ID:pa94OWvs0氏:もしも

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 とある日の夜。わたしは部屋で積んでいるゲームの消化をしていた。 「…んー、結構かかるなー」  流石に少し疲れて大きく伸びをしたところで、コンコンッと部屋のドアがノックされる。 「ほーい」  わたしが返事をすると、ドアが開いて中学生の男の子…わたしの弟が入ってきた。 「姉ちゃん。借りてた漫画、返しにきたよ」 「ほいほい、適当なとこにでも置いといて」  わたしがそう言うと、弟はベッドに漫画を置いた。部屋に入ってからずっと、弟はわたしの方をまったく見ようとしない。 「ねえ、なんでまたそんな不自然にわたしの方を見ないのかな?」  わたしがそう聞くと、弟の顔が少し赤らんだ。 「だ、だって姉ちゃんやってるゲーム…」  言いにくそうにゴニョゴニョと呟く。今わたしがやってるのは、十八歳未満お断り…いわゆるエロゲーというやつだ。 「ほほー。いっちょ前に色気づいたのかい?」  わたしはからかうようにそう言いながら、こっそり弟の後ろに回りこむ。 「そ、そうじゃないよ…ひゃっ!?」  そして、不意を着いて抱きついた。 「な、なんだよ姉ちゃん!?」  慌てる弟を見上げて、わたしはニッコリと微笑む。 「そういう風に意識するって事は、こういうことに興味あるって事だよ」  そう言いながら、弟の身体をまさぐる。身長はとっくにわたしを追い抜かし、中学生になってからはすっかり身体つきも男の子っぽくなってきている。 「ちょ、ちょっと…ね、姉ちゃん…」  わたしの行動に慌てふためく弟。身体はともかく、精神的にはまだまだ子供なんだと思う。 「…わたしもね、こんなゲームやってるわけだし、当然興味あったりするんだけど…」  少し湿っぽい声でそう言うと、弟の口から息を呑む音が聞こえた。 「はい、そこまで」  熱く語るこなたの脳天に、かがみのチョップが振り下ろされ、ゴスッと鈍い音を立てた。 「こ、これからいいところなのに…ってか、痛いんですけど」  頭をさすりながら文句を言うこなたに、かがみがため息をついてみせる。 「いや、それ以上はやばいでしょうに…」 ― もしも ―  とある日の午後。いつもの四人がこなたの家に集まって、色々と談笑していた。  その内にこなたが最近見たアニメに弟キャラを気にいって、もしも自分に弟が居たら…と言うことを話し出したのだ。 「なんであんたはそっち方面に結びつけるのよ…」 「いやまあ…そういうお年頃ですし?」 「いや、大学生と言うよりさかりのついた中学生って感じなんだけど…」  かがみは呆れたようにそう言いながら、コップに入ったお茶を飲みながら、他の二人の方を見た。その二人…つかさとみゆきはこなたの話が中断した後、黙ってうつむいている。 「…ここまで耐性が無いってのも問題かも知れないけどね」  かがみはそう呟いて、こなたの方に視線を戻した。 「ほいじゃ、次はかがみで」  それを受けて、こなたがどこか嬉しそうにそう言った。 「わたし、ねえ…つかさが男の子だったらって感じでいいのかしら」 「チッチッチ…それは違うよかがみ」  かがみの言葉に、こなたが目の前で人差し指を振りながら、そう言った。 「弟モノってのはね、年下だから良いんだよ。双子の弟とじゃ、また違うんだよ」 「いや、良くわかんないけど…」  力説するこなたに冷や汗を垂らしながら、かがみは自分に弟が居たら、ということを考え始めた。  勉強が一段落着いたところで、わたしは飲み物を補充しようと空になったコップを持って台所に向かった。  階段を下りているところで、台所からいい匂いが漂ってくる。 「…またやってるわね」  わたしはそう呟きながら階段を下りきり、台所に入った。 「あ、かがみ姉ちゃん。休憩?」  案の定、来年高校生になる弟が、台所をパタパタと走り回っている。いい匂いはオーブンの方からだ。 「ちょっと飲み物をね…今度は何作ってるの?」 「チョコケーキ。