☆すすめ!東高生徒会☆

00 降り掛かる火の粉は元から断て!

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匿名ユーザー

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00 降り掛かる火の粉は元から断て!

図書館のカウンターで本をめくっていた狸角大介は、不意に声を掛けられ顔を上げた。

「ちょっといいかしら?」

そこに立っていたのは思わず見蕩れてしまう程の美人で、セミロングの金髪が薄暗い図書館の中でも鮮やかに輝いている。

「調べものがしたいんだけど、本の場所を教えてもらえるかしら」

「どんな本をお探しですか」

少しドキドキしながら大介は尋ねる。

「この学校の歴史について書かれた本をお願いできる?」

学校史? 予想外のジャンルに内心首を傾げつつも、大介は本を閉じカウンターを立つ。

「調べものって、レポートか何かの課題ですか?」

「いいえ、個人的な興味よ」

彼女はふっと微笑んで答える。

「咲かずの桜について、ちょっとね」

「ああ、ひょっとして、第四期卒業生の伝説絡みですか?」

咲かずの桜、という単語に、大介の目が輝く。第四期卒業生の伝説──それは、約五十年前に起きた、第二次魔界戦争の時代。戦火は東高にまで及び、当時の生徒たちも兵士として戦った。そして、魔法課の最高学年だった生徒たちは、独自に創り上げた魔法陣で、『境目の世界』から1匹のある魔獣を呼び出し、それによって戦争を終結へと導いた。戦いが終わり、東高を卒業する際、彼ら、つまり第四期卒業生は、その魔獣をタイムカプセルに閉じ込め、『境目の世界』の扉であった巨大な桜の木の下に埋め、封印した。──再び東高に戦いの火の粉が降り掛かる時、それを振り払う守護獣として。

「結局、その魔獣の封印が解かれたことは今まで1度もないんですよね」

「そう。だから『境目の世界』の扉である桜の木も、魔獣と共に眠りについたまま。あんなに大きな木なのに、少し勿体無いわ」

そう言って残念そうに唇を尖らせる彼女に、大介は少し笑う。

「でも、それだけ魔界が平和だってことですからね」

50年間、眠ったまま花を付けない『咲かずの桜』は、魔界の平和の象徴でもあるのだ。

「そもそも、その魔獣の封印自体、資料が焼失してしまって、解く方法が分からないそうですし」

「あら、良く御存知ね。伝説のことといい、あなたはとても勤勉なのね」

褒められて、大介は照れたように頭を掻く。

「いえ、僕もただ興味があっただけで……。あ、確かここの本棚にあった筈です」

大分奥まで進んだところで、大介は足を止めた。そして、ふと首を傾げる。学校史の本棚の前に、既に1人、生徒が立っていたからだ。その生徒は分厚いハードカバーを広げ、何やら熱心に読み耽っていたが、大介たちに気付くと、本から顔を上げ、そして──、

 

「これは由々しき事態である!」

早朝の職員会議で、マオ校長は何の脈絡も無くそう切り出した。何事か、と教員たちからざわめきが起こる。

「じゃ、夜くん、後はよろしく」

「では、マオ様に代わって説明します。実は──」

教頭の軋道が、珍しく深刻そうな表情で話し始める。

「昨日の深夜、校内に何者かが侵入したようなのです。七星くんの式神からの報告によると、数は2名。暗くて姿は確認できなかったそうです。被害は今のところ無く、侵入者の目的も不明です」

「ってことは、まだ捕まってねえんだな、その侵入者」

生徒会担当の狼牙クロが訊くと、軋道は素直に頷く。

「はい。もしかしたら、再び侵入してくるかもしれません。ですから、今日から警備を強化したいと思います」

そう言って、模造紙をホワイトボードに広げる。それには、教員たちの名前がいくつかに班分けされて書いてあった。

「この班分けでローテーションを組み、校舎に泊り込みで警備にあたってもらいます」

え──っ!!と、職員室が不満の声で揺れた。

「異議ありですの!そんなの、警察に任せればいいじゃない!ですの!」

英語担当の蒼田天が抗議するが、軋道は譲ろうとしない。

「警察なんかには任せられません」

「じゃあ、生徒会の連中にやらせればいいじゃねえか」

今度はクロがそう提案するが、それを却下したのはマオ校長だった。

「もうすぐ卒業式なのに、生徒たちの手を煩わせるわけにはいかないよ!彼らには、思い出を作るのに専念してほしいからね!」

「さすがマオ様!教師の鑑です!」

デスクの上でふんぞり返っているうさぎ饅頭に、軋道1人が拍手を送る。溜息をつきたくなるような光景だった。

「というわけで、みんな頑張ってね☆ 七星くんは、式神での警備を引き続きよろしく!」

そう言い放つや否や、さっさと校長室に戻るマオ校長。もちろん、彼の名前はどの班にも入っていなかった。

(つづく)

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