ID:jFbGkxs0氏:とあるクリスマスイブ

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とあるクリスマスイブ  窓から見上げる空は晴れ。ホワイトクリスマスとはいかないようだ。  今日一日は、普通に家事をしてすごした。  夫は、今日は仕事で帰ってこない。クリスマスイブに仕事がないようでは将来が不安だという職業であるから、これは喜ぶべきことなのだろう。  子供でもいれば、親子でクリスマスパーティでもやるところなんだけど。 「そろそろ赤ちゃん欲しいかな?」  そんなことをつぶやいてみる。  夫が明日帰ってきたら、調理専門学校で鍛え上げた腕前で、二人だけの遅めのクリスマスパーティをしよう。  そして、夫に相談してみよう。来年は、三人でクリスマスパーティがしたいって。  そこから見渡せる夜景は、クリスマスイブにふさわしく綺麗であった。  穴場のデートスポット。周囲には人もほとんどいない。夫に寄り添って、一緒に夜景を眺める。  母が経営する料理教室の講師業務を早々に切り上げて、今日は夫とデートだった。  夫は幼馴染の親友の兄で、交際は小学校のときから続く長いものだった。だから、結婚したとて特に何が変わるでもなく、恋人気分よろしくデートに出かけることが多かった。  子供でもできれば、さすがに違ってくるのだろうけれども。  それは天の授かり物であるから、自然のなりゆきに任せるつもりではある。  夫と顔を見合わせる。言葉にはしなくても、以心伝心。その場をあとにする。  これから、ちょっと豪華なレストランで食事をして、そして、ホテルで一晩を過ごす予定。  とある高級レストラン。 「ああ、なんつーか。私らにはこんなとこは似合わないよなぁ」  そんな台詞とともに、フォークで刺したステーキを口に入れる。 「おお、うめーなぁ」 「なんつーか、もう。雰囲気台無しっスね」  高校時代の陸上部の後輩にして、今は交際相手である彼氏が呆れたようにそう言った。 「どう考えても私らには場違いだろ。いつもどおりジョギングデートでよかったんじゃね? 今日はなんかあったか?」 「どうせ雰囲気とかは期待してませんでしたから、単刀直入に行きますよ。これ、受け取ってください」  彼氏が小箱を突き出した。 「なんだべ?」  小箱を開けると、そこには指輪が入っていた。 「定番どおり、給料三か月分っス」 「ええっと……」  いまいち頭が悪いので、その意味を飲み込むまでには時間がかかった。  その飲み込んだ意味を念押しするように、彼氏はこう言った。 「結婚してください」 「私でいいのかよ?」 「そうでなければ、こんなことはしませんよ」  彼氏にまっすぐに見つめられて、さすがに顔が赤くなってくる。 「ああ……じゃあ、こっちこそ、よろしくってことで……」  なんというか……雰囲気も何もあったものではないが、二人にはそれがお似合いであった。 「そんなリア充たちのクリスマスイブを尻目に、ゲーム対戦で夜を明かす女二人であった」  ナレーション風の台詞に、すかさずツッコミが入る。 「誰に言ってんだ、おまえは」 「いやぁ、なんとなく。今度書くラノベのネタにでもならないかなぁってね」  テレビ画面の中では、二人の分身が激しい技の応酬を繰り広げていた。 「イブをゲーム対戦で明かす女二人が主人公のラノベなんぞ、読みたかないわ!」 「意外と世の男性諸君にはウケるかもよ?」 「おまえはもう帰れ」 「ひどいなぁ。イブの寂しいウサちゃんのために、こうして来てあげたというのに」 「おまえは、単にウチでだらけたいだけだろが」  幼いころからオタクなこの来訪者は、グッズを詰め込んだ紙袋を両手一杯に持って、この一人暮らしの家に押しかけてきた。  本日限定クリスマスグッズとやらをごっそり買いこんできたという話だった。 「よっしゃー、五連勝!」 「うぬぬ、格ゲーじゃかなわん。次はパズルゲームよ!」 「はっはっはっ、何でもかかってきたまえ」  こうして、オタ女と半オタ女の夜はふけていく。 終わり **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3)

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