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 3.  きょうわおかあさんといっしょにひとがいっぱいいるところにいきました。  おおきなおにいさんとぼーるあそびおしました。  でんきがまぶしかったです。  おうちでおかあさんによくできましたっていわれました。  それからおかあさんといっしょにあいすくりーむおたべました。  すごくおいしかったです。  4.  きょうは、おゆうぎのひでした。  おにいさんのまねをして、おゆうぎすると、おとなのひとがほめてくれました。  いっしょに、おゆうぎをしていたみんなも、がんばっていました。  おうちにかえるまえに、おかあさんと、おそとでごはんをたべました。  ほんとうは、おかあさんと、おとうさんと、わたしの、さんにんがよかったです。  5.  テレビのおしごとをするところで、おとなのひとが、おたんじょうびおめでとうとゆってくれました。  きのうは、わたしの、5さいのおたんじょうびだったからです。  さつえいがおわってから、おにいさんが、おたんじょうびプレゼントをくれました。  おうちにかえって、あけてみたら、にゃもーのおにんぎょうでした。  にゃもーがだいすきなので、とってもうれしかったです。  6.  きょうは、テレビのおしごとのまえに、おとなの人に、きょうはそつぎょうしきだっていわれました。  らいしゅうからは、あたらしいテレビにでます。  さつえいがおわったあと、おにいさんに、おはなをいっぱいもらいました。  おにいさんは、ないていました。  かえりに、ゆきがつもっていました。  まっしろで、つめたかったです。  7.  きょう、学校からかえったら、パパとママがけんかをしていました。  二人とも、すごくこわかったです。  わたしは、おへやで、パパとママがなかよくなるのをまっていました。  8.  今日もパパとママが口げんかしました。  ママは、いつもばんごはんの時間に出かけます。  パパがばんごはんを作るので、わたしもお手つだいします。  おふろで、パパに、「あきらはえらいね」と言われました。  今日は、シャンプーハットなしで頭をあらえたので、自分でもえらいと思いました。  9.  ママに「ママとパパのどっちがすき?」と聞かれました。  わたしはけんかをしないパパとママがすきです。  でも、本当にそう言うとママがおこるので、「どっちもすき」と答えました。  今のママはきらいです。  ねる前にトイレに行くと、おふろでパパが泣いていました。  10.  最近は、ママがいらいらしているのであまり家に帰りたくありません。  学校が終わったら、パパの車でまっすぐテレビ局へ行きます。  仕事のせりふの練習をしている時が一番気楽です。  帰りもパパの車ですが、家の前でおりるとママが怒るので、少し遠くでおります。  今日はぶあつい台本をもらいました。今度のドラマに出られるらしいです。  11.  次の土曜日はパパの家でおとまりです。  ママにバレると叩かれるので、ママには友達の家にとまるとウソをつきました。  12.  今日、ママにいきなり「局への送り迎えは私がする」と言われた。  ママに秘密でパパの車に乗せてもらっていたのがバレたらしい。  パパに会うのも電話をするのも禁止された。  本当はパパと暮らしたかった。パパの方がずっと優しい。  ママなんていなくなればいいのに。  13.  今度、「らっきー☆ちゃんねる」というラジオ番組のメインパーソナリティをやることになった。  番組のレギュラー自体は何回かやったけど、自分の番組っていうのは初めてだ。  白石みのるという人と一緒らしい。聞いたことがないけど誰だろう?  とにかく、大きなチャンスなんだからがんばらないと。  早く自立して一人暮らしがしたい。  * 「ねえ白石、あんたの家って両親いる?」  突然、目の前の少女が尋ねてきた。  あおっていた水を飲み干し、コップをテーブルに置いてからみのるは答える。 「ええ。二人とも元気ですよ」  小神あきらは寡黙な男もお喋りな男も嫌う。問答においては一を聞かれたならば返すのは二が正解。  長い付き合いの中で彼はそう学習していたし、彼女がプライバシーに踏み込まれることを嫌うのも承知している。  