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「エピローグ　姫様のココロ」(2007/09/02 (日) 22:44:56) の最新版変更点

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<p>エピローグ　姫様のココロ</p>
<p>クラスでの劇の片付けが終わり、俺が生徒会室に着いた時には、既に６時を回っていた。</p>
<p>
あの後──つまり校内の魔法が解けた後、一時は文化祭の中止が囁かれたが、生徒会の働きかけにより無事に再開された。全てが元に戻ったのだ。もちろん、リエナに腕を折られた男子生徒の怪我もちゃんと治してやった。自分の優しさに涙が出そうだ。</p>
<p>閉会式では、教職員と生徒によるバンド、サイレントラップ略してサイトラのライブが行われ、体育館を大いに沸かせた。</p>
<p>そしてその後は、お待ちかねのベスト企画賞の発表である。教頭である軋道の頭の上に乗って、マオ校長はステージに登場した。</p>
<p>「はいはーい、それでは発表しまーす。一応言っとくけど、賄賂は貰ってないからね！　でわでわ、ベスト企画賞を見事に受賞したクラスはぁ──」</p>
<p>
受賞したのは弥生先輩とカイ先輩のクラスだった。なんでも、２人の仮装姿を見に客が集まったらしい。そして結局、生徒会は受賞できなかったのだった。秋華会長、機嫌悪いだろうなあ。無駄に張り切ってたもんなあ。俺は憂鬱な気分で生徒会室のドアを開けた。</p>
<p>「いっっえ──いっ！遅かったなあ絵馬ぁ！」</p>
<p>超ご機嫌だった。ジュースの缶を片手に、会長は満面の笑みで俺の肩をばしばしと叩く。</p>
<p>「俺様の奢りだぁっ！てめーも飲めっ！」</p>
<p>「いや……っていうかそれよく見るとチューハイじゃないですか！駄目でしょ酒は！」</p>
<p>「なにいぃ～！？俺様の酒が飲めねえってのかぁ！！」</p>
<p>「どうせ不良から巻き上げた金で買った酒でしょ！つーか、何でそんなにご機嫌なんですか！受賞できなかったのに！」</p>
<p>すると会長は、わははははっと盛大に笑い、</p>
<p>「そんなもんどーでもいいんだよ！俺様は楽しけりゃいーんだ、楽しけりゃ！！」</p>
<p>
そして、また笑う。完全に酔いどれだよ。他のメンバーもかなり飲んでるみたいで、リイナは鼻唄を口ずさみながら電卓を叩いているし（結構儲かったみたいだ）、リエナはソファに転がって眠っていた。会長、ミチ、カイ先輩は、某アニメのEDのダンスを踊っている。秋華会長の腕章は、いつの間にか「団長」に変わっていた。</p>
<p>「ご苦労だったな、絵馬」</p>
<p>そう言う弥生先輩も、手には赤ワインの注がれたグラスを持っている。あんたも見境無しかよ。</p>
<p>「……弥生先輩。結局、あの六橋さんの正体は何だったんですか？」</p>
<p>「さあな。奴は自身の事を指してドッペルゲンガーと言っていたが、私が思うに、あれは六橋はじめの深層心理が実体化したものではないかな」</p>
<p>そこで先輩はワインを一口飲む。その姿が異様に艶やかだった。本当は何歳なんだ、この人。</p>
<p>「つまり、内に秘めた思いが本人の意識を抜け出し、暴走したというわけだ」</p>
<p>「……じゃあ、何で六橋さんの深層心理とやらが、あんな強力な魔法を使えたんですか？」</p>
<p>俺の問いに、先輩は少しだけ笑い、</p>
<p>「まあ、それは恋する乙女のパワーというやつだ」</p>
<p>……。成程ねぇーって、納得できるか！</p>
<p>「絵馬っ！」　「……えみる。お前も酔ってんのか」</p>
<p>いきなり抱きついてきたえみるは、とろん、とした目で俺を見上げる。悪い気はしないので、そのまま抱きつかせておくことにした。</p>