美味しそうなの、テレビでやってたからさ」  使い終わった道具を流しに入れる弟を見ながら、わたしはため息をついた。 「あんた、もうちょっと男の子らしい趣味を持ったら?」  わたしの言葉に、弟が肩をすくめる。 「古いなあ姉ちゃんは。今は男だって料理くらい出来ないと」 「そうなんだけど、あんたお菓子しか作らないじゃない…」  わたしは、そう言いながらコップにお茶を注ぐ。ふと見ると、弟がわたしの前に立っていた。 「な、なによ…」 「なんだかんだ言っても、一番食べるのかがみ姉ちゃんだろ?」  弟の言葉に、わたしは顔をしかめて横を向いた。 「わ、わるい?」 「悪くは無いよ。食ってるときの姉ちゃん嬉しそうな顔してるし…そういう姉ちゃん見てるの、俺好きだしな」 「…バカ。何言ってるのよ」  悪態をつきながらも、わたしは顔が熱くなってるのを感じていた。 「って何言ってるんだわたしは!」 「自分で突っ込んだ!?」  いきなり拳を振り上げながら叫んだかがみに、こなたは後ろに倒れそうになったが、辛うじてこらえ、体勢を立て直した。 「いきなりびっくりさせないでよ…ってかかがみだって盛ってんじゃん」 「う、うるさいわね…なんか勢いでこうなったのよ」 「…っていうか、これと似たような会話、昨日お姉ちゃんとしたよね」  こなたとかがみの会話に、つかさがさくっとそう割り込んできた。 「なんだ、元ネタありなんだ…っていうか結局つかさがモデルか」  こなたがため息混じりにそう言うと、かがみはそっぽを向いた。 「い、いいでしょ別に…こんなの急になんて思いつかないわよ。アンタと違って普段から妄想してるわけじゃないんだから…ていうか、つかさ。ばらすな」 「ご、ごめんなさい…」 「いや、わたしも普段から妄想なんてしてないけど…」  こなたは頬をかきながらそう言って、つかさの方を見た。 「んじゃ、次はつかさだね」 「え、えっと…弟かあ…んーっと…」  つかさは腕を組んで唸りながらも、ぽつぽつと話し始めた。 「つかさ姉ちゃーん。ちょっと宿題でさあ」 「うん、ごめん。わたしちょっと忙しいから」  弟がノートと教科書を持って居間に入ってくるのを見たわたしは、見ていたテレビを消して立ち上がった。 「思い切り暇そうにテレビ見てたじゃん…」  弟がそう言いながらわたしの腕を掴む。 「うう、何でわたしのところに…かがみお姉ちゃんに手伝ってもらってよ…」 「かがみ姉ちゃん手伝ってくれないんだよ。『自分でやりなさい』って言ってさー」 「自分でやりなさい」 「だからさ、お願い手伝ってよ!」 「な、なんでわたしの言うことは無視なんだよー…」  結局、わたしは渋々と弟の宿題の手伝いをすることになった。  数十分後。 「…ここってどうだっけ?」 「なんでお姉ちゃんが俺に聞いてるんだよ…」  案の定というかなんというか…わたしは何の役にも立たないどころか、足を引っ張っていた。 「だって、中学の時の勉強なんか覚えてないもん…」 「…姉ちゃん陵桜出てるんだろ?」  弟の視線が冷たい。だから手伝うのイヤだったのに。 「うう…わたし、もう良いでしょ?」  逃げようとするわたしの服の袖を、弟が掴む。 「せっかくだし、最後まで手伝ってよ」 「…これ以上は拷問だよー」 「だったら見てるだけで良いから」  わたしを強引に座らせ、宿題の続きをはじめる弟。なんていうか…ほんと情けない。 「…こんなお姉ちゃんでごめんなさい…」  思わず出てしまったわたしの呟きに、弟が顔を上げた。そして、クスッと笑う。 「こんなお姉ちゃん、だから良いんだよ」  言葉の意味は良くわからなかったけど、褒められてはいないような気がした。  話し終わったつかさの肩に、こなたが無言で手を置いた。 「え、なに、こなちゃん?」  そのこなたの心情を代弁するかのように、かがみがため息をつく。 「…妄想の中くらい、もう少しましな自分にしたらいいのに」  そして、呆れたようにそう呟いた。 「だ、だって、わたしに弟がいたら絶対こうなりそうだもん」 「そうですね」  つかさの言葉に頷くみゆき。