「ならず者達」(2015/04/09 (木) 18:46:27) の最新版変更点
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*ならず者達 ◆FbzPVNOXDo
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「嘘……」
サーニャが目にしたそれは人とは思えない食いカスだった。
無残に散らばった血に塗れた服、髪の毛が生え所々肉片の付いた髑髏の数々。
如何な方法を以って殺せばこうなるのか、最早人の所業とは思えない。
「うっ……おえっ」
涙よりもサーニャを襲ったのは強い吐き気だった。
エイラと思われる髑髏を見つけたとき、反射的に意の内容物が逆流し吐瀉物として外部に排出される。
愛らしい小顔は見るも無残な白貌の骨へと変わり、残った髪と二つの目玉がギョロリとこちらを睨んでいる。
「エイラ、そんな……」
それをエイラと呼びかけるのに躊躇いすら生まれた。
死んだという覚悟は出来ていたが、これはあまりにも酷すぎる。
怒りや悲しみを飛び越え、嫌悪感を感じた。
「ガキか」
男の声がサーニャ耳を鳴らす。
半ば逃避的にエイラから目を離し振り返る。
「あなた、は……?」
「少なくともそいつらを殺した下手人じゃねえな」
ヘルメットを被っている為、その下の顔は分からないが、何処か声は皮肉が込められている。
サーニャは不快な印象を抱きながら、その男に現状の説明を求めた。
「俺が来た時にはこうなってた。もし誰かの仇討ちでもしたいんなら残念だったな」
「そうですか……。もうここには、透明の殺人鬼も居ないみたいですね」
「あ? 透明の殺人鬼だと?」
ヘルメットの男、ジャギは透明という言葉に反応する。
忘れもしない。あの姿を隠しジャギとドラえもんを襲撃してきた卑怯者に間違いない。
妙な苛立ちが、ふつふつと再び燃え上がってきたジャギは咄嗟にサーニャの胸倉を掴む。
「ちょっ、何を―――」
「おい、その透明の殺人鬼の事を教えやがれ!」
「わ、私も会った訳じゃありませんけど……姿が見えない殺人鬼に襲われた人が居て、彼らは……」
サーニャから手を離しジャギは舌打ちをする。
ほんの少し前まで、ジャギの探していたドラえもんを殺した卑怯者はここに居たのだ。
何というすれ違いだろう。あともう少し早くに学校に来てさえ居れば。
「あの野郎、かならず見つけ出して……」
「貴方も……もしかして」
「ちっ、てめえには関係ねえ」
サーニャの目にはジャギは誰かの為に怒る。
善人のように一瞬映ってしまった。
だからだろう。
「……そうそう、忘れるところだったが俺の名前はケンシロウ、お前を殺す男だ」
その唐突な豹変ぶりと自らの殺害予告に気を取られ、反応が遅れたのは。
ジャギの手に握られた刃物が真っ直ぐサーニャの顔目掛け振り下ろされる。
瞬きする暇もなく、視界が冷たく銀色に輝く鉄に覆われる。
「そ、んな―――」
刃物がサーニャの顔をかち割り、赤く染まろうとしたその瞬間。
壁を薙ぎ払い粉砕し、突き進む男の轟音と咆哮が木霊する。
「衝撃のファーストブリット!!」
まるでミサイルのようだとジャギは錯覚した。
壁があった筈の向こう側から、こちらへと一直線に突っ込んできたのは一人の男だ。
その右腕をアルターで武装し壁を突き破り、ジャギへと殴りかかるカズマ。
ジャギはサーニャから離れ、高く後方へ飛ぶ。
カズマの右腕の軌道からジャギが外れ、その拳は誰も居ない唯の壁へとぶち当たる。
ビスケットのように音を立てながら壁は崩れ去った。
「てめえか? 透明の殺人鬼ってのは!」
「生憎と人違いだ」
「そうかい、でも殺し合いには乗ってるんだろ?」
「だったら?」
「ボコる! 徹底的にだ!!」
「面白え、やってみなこのケンシロウ様を相手によ!」
互いに啖呵を切ったところで、ジャギはカズマの首元にあるはずの物がない事に気づく。
「お前、首輪は……」
「あ? んなもん外した」
「そうか。……特別サービスだ。そいつの外し方を教えれば見逃してやる」
「絶対にノゥ!」
「イエスと言いやがれ!」
ジャギの刃物とカズマの拳がせめぎ合い火花を散らす。
