「ID:htof2aU0氏:ゆたかの宝物」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<p>「ところでゆーちゃん」<br />
「?」<br />
「そのペンダント、たまにもってくるけど一体何が入ってるの?」<br />
「…これ、私の大切な宝物なんだ」<br />
「宝物…?」</p>
<p>――1年前…<br />
私は病院のベッドの上に寝ていました。<br />
私が苦しそうな顔をする度、こなたお姉ちゃんやおじさん、ゆいお姉ちゃんが励ましてくれましたが…。<br />
もう、私に残された時間は少なくなっていました。<br />
ねえ……なんで私が死ななきゃいけないの…?嫌だよ…まだ私、みんなと別れたくないのに…。</p>
<p>「こなたお姉ちゃん……私………」<br />
「……」<br />
「お姉ちゃん…みたいに…強く……なりた…い……」</p>
<p>……あぁ…だんだん意識が遠のいていく…<br />
…私、死んじゃうんだね……さよなら……こなたお姉ちゃん…。<br />
さよなら……みなみちゃん…さよなら、みんな……。</p>
<p><br />
「………かちゃん、ゆたかちゃん…」<br />
暗闇の中で誰かが呼ばれた気がして……私が目を開けると、一筋の光の中に女の人が立っていました。<br />
「…だ、誰……」<br />
「ビックリさせてごめんなさいね、私は泉かなた…」<br />
「かなた…さん?それじゃぁ、こなたお姉ちゃんのお母さん?」<br />
「ええ。それよりゆたかちゃん、どうしてここにきちゃったの?」<br />
「…私は……」</p>
<p>私はかなたさんに、ここまでの経緯を話しました。<br />
「そうだったの……」<br />
「私、まだ生きたかった…まだ死にたくなかったのに……」<br />
「そうね…でも、ここへくるのはまだ早いんじゃないかしら?」<br />
「え……?」<br />
「ほら、あなたの後ろに光の道が見えるでしょ?ゆたかちゃんはもう一度生きるチャンスを与えられたのよ」<br />
「待ってください…!それって、一体……」</p>
<p>ふと目が覚めると、私は手術台の上に寝ていました…。<br />
これは一体……私のお腹には穴が開いていて、そこに覗いていたのは、機械の塊…。<br />
そして、腕を動かす度に聞こえる微かなモーターの音。<br />
いったい、何があったのか…まだ何がなんだかわからない私のもとに、一人の女の人が歩いてきました。<br />
「…気がついた?小早川さん」<br />
見覚えのある姿と、聞き覚えのある声。そう…この人は……。</p>
<p>「天原先生、私…どうなっちゃったんですか?突然目の前にかなたさんが現れて目が覚めたら私は機械でっ、あうあう…」<br />
私はパニック状態になってしまい、何を言っているのかわからないような状況になっていました…。<br />
「落ち着いて、小早川さん!…全部説明してあげるから…」</p>
<p>「サイボーグ……?」<br />
「ええ、今のあなたは機械仕掛けの体を持っている…脳以外はね」<br />
「…それで、お腹の中に機械が……」</p>
<p>「実はあなたの脳にも少し手を入れさせてもらったの。腐っちゃうといけないから…」<br />
「え?それは…」<br />
すると天原先生は、大きなモニターのスイッチを入れました。<br />
「これを見て。…あなたの脳はナノマシンを使って結晶化されているの。そのおかげで小さくなってるけど、思考能力や記憶には問題ないから安心して」<br />
「はぁ……」<br />
「それと、今のあなたの身体は急場しのぎだから、とりあえずは充電式よ」<br />
充電式……。そうか、ご飯を食べることは出来ないんだ……。<br />
ちなみに、再改造すれば動力炉は取り付けてもらえるということなので、それまでは我慢するかな…。<br />
「これでよし、っと」<br />
そう言って天原先生がお腹のハッチを閉じます。<br />
「さぁ、歩いてみて」<br />
「あ…はい……」</p>
<p>私はベッドから起きると、その足を一歩、二歩と進めていきます。<br />
できたての機械の身体だから早く慣れなくっちゃ……。<br />
三歩、四歩……。</p>
<p>「アッー!!」<br />
―ドンガラガッシャーン!<br />
いたた…転んでしまいました。…あれ?痛い……?<br />
そうか…機械の身体でも痛みを感じるように出来てるんだね…。<br />
気を取り直して、もう一度……。</p>
<p>こうして、1週間という調整期間を経て、私もようやくこの身体に慣れてきた頃、天原先生が訊いてきました。</p>
<p>「ところで、古い身体の方はどうするの?」<br />
「え……?」<br />
「ほら、脳だけとったからそのままの形で残ってるでしょ?このまま置いといたら腐っちゃうかもしれないし」<br />
「…じゃあ…処分はそちらにお任せします…ただ…」<br />
「ただ?」<br />
「古い身体を焼いたあとに…その灰を少し、私に分けてもらえませんか?」<br />
「どうして?」<br />
「……生きてるって証として、持っていたいんです。私が、小早川ゆたかという人間が生きている証明として……」<br />
「…わかったわ」</p>
<p>こうして、今まで過ごしてきた私の身体は焼却処分されることになりました。<br />
すっかり冷えきった生身の身体。今までの「私」、本当におつかれさま……。<br />
そして、これから生活を送る機械仕掛けの「私」…どうかよろしくね。</p>
<p>―――1年後<br />
「そうだったんだ、この中にはゆーちゃんの生きてる証が入ってるんだね」<br />
「まぁ、古い身体を焼いたあとの灰なんだけど…これを持っていると安心できるって言うか…」<br />
「安心できる?」<br />
「うん、だからずっと……大切にしてるんだ」</p>
<p>私はペンダントを大事に持っています。中にあるのは、私という人間が生きている証。<br />
そう、私が生きてることを教えてくれる…大切な…宝物だから……。</p>
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