃の思い出の方が沢山ありますね、成長するにつれてお祭りをしたのかさえ忘れてしまいます」 こなた「そりゃそうだよ、今になって短冊に願い事なんてね、昔は健気なもんだった」 みゆき「どんなお願い事をしたのですか?」 みゆきさんは目線を私に向けた。はて、何も思い出せない。 こなた「なんだろうね、思い出せないや、みゆきさんは覚えてる?」 みゆき「お恥ずかしながら、私も覚えていません、何か書いたのは覚えているのですが」 こなた「書くとすれば……お母さんに逢いたい、くらいかな」 みゆきさんは黙ってしまった。あれ、そんなに悲しげな表情なんかして。 みゆき「すみませんでした、嫌な事を思い出させてしまいました」 みゆきさんは深々と頭を下げた。いやいや、そんな謝れるほど私は嫌な思いなんかしていない。 そこに私達が注文した料理が運ばれてきた。なんか気まずくなった。こっちも話し辛くなった。あんな事言わなきゃ良かった。 そういえばかがみやつかさはあまりそうゆうのは気にしないな。私の前でよくおばさんの話もするし。 さっきからみゆきさんとかがみ達を比べて私ったらなにやってるんだろ。邪念を捨てないと良いプレゼントなんか選べない。 食事が終わりそのまま化粧品売り場に移動した。 色々見てきたがなんかしっくりこない。別の場所に移った方がよさそうだ。私はみゆきさんに声をかけようとしたが見当たらない。 あれ……。さっきから向こうで化粧のデモをやっているけど、もしかして……。 人だかりを掻き分けてデモを見るとそこにはみゆきさんが店員に化粧をしてもらっていた。周りの客は感心して店員の話を聞いていた。 みゆき「すみません、断りきれませんでした……」 何度も私に頭を下げて謝るみゆきさん。正面からみゆきさんを見て驚いた。まるで別人……化粧、化けるとはよく言ったものだ。 そこには大人の女性が立っていた。私と並んだら親子だと勘違いされそうだ。店員がみゆきさんの素質を見抜いて誘ったに違いない。侮れない、みゆきさん。 みゆきさんはバッグから濡れタオルを取り出し化粧を落とそうとした。 こなた「いいよそのままで、たまには大人の気分でいいじゃん?」 みゆき「……何か落ち着きませんが……泉さんがそう言うのであれば……」 さて、もうここに居るのは良いだろう。 こなた「やっぱりかがみ達には違う物が良いと思わない?」 しかしみゆきさんは動こうとはしなかった。みゆきさんの心の中では二人に化粧品を贈るに決定したみたい。しようがない、付き合うか……  あれから一時間は経っただろうか、みゆきさんは化粧品売り場でじっと立ち止まったまま動かなかった。口紅の陳列棚を見ている。 こなた「みゆきさん、決まった?」 みゆき「それが……お二人にどんな色が似合うのか……迷ってしまいました」 なるほど、口紅には決まったけど色で迷っていたのか、適当でいいよ……とは言えないな。あんなに迷っているみゆきさんを初めて見た。 こなた「かがみは出しゃばりで口うるさいから色は薄めでいいよ、つかさはいつも地味で目立たないから濃い色で良いんじゃないの?」 みゆきさんは暫く私の顔を見てから話した。 みゆき「……お二人の性格とは反対の色……そう、そうですね、その発想はありませんでした」 みゆきさんは薄い色の口紅と濃い色の口紅を手に取った。そして私に見せた。 みゆき「これでどうでしょうか?」 そんな事言われても思いつきで言ったのに、真に受けちゃって……みゆきさんの選んだものなら間違いはないかな。 こなた「いいねぇ~これで決まりだよ」 するとみゆきさんはじっと私を見た。 みゆき「泉さんは何かプレゼントを決めたのですか?」 しまった。私はまだ何も決めていなかった。 こなた「ま、まだだったりして」 みゆき「もし良かったら私と泉さんの二人でこの口紅を贈るのはどうでしょうか?」 これはいいかもしれない。便乗できるし割り勘でお財布にも優しい。 こなた「うん、便乗……じゃない、私も今そう思ったところだよ」 私は財布を出して一個分の金額をみゆきさんに渡した。 