普通の拳ならば血を噴出し、肉が裂けるところだがアルター、シェルブリットの姿となったカズマの拳は刃をものともせず受け止める。
そのまま数度打ち合い、ジャギの蹴りがカズマの腹へと放たれる。
空気を無理やり吐き出されるような感覚と息苦しさを同時に味わいながら、カズマも負けじと左拳でジャギ鳩尾へとストレート打ち込む。
「埒があかねえ、撃滅の―――」
また、あれがくる。
ジャギの体をピリピリと刺激する威圧感。
それが最初に放たれた、あのミサイルのようなものだと予感させる。
「セカンドブリット!」
「うおおおおっ!!」
だがそれはミサイルでありながらミサイルにあらず。
如何に威力が桁違いであろうとも、人の手により放たれた拳であることに違いはない。
ならば、そこに武術の挟み込む余地は確実にある。
殴りかかるという、人のもっとも基本的な戦闘スタイルは何年、何千年も前から研究され尽くされてきた。
故に、それに対する対策など腐るほど編み出されてきている。
「なっ!?」
殴りかかったカズマの力を受け流し、腕を掴み。あらぬ方向へと投げ飛ばす。
北斗神拳ですらない一本背負い。
予想外の出方にカズマも一瞬混乱しながらも辛うじて受身を取るが、流されたセカンドブリットの衝撃がモロに身体を流れかなりのダメージを負う。
「ぐっ、が、あ……」
痛みで動きの遅れたカズマへジャギの刃物が振りかぶる。
カズマは無理やり右腕を動かし、肘で地面へと叩きつけその反動で跳躍した。
刃物は空を斬り、ジャギは天井を睨む。
(あいつにただの拳はきかねえ。なら―――)
再び拳を構え、カズマは天井近くでジャギを見る。
「はっ、また懲りずに殴りかかる気か!」
「抹殺のラストブリット!!」
アルター粒子の噴射で勢いを付けたカズマはジャギではなく、その真上の天井を殴りつける。
「これなら投げられないだろうが!」
崩れ、砲弾のようにジャギに降り注ぐ天井の中を掻い潜り、カズマはサーニャを連れ離脱、半壊した学校から校外へと飛び出した。
「はあ、はあ……おい無事か姉ちゃん?」
「ええ、何とか。それよりもカズマさんは大丈夫なんですか!?」
サーニャの横で気丈に振舞うカズマだが額に汗をかき、目は少しうつろ気味だ。
ここに来て連戦の疲労がピークに達したのかもしれない。
「それよりも、下がっとけ。多分、あのヘルメットくたばってねえ」
左腕で汗を拭いながらカズマは崩れた瓦礫の山を見つめる。
すると目の前の瓦礫から物音が響く。
「!? そこ―――」「違います、あっち!」
カズマが振りかぶった瞬間、サーニャの声で別の方向を見たカズマが捉えたのは、別の死角から不意を付こうとしてきた五体満足のジャギだ。
すぐさまカズマは追撃を中止し、ジャギの攻撃をかわし後方へ飛ぶ。
「ちっ、あのアマ……」
「良かった、私の魔法が役に立って」
ジャギは舌打ちをする。
サーニャの姿が先ほどとは打って変わり、猫のコスプレのようなものに変わっている。
恐らくは何らかの得意な索敵能力を使い、こちらの居場所を察知したのだろう。
こうなると奇襲はまるで役に立たなくなる。
「一応、礼は言っとくぜ姉ちゃん」
サーニャへ一瞥くれ拳を握りなおす。
あのヘルメット男には普通の拳は通用しない。
ならば、更に火力を上げ触れさせなければいい。カズマの周辺の物質が分解され粒子となりシェルブリットへと集まっていく。
シェルブリット第二形態。
もう疲労など気にしている場合じゃない。全力でなければ叩き潰せない相手だ。
「まだ、そんな隠し玉を持ってやがったか」
まいったとしか言いようない。
あの拳は流せない。もはや拳でありながら人のそれではない。
触れるだけで、消し飛びそうなほどのエネルギーを纏っている。
「正面から受けるしかねえってか?」
「もっとだ、もっと輝け! シェルブリットバースト!!」
右腕のプロペラが回転し拳が勢いを付けジャギへと向かっていく。
ミサイルどころか、光り輝くそれは隕石のよう。
ジャギは小細工は捨て、自身の体の秘孔を突き肉体を強化する。
咄嗟の思いつきのアドリブだが上手くいった。あとは迎え撃つのみ。
「ぐ、おおおおおおお……」