その行動に、場が一気に静まり返った。 「え、あ、あれ?みなさん、どうかしましたか…?」 「ゆ、ゆきちゃん…」 「まさかみゆきさんがつかさをディスるとは…」 「あ、えっと、その、ご、誤解しないで下さい…」  周りの雰囲気のおかしさに気がついたみゆきが、慌てて両手を目の前で振った。 「つかささんの学力が云々ではなくてですね…飾らない人柄といいましょうか、年下のご兄弟相手でも無駄に偉そうにはなさらないといいますか…」 「なるほど、つかさはそんな感じだね…つまり、どこぞの見栄っ張りな姉とは違う、と言うことかな」  みゆきの言葉に、余計な一言を付け加えて同意するこなた。 「…それは誰のことを言ってるのかな?こなたさん」 「べ、別にかがみの事だとは言ってな…いふぁいいふぁい」  そのこなたのほっぺをかがみが摘み上げた。 「ふぁへ、らふとふぁみゆひふぁんらふぇ」 「さて、ラストはみゆきさんだね」  ほっぺをつかまれたままなので、うまく発音出来て無いこなたの言葉を、かがみが律儀に訳して見せた。 「あ、はい、それでは…」  良く伸びているこなたのほっぺを心配そうに見ながら、みゆきは咳払いをひとつして話し始めた。  良く晴れた昼下がり。大きな窓の側。家の中でも特に日当たりが良いその場所は、暖かな春の陽気に包まれていました。 「…こんな所で寝てはダメですよ?」  その光の中で、ウトウトと舟をこいでいる弟に、わたしは優しく声をかけました。随分と暖かくはなったとはいえ、この時季は油断をするとすぐに風邪を引いてしまいます。 「う…うん…」  返事はしたものの、弟は今にも寝入りそうな様子で、そこを動こうとはしませんでした。 「ふふ…なにか掛け物を持ってきますね」  その様子が可笑しくてわたしはつい笑ってしまい、誤魔化すように毛布を取りに行きました。  わたしが戻ってくると、弟は床に突っ伏して、静かに寝息を立てていました。待ちきれずに寝てしまったようです。 「しょうがない子…ですね」  わたしは起こさないように弟の身体を仰向けにし、その身体に持ってきた薄手の毛布をかけました。  気持ち良さそうに眠る弟。その姿を見て、わたしの中にふとした悪戯心が湧いてきました。  弟の頭の側に正座をし、ゆっくりと丁寧に頭を持ち上げてわたしの太ももの上にのせました。 「…起きたら、なんて言うでしょうね」  子ども扱いするな…とはよく言われます。でも、年の離れた…並んで歩いていると、親子と間違えられるような…小さな弟は、わたしにとっては何時までも子供に思えてしまいます。  わたしは弟の髪を軽く撫でました。すると、弟はくすぐったそうに身をよじりました。その可愛らしい姿を見ていると、もうちょっとだけ大きな悪戯心が湧いてきました。  わたしは、周りを見渡し誰もいないことを確認すると、自分の顔を弟の…。 「みゆき、よだれ」 「…はっ!?」  かがみに指摘され、みゆきは慌てて自分の口の端を服の袖で拭った。そのあまりにみゆきらしくない行動に、こなたとつかさは少し身を引いていた。 「え、えっと、その、アレ、ほらアレです…」  何か言い訳めいたことを言おうとしているが、焦ってまったく言葉になっていないみゆきを、他の三人は冷や汗を垂らしながら見ていた。 「…ち、小さな男の子って、可愛いですよね?」  そして、ようやく出てきた言葉がそれだった。 「…春だね、かがみ」 「…そうね」  まるで何も気かなかったかのように、みゆきから目線をそらしてまったく関係ない話を始めるこなたとかがみ。 「え?え?い、泉さん。かがみさん…わたし、なにか間違ってましたか?どこかおかしかったですか?」  その態度が理解できずにうろたえるみゆき。  つかさが心底困ったような表情で、その肩に手を置いた。 ― おしまい ― **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - こなたの弟になりたい!! -- (名無しさん) (2012-01-08 18:05:19)
