ID:Gz6cC8Q0氏:power of smile

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授業が終わって帰ろうと廊下に出たとき、私と同じように一人で歩いている先輩の姿を見つけた。 みんながつられて笑ってしまうような不思議な魅力のある笑顔を持っているあの人に憧れていた。 声をかけたのは、同じような笑顔をしてみたい、無意識にそう思っていたからかもしれない。 「つかさ先輩、お疲れ様です」 「あれ?みなみちゃん。今から帰るの?」 「はい…」 「そうなんだ、ゆたかちゃんは?」 「今日は風邪で休みです」 「そっか。あの…もしよかったら一緒に帰らない?」 予想外の提案だった。嫌なわけではない… でも、泉先輩たちは? 「今日はこなちゃんバイトあるから…お姉ちゃんとゆきちゃんは他に用事があるらしくて…」 なるほど… 帰り道、一緒に帰っている途中でつかさ先輩が言った。 「みなみちゃんってすごくかっこいいよね。憧れちゃうよ~」 自慢ではないがそう言われることは多い。 でも私自身はむしろ、つかさ先輩のような人に対して、うらやましいと思っていた。 クール、かっこいい… そうほめられてうれしいと感じるよりも 怖い そう思われて悲しくなることの方が多かった。 だからゆたかやつかさ先輩のような相手を安心させる不思議な力を持っている人に憧れた。 それは私にはないものだから… 「そんなことは…ないです。よく怖がられるますし」 「私も初めて会ったときは、正直少し怖かったかも」 やっぱり…仲良くなっても必ずそう言われる。 最初はすこし怖かったんだよね… 「う~ん、みなみちゃんはあんまり感情を表に出さないからかな」 「考えてることがあってもあんまり表情に出ないんです。だからいつも無表情とか言われて…」 「う~ん、そっかぁ。じゃあさ」 しばらく考えてから、つかさ先輩は天使のような笑顔を浮かべて言った。 「笑えばいいと思うよ」 そうかもしれない…確かにつかさ先輩もみゆきさんもいつも笑ってる。 ゆたかもそうだ… それが相手をほっとさせるのかも… でも何かつかさ先輩らしくないセリフ。 「えへへ、実はこなちゃんの受け売りだったり」 なるほど…ならどこかのアニメのセリフかもしれない。 別れ際、つかさ先輩は私に笑顔で手を振った。 私も、それに応えて手を振った。 精一杯試みてみた笑顔がぎこちなくないか、それだけが気になった。 次の日の朝、廊下を歩いていると、向こう側からゆたかと田村さんが歩いてくる。 目があった瞬間、つかさ先輩に言われたように笑ってみた。 ゆたかと田村さんはきょとんとしていた。 やっぱり私には笑顔は似合わないのかな。 「あー、なんか珍しかったから。でも笑ってる方が絶対いいよ」 「普段のみなみちゃんも好きだけど、やっぱり笑顔のみなみちゃんの方が素敵だよ」 やっぱり…笑顔というのは特別な力があるのかもしれない。 そう思ったとき、廊下の遠くにつかさ先輩が見えた。 私に気がつくとつかさ先輩はにっこりと笑った。 やっぱりかなわないな。 見ている人を幸せにする素敵な笑顔だった。 私もそれに応えて笑ってみた。 昨日よりは自然な笑顔ができているような気がした。

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