「この、野郎ォ……!」
骨が軋み、皮膚は裂け、肉は悲鳴をあげる。
だがジャギはその両腕でカズマのシェルブリットバーストを受け止めた。
「ぬ、ぐうううううう」
「うおおおおおおおおおお」
もっとも僅かながらジャギをカズマが圧している形だが。
二人は連戦を繰り広げ、疲労が溜まっているのは共通している。
問題はその二人を縛る制限だ。かたや首輪を外し本来の力を発揮できるカズマ。かたや魔法戦士の力を得ながらも、しかし制限を受けているジャギ。
そこで地力で二人の間には差が生まれてしまっている。
「畜、生ォ……!」
力が徐々に抜けていく。
シェルブリットバーストが既に眼前にまで迫り、寿命のリミットを数えてすらいるようだ。
どうして止められない。何が足りない。冷静に己と敵の戦力を分析し得た結果、自らを縛る首輪の存在に気づいた。
これだ。これがどうしようもなく人の力を奪い去っている。
「邪魔、なんだよ……首輪(てめえ)は!!」
無理やり引きちぎり、そしてボンっと軽く鈍い爆発音が響く。
カズマが逡巡した次の瞬間、シェルブリットが押し返される感触が伝わってくる。
「お前、まさか……!」
「はっ、これでお前と対等って訳だなァ!!」
首輪を千切った瞬間、秘孔を応用し首周りを硬化させ爆発を耐えた。
一か八かの賭けだが勝った。
ここからが本当の勝負の幕開けだ。
「もっと輝け!」
「しゃらくせえ!」
受け止めたシェルブリットへ真下からの膝打ちを叩きつける。
わずかにジャギへの狙いが反れた瞬間、カズマの顔面へと頭突きを叩き込む。
だが、カズマも負けじと左肘で首輪のなくなった首元へ肘打ちを打ち込む。
カズマは鼻血を噴出し、ジャギは潰れた声を捻り出しながら。それでも二人は退かない。
「面白えな、ほんとに何なんだろうなあ!」
「ごちゃごちゃ、うっせえんだよ!」
顔を歪ませた二匹の獣が更に殴り合い互いを血に染めていく。
あまりにショッキングな光景にサーニャは目を背ける。
「なんで……あんな、あの人たちおかしい……」
殴るのは痛いことだ。殺しあうのは悲しく辛いことだ。
それなのにあの男たちは笑っている。互いに楽しんでいる
理解できない。どうして? 味方であった筈のカズマすら恐ろしく感じてしまう。
なんで殺し合いを楽しめるのか、どうして……?
おかしい、理解できない。人が死んでいるのに、しかも自分たちがそうなるのかもしれないのにどうして。
段々、不快さと腹正しさすら沸いてくる。
―――こんな人達にエイラは殺されたの?
ふとサーニャの脳裏をエイラの目玉と髪が残った髑髏が過ぎる。
戦いが殺しが好きな人たちにエイラは殺された?
そう思ったとき、無意識の内にカードを掲げていた。
「なっ? アルターが!?」
「なんだあ?」
その絵柄に描かれた一体のドラゴンが召喚され、再び姿を消した時カズマのシェルブリットが解除されジャギの拳を食らい吹っ飛ばされた。
覚えているのはここまでだ。あとは無我夢中で走って逃げた。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
サーニャは走る。
エイラの悲惨すぎる死、男達の血みどろの殺し合いから逃れるように。
【c-03 /1日目・夕方】
【サーニャ・V・リトヴャク@ストライクウィッチーズ】
[状態]:健康、魔力消費(微) 、精神的な落ち込み、腹部に重傷、精神的ショック(大)、錯乱
[装備]:★Rock Cannon@ブラック★ロックシューター、黒猫のゴスロリ服@俺の妹がこんなに可愛いわけがない
[道具]:メントスコーラ(空)@コーラを開けるとメントスが落ちるトラップの作り方、
DMカード『スターダスト・ドラゴン』@遊戯王5D's (自身をリリースし破壊を無効化したあと帰還する効果で夜中に再び使用可能)
[思考・状況]:殺し合いには乗らずゲームを打破する
0、……。
1、エイラの仇を討ちたい。
2、知り合いが居れば合流する
3、ストライカーユニットとフリーガーハマーが有れば入手したい
4、殺し合いに乗ってない参加者が居れば合流したい
5、まどか達を警戒
6、エイラを殺したのは……
7、あの人たちはおかしい
