ID:6JnLSAoo氏:二人は

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「ん……」  かすかに聞こえた水の音。額に広がる冷たい感覚に、彼女はそっと目を覚ます。  見慣れない天井、ライトの明かりが、かすかに部屋を照らしていた。 「お目覚めですか?」 「みゆき、さん? ここは……」 「私の部屋ですよ」  寝ぼけた頭で考える。どうして、私はみゆきさんの部屋で寝ているのだろう、と。 「倒れられたんですよ。泉さん」 「倒れた?」 「ええ。文化祭が終わって、気が抜けたんだと思います」 「そっか……」  この日、文化祭でチアをやったメンバーは、打ち上げという形でみゆきの家へ遊びに来ていた。  10人という大所帯も、みゆきの家であれば軽いもの。  今まで、あまり話すことがなかったもの同士が、笑い合い、時間をともにしている。  そんな楽しい時間もそろそろ終わり。そんな風に考えていた時、こなたは倒れてしまった。  みゆきによれば、倒れたのは疲労と睡眠不足が原因で、特に心配はないらしい。  こなたの父、そうじろうに車で迎えに来てもらおうかという話だったが、起こしてしまっては可哀相だと、みゆきは家に泊めることにした。 「ごめんね、みゆきさん。迷惑かけて」 「迷惑なんかじゃありませんよ。でも、あまり無理はしないで下さいね」 「うん……」  静かな夜。二人はただ無言で、ゆっくりと、時間が流れていく。  ふと、こなたはみゆきに聞いた。 「今、何時?」 「時間ですか?」  こなたからは見えない向きになっている時計。  背の違う二人は、その頂点で逢瀬をたのしんでいた。 「10時半ぐらいですよ」 「みゆきさんっていつも11時には寝るんだよね」 「はい。なのでもう少ししたら別の部屋で休ませていただこうかと」 「じゃあ、さ……それまで、あの」  口ごもるこなたの顔は、心なしか赤くなっているように見える。 「何でもおっしゃってください」 「えっと、ね」  これほどハッキリしないこなたを、みゆきは見たことがなかった。  けれど、なんとなく。モジモジさせている左手を見て、なんとなく。  みゆきは、その手を握ってみた。 「あ」 「お嫌ですか?」 「う、ううん。全然!」 「今はゆっくりと、おやすみになって下さい。こなたさん」 「うん、おやすみなさい……」  こなたは目を瞑り、再び眠りに落ちていく、左手にぬくもりを感じながら。 「あれ……あ、そうか。泊めてもらったんだっけ」  太陽の光とスズメのさえずりが朝を告げていた。   目を覚ましたこなたは、一つの違和感に気づく。左手が、まだ温かい。  見ると、手をつないだまま、みゆきが眠っていた。 「もしかして、ずっと?」  更にもう一つ。夜、目を覚ました時には気づかなかったこと。 「普通、ベッドから見えるように置くよね。時計って」  あの時答えた時間は、たぶん。 「ありがとう。みゆき」  スースー、と寝息を立てるみゆきの額に、自分の額を合わせつぶやく。 「ひぁ!」  みゆきは素っ頓狂な声を上げ飛び起きた。  当然だ。目を覚ましたら、目の前にこなたの顔があったのだから。 「ご、ごめん。起こしちゃった?」 「いえ。でも今、何を……」 「えーと。別に何もないよ。かわいいなーと思って」 「か、可愛いなんてそんな」 「寝顔がすっごく可愛かったよ」 「そ、それは泉さんだって!」 「へ?」 「あ……」  顔を赤くし、うつむく二人。   形容しがたい雰囲気の中、みゆきは立ち上がり、こなたに言う。 「朝食、作ってきますね」 「あ、みゆきさん。私に作らせてくれないかな?」 「え? でも無理は」 「大丈夫だよ! しっかり寝たし、お礼もしたいし。ね」 「……わかりました。お願いします」    相手を想い、想われる。  二人は親友。    笑いあうその姿は、家族のように。 「あらあら、妬けるわね。みゆき」 ~fin~

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