だからこれは実に適当な返事のはずだった。 「……私はさぁ、パパが別居しててママと二人暮らしなんだけどね」  ところが、若干の沈黙の後、あきらはこう続けてきた。  自ら家庭の状態を話すなんて、自分はどこかで地雷を踏んだだろうか? そう考えるも思い当たる節は当然ない。 「私を芸能界に入れた張本人がママで、パパはどっちかと言うと反対してた。意見の食い違いで喧嘩始めちゃったのよね」 「それで別居、ですか?」  正直に言って彼女のプライバシーに興味がないわけではない。ここは耳を傾けるべきだとみのるは相槌を打つ。 「本当はこんな仕事やめたかったんだけど、私もまだガキだし? 喧嘩に口出しできないまま別居なんてことになっちゃったわけ。  ぶっちゃけね、パパと一緒が良かったのよ優しいから。ママは嫌い。私を自分の道具か何かにしか思ってないんじゃないの」 「あきら様――」 「あんたのとこは? 仲、いいんでしょ」 「……えぇ、まあ」 「羨ましいわ。両親、大事にしなさいよね」  少女の意図が掴めない。  こういった話の相手として選ばれるのは信頼されている証だ。そう期待していないと言えば嘘になる。  だが、オチとして自分が軽く貶されて、さっさと次の話題へ次の話題へと移るのが常なのだ。こんな悲しい話を聞きたいわけではない。 「でもさ」  あきらは更に続ける。 「この番組やってて少し救われたのよね。何だかんだで素で楽しめてると思う」  楽しんでいる、ということについてはみのるにも自覚があった。  番組開始当初と今とを比べると、彼女の言葉に込められた棘は明らかに少なくなり、逆に笑顔を見せることが多くなった。  もちろん、裏にこんな事情があるなど今日まで思いもよらなかったが。 「家のことも気にならなくなってきてさ。確かにママは嫌いだけど、まぁいいかって感じで」 「それは……」 「せっかくここまで来たんだから、パパのためにも私は上を、それも頂点を目指そうって思うようになったのよ」  ああ、とみのるは頷いた。 「あきら様、ご立派です。……でも、でもですよ? 余計なお世話だとは自覚してます。  こんなこと言うと怒られそうですけど、お母さんにも感謝すべきですよ。やっぱり、あきら様をここまで立派に育ててくださったわけですし」 「それは何、反面教師って意味で?」 「そうじゃなくてですね! 僕は――」 「いや、……まあ、わかってるから」  彼女の口から飛び出す皮肉からは、しかし負の感情を読み取れない。  母親が子に託そうとした希望というものを、彼女も彼女なりに理解したのだろう。 「……もうすぐ母の日ですね」 「うるさいな。いちいち言わなくたっていいっての」 「そうでした。すみません」  ふっ、とどちらともなく笑みがこぼれた。 「カーネーションとか柄じゃないし。温泉でも行こうかなってね」 「いいですねえ。僕はそれこそカーネーションになりそうですよ。今月はあまり余裕がないんで」 「まっ、物なんて結局は副産物でしょ」  そう言い、少女は今日もまた笑顔を見せる。  出会った頃の、露ほどの余裕も感じられなかった爆弾のような小神あきらはもういない。  不意に彼女の表情が魅力的に思え、みのるは反射的に窓の外へと目をやった。 「アイドル止まりで一生を終えたりなんかしない」  今のあきらにとって、それは夢ではなく決意なのだろう。  あまりに遠いゴールではあるけれど、彼女ならばそこへたどり着くことも不可能ではない。  否、それも違う。彼女がやると決めたことは必ず実現「する」のだ。そのために必要な全てを小神あきらは備えている。  もっとも、こんなことをうっかり口に出してしまえば「何様のつもりだ」と強烈な拳骨が飛んでくるに決まっているのだが。 「もちろんですよ。あきら様が芸能界のトップに立つ日も近いです」 「……フン。だいぶ口のきき方がわかってきたじゃない」  やがてあきらは腰を上げる。その顔は自信に満ちあふれていた。  普段から見慣れている、貫禄とプライドがむき出しの、みのるが一番気に入っている表情だった。 「私はスターになる。みんな追い抜いて、誰も追いつけない所まで行ってみせる」    了

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