※DMカード『スターダスト・ドラゴン』@遊戯王5D'sは自身効果により消えたので、短時間で復帰します。
ただし復帰前と後の時間を合わせ、一定時間で消滅しその後半日使用不可です。
それ以外は普通のDMカードと同じです。
「どうなってんだ……クソッ!」
あの時、一体のドラゴンが現れたかと思えばカズマのシェルブリットを打ち消した。
ジャギはサーニャが、あのドラゴンで攻撃してくるものとばかり思っていたが、そうではなかったことに疑問を持つ。
スターダスト・ドラゴンの特殊効果は自身を墓地に送り相手の破壊効果を無力化するもの。
サーニャがそれに気づかず発動させカズマのアルターを解いた事など知る由もない。
「ちっ、とにかく今は休むか」
あの少女はジャギと戦っていた男の仲間の筈がどのような心変わりがあったのか。
何にせよジャギには関係の無いことだ。
休息のはずがとんだ戦闘になってしまったがやっと静かになった。
少し休ませてもらおう。幸い学校内の治療用具がありそうな場はまだ無事だ。
【c-03 見滝原中学校 /1日目・夕方】
【ジャギ@北斗の拳】
[状態]:疲労(大)+奥義連続使用による消耗、ダメージ(大)、全身に爆発によるダメージ×2、QMZの力の目覚め、原因不明の苛立ち、右腕に裂け傷(止血済み) 左肩に大きな噛み傷、首輪解除
[装備]:魔法戦士の衣装一式@QMZ
[道具]:基本支給品一式、音の出るフリスピー@ミツバチ(遊助)
こんなところの閉鎖病室の鍵の束@チャージマン研!、銃火器予備弾薬セット@オリジナル
日本酒一升、刃物×2(全て違う種類、そこそこ大きい)
[思考・状況]
基本思考:ケンシロウの名を騙ってゲームに乗る
0:ケンシロウも気になるが、コソコソ見てた奴(譲治)も気になる。
1:参加者を探し、殺す。
2:銃火器がほしい。ガトリングとか。
3:襲撃者(にとり)は確実に殺す。
4:自分をコケにした女と犬(早苗と権兵衛)は許さない。
5:研、リュウセイ(名前を知らない)とカズマは次会ったら殺す。
6:奇跡の部屋にある新鮮な血に疑問。
7:右腕と左肩の治療を優先。
8:あのドラゴンは…?
※青鬼のデイバックがC-04に放置されています
※青鬼の事を支給品の類いだと考えています
※学校が半壊しています。
「あいつ…」
c-03から離れた場所でカズマは悪態をつく。
理由は分からないが人の喧嘩を邪魔されたのは非常に腹立たしい。
文句の一つや二つ言ってやりたいところだった。
あの戦いの間に少女の中で、何があったのか想像もつかない。
追ったほうが良いのだろうか。しかし、学校でアカツキ達を待たなければならないのもある。
そうなった場合、またあのヘルメットと戦う羽目になるだろう。それは別に構わないカズマだが。
「だが、ちっと疲れちまったな」
流石のカズマも疲労困憊だった。このまま連戦は避けたいところだ。
一先ず一眠りすることする。あとのことは寝たあと決める。
そう決め、目を閉じ眠りに落ちた。
【c-04 /1日目・夕方】
【カズマ@スクライド】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、激しい怒り、首周りに少し焦げ跡、首輪解除 、睡眠
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、ケイネスのメモ、ランダム品0~1
[思考・状況]
基本:気に入らない奴はとにかくぶん殴るが、あのせこい男(サリー)の言いなりになるつもりはない。
0:今は寝る。今後のことはあとで決める。
1:このバトルロワイアルとやらを破壊するためにも、せこい男(サリー)の思い通りにさせない。
2:男声の女(譲治)とフランクを撃った男(ロックオン)、野獣先輩を警戒。場合によってはぶちのめす。
3:雛子、響、アカツキ(名前を知らない)にケイネスのメモを渡す為、学校に向かったが……。
4:ケイネスに言われたので、化け物については一応気を付けておく。
5:まどかは次会ったらぶちのめす。ほむらのまどかへの態度が気に入らない。
6:あいつ(サーニャ)はどうしちまったんだ?
