ID:MfbxAGIo氏:二人旅

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「やふー、みゆきさ~ん。おはよー」 「泉さん、おはようございます」  土曜日の朝、私、泉こなたはとある駅前へ来ていた。  そこには、みゆきさんが桃色の髪を揺らめかせながら、優雅にたたずんでいる。  本当にどこでも絵になる人だ。 「あれ? かがみとつかさ、まだ来てないの?」 「ええ、でも時間にはまだ少し……」  と、そこで私の携帯がなった。 「お、かがみだ」  ディスプレイで名前を確認し、電話に出た。 「ふっふ~ん、かがみんや、私の方が先についたぞよ」 『ってことは、そこにみゆきもいるのよね?』 「うん? いるけど」 『そう……ごめん!』  え、と私は声を詰まらせる。 『急に家の用事が入って、行けなくなっちゃったのよ』 「なんですと!?」  いつの間にか、耳を近づけて一緒に聞いていたみゆきさんと顔を見合わせる。 『実は今日、神社関連で集まりがあってね。本当なら、いのり姉さんとまつり姉さんが行くはずだったんだけど、二人そろって風邪引いちゃって……』 「それで、かがみとつかさが行くことになったと」 『そうなのよ』 「それは、時間がかかるのですか? 待っていても構いませんが」 『ああみゆき。うん、用意も含めてたぶん夜までかかるわね』 「そうですか……」 「ぬぅ」 『でまぁ、予約のキャンセル料もったいないし、先に二人で行って来たらどうかと思うんだけど?』 「二人で?」 「ですか?」  再び、みゆきさんと顔を見合わせる。 『そこはあんたたちに任せるけど、せっかくだしね。明日私たちがあとから行ってもいいかと思って』 「うーん、そうだね」 『悪いわね。まぁ、そんなわけだからこれで』 「あ、一つだけ」 『なに?』 「つかさどうしてる?」 『あー……えっと、まぁ大体予想通りだと思うけど、半泣きで落ち込んでるわ。さっき姉さんたちが土下座して謝ってたわよ』 「病人すら地に伏すか……さすがつかさ」 『ま、泣くつかさにかなうやつは居ないわね。それじゃあ、またあとで連絡して』 「あーい、がんばってねー」  電話を切り、パタ、と携帯を閉じた。 「残念ですね。かがみさん達も、旅行を楽しみにしてましたのに」 「んだねぇ」  そう、今日ここに来たのは、四人で旅行に行くためだった。  三連休だし、どうせならってことで泊りがけの旅行に行くことにした。  旅館も予約して、みんな楽しみにしてたんだけど……。 「まぁ、仕方ないね。さて、どうしよっか?」 「そうですね……かがみさんもああ言ってましたし、せっかくですから私は行きたいですね」 「よーし、じゃあ行きますか!」 「はい」  そうして、私たちは電車に乗り目的地を目指す。  途中で電車を乗りかえ、二、三時間でつくだろう。  ボックス席で向かい合わせに座り、談笑しながら……のはずなんだけど。  空気が……重い。何が悪いってわけではないけど、なんか気まずい。  私とみゆきさんってこんなに話す事なかったかな?  適当に話振っても上の空というか……。まぁ私のネタ選びに若干の問題があるような気がしないでもないんだけどね。  それに、どうもさっきから落ち着かない様子だ。  トイレかとも思ったけど、たぶん違う。そういうのはつかさの担当だ。  かがみじゃあるまいし、通路向こうの人が食べてる駅弁が気になるってこともないだろう。  なんて思っていると、少し腰を曲げたおばあさんが横切った。  そういえば、あのおばあさんさっきも通ったん気がする。それも何度か。  ああ、と納得しみゆきさんに言う。 「みゆきさん」 「は、はい?」 「いいんじゃないかな」 「え?」  言いながら、みゆきさんの隣に移動する。  不思議そうな顔をしていたが、すぐ理解したようで。 「あ……はい!」  みゆきさんは、おばあさんに声をかける。 「あの、席が空いてないようでしたら、ご一緒にどうですか?」  こうなるとみゆきさんは強い。