 とある日の夜。わたしは部屋で積んでいるゲームの消化をしていた。 「…んー、結構かかるなー」  流石に少し疲れて大きく伸びをしたところで、コンコンッと部屋のドアがノックされる。 「ほーい」  わたしが返事をすると、ドアが開いて中学生の男の子…わたしの弟が入ってきた。 「姉ちゃん。借りてた漫画、返しにきたよ」 「ほいほい、適当なとこにでも置いといて」  わたしがそう言うと、弟はベッドに漫画を置いた。部屋に入ってからずっと、弟はわたしの方をまったく見ようとしない。 「ねえ、なんでまたそんな不自然にわたしの方を見ないのかな?」  わたしがそう聞くと、弟の顔が少し赤らんだ。 「だ、だって姉ちゃんやってるゲーム…」  言いにくそうにゴニョゴニョと呟く。今わたしがやってるのは、十八歳未満お断り…いわゆるエロゲーというやつだ。 「ほほー。いっちょ前に色気づいたのかい?」  わたしはからかうようにそう言いながら、こっそり弟の後ろに回りこむ。 「そ、そうじゃないよ…ひゃっ!?」  そして、不意を着いて抱きついた。 「な、なんだよ姉ちゃん!?」  慌てる弟を見上げて、わたしはニッコリと微笑む。 「そういう風に意識するって事は、こういうことに興味あるって事だよ」  そう言いながら、弟の身体をまさぐる。身長はとっくにわたしを追い抜かし、中学生になってからはすっかり身体つきも男の子っぽくなってきている。 「ちょ、ちょっと…ね、姉ちゃん…」  わたしの行動に慌てふためく弟。身体はともかく、精神的にはまだまだ子供なんだと思う。 「…わたしもね、こんなゲームやってるわけだし、当然興味あったりするんだけど…」  少し湿っぽい声でそう言うと、弟の口から息を呑む音が聞こえた。 「はい、そこまで」  熱く語るこなたの脳天に、かがみのチョップが振り下ろされ、ゴスッと鈍い音を立てた。 「こ、これからいいところなのに…ってか、痛いんですけど」  頭をさすりながら文句を言うこなたに、かがみがため息をついてみせる。 「いや、それ以上はやばいでしょうに…」 ― もしも ―  とある日の午後。いつもの四人がこなたの家に集まって、色々と談笑していた。  その内にこなたが最近見たアニメに弟キャラを気にいって、もしも自分に弟が居たら…と言うことを話し出したのだ。 「なんであんたはそっち方面に結びつけるのよ…」 「いやまあ…そういうお年頃ですし?」 「いや、大学生と言うよりさかりのついた中学生って感じなんだけど…」  かがみは呆れたようにそう言いながら、コップに入ったお茶を飲みながら、他の二人の方を見た。その二人…つかさとみゆきはこなたの話が中断した後、黙ってうつむいている。 「…ここまで耐性が無いってのも問題かも知れないけどね」  かがみはそう呟いて、こなたの方に視線を戻した。 「ほいじゃ、次はかがみで」  それを受けて、こなたがどこか嬉しそうにそう言った。 「わたし、ねえ…つかさが男の子だったらって感じでいいのかしら」 「チッチッチ…それは違うよかがみ」  かがみの言葉に、こなたが目の前で人差し指を振りながら、そう言った。 「弟モノってのはね、年下だから良いんだよ。双子の弟とじゃ、また違うんだよ」 「いや、良くわかんないけど…」  力説するこなたに冷や汗を垂らしながら、かがみは自分に弟が居たら、ということを考え始めた。  勉強が一段落着いたところで、わたしは飲み物を補充しようと空になったコップを持って台所に向かった。  階段を下りているところで、台所からいい匂いが漂ってくる。 「…またやってるわね」  わたしはそう呟きながら階段を下りきり、台所に入った。 「あ、かがみ姉ちゃん。休憩?」  案の定、来年高校生になる弟が、台所をパタパタと走り回っている。いい匂いはオーブンの方からだ。 「ちょっと飲み物をね…今度は何作ってるの?」 「チョコケーキ。美味しそうなの、テレビでやってたからさ」  使い終わった道具を流しに入れる弟を見ながら、わたしはため息をついた。 「あんた、もうちょっと男の子らしい趣味を持ったら?」  わたしの言葉に、弟が肩をすくめる。 