※ミルキィホームズとデッドライジングの世界を聞きましたが、何処まで覚えてるか不明です。
※少なくとも参戦時期は君島死亡後です。
※ケイネスのメモには、ケイネスが立てた青鬼増殖の仮説。
それと雛子、響、アカツキの名前が書かれています。
|sm156[[「アイテム渡しすぎじゃないですかね?」「ま、多少はね?」]]|[[時系列順>第三回放送までの本編SS]]|sm159:[[第三回放送]]|
|sm156:[[「アイテム渡しすぎじゃないですかね?」「ま、多少はね?」]]|[[投下順>151〜200]]|sm158:[[アンハッピーリフレイン]]|
|sm146:[[お前に夢中だ!! エイラァァァァァ!!!]]|サーニャ・V・リトヴャク|sm:[[]]|
|sm146:[[お前に夢中だ!! エイラァァァァァ!!!]]|カズマ|sm:[[]]|
|sm147:[[大きすぎる…修正が必要だ…]]|ジャギ|sm:[[]]|
*ならず者達 ◆FbzPVNOXDo
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「嘘……」
サーニャが目にしたそれは人とは思えない食いカスだった。
無残に散らばった血に塗れた服、髪の毛が生え所々肉片の付いた髑髏の数々。
如何な方法を以って殺せばこうなるのか、最早人の所業とは思えない。
「うっ……おえっ」
涙よりもサーニャを襲ったのは強い吐き気だった。
エイラと思われる髑髏を見つけたとき、反射的に意の内容物が逆流し吐瀉物として外部に排出される。
愛らしい小顔は見るも無残な白貌の骨へと変わり、残った髪と二つの目玉がギョロリとこちらを睨んでいる。
「エイラ、そんな……」
それをエイラと呼びかけるのに躊躇いすら生まれた。
死んだという覚悟は出来ていたが、これはあまりにも酷すぎる。
怒りや悲しみを飛び越え、嫌悪感を感じた。
「ガキか」
男の声がサーニャ耳を鳴らす。
半ば逃避的にエイラから目を離し振り返る。
「あなた、は……?」
「少なくともそいつらを殺した下手人じゃねえな」
ヘルメットを被っている為、その下の顔は分からないが、何処か声は皮肉が込められている。
サーニャは不快な印象を抱きながら、その男に現状の説明を求めた。
「俺が来た時にはこうなってた。もし誰かの仇討ちでもしたいんなら残念だったな」
「そうですか……。もうここには、透明の殺人鬼も居ないみたいですね」
「あ? 透明の殺人鬼だと?」
ヘルメットの男、ジャギは透明という言葉に反応する。
忘れもしない。あの姿を隠しジャギとドラえもんを襲撃してきた卑怯者に間違いない。
妙な苛立ちが、ふつふつと再び燃え上がってきたジャギは咄嗟にサーニャの胸倉を掴む。
「ちょっ、何を―――」
「おい、その透明の殺人鬼の事を教えやがれ!」
「わ、私も会った訳じゃありませんけど……姿が見えない殺人鬼に襲われた人が居て、彼らは……」
サーニャから手を離しジャギは舌打ちをする。
ほんの少し前まで、ジャギの探していたドラえもんを殺した卑怯者はここに居たのだ。
何というすれ違いだろう。あともう少し早くに学校に来てさえ居れば。
「あの野郎、かならず見つけ出して……」
「貴方も……もしかして」
「ちっ、てめえには関係ねえ」
サーニャの目にはジャギは誰かの為に怒る。
善人のように一瞬映ってしまった。
だからだろう。
「……そうそう、忘れるところだったが俺の名前はケンシロウ、お前を殺す男だ」
その唐突な豹変ぶりと自らの殺害予告に気を取られ、反応が遅れたのは。
ジャギの手に握られた刃物が真っ直ぐサーニャの顔目掛け振り下ろされる。
瞬きする暇もなく、視界が冷たく銀色に輝く鉄に覆われる。
「そ、んな―――」
刃物がサーニャの顔をかち割り、赤く染まろうとしたその瞬間。
壁を薙ぎ払い粉砕し、突き進む男の轟音と咆哮が木霊する。
「衝撃のファーストブリット!!」
まるでミサイルのようだとジャギは錯覚した。
壁があった筈の向こう側から、こちらへと一直線に突っ込んできたのは一人の男だ。
その右腕をアルターで武装し壁を突き破り、ジャギへと殴りかかるカズマ。
ジャギはサーニャから離れ、高く後方へ飛ぶ。
カズマの右腕の軌道からジャギが外れ、その拳は誰も居ない唯の壁へとぶち当たる。
ビスケットのように音を立てながら壁は崩れ去った。
「てめえか? 透明の殺人鬼ってのは!」
「生憎と人違いだ」
「そうかい、でも殺し合いには乗ってるんだろ?」
「だったら?」
「ボコる! 徹底的にだ!!」
「面白え、やってみなこのケンシロウ様を相手によ!」