みゆき「それでは買ってきます」 こなた「それにしても……みゆきさん」 みゆき「何でしょうか?」 みゆきさんは立ち止まった。 こなた「いやね、みゆきさんもかがみを出しゃばりで口うるさいと思っていたのかなって、つかさも地味で目立たないって……」 みゆき「え?」 きょとんとして私を見ている。 こなた「だって、否定しなかったし、それでこの口紅選んだでしょ?」 みゆきさんの顔がみるみる赤くなっていった。化粧をしているせいか少し色っぽくも見える。 みゆき「え、あの、決してそのような……そのような意味ではなく……」 昔、似たような事をつかさに言ったのを思い出した。みゆきさんの仕草がなんとなくつかさに似ている。あの時はインフルエンザの話だったな。 弁解しようとしているけど、何を言っても誤解されちゃうんだよね。 みゆき「取りあえず、買ってきます」 小走りに店員のもとに行った。 あの恥じらい方はかがみにもつかさにも無い、萌え要素……なんて昔は言っていたけど、そんな事が言えるのももう何年もないのかもしれない。ちょっと寂しいかな。 買い物も終わり、駅に向かって私達は歩いていた。みゆきさんが突然立ち止まった。私は二、三歩進んでから止まりみゆきさんの方に振り向いた。 こなた「どうしたの?」 何も返ってこない。うな垂れていたので下から覗き込むように様子を見た。みゆきさんの目に涙がたまっている。 こなた「ちょ、どうしたの、具合でも悪いの?」 みゆき「先ほどの事を思い出すと…何故か……うう……」 みゆきさんの涙は頬をつたって落ちていく。化粧が落ちて崩れてきた。これはまずい。私は辺りを見回し近くのお手洗いにみゆきさんの手を引いて向かった。  濡れタオルで涙を拭うみゆきさん。もうすっかり化粧は落ちてしまった。いつものみゆきさんに戻った。やっぱりまだこっちの方がみゆきさんらしくて良い。 落ち着いたら喫茶店で休むことにした。 みゆき「お騒がせしてすみませんでした、もう大丈夫です」 喫茶店の中、もうみゆきさんは大丈夫の様だ。 こなた「さっきはどうして?」 答えてくれるとは思わなかった。突然道端で泣き出すなんてよっぽどの事がなければ出来ない。でもあえて聞いてみた。 みゆき「……口紅を買った時から、思っていました、いつまで私達はこうしていられるのかと、これからの事を思うと急に寂しくなってしまって……」 以外にすんなり答えてくれた。そんな悩みは悩んでもどういようもない。 こなた「私達は高校時代、自然に出会った、だから最後は自然に別れるのはしょうがないね、これからの事を考えると、就職、結婚、引越し、病気や事故での……」 みゆき「……すみません……そんな事ではありませんでした」 こなた「へ?」 みゆきさんは私が話しているのに割り込んで止めた。これまたみゆきさんらしくない。 みゆき「お別れはいずれ……そうなるのは分かっています、私は……私は、かがみさんを出しゃばりで口うるさい……つかささんを地味で目立たないと思っていたなんて……」 落ち着いたはずのみゆきさんの目がまた潤み始めた。 こなた「……ぷっ!! ふふふ、」 思わず吹き出して笑ってしまった。まだあの事を考えていたなんて。もうとっくに終わったと思ったのに。 みゆき「なぜ、何故笑うのですか?」 こなた「ふふふ、だって、私達っていったい何年付き合っているのさ、私がかがみやつかさ、みゆきさんに良いイメージしかないなんて無いから、それはかがみやつかさも     同じだよ、今まで私とかがみ達の会話や態度で分からなかった?」 みゆき「それは……」 こなた「好かれようとすれば良い所だけ見せれば良い、なんて思ってると悪いところが余計に目立っちゃうもの、でもそれで良いんだよ、かがみとつかさを見て     そう思うようになった、それにあの二人はそれを意識していないから、きっと四姉妹だからその辺の交際術が自然と看に付いたんじゃないのかなって、     私とみゆきさんは一人っ子だしね、みゆきさんもたまには思った事をそのままあの二人に言ってみれば?」 