<p>「やだにゃあ。ぜんぜん酔ってないれすにょ？」</p>
<p>「嘘つけ。ろれつ回ってねえじゃねえかよ」</p>
<p>そんなえみるを見て、先輩は１つ溜息をつき、</p>
<p>「困った奴だな。絵馬、仕方ないからえみるを家まで送ってやれ」</p>
<p>「はあ！？何で俺がっ！」　「……いいのか？私に逆らっても」</p>
<p>先輩は俺の耳に口を近づけ、そっと囁く。</p>
<p>「お前が『違法使い』だということ、学校側が知ったらどうなるだろうな？……頭の良いお前なら分かるだろう？」</p>
<p>「……っ！」</p>
<p>そう言えば、ドッペルゲンガー六橋さんとの会話は、オルスを通して全て筒抜けだったのだ。</p>
<p>「頼んだぞ、絵馬」</p>
<p>ぽん、と俺の肩を叩く弥生先輩。背中にどす黒いオーラが見えた。一方、えみるは俺にしがみ付いたまま、すやすやと寝息を立てている。器用な奴め。</p>
<p>「ところで絵馬、私も１つ訊いていいか？」　「何ですか？」</p>
<p>先輩はグラスの中のワインを少し踊らせ、</p>
<p>「何故、一介の学生であるお前が、禁則の魔法が使える？」</p>
<p>それに対し、俺は先輩の真似をして、にやりと笑ってみせる。</p>
<p>「俺が『悪魔に愛された人間』だから──、ってのは駄目ですか？」</p>
<p>「……ありきたりだな。３０点。」</p>
<p>採点された。</p>
<p> </p>
<p>９月とはいえ、やはり夏だ。外はまだ明るい。俺はぐっすりと眠ったえみるをおんぶして、帰り道をとぼとぼと歩いている。</p>
<p>「ふにゃあ、絵馬……？」</p>
<p>耳の横で、えみるの寝ぼけた声がした。起きてしまったらしい。</p>
<p>「目が覚めたなら、さっさと降りろ」　「やーだっ」</p>
<p>えみるはそう言って、俺の背中にしがみ付く。……やれやれ。</p>
<p>「あ、絵馬のクラスの劇、観たよ」</p>
<p>「そっか。どうだった？」</p>
<p>「魔法使い役の人が格好良かった」</p>
<p>ここで出てくるのかツンドラ黒魔術士四谷壱！悔しいけど罪な男だ！</p>
<p>「えへへ、がっかりした？」　「……別に」</p>
<p>えみるはクスクスと笑っている。耳に掛かる息がくすぐったい。</p>
<p>「それと、絵馬はもう、王子の役はやっちゃ駄目」</p>
<p>「そんなに演技、酷かったか？」</p>
<p>「そういうわけじゃ、ないけど」　「じゃあ何なんだよ？」</p>
<p>俺が訊くと、えみるは少し戸惑ったような声で、</p>
<p>「だって絵馬は、私だけの……」</p>
<p>背中に感じる彼女の体温が、やけに熱い。それとも、熱があるのは俺の方だろうか。</p>
<p>「私だけの、下僕なんだからっ！」</p>
<p>……。…………？</p>
<p>「は！？何だそれ！？違うだろ！そこは『私だけの王子様だから』とか言うトコだろ！空気読め！」</p>
<p>「はあぁ！？なに色ボケたこと言ってんの！？劇でちょっと良い役やったからって調子乗らないでよ！！」</p>
<p>そこまで言うのか。お前はやはりヒロインじゃなくて暴君だったんだな。</p>
<p>「あんたは絵馬じゃなくてカマドウマよ！」</p>
<p>「某昼ドラ的！？」</p>
<p>どこまでも色気の無い奴だ。俺は深く、溜息をつく。何なんだ、この仕打ちは。</p>
<p>あんなに頑張ったんだから、少しくらいご褒美があってもいいのに。俺はえみるに対し、存外それを求めていたらしい。認めたくないけど。</p>
<p>
とにかく、『文化祭で一攫千金！！』、千金どころか、俺にとっては骨折り損のくたびれ儲けだったわけだが、これにて終幕。次に開催される体育祭の方もどうぞよろしく。</p>
<p>ま、どんな行事だろうと、俺にとっては厄日なんだろうけどな。</p>