申し訳なさそうに断るおばあさんをあっさりと説得? した。 「すまないねぇ、親子水入らずだったろうに」 「やっぱり……私ってそんなに年上に見えるんでしょうか……」 「いや! みゆきさん対比が私だからほら、うん」  首をかしげるおばあさんを他所に、みゆきさんをなぐさめる。  乗り換えの駅まで数十分、おばあさんを交え私たちは色々な話をした。  定番だけど、おばあさんからみかんを貰ったり。  ちなみに、みゆきさんとの関係についての誤解はちゃんと解いておいた。 「それでは、私たちはここで」 「本当にありがとうね」 「元気でねー」 「よい旅を」 「はい、ありがとうございます」  おばあさんと別れ、次の電車に乗る。  なんというか、最初の重い感じもなくなったようだった。 「それにしても、さすがというかみゆきさんは優しいねぇ」 「いえ、そんな。泉さんこそよくわかりましたね」 「まぁ、なんとなくね。みゆきさんだし」 「それは、なんというかありがとうございます?」 「うん、一応ほめてるつもりだよ」  笑いながら、ふと思っていたことを告げる。 「でもよかった。結局二人で来ちゃったけど失敗だったかなぁとか思っちゃった」 「なぜですか?」 「いや、なんか空気が重かった気がして」 「あ、すみません。その、緊張していたので……」 「なる、ほど?」  可愛い人だなぁ、ホントに。  いや、気持ちは分からなくもないんだけどね。  そんなことを言いながら、二人とも笑顔になっていた。  旅館に着いてからは、荷物を置いて近辺の観光に行った。  お土産とか、おいしい団子のお店とか。  かがみには連絡しておいたから、明日はみんな出回れるだろう。  そしたら今日回ったところも案内してあげよう。きっと喜ぶはず、食い気的な意味で。  旅館の料理もすごくおいしかった。懐石料理って言うんだっけ? あと、もずくが出たんで処理はみゆきさんにお願いした。  しかしまぁ、なんとも時間が過ぎるのは早い。なんのかんのやってる間にもう0時前になっていた。 「結局、今日はかがみとつかさ来れなかったねー」 「そうですね。明日は大丈夫でしょうからゆっくり待ちましょう」 「んだねー。じゃぁ今日はもう寝よっか」 「ええ」  みゆきさんは立ち上がり、明かりのスイッチに向かう。 「じゃあ、消しますね」 「はーい」  電気が消え、部屋が暗くなる。  するとどこからか、ふぎゅ、という声が聞こえた。 「……大丈夫?」 「は、はい。大丈夫です」  こけたらしい。 「じゃあ、おやすみ~」 「おやすみなさい」  眠ってからどれくらい経っただろう? かすかな物音を感じ、そっと目を開ける。  すると、月明かりに照らされた何か、そうまるで人影のような――。 「ぎゃあああああああああ!」 「ひゃあああああああああ!」 「どっ、どど、どうしました!?」  私の悲鳴に、誰かの悲鳴が重なる。  「ちょっ、大声出すんじゃないわよ!」 「その声は、かがみさん?」 「……え? か、かがみ?」  みゆきさんが部屋の明かりをつける。  と、そこにいたのは紛れもなくかがみで、さっき悲鳴を上げたのは、どうやら私とみゆきさんの間で震えているつかさだった。 「何、してんの?」 「何してるも何も、なんとか用事が終わったから終電ギリギリで来たのよ」 「あ、そうなんだ……」 「つかささん、大丈夫ですよ」 「ふぇ? ゆきちゃ~ん」  半泣きになりながら、つかさはみゆきさんに抱きつく。 「何この可愛い生物」 「あんたのせいでしょ」 「いやいやいや、物音して目を開けたらツインテールのお化けが仁王立ちしてるんだよ? そりゃ悲鳴ぐらい上げるよ……」 「なんですって?」 「ひいいいい」  よよよ、とみゆきさんに抱きつく。 「あらあら」 「はぁ、まったくもう」  ふふふっ、とかがみが笑い出す、釣られて私もみゆきさんもつかさも笑う。  うん、楽しい。二人も楽しいけど、やっぱりみんながいるともっと楽しい。  明日も、楽しみだ。 -END-