互いに啖呵を切ったところで、ジャギはカズマの首元にあるはずの物がない事に気づく。
「お前、首輪は……」
「あ? んなもん外した」
「そうか。……特別サービスだ。そいつの外し方を教えれば見逃してやる」
「絶対にノゥ!」
「イエスと言いやがれ!」
ジャギの刃物とカズマの拳がせめぎ合い火花を散らす。
普通の拳ならば血を噴出し、肉が裂けるところだがアルター、シェルブリットの姿となったカズマの拳は刃をものともせず受け止める。
そのまま数度打ち合い、ジャギの蹴りがカズマの腹へと放たれる。
空気を無理やり吐き出されるような感覚と息苦しさを同時に味わいながら、カズマも負けじと左拳でジャギ鳩尾へとストレート打ち込む。
「埒があかねえ、撃滅の―――」
また、あれがくる。
ジャギの体をピリピリと刺激する威圧感。
それが最初に放たれた、あのミサイルのようなものだと予感させる。
「セカンドブリット!」
「うおおおおっ!!」
だがそれはミサイルでありながらミサイルにあらず。
如何に威力が桁違いであろうとも、人の手により放たれた拳であることに違いはない。
ならば、そこに武術の挟み込む余地は確実にある。
殴りかかるという、人のもっとも基本的な戦闘スタイルは何年、何千年も前から研究され尽くされてきた。
故に、それに対する対策など腐るほど編み出されてきている。
「なっ!?」
殴りかかったカズマの力を受け流し、腕を掴み。あらぬ方向へと投げ飛ばす。
北斗神拳ですらない一本背負い。
予想外の出方にカズマも一瞬混乱しながらも辛うじて受身を取るが、流されたセカンドブリットの衝撃がモロに身体を流れかなりのダメージを負う。
「ぐっ、が、あ……」
痛みで動きの遅れたカズマへジャギの刃物が振りかぶる。
カズマは無理やり右腕を動かし、肘で地面へと叩きつけその反動で跳躍した。
刃物は空を斬り、ジャギは天井を睨む。
(あいつにただの拳はきかねえ。なら―――)
再び拳を構え、カズマは天井近くでジャギを見る。
「はっ、また懲りずに殴りかかる気か!」
「抹殺のラストブリット!!」
アルター粒子の噴射で勢いを付けたカズマはジャギではなく、その真上の天井を殴りつける。
「これなら投げられないだろうが!」
崩れ、砲弾のようにジャギに降り注ぐ天井の中を掻い潜り、カズマはサーニャを連れ離脱、半壊した学校から校外へと飛び出した。
「はあ、はあ……おい無事か姉ちゃん?」
「ええ、何とか。それよりもカズマさんは大丈夫なんですか!?」
サーニャの横で気丈に振舞うカズマだが額に汗をかき、目は少しうつろ気味だ。
ここに来て連戦の疲労がピークに達したのかもしれない。
「それよりも、下がっとけ。多分、あのヘルメットくたばってねえ」
左腕で汗を拭いながらカズマは崩れた瓦礫の山を見つめる。
すると目の前の瓦礫から物音が響く。
「!? そこ―――」「違います、あっち!」
カズマが振りかぶった瞬間、サーニャの声で別の方向を見たカズマが捉えたのは、別の死角から不意を付こうとしてきた五体満足のジャギだ。
すぐさまカズマは追撃を中止し、ジャギの攻撃をかわし後方へ飛ぶ。
「ちっ、あのアマ……」
「良かった、私の魔法が役に立って」
ジャギは舌打ちをする。
サーニャの姿が先ほどとは打って変わり、猫のコスプレのようなものに変わっている。
恐らくは何らかの得意な索敵能力を使い、こちらの居場所を察知したのだろう。
こうなると奇襲はまるで役に立たなくなる。
「一応、礼は言っとくぜ姉ちゃん」
サーニャへ一瞥くれ拳を握りなおす。
あのヘルメット男には普通の拳は通用しない。
ならば、更に火力を上げ触れさせなければいい。カズマの周辺の物質が分解され粒子となりシェルブリットへと集まっていく。
シェルブリット第二形態。
もう疲労など気にしている場合じゃない。全力でなければ叩き潰せない相手だ。
「まだ、そんな隠し玉を持ってやがったか」
まいったとしか言いようない。
あの拳は流せない。もはや拳でありながら人のそれではない。
触れるだけで、消し飛びそうなほどのエネルギーを纏っている。
「正面から受けるしかねえってか?」
「もっとだ、もっと輝け! シェルブリットバースト!!」
右腕のプロペラが回転し拳が勢いを付けジャギへと向かっていく。
ミサイルどころか、光り輝くそれは隕石のよう。
ジャギは小細工は捨て、自身の体の秘孔を突き肉体を強化する。
咄嗟の思いつきのアドリブだが上手くいった。あとは迎え撃つのみ。
「ぐ、おおおおおおお……」
「この、野郎ォ……!」
骨が軋み、皮膚は裂け、肉は悲鳴をあげる。
だがジャギはその両腕でカズマのシェルブリットバーストを受け止めた。
