ID:Ci+ucmAq0氏:タイトル不明

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事前補足:ID:FdFisuqY0氏の作品の他者による続編(?)のようなものです。ID:FdFisuqY0氏の作品をまだ読んでないかたはそちらを先にどうぞ。 それから私たちは副部長を連れてこなちゃんの家に行きました。 おじさんには事情を説明できませんでした。どんな反応をするか怖かったからです。 とりあえずこなちゃんのお見舞いに来たクラスの人だと紹介しておきました。 お姉ちゃんがこなちゃんの部屋に入ります。 「こなた、今日はこなたに会わせたい人がいるの…ほら、早く」 お姉ちゃんに押され副部長がこなちゃんの前に押し出されます。 少しの間彼女は黙っていましたがぼそっと一言、ごめんなさい…と言いました。 しかしこなちゃんは何も反応せずただ空を見つめているだけです。 「あんたの声が小さいのよ、もっとはっきりあやまって!」 「こ、こんなの無理だよ、大きな声で言ったって絶対反応無いって」 「やってみなきゃわかんないでしょ!」 「落ち着いてくださいかがみさん!」 多分お姉ちゃんはあせっていたのだと思います。私もあせっていました。 副部長の言うとおりいくら彼女があやまったって反応してくれる様子はこなちゃんには見うけられませんでした。 もしかしたらこなちゃんはもう戻らないんじゃないか?そんな考えが頭をよぎります。 私たちがいくら接しても、いじめた子があやまっても、何も反応しないこなちゃん… 他に一体どんな方法が残されているでしょう… 必死になっていじめの首謀者を探していた頃はまだ目標があったけど、これから一体何をすればいいのか? 残酷な現実を受け入れなきゃダメなの? 「ねえもっとあやまりなさいよ!こなたがもとに戻るまであやまって!」 お姉ちゃんの声がだんだんと必死になっていきます。まるでこの現実から逃げるように。 ゆきちゃんもやはり私と同じ考えに行き着いたらしく蒼白な顔になっていました。 「もういいでしょ、もう許して…こんなのいくらやったって…」 「うるさい!うるさいうるさい!!だってこんなの…ひどすぎるよ…」 お姉ちゃんはその場にしゃがみこんで泣き始めてしまいました。 ゆきちゃんはお姉ちゃんの肩をさすってただただ慰めているだけ。 どうでもいい知識はたくさん持っているくせに肝心なときにゆきちゃんは役に立ちません。 結局何の進展も無いまま私たちは帰ることにしました。 副部長を同じ目にあわせたい… 何度もそんな考えが起こりましたがそんなことをしてもこなちゃんは帰ってこないし、 副部長を好きな人たちが私たちと同じ気持ちになると思うととてもそんなこと出来ませんでした。 今までここまで虚しい気持ちになったことはありません。どれだけがんばっても何も変わらない。 宇宙の外はどうなってるんだろう、何で私は生まれてきたんだろう、そんな自分の頭ではどれだけ考えても決して答えが出せない問いを考えている時のもどかしさ、何も無い空をつかもうとしているような、そんな気持ち。 おじさんに本当のことを話そうかと思いましたが、彼女の身の安全を考えると、言うのは彼女がいないときにしたほうがいいとゆきちゃんは言いました。 そうだよね、友達がこうなってもここまで悲しいのに自分の子供がこんなになったら…それをやった本人が目の前にいたらとても理性を抑えられる気がしません。 おじさんは副部長にお見舞いありがとな、と微笑んでいました。 それを見た私は胸がえぐれそうなほど痛くなりました。 こなちゃんの家からの帰り、そのまま学校に寄った私たちはこのことを先生に報告しました。 副部長は完全に反省しているらしく、何度も何度も泣きながらあやまっていました。 いじめに参加したほかのダンス部の人たちも親と一緒に呼び出され、職員室は騒然となっていました。 「今からここごちゃごちゃしてくるし、お前らはもう帰り…な」 先生はそう言って私たちを職員室から出し、暗い表情でまた職員室へと戻っていきました。 私たち3人はしばらくその場で動けず立ち尽くしていました。 一体私たちは何をしたんだろう… これが私たちの望んでいた結果なのだろうか? 違う!本当ならこの横に元気を取り戻したこなちゃんがいるはずなのに… 「もう…行こう」 口を開いたのはお姉ちゃんでした。 家に帰るとお父さんが心配そうな顔で迎えてくれました。 「学校の先生から大体の話は聞いたよ…がんばったな二人とも、さあ、中へ…」 「がんばってなんか無い!」 今までずっとうつむいていたお姉ちゃんが大声を上げました。 「何も、何も出来なかった…こなたに…何も…」 「……お姉ちゃん」 「何も、何も何も何も…うぁぁあ」 もともと感情をすぐに出すお姉ちゃん、平常を保つのが大変だったんでしょう。 家に帰ってきた安心感からか大声で泣き始めました。 私も釣つられて泣きました。