ID:fVlTQh60氏:夢と言う奴は

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 夢。考えた事もなかったなぁ。  一人、自室で進路希望調査票と睨めっこしていた私は、そんな事を呟いていた。  はぁ、どうにも困ったね。小学校か何かの卒業文集で獣医とか書いてた記憶はあるけれど、  それはアニメに影響されただけであって、私の考えた進路じゃないし。  かがみは法学、つかさは料理関係、みゆきさんは医学部……。  じゃあ君は、と聞かれると何も答えられらないのが辛いよ。    私の夢って、何だろう。    自分の夢を考えていて寝るのが遅くなった、なんて言っても誰も信じないんだろうね。  事実なんだけど……。ま、そんな事は言いたくないからとりあえず心にしまっておこう。  とにかく、一時限目の授業を受けている今の私は、睡魔と死闘を繰り広げているところ。  パンチパンチ、キックキック。ノックアウトー。うん、ダメだこりゃ。今の私では睡魔には以下略って事で、寝る事にする。  おやすみ……。 『起きて下さい。もうお昼休みも終わりますよ?』    誰かが、私の体を揺すっている。……誰の声だろう? 私は、重たい頭をゆっくりと起こした。 「あ、起きましたか?」  霞む視界を直すため、目を擦る。目のピントは合ってきた。が。 (誰なのかがさっぱり分からない……)  私の目の前に居る女の先生は白衣を着ていて、メガネをかけていて、黒髪で、長髪で――  うん、ますます誰なのかが分からない。 「ほら、次は先生の授業ですよ? 生徒の皆を待たせる訳にはいきませんから、ほら早く」  見知らぬ人に手をとられて、ぐいぐいと引き戸の所まで連れて行かれた。  というか、ここはどこなんだろう?   デスクが並んでいて、それぞれ、デスクの上には書類とかマグカップとかが置かれている。  見たところ、ウチの学校の職員室なんだけど……。そんな事を考えている内に、私は数学の教科書とかを持って、職員室前の廊下に立たされていた。  やれやれ、と見渡したその廊下も、見てみればやっぱりウチの学園の廊下。見慣れた景色なのに、不思議だ。  そして不思議と言えば、床を見下ろしてみるとすごく高いところに居る錯覚を覚え、  右腕を伸ばしてみると自分の体格では届かないはずの壁掛け時計に手が届いた。何これ? チート?  自分の姿を鏡を見てみると、自分ではない人間がそこに映っていた。  驚いた私は、鏡に近寄った。見れば見るほど、自分じゃない。  幼女体型だった私の身長もパッと見ただけでも二メートルくらいあって、バストもびっくりするくらい豊満になっていた。  これは……。 「夢だね。きっと。あー、馬鹿馬鹿しい。私ってばこんな事考えてたの? 貧乳の希少価値を理解しきれてないのかなぁ」  とりあえず、夢と断言しておく事にする。あー、でもどうして夢の中に居るフワフワ感が無いのかな?  なんというか、こう、今のこの状況が現実味を帯びているというか。  とりあえず、折角だからこの夢が覚めるまで楽しんでみようかな。  どこへ行こう。さっきの人が言ってたのは、『先生の授業ですよ』というもの。  つまり、私はどこかへ行って授業をしなきゃいけないみたいなんだけど―― 「お?」  ふと、脳回路を展開させると、自分の行くべき場所が分かった。  二年の教室……かな? 私の二年の頃の教室みたい。懐かしい。  で、今私の手には、先程の見知らぬ人によって数学の教科書が持たされている……。数学なんか教えなきゃなの?  まぁ、流石夢というべきだね。自分の行くべき場所が分かるなんて、都合が良いよ。 「じゃ、授業に行ってみよっと」  私は二年の教室がある方へと歩を進めた。  そして教室の扉の前。うーん、感慨深い気がしないでもない。  教室の中からはワイワイガヤガヤ、と生徒の賑やかな声が聞こえてくる。  時間を見れば、五時限目が開始して五分程度過ぎている。 「入ってみるか……。ま、夢だし? なるようになるよ」  念の為扉をノックした。さっきまでの生徒の声が一気に静まった。うーん、何これ楽しい。  ちょっと上機嫌気味に教室に入った。 「やっふー。皆、来たよー」  で、私の目の前には生徒達が見える訳だけど皆凍てつく視線でこちらを見てる……。  はっ。これがヒャ○ルコなのか? じゃなくて。 「あはは。五時限目だし、お昼食べた後で皆眠いかな?」  生徒の視線は変わりなく、冷たい物だった。  あ、でも―― 「じゃ、今日はテキスト九十九ページから」  やっぱり都合の良い夢だ。開くべきテキストのページも分かるし、教科書に書いてる数学の公式とかは霞がかかってて見えない。  因みに、黒板に書いてる文字も毛虫がのたくったような物。にも関わらず、授業は普通に進んでゆく。 「えーと、ここの公式は解体新書が伊能忠敬によって生類憐みの令でハエとアリが第二次世界大戦を始めて――」  いやいやいや。流石に私でもわかる位の間違いっぷりなんだけど。  ……。ま、夢だしいっか。  そして授業が終わった。どうやらこの日は五時限で放課らしく、ショートホームを適当に終えてから生徒達は帰って行った。  で、私は職員室に帰ってきて、デスクに座って、ちょっと思考回路を作動させていた。 (何か妙だなぁ……)  何が、と言えば。大分時間が経った気がするのに、未だに夢から覚めない事だった。  普段ならもうゆーちゃんかお父さんが起こしに来るくらい夢の中での時間を過ごしていると思ったんだけどな。  そんな事を考えると、くるくるくるーっと、ペンを回して遊んでいると、引き戸が引かれる音がした。  入り口の方に目をやると、 「お……父さん?」  紛れも無い、お父さん――泉そうじろうが立っていた。な、なんだってー! 「は? 泉先生、寝惚けていらっしゃいますね? 私は校長ですよ」 「あ、あーっ、あははは……」  とりあえず苦笑いで流した。うん、これくらいのミスならあるよね、って何故そこだけ都合が悪いんだ夢よ。  とにかく、この夢じゃお父さんが校長なのか。んー、何か釈然としないけどまぁいいや。 「そ、それで校長。何故ここに……?」 「な、何故って。職員が職員室に居ては可笑しいですか?」 「え、あ、いや」  ……ダメだ。夢の中だからって何でも都合良く行くと思うなよ! って誰かに言われているようだよ……。  「ええ、まぁ。誰にでもそのようなミスはありますよ……」 「え?」  お父さ――コホン。校長は、少し寂しげな表情をしていた。 「私もね、昔はミスも多くて。テストとかで、解答欄を間違えて違う問題の回答をしてたり」 「は、はぁ」 「花瓶を割っちゃったり」 「……」 「ま、色々としたものでした。そんなだから、成績も悪くって」  へーそーなのかーとしか返答しようが無いのはどうしたらいいんだろう……。 「泉先生は、学生時代に夢という物を考えた事がありますか?」 「い、いや……考えられなくて困ってたといいますか」  思わず夢の人物にまともに返答してしまった。唐突だね、校長先生。 「そうですか。私もですよ……。夢って、漠然としていて、そして難しいですよね」 「そ、そうですね」 「ですが、私は思うんです」  校長は、一拍間を置いてから言った。 「人間、夢を追いかけている時ほど……。美しい時は無い、ってね」 「どう?」  陵桜学園、同窓会。私が教師になったと言ったらかがみんが激しく驚いたから、きっかけ的な話をしたんだけど……。 「意味分かんないわよ……」  うん、正直私も分からない。  結論:「夢って意味不明」

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