みゆき「そうですか、そうですね……泉さんは行き当たりばったりでお調子者ばかりだと思っていましたけど、しっかり考えているのですね」 こなた「そうそう、行き当たりばったりで……ちょ、いくらなんでもそれは酷い……」 みゆきさんは笑った。そして早速私に今までに無い事を言ってきた。これが本音なのだろうか。そんなのはどうでもいい。良いことばかりしか言わなかったみゆきさん。 みゆきさんは良いと思ったのはすぐに採用してしまう。それだからあれだけの博学になったのだろうか。この切り返しの早さに感心するばかりだ。 みゆき「ところで七月七日なのですが、私の主催で行いたいのですがよろしいですか?」 みゆきさんの家でやるのか。それも良いかもしれない。 こなた「かがみとつかさが承知すれば良いよ」 七月七日、今日は休日。 柄にも無く少し早めに来てみゆきさんの手伝いをした。さすがに料理の豪華さには驚かされた。 約束の時間通り主役の二人は来た。 かがみ・つかさ「こんにちは、お邪魔します」 みゆき「いらっしゃい、どうぞ中へ」 みゆきさんが二人を自分の部屋に案内した。そこには既に私が居る。かがみはえらく驚いた顔をした。 かがみ「こなたが約束の時間より早く来るなんて……雪でも降るかもしれないわね」 予想通りの台詞だ。この程度で反応していたらかがみの友達にはなれない。 こなた「お誕生日おめでとう、つかさ」 つかさ「ありがとう」 かがみ「……一人忘れていないか?」 みゆき「かがみさん、つかささん、お誕生日おめでとうございます、少ないですが召し上がって下さい」 料理をテーブルに並べた。 それから私達は、食事をしながら楽しいお喋りを続けた。 みゆき「かがみさん、つかささん私達から、心ばかりのプレゼントです、受け取って下さい」 かがみ「私達?」 みゆき「はい、私と泉さんで選びました、気に入っていただければ幸いです」 つかさ「なんかワクワクするよ」 こなた「二時間も考えて選んだんだよ」 ほとんどみゆきさんが選んだだけど。ここは自分も参加しているのをアピールしないと。 みゆきさんは机の引き出しを開けて二つの品を取り出した。 みゆき「それでは出しゃばりで口うるさい、かがみさんにはこちら、地味で目立たない、つかささんにはこちらを」 そうそう、二つの口紅はそれぞれ違った色……あれ、みゆきさんは何て言った…… その時、私は悪寒が背筋を過ぎったのを感じた。 かがみ「……みゆきが自らそんな事を言うはずはないわ、わざわざ早くから来てみゆきにそう言うようにした訳ね……」 鋭い目線が私に突き刺さる。だめだよみゆきさん、合同プレゼントなんだからそんな事言ったら私が疑われるじゃないか。と言える状態じゃない。 いつもは聞き流してくれるはずのつかさまでが私を睨んでいる。 つかさ「ゆきちゃんにそんな事言わせるなんて……許さないよ」 こなた「あ、あの、これは言わせたんじゃなくて……話の成り行きでこうなったのであって……」 みゆきさんは事の重大さに気付いていない。ポカンとして私達を見ていた。 かがみ「こなた、あんたちょっとこっちに来なさい、今日と言う今日はお仕置きが必要ね、最近少し図に乗りすぎなのよ……」 かがみのお説教が始まってしまった。つかさもそれを後押しする。私には弁解などをする隙さえ与えてくれなかった。私はかがみの足元に正座をさせられている。 確かに私が本当にみゆきさんにあんな事を言わせたのなら、誕生日にすることじゃないしみゆきさんに大きな傷を負わすことになる。 私だってそのくらい分かるよ。あれはみゆきさんが自分の意思で言ったんだよ。プレゼントを選んだ時の話をすればかがみだって分かるよ。 しかしそんな心の叫びがかがみに届くはずもない。 かがみ「今更泣いても遅いわよ、帰って頭を冷やしなさい」 いつの間にか涙が出ていた。これが私の悪戯なのなら笑ってやったさ。だけど……どうすればいいのか分からない。