「ぬ、ぐうううううう」
「うおおおおおおおおおお」
もっとも僅かながらジャギをカズマが圧している形だが。
二人は連戦を繰り広げ、疲労が溜まっているのは共通している。
問題はその二人を縛る制限だ。かたや首輪を外し本来の力を発揮できるカズマ。かたや魔法戦士の力を得ながらも、しかし制限を受けているジャギ。
そこで地力で二人の間には差が生まれてしまっている。
「畜、生ォ……!」
力が徐々に抜けていく。
シェルブリットバーストが既に眼前にまで迫り、寿命のリミットを数えてすらいるようだ。
どうして止められない。何が足りない。冷静に己と敵の戦力を分析し得た結果、自らを縛る首輪の存在に気づいた。
これだ。これがどうしようもなく人の力を奪い去っている。
「邪魔、なんだよ……首輪(てめえ)は!!」
無理やり引きちぎり、そしてボンっと軽く鈍い爆発音が響く。
カズマが逡巡した次の瞬間、シェルブリットが押し返される感触が伝わってくる。
「お前、まさか……!」
「はっ、これでお前と対等って訳だなァ!!」
首輪を千切った瞬間、秘孔を応用し首周りを硬化させ爆発を耐えた。
一か八かの賭けだが勝った。
ここからが本当の勝負の幕開けだ。
「もっと輝け!」
「しゃらくせえ!」
受け止めたシェルブリットへ真下からの膝打ちを叩きつける。
わずかにジャギへの狙いが反れた瞬間、カズマの顔面へと頭突きを叩き込む。
だが、カズマも負けじと左肘で首輪のなくなった首元へ肘打ちを打ち込む。
カズマは鼻血を噴出し、ジャギは潰れた声を捻り出しながら。それでも二人は退かない。
「面白えな、ほんとに何なんだろうなあ!」
「ごちゃごちゃ、うっせえんだよ!」
顔を歪ませた二匹の獣が更に殴り合い互いを血に染めていく。
あまりにショッキングな光景にサーニャは目を背ける。
「なんで……あんな、あの人たちおかしい……」
殴るのは痛いことだ。殺しあうのは悲しく辛いことだ。
それなのにあの男たちは笑っている。互いに楽しんでいる
理解できない。どうして? 味方であった筈のカズマすら恐ろしく感じてしまう。
なんで殺し合いを楽しめるのか、どうして……?
おかしい、理解できない。人が死んでいるのに、しかも自分たちがそうなるのかもしれないのにどうして。
段々、不快さと腹正しさすら沸いてくる。
―――こんな人達にエイラは殺されたの?
ふとサーニャの脳裏をエイラの目玉と髪が残った髑髏が過ぎる。
戦いが殺しが好きな人たちにエイラは殺された?
そう思ったとき、無意識の内にカードを掲げていた。
「なっ? アルターが!?」
「なんだあ?」
その絵柄に描かれた一体のドラゴンが召喚され、再び姿を消した時カズマのシェルブリットが解除されジャギの拳を食らい吹っ飛ばされた。
覚えているのはここまでだ。あとは無我夢中で走って逃げた。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
サーニャは走る。
エイラの悲惨すぎる死、男達の血みどろの殺し合いから逃れるように。
【c-03 /1日目・夕方】
【サーニャ・V・リトヴャク@ストライクウィッチーズ】
[状態]:健康、魔力消費(微) 、精神的な落ち込み、腹部に重傷、精神的ショック(大)、錯乱
[装備]:★Rock Cannon@ブラック★ロックシューター、黒猫のゴスロリ服@俺の妹がこんなに可愛いわけがない
[道具]:メントスコーラ(空)@コーラを開けるとメントスが落ちるトラップの作り方、
DMカード『スターダスト・ドラゴン』@遊戯王5D's (自身をリリースし破壊を無効化したあと帰還する効果で夜中に再び使用可能)
[思考・状況]:殺し合いには乗らずゲームを打破する
0、……。
1、エイラの仇を討ちたい。
2、知り合いが居れば合流する
3、ストライカーユニットとフリーガーハマーが有れば入手したい
4、殺し合いに乗ってない参加者が居れば合流したい
5、まどか達を警戒
6、エイラを殺したのは……
7、あの人たちはおかしい
※DMカード『スターダスト・ドラゴン』@遊戯王5D'sは自身効果により消えたので、短時間で復帰します。
ただし復帰前と後の時間を合わせ、一定時間で消滅しその後半日使用不可です。
それ以外は普通のDMカードと同じです。
「どうなってんだ……クソッ!」
あの時、一体のドラゴンが現れたかと思えばカズマのシェルブリットを打ち消した。
ジャギはサーニャが、あのドラゴンで攻撃してくるものとばかり思っていたが、そうではなかったことに疑問を持つ。
スターダスト・ドラゴンの特殊効果は自身を墓地に送り相手の破壊効果を無力化するもの。