<p>（おわり）</p>

<p>エピローグ　姫様のココロ</p>
<p>クラスでの劇の片付けが終わり、俺が生徒会室に着いた時には、既に６時を回っていた。</p>
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あの後──つまり校内の魔法が解けた後、一時は文化祭の中止が囁かれたが、生徒会の働きかけにより無事に再開された。全てが元に戻ったのだ。もちろん、リエナに腕を折られた男子生徒の怪我もちゃんと治してやった。自分の優しさに涙が出そうだ。</p>
<p>閉会式では、教職員と生徒によるバンド、サイレントラップ略してサイトラのライブが行われ、体育館を大いに沸かせた。</p>
<p>そしてその後は、お待ちかねのベスト企画賞の発表である。教頭である軋道の頭の上に乗って、マオ校長はステージに登場した。</p>
<p>「はいはーい、それでは発表しまーす。一応言っとくけど、賄賂は貰ってないからね！　でわでわ、ベスト企画賞を見事に受賞したクラスはぁ──」</p>
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受賞したのは弥生先輩とカイ先輩のクラスだった。なんでも、２人の仮装姿を見に客が集まったらしい。そして結局、生徒会は受賞できなかったのだった。秋華会長、機嫌悪いだろうなあ。無駄に張り切ってたもんなあ。俺は憂鬱な気分で生徒会室のドアを開けた。</p>
<p>「いっっえ──いっ！遅かったなあ絵馬ぁ！」</p>
<p>超ご機嫌だった。ジュースの缶を片手に、会長は満面の笑みで俺の肩をばしばしと叩く。</p>
<p>「俺様の奢りだぁっ！てめーも飲めっ！」</p>
<p>「いや……っていうかそれよく見るとチューハイじゃないですか！駄目でしょ酒は！」</p>
<p>「なにいぃ～！？俺様の酒が飲めねえってのかぁ！！」</p>
<p>「どうせ不良から巻き上げた金で買った酒でしょ！つーか、何でそんなにご機嫌なんですか！受賞できなかったのに！」</p>
<p>すると会長は、わははははっと盛大に笑い、</p>
<p>「そんなもんどーでもいいんだよ！俺様は楽しけりゃいーんだ、楽しけりゃ！！」</p>
<p>
そして、また笑う。完全に酔いどれだよ。他のメンバーもかなり飲んでるみたいで、リイナは鼻唄を口ずさみながら電卓を叩いているし（結構儲かったみたいだ）、リエナはソファに転がって眠っていた。会長、ミチ、カイ先輩は、某アニメのEDのダンスを踊っている。秋華会長の腕章は、いつの間にか「団長」に変わっていた。</p>
<p>「ご苦労だったな、絵馬」</p>
<p>そう言う弥生先輩も、手には赤ワインの注がれたグラスを持っている。あんたも見境無しかよ。</p>
<p>「……弥生先輩。結局、あの六橋さんの正体は何だったんですか？」</p>
<p>「さあな。奴は自身の事を指してドッペルゲンガーと言っていたが、私が思うに、あれは六橋はじめの深層心理が実体化したものではないかな」</p>
<p>そこで先輩はワインを一口飲む。その姿が異様に艶やかだった。本当は何歳なんだ、この人。</p>
<p>「つまり、内に秘めた思いが本人の意識を抜け出し、暴走したというわけだ」</p>
<p>「……じゃあ、何で六橋さんの深層心理とやらが、あんな強力な魔法を使えたんですか？」</p>
<p>俺の問いに、先輩は少しだけ笑い、</p>
<p>「まあ、それは恋する乙女のパワーというやつだ」</p>
<p>……。成程ねぇーって、納得できるか！</p>
<p>「絵馬っ！」　「……えみる。お前も酔ってんのか」</p>
<p>いきなり抱きついてきたえみるは、とろん、とした目で俺を見上げる。悪い気はしないので、そのまま抱きつかせておくことにした。</p>
<p>「やだにゃあ。ぜんぜん酔ってないれすにょ？」</p>
<p>「嘘つけ。ろれつ回ってねえじゃねえかよ」</p>