「やふー、みゆきさ~ん。おはよー」 「泉さん、おはようございます」  土曜日の朝、私、泉こなたはとある駅前へ来ていた。  そこには、みゆきさんが桃色の髪を揺らめかせながら、優雅にたたずんでいる。  本当にどこでも絵になる人だ。 「あれ? かがみとつかさ、まだ来てないの?」 「ええ、でも時間にはまだ少し……」  と、そこで私の携帯がなった。 「お、かがみだ」  ディスプレイで名前を確認し、電話に出た。 「ふっふ~ん、かがみんや、私の方が先についたぞよ」 『ってことは、そこにみゆきもいるのよね?』 「うん? いるけど」 『そう……ごめん!』  え、と私は声を詰まらせる。 『急に家の用事が入って、行けなくなっちゃったのよ』 「なんですと!?」  いつの間にか、耳を近づけて一緒に聞いていたみゆきさんと顔を見合わせる。 『実は今日、神社関連で集まりがあってね。本当なら、いのり姉さんとまつり姉さんが行くはずだったんだけど、二人そろって風邪引いちゃって……』 「それで、かがみとつかさが行くことになったと」 『そうなのよ』 「それは、時間がかかるのですか? 待っていても構いませんが」 『ああみゆき。うん、用意も含めてたぶん夜までかかるわね』 「そうですか……」 「ぬぅ」 『でまぁ、予約のキャンセル料もったいないし、先に二人で行って来たらどうかと思うんだけど?』 「二人で?」 「ですか?」  再び、みゆきさんと顔を見合わせる。 『そこはあんたたちに任せるけど、せっかくだしね。明日私たちがあとから行ってもいいかと思って』 「うーん、そうだね」 『悪いわね。まぁ、そんなわけだからこれで』 「あ、一つだけ」 『なに?』 「つかさどうしてる?」 『あー……えっと、まぁ大体予想通りだと思うけど、半泣きで落ち込んでるわ。さっき姉さんたちが土下座して謝ってたわよ』 「病人すら地に伏すか……さすがつかさ」 『ま、泣くつかさにかなうやつは居ないわね。それじゃあ、またあとで連絡して』 「あーい、がんばってねー」  電話を切り、パタ、と携帯を閉じた。 「残念ですね。かがみさん達も、旅行を楽しみにしてましたのに」 「んだねぇ」  そう、今日ここに来たのは、四人で旅行に行くためだった。  三連休だし、どうせならってことで泊りがけの旅行に行くことにした。  旅館も予約して、みんな楽しみにしてたんだけど……。 「まぁ、仕方ないね。さて、どうしよっか?」 「そうですね……かがみさんもああ言ってましたし、せっかくですから私は行きたいですね」 「よーし、じゃあ行きますか!」 「はい」  そうして、私たちは電車に乗り目的地を目指す。  途中で電車を乗りかえ、二、三時間でつくだろう。  ボックス席で向かい合わせに座り、談笑しながら……のはずなんだけど。  空気が……重い。何が悪いってわけではないけど、なんか気まずい。  私とみゆきさんってこんなに話す事なかったかな?  適当に話振っても上の空というか……。まぁ私のネタ選びに若干の問題があるような気がしないでもないんだけどね。  それに、どうもさっきから落ち着かない様子だ。  トイレかとも思ったけど、たぶん違う。そういうのはつかさの担当だ。  かがみじゃあるまいし、通路向こうの人が食べてる駅弁が気になるってこともないだろう。  なんて思っていると、少し腰を曲げたおばあさんが横切った。  そういえば、あのおばあさんさっきも通ったん気がする。それも何度か。  ああ、と納得しみゆきさんに言う。 「みゆきさん」 「は、はい?」 「いいんじゃないかな」 「え?」  言いながら、みゆきさんの隣に移動する。  不思議そうな顔をしていたが、すぐ理解したようで。 「あ……はい!」  みゆきさんは、おばあさんに声をかける。 「あの、席が空いてないようでしたら、ご一緒にどうですか?」  こうなるとみゆきさんは強い。申し訳なさそうに断るおばあさんをあっさりと説得? した。 「すまないねぇ、親子水入らずだったろうに」 「やっぱり……私ってそんなに年上に見えるんでしょうか……」 「いや! みゆきさん対比が私だからほら、うん」  首をかしげるおばあさんを他所に、みゆきさんをなぐさめる。  