あまり大声は出さない私だけど、このときは大声で泣きました。 その後はあまり覚えていません。自分の部屋に上がると、そのままベッドに突っ伏して寝てしまいました。 朝、学校に行く気力がわかず、私とお姉ちゃんは欠席しました。 はっきり言ってこの気持ちが晴れる気がしません。 これからもずっとこんな暗い気持ちを背負っていかなければならないのでしょうか。 ずっとぼうっとしていた私でしたが、体をぐいっと持ち上げるとお姉ちゃんの部屋に行き、言いました。 「こなちゃんのお見舞い、行こう…」 ゆきちゃんも学校を休んでいたらしく、電話をすると私もいきますと返事が返ってきました。 お姉ちゃんは魂が抜けたみたいに何も喋らず、こなちゃんのようになっていましたが、お見舞いには付いてきてくれました。 こなちゃんの家に着くとおじさんは優しく迎えてくれました。 あの時本当のことを黙っていてくれてありがとうとも言っていました。やはりゆきちゃんの判断は正しかったようです。 こなちゃんの部屋に入ると、それまでずっと静かだったおねえちゃんが急に喋り始めました。 「こなた、今日は何も持ってきてないんだけどさ、何か欲しいものある?そういえばあんたの集めてた漫画、そろそろ新刊出るんじゃない? 私のラノベ貸してあげようか?活字嫌いとか言わずにさぁ、一回読んでみなって」 それからもお姉ちゃんは何の反応もしないこなちゃんにずっと喋り続けていました。 その姿はまるでお人形ごっこをしているかのようでした。 私とゆきちゃんはとても入っていけず、ただ二人を眺めているだけでした。 それから数ヶ月がたちました。流石に私たちは学校に通うようになっていましたが前までのような活気があるわけも無く、静かな休み時間を過ごしていました。 相変わらずこなちゃんは来ていません。 お姉ちゃんがこっちのクラスに顔を出すことは無く、家での会話もほとんどありません。 多分今回の件で一番変わってしまったのはお姉ちゃんだと思います。成績も大きく落ちていました。 私たちの日課となったのがお見舞いです。放課後には欠かさずこなちゃんの家に寄っています。相変わらず反応はありませんが… 今日もいつもの様に3人でこなちゃんの家に向かいました。 おじさんは作家さんなのでいつも家に居て、お見舞いに来た私たちを笑顔で迎えてくれます。 「今日は学校でね…」 基本お見舞いと言っても特にすることも無く、ほとんどはお姉ちゃんがこなちゃんに喋りかけるだけです。 いつも学校であったことや勉強のことについて喋り続けています。 私たちはただそれを黙って見ているだけです。 お姉ちゃんはこのときだけは普段のお姉ちゃんに戻り、とても楽しそうに話します。 いつもしている学校での話が大体終わったところでお姉ちゃんはおもむろにポケットから包みを取り出しました。 包みにはハッピーバースデーの文字、今日はこなちゃんの誕生日なのです。 「こなたおめでと、今日あんたの誕生日だよね。これ、ペンダント買ってきたんだけど…」 そういうとお姉ちゃんは包みをあけ、綺麗なビーズが付いたペンダントを取り出し、それをこなたの首につけました。 「良かった、ぴったり。よく似合ってるよ、こなた」 そう言うとお姉ちゃんは軽くこなちゃんの頭をなでました。そのときです。 「……ありがと…」 「え?」 私たちは驚いて顔を上げました。今確かにこなちゃんが…喋った! 「い、今なんて…」 「………」 反応はありません。でも今確かにこなちゃんは喋りました。 うそ、こんなことが…本当に… お姉ちゃんは涙声になりながら話を続けます。 「お礼、言いたいのは…こっちよ…こなた、こんなので喜んでくれて…本当に…ありがとう」 それからずっとお姉ちゃんはこなちゃんと遊んだときの思い出を喋り続けていました。 結局あの一言以外何も喋ることが無かったこなちゃんですがお姉ちゃんの話は、行動は、確かに心に届いていたのです。 ゆきちゃんは感動して泣き出し、かがみさんは本当にすごいです、とつぶやいていました。 おじさんは飛んで喜び、お姉ちゃんに何度も何度もお礼を言っていました。 もう一生送ることが出来ないんじゃないかと思っていたあの楽しかった日々が、もう一度送れるかもしれない… 溢れ出す涙を、私は止めることが出来ませんでした。 あきらめなければ夢はかなう、お姉ちゃんはそのことを私たちに教えてくれたのです。 お姉ちゃんのすごさを、私は改めてしっかりと感じました。 「ごめんね、今までずっと落ち込んでて、つかさには迷惑かけたわよね」 「そんなことないよ、本当にお姉ちゃんはすごいよ」 「えへへ、さーて今度はどんな土産話をもっていってやるかな、チョココロネを持っていってあげるのもいいかね」 帰り道、夕焼けは黄金色に輝き、それはまるでこれからやってくる幸せな日々を表しているかのようでした。

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