ID:P0K3Nok0氏:challenger's spirit

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「あ~あ、退屈だよな~」 私は誰にでもなく小さくつぶやいた。 今、私がいるのは地元のゲームセンター。 その一角にあるこの格闘ゲームの筐体は私の指定席になっている。 かつては一日ここにいろと言われてもおそらく喜んでいられたであろうこの席に最近あまり魅力を感じなくなってきていた。 ここ数日、連戦連勝。確かに気持ちいいと言えば気持ちいいが何か物足りない。 退屈だ… 憂さ晴らしにCPUをボコボコにしていると画面に『challenger come』の文字が表示される。 しかし、それもあっけなく終わる。 第一ラウンドで相手が素人だとわかる。瞬殺。 第二ラウンドは手加減してそこそこの勝負にしてあげる。そしてぎりぎり勝つ。 違うんだよなー、私がしたい勝負は。 もっとひりつく様な手に汗を握るような勝負がしたいんだ。 よし、今度はどっかほかのゲームセンターに行こう。 次の日私が来たのは通っている高校の近くにあるゲームセンターだった。 今までは格げーで負けているのを高校の人に見られたくないという理由でここにはあまり来なかった。 まあ今の実力ならそうそう負けることはないだろうと思ってここに来たのだった。 実際に最初にきた数人には楽勝だった。 あー、やっぱ、強くなりすぎたかな。そろそろ潮時かな。 そう思った時、数日前のひよりとの会話を思い出した。 「先輩、ホントこのゲーム強いっすよね」 「まあねー、このシリーズがきっかけで格げーにはまったから」 「ゲーセンとかでもよくやってるって言ってましたけど、先輩に勝てる人いるんですか?」 「んー、前までは勝ったり負けたりだったけど最近は負けないねー。だからちょっと張り合いないんだよね」 「先輩、極めすぎですよ。大会とか出たらいいんじゃないですか?」 「わかってないなー、確かに大会に行けば強いやつにはいくらでも会えるけど、ゲーセンでふと向かいに座ったやつが同じくらいの腕を持っててしのぎを削るのが楽しいんだよ」 「あれですね。同人で自分の好きなマイナーカップリングを見つけたときみたいな感覚ですかね」 「いや、ぜんぜん違う」 あれ?負けた? 考え事をしていたらいつの間にかKOされていた。 いかんいかん、次は集中しないと。 へー、なかなかやるじゃん… ……ってちょっとやばいかも… …くそっ、こうなりゃ本気だして… ちょ、調子乗りやがって…もう許さん… ………負けた… あれ?負けた? そっか。やっぱ考え事してると負けるんだな、ちょっと油断してた部分もあるし、次は本気で行こう。 ……また負けた… これはやばいな、と思い始める。 同じ相手に二度負けるなんて地元で自称最強を名乗っていたプライドが許せない。 袖をまくって気合いを入れてからコインを投入する。 次こそは絶対勝つ… 数十分後… 突如として目の前にあらわれた敵は思いのほか強敵だった。 何回闘っても1ラウンドもとれない。こんなのは初めてだ。 なんとか一矢報いたいと思って迎えた数戦目にチャンスが巡ってきた。 よし…これはうまくすれば勝てるかも…っとあぶねぇ ちっくしょ、なかなか隙がないな… ってか速!…こっちの攻撃はことごとくかわすし… ってあれ?ミスか? よし、スキあり…この間にコンボを… いつの間にかレバーを握る手に汗がにじんでいた。 「へ~、先輩あのゲームで負けたんですか?」 「あー、めちゃくちゃ強いやつで…何回もやったけど一回も勝てなかったよ。しかもそいつうちの高校の制服着てたな」 「マジっすか?うちの高校に先輩以上のゲーマーがいたんですね」 「私もまさか同じ高校内に私よりうまいやつがいるとは思ってなかったわ。あー、話してたら悔しくなってきた」 「その割には先輩嬉しそうっすね」 「そうか?」 言われてみるとこれほどまたゲーセンに行きたいと思っているのも久しぶりかもしれない。 早くあのちっさいやつに借りを返さなくては。 放課後、私は昨日行ったゲーセンに直行していた。 あのゲーム機は、っと…あ、いた! 昨日座っていたちっさいやつがまた座っている。今日は友達も一緒に連れてきてるようだ。 「さすがこなちゃん、強いねー」 そうか、あいつはこなちゃんというのか。 今日は絶対に勝ってやる… 久しぶりの高翌揚感を感じながら私は向かいのゲーム機に座る。 はやる気持ちを抑えながら私はゲーム機にコインを入れた。 終

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