「古いなあ姉ちゃんは。今は男だって料理くらい出来ないと」 「そうなんだけど、あんたお菓子しか作らないじゃない…」  わたしは、そう言いながらコップにお茶を注ぐ。ふと見ると、弟がわたしの前に立っていた。 「な、なによ…」 「なんだかんだ言っても、一番食べるのかがみ姉ちゃんだろ?」  弟の言葉に、わたしは顔をしかめて横を向いた。 「わ、わるい?」 「悪くは無いよ。食ってるときの姉ちゃん嬉しそうな顔してるし…そういう姉ちゃん見てるの、俺好きだしな」 「…バカ。何言ってるのよ」  悪態をつきながらも、わたしは顔が熱くなってるのを感じていた。 「って何言ってるんだわたしは!」 「自分で突っ込んだ!?」  いきなり拳を振り上げながら叫んだかがみに、こなたは後ろに倒れそうになったが、辛うじてこらえ、体勢を立て直した。 「いきなりびっくりさせないでよ…ってかかがみだって盛ってんじゃん」 「う、うるさいわね…なんか勢いでこうなったのよ」 「…っていうか、これと似たような会話、昨日お姉ちゃんとしたよね」  こなたとかがみの会話に、つかさがさくっとそう割り込んできた。 「なんだ、元ネタありなんだ…っていうか結局つかさがモデルか」  こなたがため息混じりにそう言うと、かがみはそっぽを向いた。 「い、いいでしょ別に…こんなの急になんて思いつかないわよ。アンタと違って普段から妄想してるわけじゃないんだから…ていうか、つかさ。ばらすな」 「ご、ごめんなさい…」 「いや、わたしも普段から妄想なんてしてないけど…」  こなたは頬をかきながらそう言って、つかさの方を見た。 「んじゃ、次はつかさだね」 「え、えっと…弟かあ…んーっと…」  つかさは腕を組んで唸りながらも、ぽつぽつと話し始めた。 「つかさ姉ちゃーん。ちょっと宿題でさあ」 「うん、ごめん。わたしちょっと忙しいから」  弟がノートと教科書を持って居間に入ってくるのを見たわたしは、見ていたテレビを消して立ち上がった。 「思い切り暇そうにテレビ見てたじゃん…」  弟がそう言いながらわたしの腕を掴む。 「うう、何でわたしのところに…かがみお姉ちゃんに手伝ってもらってよ…」 「かがみ姉ちゃん手伝ってくれないんだよ。『自分でやりなさい』って言ってさー」 「自分でやりなさい」 「だからさ、お願い手伝ってよ!」 「な、なんでわたしの言うことは無視なんだよー…」  結局、わたしは渋々と弟の宿題の手伝いをすることになった。  数十分後。 「…ここってどうだっけ?」 「なんでお姉ちゃんが俺に聞いてるんだよ…」  案の定というかなんというか…わたしは何の役にも立たないどころか、足を引っ張っていた。 「だって、中学の時の勉強なんか覚えてないもん…」 「…姉ちゃん陵桜出てるんだろ?」  弟の視線が冷たい。だから手伝うのイヤだったのに。 「うう…わたし、もう良いでしょ?」  逃げようとするわたしの服の袖を、弟が掴む。 「せっかくだし、最後まで手伝ってよ」 「…これ以上は拷問だよー」 「だったら見てるだけで良いから」  わたしを強引に座らせ、宿題の続きをはじめる弟。なんていうか…ほんと情けない。 「…こんなお姉ちゃんでごめんなさい…」  思わず出てしまったわたしの呟きに、弟が顔を上げた。そして、クスッと笑う。 「こんなお姉ちゃん、だから良いんだよ」  言葉の意味は良くわからなかったけど、褒められてはいないような気がした。  話し終わったつかさの肩に、こなたが無言で手を置いた。 「え、なに、こなちゃん?」  そのこなたの心情を代弁するかのように、かがみがため息をつく。 「…妄想の中くらい、もう少しましな自分にしたらいいのに」  そして、呆れたようにそう呟いた。 「だ、だって、わたしに弟がいたら絶対こうなりそうだもん」 「そうですね」  つかさの言葉に頷くみゆき。その行動に、場が一気に静まり返った。 「え、あ、あれ?みなさん、どうかしましたか…?」 「ゆ、ゆきちゃん…」 「まさかみゆきさんがつかさをディスるとは…」 「あ、えっと、その、ご、誤解しないで下さい…」  周りの雰囲気のおかしさに気がついたみゆきが、慌てて両手を目の前で振った。 