<p>そんなえみるを見て、先輩は１つ溜息をつき、</p>
<p>「困った奴だな。絵馬、仕方ないからえみるを家まで送ってやれ」</p>
<p>「はあ！？何で俺がっ！」　「……いいのか？私に逆らっても」</p>
<p>先輩は俺の耳に口を近づけ、そっと囁く。</p>
<p>「お前が『違法使い』だということ、学校側が知ったらどうなるだろうな？……頭の良いお前なら分かるだろう？」</p>
<p>「……っ！」</p>
<p>そう言えば、ドッペルゲンガー六橋さんとの会話は、オルスを通して全て筒抜けだったのだ。</p>
<p>「頼んだぞ、絵馬」</p>
<p>ぽん、と俺の肩を叩く弥生先輩。背中にどす黒いオーラが見えた。一方、えみるは俺にしがみ付いたまま、すやすやと寝息を立てている。器用な奴め。</p>
<p>「ところで絵馬、私も１つ訊いていいか？」　「何ですか？」</p>
<p>先輩はグラスの中のワインを少し踊らせ、</p>
<p>「何故、一介の学生であるお前が、禁則の魔法を使える？」</p>
<p>それに対し、俺は先輩の真似をして、にやりと笑ってみせる。</p>
<p>「俺が『悪魔に愛された人間』だから──、ってのは駄目ですか？」</p>
<p>「……ありきたりだな。３０点。」</p>
<p>採点された。</p>
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<p>９月とはいえ、やはり夏だ。外はまだ明るい。俺はぐっすりと眠ったえみるをおんぶして、帰り道をとぼとぼと歩いている。</p>
<p>「ふにゃあ、絵馬……？」</p>
<p>耳の横で、えみるの寝ぼけた声がした。起きてしまったらしい。</p>
<p>「目が覚めたなら、さっさと降りろ」　「やーだっ」</p>
<p>えみるはそう言って、俺の背中にしがみ付く。……やれやれ。</p>
<p>「あ、絵馬のクラスの劇、観たよ」</p>
<p>「そっか。どうだった？」</p>
<p>「魔法使い役の人が格好良かった」</p>
<p>ここで出てくるのかツンドラ黒魔術士四谷壱！悔しいけど罪な男だ！</p>
<p>「えへへ、がっかりした？」　「……別に」</p>
<p>えみるはクスクスと笑っている。耳に掛かる息がくすぐったい。</p>
<p>「それと、絵馬はもう、王子の役はやっちゃ駄目」</p>
<p>「そんなに演技、酷かったか？」</p>
<p>「そういうわけじゃ、ないけど」　「じゃあ何なんだよ？」</p>
<p>俺が訊くと、えみるは少し戸惑ったような声で、</p>
<p>「だって絵馬は、私だけの……」</p>
<p>背中に感じる彼女の体温が、やけに熱い。それとも、熱があるのは俺の方だろうか。</p>
<p>「私だけの、下僕なんだからっ！」</p>
<p>……。…………？</p>
<p>「は！？何だそれ！？違うだろ！そこは『私だけの王子様だから』とか言うトコだろ！空気読め！」</p>
<p>「はあぁ！？なに色ボケたこと言ってんの！？劇でちょっと良い役やったからって調子乗らないでよ！！」</p>
<p>そこまで言うのか。お前はやはりヒロインじゃなくて暴君だったんだな。</p>
<p>「あんたは絵馬じゃなくてカマドウマよ！」</p>
<p>「某昼ドラ的！？」</p>
<p>どこまでも色気の無い奴だ。俺は深く、溜息をつく。何なんだ、この仕打ちは。</p>
<p>あんなに頑張ったんだから、少しくらいご褒美があってもいいのに。俺はえみるに対し、存外それを求めていたらしい。認めたくないけど。</p>
<p>
とにかく、『文化祭で一攫千金！！』、千金どころか、俺にとっては骨折り損のくたびれ儲けだったわけだが、これにて終幕。次に開催される体育祭の方もどうぞよろしく。</p>
<p>ま、どんな行事だろうと、俺にとっては厄日なんだろうけどな。</p>
<p>（おわり）</p>