サーニャがそれに気づかず発動させカズマのアルターを解いた事など知る由もない。
「ちっ、とにかく今は休むか」
あの少女はジャギと戦っていた男の仲間の筈がどのような心変わりがあったのか。
何にせよジャギには関係の無いことだ。
休息のはずがとんだ戦闘になってしまったがやっと静かになった。
少し休ませてもらおう。幸い学校内の治療用具がありそうな場はまだ無事だ。
【c-03 見滝原中学校 /1日目・夕方】
【ジャギ@北斗の拳】
[状態]:疲労(大)+奥義連続使用による消耗、ダメージ(大)、全身に爆発によるダメージ×2、QMZの力の目覚め、原因不明の苛立ち、右腕に裂け傷(止血済み) 左肩に大きな噛み傷、首輪解除
[装備]:魔法戦士の衣装一式@QMZ
[道具]:基本支給品一式、音の出るフリスピー@ミツバチ(遊助)
こんなところの閉鎖病室の鍵の束@チャージマン研!、銃火器予備弾薬セット@オリジナル
日本酒一升、刃物×2(全て違う種類、そこそこ大きい)
[思考・状況]
基本思考:ケンシロウの名を騙ってゲームに乗る
0:ケンシロウも気になるが、コソコソ見てた奴(譲治)も気になる。
1:参加者を探し、殺す。
2:銃火器がほしい。ガトリングとか。
3:襲撃者(にとり)は確実に殺す。
4:自分をコケにした女と犬(早苗と権兵衛)は許さない。
5:研、リュウセイ(名前を知らない)とカズマは次会ったら殺す。
6:奇跡の部屋にある新鮮な血に疑問。
7:右腕と左肩の治療を優先。
8:あのドラゴンは…?
※青鬼のデイバックがC-04に放置されています
※青鬼の事を支給品の類いだと考えています
※学校が半壊しています。
「あいつ…」
c-03から離れた場所でカズマは悪態をつく。
理由は分からないが人の喧嘩を邪魔されたのは非常に腹立たしい。
文句の一つや二つ言ってやりたいところだった。
あの戦いの間に少女の中で、何があったのか想像もつかない。
追ったほうが良いのだろうか。しかし、学校でアカツキ達を待たなければならないのもある。
そうなった場合、またあのヘルメットと戦う羽目になるだろう。それは別に構わないカズマだが。
「だが、ちっと疲れちまったな」
流石のカズマも疲労困憊だった。このまま連戦は避けたいところだ。
一先ず一眠りすることする。あとのことは寝たあと決める。
そう決め、目を閉じ眠りに落ちた。
【c-04 /1日目・夕方】
【カズマ@スクライド】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、激しい怒り、首周りに少し焦げ跡、首輪解除 、睡眠
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、ケイネスのメモ、ランダム品0~1
[思考・状況]
基本:気に入らない奴はとにかくぶん殴るが、あのせこい男(サリー)の言いなりになるつもりはない。
0:今は寝る。今後のことはあとで決める。
1:このバトルロワイアルとやらを破壊するためにも、せこい男(サリー)の思い通りにさせない。
2:男声の女(譲治)とフランクを撃った男(ロックオン)、野獣先輩を警戒。場合によってはぶちのめす。
3:雛子、響、アカツキ(名前を知らない)にケイネスのメモを渡す為、学校に向かったが……。
4:ケイネスに言われたので、化け物については一応気を付けておく。
5:まどかは次会ったらぶちのめす。ほむらのまどかへの態度が気に入らない。
6:あいつ(サーニャ)はどうしちまったんだ?
※ミルキィホームズとデッドライジングの世界を聞きましたが、何処まで覚えてるか不明です。
※少なくとも参戦時期は君島死亡後です。
※ケイネスのメモには、ケイネスが立てた青鬼増殖の仮説。
それと雛子、響、アカツキの名前が書かれています。
|sm156[[「アイテム渡しすぎじゃないですかね?」「ま、多少はね?」]]|[[時系列順>第三回放送までの本編SS]]|sm159:[[第三回放送]]|
|sm156:[[「アイテム渡しすぎじゃないですかね?」「ま、多少はね?」]]|[[投下順>151〜200]]|sm158:[[アンハッピーリフレイン]]|
|sm146:[[お前に夢中だ!! エイラァァァァァ!!!]]|サーニャ・V・リトヴャク|sm165:[[サーニャ・リベンジャー]]|
|sm146:[[お前に夢中だ!! エイラァァァァァ!!!]]|カズマ|sm:[[]]|
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