「つかささんの学力が云々ではなくてですね…飾らない人柄といいましょうか、年下のご兄弟相手でも無駄に偉そうにはなさらないといいますか…」 「なるほど、つかさはそんな感じだね…つまり、どこぞの見栄っ張りな姉とは違う、と言うことかな」  みゆきの言葉に、余計な一言を付け加えて同意するこなた。 「…それは誰のことを言ってるのかな?こなたさん」 「べ、別にかがみの事だとは言ってな…いふぁいいふぁい」  そのこなたのほっぺをかがみが摘み上げた。 「ふぁへ、らふとふぁみゆひふぁんらふぇ」 「さて、ラストはみゆきさんだね」  ほっぺをつかまれたままなので、うまく発音出来て無いこなたの言葉を、かがみが律儀に訳して見せた。 「あ、はい、それでは…」  良く伸びているこなたのほっぺを心配そうに見ながら、みゆきは咳払いをひとつして話し始めた。  良く晴れた昼下がり。大きな窓の側。家の中でも特に日当たりが良いその場所は、暖かな春の陽気に包まれていました。 「…こんな所で寝てはダメですよ?」  その光の中で、ウトウトと舟をこいでいる弟に、わたしは優しく声をかけました。随分と暖かくはなったとはいえ、この時季は油断をするとすぐに風邪を引いてしまいます。 「う…うん…」  返事はしたものの、弟は今にも寝入りそうな様子で、そこを動こうとはしませんでした。 「ふふ…なにか掛け物を持ってきますね」  その様子が可笑しくてわたしはつい笑ってしまい、誤魔化すように毛布を取りに行きました。  わたしが戻ってくると、弟は床に突っ伏して、静かに寝息を立てていました。待ちきれずに寝てしまったようです。 「しょうがない子…ですね」  わたしは起こさないように弟の身体を仰向けにし、その身体に持ってきた薄手の毛布をかけました。  気持ち良さそうに眠る弟。その姿を見て、わたしの中にふとした悪戯心が湧いてきました。  弟の頭の側に正座をし、ゆっくりと丁寧に頭を持ち上げてわたしの太ももの上にのせました。 「…起きたら、なんて言うでしょうね」  子ども扱いするな…とはよく言われます。でも、年の離れた…並んで歩いていると、親子と間違えられるような…小さな弟は、わたしにとっては何時までも子供に思えてしまいます。  わたしは弟の髪を軽く撫でました。すると、弟はくすぐったそうに身をよじりました。その可愛らしい姿を見ていると、もうちょっとだけ大きな悪戯心が湧いてきました。  わたしは、周りを見渡し誰もいないことを確認すると、自分の顔を弟の…。 「みゆき、よだれ」 「…はっ!?」  かがみに指摘され、みゆきは慌てて自分の口の端を服の袖で拭った。そのあまりにみゆきらしくない行動に、こなたとつかさは少し身を引いていた。 「え、えっと、その、アレ、ほらアレです…」  何か言い訳めいたことを言おうとしているが、焦ってまったく言葉になっていないみゆきを、他の三人は冷や汗を垂らしながら見ていた。 「…ち、小さな男の子って、可愛いですよね?」  そして、ようやく出てきた言葉がそれだった。 「…春だね、かがみ」 「…そうね」  まるで何も気かなかったかのように、みゆきから目線をそらしてまったく関係ない話を始めるこなたとかがみ。 「え?え?い、泉さん。かがみさん…わたし、なにか間違ってましたか?どこかおかしかったですか?」  その態度が理解できずにうろたえるみゆき。  つかさが心底困ったような表情で、その肩に手を置いた。 ― おしまい ― **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - まさかのみゆきさんショタコン疑惑 -- 名無しさん (2012-12-14 15:27:55) - こなたの弟になりたい!! -- (名無しさん) (2012-01-08 18:05:19)

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