泣くしかなかった。 私は自分の家に帰っていた。帰されたと言った方がいいのかもしれない。もう日はすっかり沈んでしまった。もうかがみ達も帰ったかな。 かがみとつかさの誕生日を祝うはずがこんな結果になるなんて。 これがかがみとつかさ、みゆきさんの別れになってしまうのでは。みゆきさんが悪いのか。違う、私が悪い。 普段の行いの結果。これ以外にない。それは謝る。だけどこのままお別れなんて納得できないよ。もう一度会わせて欲しい。弁解は出来なくなくとも謝りたい。 そうじろう「おーい、こなた居るか?」 ノックと共にお父さんがノックと共に部屋のドアを開けた。 そうじろう「悪いがこの回覧板をお隣に渡してきて欲しいのだが」 こなた「いいよ」  家を出て回覧板を見てみるとお隣さんは閲覧のチェックがしてあった。まったくお父さんは良く見ないんだから。もう一つ先の家だな。 回覧板を渡した帰り道。 「行き当たりばったりでお調子者の泉さん、どこへいくのですか?」 後ろから声をかけられた。後ろを向くとかがみとつかさが居た。 かがみ「さっきから声をかけているのに……鈍いわね」 つかさ「私達が来たって言ったらたぶん出てきてくれないと思ったから、おじさんに頼んでもらったの」 私は立ち止まって二人を見たまま動かなかった。動けなかった。 かがみ「話は全てみゆきから聞いた、みゆきもタイミングが悪かったわね、そうゆう所が疎いと言うのか……今回はこなたに非は無かった」 つかさ「ごめんなさい」 いきなり謝られてもしっくりこない。 こなた「でも……私は今まで……」 かがみ「そうね、今までのこなただったら絶交していたかもしれない、だけどあんた、みゆきを庇ったでしょ?」 こなた「うんん、庇ってなんかいない」 かがみは一回溜め息ついた。 かがみ「それなら何故『私はしていない』って言わなかった、言い訳なら十八番でしょうに、それに絶対に涙なんか流さなかったでしょ?」 つかさ「こなちゃんがしていないって言ったら、ゆきちゃんの立場が無くなっちゃうよね、そうでしょ?」 そんなに積極的に庇ったわけじゃない。したともしなかったとも言えなかった。 かがみ「こなた、行くわよ!!」 じれったくなったのか、高校で放課後、帰る時のように声をかけられた。 こなた「行くって、どこに?」 かがみ「決まってるじゃない、みゆきの家よ、私達の誕生日まだ終わってないわよ」 こなた「でも……」 かがみ「でももへちまも無いわよ、私はまだこなたに祝いの言葉を言ってもらってないから」 つかさ「こなちゃんの好きなゲームも持ってきて良いから、行こうよ」 まるでわがままな妹を諭しているように私を誘ってきた。これが姉妹ってやつなのかな……なんか涙が出てきた。 かがみ「……泣くことなんかないじゃない……分かったわ、無理強いはしない、5分待ってあげる、それまでに向こうに止めてある車に来て、来なくてもいいわよ」 つかさ「私がここまで運転してきたんだよ、私は来て欲しいな」 私は二人の顔を見た。急に空が明るくなった。月明かりが射してきたようだ。二人の唇がいやに目立って見える。そうか、あの口紅を塗ったのか。 かがみは控えめな薄い色、つかさは艶やかな濃い色だった。あの時のみゆきさんみたいに二人とも大人びて見えた。 かがみ「それじゃ」 二人は車の止めてある方に歩いて行った。  ふと空を見た。まん丸の月が夜空を照らしていた。雲が流れている。このまま綺麗な夜空になりそう。 明日も休日、時間はまだたっぷりある。私はまだあの二人を祝っていない。みゆきさんにも一言言わないとね。 今日は七夕、夜空が晴れれば願い事が叶う日。さっき家で願ったあの願い、叶えられそう。 私は車の方へ歩いて行った。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3)

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