ID:ayPLMOk0氏 肉

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『肉』  柊かがみは最近自身の腹に余った肉について悩んでいた。  原因は明確である。趣味である読書の合間にばりばりと摘んでいた菓子のせいであろう。  読書量と比例して摘む菓子の量は増える。無心で読んでいると、大量の菓子を食べてしまっていた。  かがみは浴槽で下着姿になり、かがみの前で腹を摘んだ。見事に伸びる。 「ちょっとやばいわよね……」  ちょっと、とは言うが、体重計の数値はちょっとどころではなく、思わず悲鳴を上げた。 「ど、どうしたの?」  妹のつかさが浴槽に駆けつけてきたので慌てた。「な、何でもないわよ」 「ひょっとして、太った? わかるー」 「わかるって何よ!」  思わず怒鳴った。つかさはびくついて、手を振った。 「い、いや、体重計乗ったら悲鳴上げちゃうよね、っていう意味で……」 「あ、ああ、そっか」 「別に最近お姉ちゃんが目に見えて太ってきたって意味じゃないんだよ?」 「うるさいわね!」  つかさが去った後、かがみはため息を吐いた。ぶよぶよと伸びる腹の肉を弄んでいるうち、盛大に悲しくなる。  しかし悲しんでもいられない。決意を胸に秘めた。 「ダイエットしなきゃっ」 「とりあえずはジョギングよね」  かがみはそう独り言を呟きながら、クローゼットを漁った。  やがて目的の運動用ジャージを見つける。「これこれ」  まずは形から入るものだろう、とかがみは思う。しかし彼女の場合、それだけで満足する節があり、気づくと三十分後には本を読みながらまた菓子を摘んでいた。  本を読み終わったところではたと気がついた。「ち、違う違う。ダイエットするんだった」  しかし菓子の袋はすっかり空になっていた。我ながら情けなくなる。 「よし、今からでも外に走りに行こう!」  言いながらカーテンを開けると雨がざんざんと降っていた。 「……明日からにしよう」  その夜の夕飯はしっかりおかわりした。「だって明日からだもん」  学校でのお弁当も、もりもり食べていたところ、友人の泉こなたがぽつりと言った。 「かがみん最近さぁ……」  その瞬間かがみは泉の口をから揚げで塞いだ。 「言わないで、自分でわかってるから……」  妹に言われるならまだしも、友人に断言されては、心が折れてストレスでさらに太ってしまう可能性があった。  泉はにやにやとうろたえるかがみを見た。 「へぇ、やっぱり。だって最近目に見えてだもんねぇ」 「だから言うなっちゅーに!」  するとみゆきまでもが口を挟んだ。 「女性らしくなっていいじゃないですか」  そのフォローが寧ろ心に痛かった。 「みゆき、ありがたいけどもうこの話題はスルーして欲しい……」  決定的な事件はその昼休みの終わりに起こった。  教室に戻ったところ、かがみの足元にゴムボールが転がってきた。顔をあげると男子生徒が手を振っている。 「柊、わりいとってくれ」 「もう、また子供っぽいことして」  そんなことを言いながら腰を屈めてボールを取ろうとしたとき、びり、という音が響いた。 「ん?」  男子生徒と同時にかがみは声を上げた。その音は自分の腰からした。 「まさか……」  恐る恐るシャツをめくると、思ったとおり、見事スカートのチャックが裂けていた。  かしゃっ、と音がした。驚いて顔を上げると、何故か赤面している男子生徒が、携帯でかがみの姿を撮っていた。 「あ、悪い、思わず」  顔面に火がついたみたいに恥ずかしくなって、その日は早退した。  それからかがみは猛烈にダイエットに勤しんだ。雨の日も風の日もジョギングした。  もともと運動不足だったので、体重はみるみる落ちた。目標の数値を切ったとき、思わず涙した。 「あれ? かがみん」  上機嫌に弁当をぱくついていると、泉が声を上げた。自分から言い出すのも何かと思って、言われるのを待っていたのだ。  そうなのよ! とかがみは声をあげた。 「最近、痩せたのよ!」  何度も頭の中で練習した言葉を元気よく吐き出す。  しかし予想に反して泉は淡々としていた。それどころか衝撃的なことを口走った。 「どうりで。だって、せっかく最近おっぱい大きくなったのに、すっかり元の大きさに戻ってるもんね」 「へ?」  フォローなのか、困り顔でみゆきは言った。 「スレンダーな魅力があって素敵だと思いますよ」 「え、え?」  状況が理解できず。無意味に疑問符を続けた。泉はあーあ、と背伸びした。 「ダイエットでもしたの? もったいないね。そんなに気にするほど太ってなかったのに」 「ええええええええ!?」  はたとかがみは、写真を撮られたことを思い出した。  ひょっとして彼は、スカートのチャックを引き裂いた決定的瞬間を撮ったのではなく、屈んだことによりあらわになったかがみの谷間を撮ったのだろうか。 「あの変態!」  いきり立って勢いよく立ち上がり、自分のクラスに戻った。  そして件の男子生徒に歩み寄る。じっとりと睨んだ。 「あんた、あの時の写真消しなさいよ!」  すると彼は涼しい顔をして、かがみの胸をじっと見つめた。そしてぽつりと言うのだ。 「何だ、あれパットだったのか。じゃあ消すわ」 「てめぇええええええええ!!」

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