乗り換えの駅まで数十分、おばあさんを交え私たちは色々な話をした。  定番だけど、おばあさんからみかんを貰ったり。  ちなみに、みゆきさんとの関係についての誤解はちゃんと解いておいた。 「それでは、私たちはここで」 「本当にありがとうね」 「元気でねー」 「よい旅を」 「はい、ありがとうございます」  おばあさんと別れ、次の電車に乗る。  なんというか、最初の重い感じもなくなったようだった。 「それにしても、さすがというかみゆきさんは優しいねぇ」 「いえ、そんな。泉さんこそよくわかりましたね」 「まぁ、なんとなくね。みゆきさんだし」 「それは、なんというかありがとうございます?」 「うん、一応ほめてるつもりだよ」  笑いながら、ふと思っていたことを告げる。 「でもよかった。結局二人で来ちゃったけど失敗だったかなぁとか思っちゃった」 「なぜですか?」 「いや、なんか空気が重かった気がして」 「あ、すみません。その、緊張していたので……」 「なる、ほど?」  可愛い人だなぁ、ホントに。  いや、気持ちは分からなくもないんだけどね。  そんなことを言いながら、二人とも笑顔になっていた。  旅館に着いてからは、荷物を置いて近辺の観光に行った。  お土産とか、おいしい団子のお店とか。  かがみには連絡しておいたから、明日はみんな出回れるだろう。  そしたら今日回ったところも案内してあげよう。きっと喜ぶはず、食い気的な意味で。  旅館の料理もすごくおいしかった。懐石料理って言うんだっけ? あと、もずくが出たんで処理はみゆきさんにお願いした。  しかしまぁ、なんとも時間が過ぎるのは早い。なんのかんのやってる間にもう0時前になっていた。 「結局、今日はかがみとつかさ来れなかったねー」 「そうですね。明日は大丈夫でしょうからゆっくり待ちましょう」 「んだねー。じゃぁ今日はもう寝よっか」 「ええ」  みゆきさんは立ち上がり、明かりのスイッチに向かう。 「じゃあ、消しますね」 「はーい」  電気が消え、部屋が暗くなる。  するとどこからか、ふぎゅ、という声が聞こえた。 「……大丈夫?」 「は、はい。大丈夫です」  こけたらしい。 「じゃあ、おやすみ~」 「おやすみなさい」  眠ってからどれくらい経っただろう? かすかな物音を感じ、そっと目を開ける。  すると、月明かりに照らされた何か、そうまるで人影のような――。 「ぎゃあああああああああ!」 「ひゃあああああああああ!」 「どっ、どど、どうしました!?」  私の悲鳴に、誰かの悲鳴が重なる。  「ちょっ、大声出すんじゃないわよ!」 「その声は、かがみさん?」 「……え? か、かがみ?」  みゆきさんが部屋の明かりをつける。  と、そこにいたのは紛れもなくかがみで、さっき悲鳴を上げたのは、どうやら私とみゆきさんの間で震えているつかさだった。 「何、してんの?」 「何してるも何も、なんとか用事が終わったから終電ギリギリで来たのよ」 「あ、そうなんだ……」 「つかささん、大丈夫ですよ」 「ふぇ? ゆきちゃ~ん」  半泣きになりながら、つかさはみゆきさんに抱きつく。 「何この可愛い生物」 「あんたのせいでしょ」 「いやいやいや、物音して目を開けたらツインテールのお化けが仁王立ちしてるんだよ? そりゃ悲鳴ぐらい上げるよ……」 「なんですって?」 「ひいいいい」  よよよ、とみゆきさんに抱きつく。 「あらあら」 「はぁ、まったくもう」  ふふふっ、とかがみが笑い出す、釣られて私もみゆきさんもつかさも笑う。  うん、楽しい。二人も楽しいけど、やっぱりみんながいるともっと楽しい。  明日も、楽しみだ。 -END- **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3)

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